医療問題

女性の顔の値段

 冒頭から失礼なタイトルで
 申し訳ございません。
 昨日、
 交通事故で
 「著しい醜状を残すもの」のとは、
 顔面部:
 鶏卵大面以上の瘢痕、
 長さ5センチメートル以上の線状痕又は10円銅貨大以上の組織陥凹

 とありました。
 これだけのキズ。
 かなりのものです。
      ■         ■
 こんなキズが残ったら…
 もう生きて行けない!
 どうか治してください!
 とお願いされても、
 一度ついてしまったキズは、
 ‘簡単に’治すことはできません。
 何回も手術が必要なことも、
 何年もかかることもあります。
      ■         ■
 治す方(医師)も
 治される方(患者)も
 忍耐強く、
 根気よく治療する必要があります。
 人生の中で…
 もっともキレイでいたい時期を、
 何年も耐えなければならないことがあります。
      ■         ■
 事故を起こした相手に、
 怒りをぶつけても、
 顔のキズはよくなりません。
 せめて保障だけでも…
 と思うのが、
 ふつうの人が考えることです。
      ■         ■
 私は、保険屋さんと親しくはないので、
 ネットで検索してみました。
 こちらのサイトに書かれていました。
 元、保険調査員をなさっていらした方が
 書かれたサイトのようです。
 医師の私にも参考になります。
 もう、
 生きるのがイヤになるほどのキズが
 残ってしまった女性の顔に対する補償金です。
      ■         ■
 交通事故で顔に
 著しい醜状が残った女性の
 等級は7級12号、
 自賠責保険からの振込額は1051万円です。

 と書かれていました。
 高いと思いますか?
 1千万円です。
 昨日も書いたように、
 98歳のおばあさんも、
 18歳のお嬢さんも同じ値段です。
      ■         ■
 男は、
 7級に相当するのが、
 『両側のこう丸を失ったもの』
 これで1千万です。
 私のようなオッサンはまだいいとしても、
 これから青春を迎え、
 子供が欲しいと思っている、
 20歳台の男性でも
 同じ金額です。
 これって変じゃありませんか?
 やはり、弁護士さんに相談しましょう!
      ■         ■
 後遺障害の等級は、
 私たち医師が記載する、
 後遺障害診断書によって判定されます。
 わずかB4の書類一枚です。
 この書類で金額が決まるのです。
 医師は記入するだけです。
 この診断書のことについては、
 次の機会に書きたいと思います。

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医学講座

顔の価値:男女差

 弁護士の高橋智先生のHPで
 交通事故賠償事件に関する記載があります。
 とても参考になるので、
 是非、ご一読ください。
 この中に女性の顔のキズについて
 書かれていました。
      ■         ■
 私たち医師は、
 キズを治すのが仕事です。
 後遺障害を認定するのは、
 実は、医師の仕事ではないのです。
 私たち医師は、
 後遺障害診断書を作成するだけです。
 交通事故に遭われた方の、
 障害等級が何級か?は
 めったに知ることはありません。
 それは、治療の必要がなくなってから、
 後遺障害診断書を作成するからです。
      ■         ■
 交通事故の障害等級は、
 1級から14級まであります。
 労災事故による障害等級も
 1級から14級まであります。
 私は、昔、
 釧路労災病院に勤務していました。
 その時に
 労災事故の後遺障害診断書を書きました。
 交通事故の
 後遺障害診断書を作成する
 マニュアルは知りませんが、
 労災事故の障害認定のマニュアルは
 今でも持っています。
      ■         ■
 労災補償
 障害認定必携
 労働省労働局監修

 ここに障害等級について
 かなり詳しく書かれています。
 おそらく、交通事故も
 これに準じていると思います。
      ■         ■
 この障害認定のマニュアルに書かれている、
 醜状(しゅうじょう)
 (みにくいキズあとのこと)についてが、
 私たちがふつうに考える
 後遺障害とはかけ離れています。
 まず、
 『女子の外ぼうに著しい醜状を残すもの』
 7級です。
 『男子の外ぼうに著しい醜状を残すもの』
 12級です。
 5ランクも差があります。
      ■         ■
 一番重い障害が1級です。
 1級に該当するのは、
 『両眼が失明したもの』
 『そしゃく及び言語の機能を廃したもの』
 『神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの』
 『腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの』

