医学講座

救急車控えたのに負担増とは

 平成29年7月28日、朝日新聞朝刊、声の欄への投稿です。
 救急車控えたのに負担増とは
 会社員 田中知子(三重県 43)
 先日の夜遅く、おなかの激痛に見舞われ、救急外来に行くことにしました。運転できるような痛みではなかったものの、果たして救急車を呼んでいいものかと悩み、結局タクシーを呼びました。病院に到着し、緊急でお医者様に診ていただき、一安心しました。
 しかし支払いの際、衝撃を受けました。深夜夜間費(1440円)と初診費(850円)に加え、紹介状なしに大病院を受診した際には「選定療養費」として3240円が必要だと言われ、医療費だけで計5530円を請求されました。
 受付の方によると、救急車で来院した場合は、病状にかかわらず選定療養費は不要とのこと。タクシー代や薬代も含めると母子家庭の私には手痛い出費となり、怒りが沸き上がりました。救急車が足りないと言われているので遠慮したのですが、救急車を呼べばよかったかな、などと思わず後悔してしまいました。
 世の中には、救急車をタクシー代わりに使う人もいるといいます。そうした人からは選定療養費を支払ってもらうようにすれば、救急車の不適正利用が減るのではないでしょうか。
 (以上、朝日新聞より引用)

      ■         ■
 三重県の田中知子さんのお怒りはごもっともです。
 厚生労働省が定めた、
 医科診療報酬点数表によって、
 医療費が決まります。
 地方公共団体又は医療機関に所属する救急自動車によって搬送された患者
 …という文言があります。
 つまり症状にかかわらず、
 地方公共団体又は医療機関に所属する救急自動車で受診すると、
 選定療養費がかかりません。
      ■         ■
 昔は、
 この地方公共団体又は医療機関に所属する救急自動車という文言はありませんでした。
 札幌市の、