 です。
      ■         ■
 この障害認定マニュアルに書かれている、
 女子とか男子には、
 年齢制限はありません。
 つまり、
 98歳のシワシワのおばあさんも、
 18歳のピチピチのお嬢さんも同じ等級です。
 また、
 男性にしても、
 私のようなおっさんも、
 ジャニーズ系やキムタクのような
 イケメンも同じです。
 これって、変じゃありませんか?
      ■         ■
 また、
 「著しい醜状を残すもの」とは、
 顔面部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕、長さ5センチメートル以上の線状痕又は10円銅貨大以上の組織陥凹

 と記載されています。
 障害補償の対象となる外ぼうの醜状とは他人をして醜いと思わせる程度、即ち人目につく程度以上のものでなければならないから、瘢痕、線状痕および組織陥凹であっても眉毛、頭髪等にかくれる部分については醜状として取り扱わないこととなる。
 となっています。
 つまり、髪の毛の中にハゲができていても、
 眉の下にキズがあっても、
 その部分はカウントしませんよ!
 という解釈です。
      ■         ■
 著しい醜状とは、
 とてもひどいキズが残ったということです。
 キズの長さが短くても、
 鼻の形が変形してしまった、
 とか
 目の形が変形してしまった、
 場合もあり得ます。
 このような形状の変化についての、
 規定はないのです。
      ■         ■
 女性の顔に、
 著しい醜状が残ったのが
 7級です。
 男性で
 7級に相当するのが、
 『両側のこう丸を失ったもの』
 これって、
 男としてちょっと許せないと思います。
 私は、
 両方とも等級を上げて欲しいと思います。
 交通事故に遭ったら、
 弁護士さんにお願いしましょう!

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医学講座

元に戻してください

 人間は後悔する生き物のようです。
 キレイになりたい…
 その一心で、美容外科の門をくぐり、
 二重の手術を受けます。
 私が見ても…
 職員が見ても…
 誰が見ても、
 自然な二重なのに…
 元に戻してください!
 という方が、
 今までに数人いらっしゃいました。
      ■         ■
 美容外科を生業(なりわい)としていると
 避けて通れないことです。
 自分でつくった、
 キレイな作品を壊すようで、
 美容外科医としては、
 一番、したくない再手術が、
 元に戻す手術です。
      ■         ■
 再手術で…
 元に戻せるのは…
 まだマシです。
 元に戻せない手術もあります。
 私は、
 本人のご希望がはっきりしない時は、
 すぐに手術をお引き受けしないことにしています。
      ■         ■
 形成外科の手術は、
 生まれつき、
 指が6本あるのを、
 5本にする。
 生まれつき、
 口唇が割れているのを、
 修復する。
 目的がはっきりしているので、
 元に戻してください…
 と言われることはありません。
      ■         ■
 美容外科の手術を
 はじめて受ける方に多いのが、
 元に戻してください…
 というご要望です。
 アイプチでつくっていた目とは
 イメージが違います。
 手術中に確認しても、
 家に帰って心配になる人もいます。
 一回でも手術を受けていらっしゃると、
 元に戻して…
 とはなりません。
      ■         ■
 はじめて
 美容外科の手術を受ける方には、
 大きな手術をおすすめしません。
 まず、
 美容外科入門編の
 二重埋没法などをおすすめします。
 元に戻してください
 と言われる方は
 全体からみると
 ごく少数です。
 手術も返品や交換ができない、
 高価なお買い物です。
 よ~く、考えてから受けてください。
 迷ったら、
 その日には受けないでください。
 戻せない手術もたくさんあります。

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未分類

自然とは?

 私は北海道の雄大な自然が好きです。
 富良野のラベンダーの香りも、
 心を癒してくれる、
 自然の恵みだと思います。
      ■         ■
 さくらんぼさんから…
 どこまでが自然か?
 というご質問をいただきました。
 私のこだわりは、
 その人、本来の形を少し変えた程度…
 豊胸術でいうと、
 せいぜい2カップUPです。
      ■         ■
 間違っても…
 巨乳なんかはつくれません。
 バッグの位置を
 南雲式の大胸筋下にこだわるのも、
 大胸筋という、
 ‘お肉’で包むことで、
 より自然に見せるためです。
      ■         ■
 私が得意とする、
 目の手術でも、
 二重のラインは、
 目の大きさに合わせて、
 ‘自然に’見えるようにします。
 フランス人形のような目は
 日本人には合わないと思います。
      ■         ■
 私は料理も薄味が好きです。
 食べ物、本来の味が
 生きている料理が好きです。
 お刺身やお鮨につける、
 醤油も…
 薄口醤油を少しだけつけます。
 そうすると…
 魚や貝が持っている味が、
 わかるような気がします。
      ■         ■
 もちろん…
 こってりとした味や
 スパイスがきいた味が
 好きな方もいらっしゃると思います。
 私の、
 美容外科の味付けは、
 薄味なので、
 物足りないと…
 お叱りを受けることもあります。

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医学講座

価値観の共有

 彼(彼女)を見つける時、
 同じ価値観を持った人を探すのは
 大変なことかもしれません。
 何に対する価値観か?
 というのも問題です。
      ■         ■
 同じことが、
 美容外科を選ぶ時にもいえます。
 私が手術する時は、
 なるべく自然で、
 他人に気づかれないように…
 と考えています。
      ■         ■
 ところが、
 お化粧をした時に、
 バッチリ大きな目になりたい!
 外人のような目になりたい!
 というご希望の方もいらっしゃいます。
 残念ですが、
 そういうご要望にはお応えできません。
      ■         ■
 ホームページの症例写真は、
 私が手術をさせていただいた方です。
 この写真や、
 手術を受けた方のブログを読んで
 いらしていただくと、
 まず価値観が違うことはありません。
      ■         ■
 美容外科医の中には、
 外人のような顔をつくってしまう先生もいます。
 確かに、素晴らしい技術だと思います。
 ただ、私の価値観とは合わないので、
 そのような手術はお引き受けできません。
      ■         ■
 私が得意とするのは、
 その人、本来の顔のイメージを崩さず、
 少し目を大きくするとか、
 ものを見やすくするとか、
 そういう手術を心がけています。
      ■         ■
 開業する前に考えた、
 『イメージは自然』
 『自然な仕上がりを大切にします』
 というキャッチコピーは、
 大通り公園の、
 地下街からの階段を上がって、
 テレビ塔が真正面に見えた時に、
 ふっと浮かんだ言葉です。
      ■         ■
 偏屈な頑固オヤジです。
 こんなオヤジでもよろしければ
 いらしてください。
 私にできる精一杯の手術を、
 心を込めてご提供いたします。
 価値観が同じかどうかは、
 日記を読んでいただいてもわかると思います。

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院長の休日

結婚の条件

 平成20年8月9日、朝日新聞朝刊、
 be on Saturdayの記事です。
 ゴーン道場
 結婚の条件
 深いきずなが必要
 ―結婚を長続きさせるコツを教えてください。
 難しい質問ですね。
 私は日頃から、
 娘には
 「急いで決めず、
 時間をかけて考えるんだよ」
 と言っています。
 伴侶を選ぶときは
 本当に真剣に考えたほうがいい。
      ■         ■
 ―まず、よく考えること?
 そうです。
 「初恋だから」
 なんて理由で
 結婚してはよくないよ、
 と言っています。
 親が子どもに
 「早く結婚しろ」
 なんてせかすのはもってのほか。
 子どもたちが
 本当に納得した上で
 結婚を決めないと
 意味がないのです。
 なぜなら、
 結婚は
 バラ色の楽しいことばかりではない。
 仕事や研究と同じで、
 モチベーションがないと
 長続きさせるのは難しいんです。
      ■         ■
 ―長続きさせるのに大事なことは?
 伴侶となる相手と
 深いきずながあること。
 同じ価値観や
 家族観、
 信仰
 などがきずなとなるでしょう。
 同じ国、
 文化、
 教会
 などで結婚した夫婦が
 長続きするケースが多いのは、
 そんな根本的な
 きずながあるからでしょう。
 見せかけのきずななら、
 最初の2、3の衝突で
 関係は破綻してしまいます。
      ■         ■
 ―恋愛感情だけでは難しいのですか。
 恋愛感情が悪いわけではないですが、
 それだけでは困ります。
 共通の価値観、
 優先順位など、
 共通項(commonality)が
 なければなりません。
 恋愛感情だけなら
 結婚する必要はないでしょう。
      ■         ■
 わざわざ結婚するのは、
 2人の間で
 家庭や価値観など、
 何かを共有したい、
 同じ人生を歩みたいと
 思うからでしょう。
 そうしたきずなが
 結婚の根拠となり、
 厳しい嵐を乗り切る
 船の支柱の役割を果たします。
 どんな夫婦にも、
 嵐は必ずやって来ますからね。
 (以上、朝日新聞より引用)

      ■         ■
 私は、先輩からいただいた
 ダットサン、サニー以外は
 日産車に乗ったことがありません。
 ゴーンさんごめんなさい。
 でも、
 朝日新聞のゴーン道場は
 よく読んでいます。
      ■         ■
 私も、ゴーンさんの意見に賛成です。
 本間家にも嵐は何度もやってきました。
 今も、嵐の真っ只中です。
 美容外科の‘先生’だから幸せとか…
 医者だから幸せ…
 ということはありません。
 公団の狭い2DKで、
 家賃が4万4千円の家に、
 新婚で住んでいた頃が、
 一番、しあわせでした。
      ■         ■
 価値観が同じというのは、
 とても大切だと思います。
 先日、
 特売のティッシュの話しをしましたが、
 家内もチラシが好きで、
 必ず、安いティッシュを買いに行きます。
 特売のティッシュが好きかどうか?
 付き合っている時に聞くのは…
 少し勇気が要りますね。
      ■         ■
 家内は、私とはじめて会った時に、
 聞いたそうです。
 『マージャンがお好きですか?』と。
 私はマージャンはしません。
 同級生には、マージャンが好きで
 雀荘(じゃんそう)に
 よく行っていた人もいました。
 私は、
 マージャンが好きかどうか?
 家内に聞かれた記憶がまったくありません。
 もし、マージャン好きだったら、
 一発で×だったそうです。
      ■         ■
 私は知らないところで、
 テストされていました。
 マージャンには合格したようですが、
 お互いに知らないところはたくさんあります。
 私は、
 どこまで許容できるか?
 が一番のポイントだと思います。
 お互いの価値観を
 よく確認して、
 慎重に決めてください。
 返品・交換はできません。
 ノークレーム・ノーリターンです。

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医学講座

美容外科価格破壊の弊害

 美容外科の価格競争によって、
 この5~6年の間に
 急速に価格破壊が起こりました。
 実は、6年前に韓国を訪れた際に、
 日本より先に、
 韓国で
 美容外科の
 倒産・廃業が起きていることを知りました。
 まさか日本でも、
 こんなに早く、
 美容外科の過当競争が起こるとは…
 夢にも思いませんでした。
      ■         ■
 レーシック詐欺を、
 美容の杜に投稿したところ、
 お医者さんから、次のコメントをいただきました。

 レーシックで失明することと、同じ施術内容をあたかも内容が違うかのように料金差をつけて販売することが同じ論点で書かれているように感じました。

 先生のブログは、本当に患者さんのことを考えておられる医師であることが伝わってきて、いつも読ませていただいて、私のような未熟な医師にとってとても為になる内容ばかりです。

 レーシックによって視力が回復し、非常に満足している友人がたくさんいます。(品川近視クリニックで受けている人も多いです)品川さんの商法は確かに褒められたものではないと思いますが、眼科に関して言えば、多くの人が救われていることも事実だと思います。

 匿名で自分の身分も明かさずに投稿する卑怯者で申し訳ありません。今後も先生のブログで勉強させていただきたいと考えています。
投稿者 匿名後輩医師 : 2008年08月04日 10:01

 私も、
 大手美容外科で行われている
 レーシック手術で
 視力が回復して喜んでいらっしゃる方が
 たくさんいることはわかります。
      ■         ■
 私が申し上げたいのは、
 医療の分野に
 あまり価格競争とか
 市場原理を働かせ過ぎると、
 ‘安全’という、
 医療にとって一番大切な、
 医療の根幹が脅かされるという危険性です。
      ■         ■
 私は25年間、
 北海道内の総合病院に
 形成外科医として勤務しました。
 私が勤務したのは、
 北海道では屈指の総合病院で、
 地域の基幹病院でした。
 残念なことですが、
 そのような病院ですら…
 医療事故はありました。
 医療訴訟を抱えていない病院は、
 ひとつもありませんでした。
      ■         ■
 交通事故と同じで、
 医療にはある確率で事故が起こります。
 航空機事故も同じです。
 絶対に墜落しない飛行機はありません。
 事故が起こらないように、
 安全対策にお金も時間もかけます。
 安全で快適な空の旅には、
 それ相応のお金がかかります。
      ■         ■
 タクシー運賃や
 航空運賃が
 許認可を必要とするのは、
 安全が損なわれると困るからです。
 その航空業界や
 タクシー業界は、
 規制緩和で、
 航空運賃ダンピングや
 タクシーの台数が増えて、
 大変な状況になっています。
      ■         ■
 医療業界には、
 保健所の検査や監査はありますが、
 料金の許認可はありません。
 ‘医療’業界が信頼されているからです。
 自由診療の料金まで許認可は困ります。
 そのためには、
 業界が自主規制をして、
 節度ある態度で診療を続ける必要があると、
 私は考えています。
      ■         ■
 昨今の美容外科業界を見ると、
 美容医療は…
 安売りで…
 儲からないから…
 儲かる眼科のレーシックで、
 儲かるうちに、
 しこたま儲けよう…
 というような、
 商魂が見え見えの
 広告が目につきます。
      ■         ■
 私は、
 医療というのは、
 金儲けの道具ではなく、
 人を幸せにする…
 人の苦痛を取り除く…
 そういう業種だと思います。
 金儲けを考えると、
 効率主義や
 一人当り単価が
 気になるようになります。
 こうしていると、
 いつか
 取り返しがつかない
 事故が起こる気がします。

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医学講座

二重手術のプロセス

 二重まぶたの手術は、
 日本や韓国では、
 もっとも多い
 美容外科手術の一つです。
 モデルさんのように…
 パッチリとした平行二重にしたい。
 誰からも気づかれないように、
 目立たない奥二重がいい…。
 二重といっても、
 一人一人ご要望が異なり、
 もともとの目の形も違います。
      ■         ■
 二重まぶたの手術は、
 簡単ではありません。
 瞼の状態を診察し、
 眼瞼下垂や左右差がないかチェック。
 埋没法でできるのか?
 切開手術が必要なのか?
 希望しているラインはできるのか?
 という診断をします。
 丁寧に説明するのにも、
 時間がかかります。
      ■         ■
 実際に手術をして、
 手術中に…
 出来上がりを
 鏡で確認していただきます。
 もし不具合があれば、
 その場で修正…
 という順序で手術を進めます。
 麻酔をして、
 糸をかけるだけでしたら…
 10分もあれば終了しますが、
 この術前の診察と
 出来上がりの確認に時間がかかります。
 また痛みを少なくするための
 前処置にも時間がかかります。
      ■         ■
 最初の診察だけで、
 手術はせずにお帰りになる方も、
 いらっしゃいます。
 手間ひま、
 時間をかけて、
 診察、
 相談、
 手術、
 をすると…
 とても9,800円ではできません。
      ■         ■
 確かに、
 価格競争によって料金が下がったので、
 ‘簡単に’
 二重手術を受ける方が増えました。
 幸せになっていらっしゃる方も、
 たくさんいらっしゃると思います。
 しかし、
 私たちのような個人の開業医には、
 チェーン店で…
 ‘二重’の手術をしたけれど、
 取れてしまったとか?
 変になった?という方が、
 かなり来院されます。
      ■         ■
 以前、いらした方は、
 完璧な眼瞼下垂症だったのに、
 大手美容外科で切開法の手術を受け、
 ただ瞼にキズがついただけで、
 二重にならなかっただけではなく…
 瞼に三重の線がついていました。
 苦労して修正手術をしました。
 修正手術は、
 初回手術の何倍も時間がかかります。
 修正が不可能な場合もあります。
      ■         ■
 二重まぶたの手術は、
 アイプチで
 くせをつけるのとは違います。
 簡単なように思われて、
 希望の二重ができるまで
 何回も繰り返し
 受ける手術ではありません。
 安易に受けて後悔してからでは
 遅いこともあります。
 手術は慎重に受けてください。

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医学講座

釣り糸と二重手術

 昨日(平成20年8月6日)の日記に、
 一本一万円以上もする、
 最高級の糸なんてありません。
 と書きました。
 二重埋没法の手術で、
 先人の先生が最も苦労されたのが、
 この‘糸’でした。
      ■         ■
 外科手術でもっとも多く使われたのが、
 絹糸(けんし)です。
 絹(きぬ)の糸を
 医学では‘けんし’と呼びます。
 高級な和服は絹ですね。
 蚕(かいこ)がつくった繭(まゆ)
 からできた糸です。
 しなやかで細くて丈夫です。
 今でも、一般外科ではよく使っています。
      ■         ■
 眼科の先生が目の手術に使うのも
 絹糸でした。
 眼科の教科書にも、
 黒の絹糸で縫ったキズが出ています。
 ところが、
 この絹糸が難物でした。
 蚕(かいこ)が作った細い糸を、
 何本も束にして一本の糸を作っています。
 これを‘より糸’といいます。
      ■         ■
 形成外科では絹糸はめったに使いません。
 細くてやわらかな糸ですが、
 異物反応が強いのです。
 顔のキズを縫うのは、
 ナイロン糸という糸です。
 ナイロンストッキングのナイロンです。
 昔はナイロンはありませんでした。
      ■         ■
 二重まぶたの手術にも、
 昔は絹糸を使用していました。
 その頃は、
 絹糸に対する異物反応で、
 まぶたに、
 ニキビのようなしこりがよくできました。
 糸がある限りしこりはとれません。
 埋没法を嫌う先生は、
 この異物反応によるしこりを気にするようです。
      ■         ■
 誰が考えたかわかりません。
 ある時、
 透明なナイロンでできた、
 釣り糸を
 二重まぶたの手術に使った先生がいました。
 釣り糸を使った二重の手術は、
 絹糸を使った手術に比べて、
 しこりや感染などの合併症が激減しました。
      ■         ■
 釣り糸が使われだしたのは、
 おそらく昭和40年代だと思います。
 当時は、一部のクリニックの企業秘密でした。
 ですから、
 学会発表も論文も残っていないのだと思います。
 美容外科にとってはノーベル賞的な発明です。
 最初に釣り糸を使った先生は、
 ご自身が釣り好きだったのでしょう…?
      ■         ■
 形成外科や一般外科で、
 釣り糸と同じ、
 透明なナイロン糸が使われだしたのは、
 ずっと後のことです。
 今は、透明だと後から見つけにくいので、
 青とか黒の色をつけたナイロン糸が使われています。
 大きな魚が暴れても切れない釣り糸は、
 丈夫で二重をつくるのに最適でした。
      ■         ■
 手術で使用する時は、
 もちろん滅菌処理をしてから使います。
 まぶたに釣り糸を通す時に使った針は、
 丸針(まるばり)と呼ばれる、
 腸を縫う針でした。
 腸は薄いので、
 皮膚を縫う角針(かくばり)で縫うと、
 穴があいてしまいます。
      ■         ■
 釣り糸と腸を縫う針で、
 キレイな二重ができました。
 私は、
 二重埋没法の手術を、
 札幌中央形成外科の武藤靖夫先生に、
 はじめて見せていただきました。
 本当に感動しました。
 先生の手が‘神の手’に見えました。
 あまりに手術がすばらしく、
 私には無理だと最初は諦めてしまったほどでした。

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医療問題

二重一点留(9,800円)

 二重まぶた埋没法の最安値が
 一点留め保証なし
 キャンペーン料金
 9,800円と広告に出ています。
 最高級の糸を使った
 プレミアムスーパークイック法
 が3年間の安心保証制度がついて
 39,800円だそうです。
      ■         ■
 そもそも、
 埋没法の手術で一番大切なのが、
 何点で留めるかとか?
 最高級の糸を使うとかではないのです。
 二重まぶた埋没法の手術は、
 日本で開発された、
 アジア人に適した手術です。
 古い文献(ぶんけん:論文のこと)では、
 第二次世界大戦の前(1920年代)から
 この手術が発表されています。
      ■         ■
 誰にでも簡単に二重を作れる、
 ‘魔法の手術’という、
 誤ったイメージがあります。
 一番大切なのが、
 埋没法に向いた目かどうかを診断することです。
 瞼が厚い方や脂肪が多い方は、
 埋没法には向いていません。
      ■         ■
 目は丸い形をしています。
 二重の線は目の丸い形に沿ってできます。
 心ある美容外科医でしたら、
 最初から一点留めはしません。
 アイプチにしても…
 メザイクにしても…
 ある程度の長さをつけないと二重になりません。
 一点留で二重ができない理由です。
      ■         ■
 一点だけ糸で固定して、
 二重の形をキレイに出せる方は、
 二重手術なんていらない方とも言えます。
 ですから、
 二重一点留9,800円は、
 客寄せのための広告です。
 9,800円のつもりで行っても、
 もっと高い手術をすすめられます。
      ■         ■
 私は、札幌中央形成外科の
 武藤靖夫先生とご一緒に、
 二重まぶた埋没法についての研究をしました。
 国際美容外科学会誌
 Aesthetic Plast Surg. 24(4):289-91,
 に2000年に発表しました。
 その時に調査した結果によると、
 2点留と4点留では、
 二重の消失率に差がありました。
 4点で留めたほうが
 消失が少ないという結果でした。
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 でも4点で留めると、
 2点で留めるよりずっと腫れが強くなります。
 2点で留めて、
 二重が消失する率は、
 だいたい5~10%です。
 10人中9人は取れないということです。
 生まれつきの二重と同じ構造を、
 糸で作るのです。
 そう簡単に取れることはありません。
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 最高級の糸というのも疑問です。
 手術に使う糸は、
 医療用具として厚生労働省の認可を得ています。
 日本で製造販売している業者は、
 限られています。
 簡単に切れることはありません。
 糸の価格はせいぜい数千円です。
 最高級で、
 一本一万円以上もする糸はありません。
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 良心的で良い美容外科医とは、
 埋没法に向かない目の人には、
 しっかりとその理由を説明できる人。
 たとえ、埋没法でしたとしても、
 もし取れた時には、
 取れにくい部分切開法などの手術ができる人。
 最初から手術を無理にすすめない人です。
 ある程度、技術力を持った先生は
 自分の技術を決して安売りしないと思います。

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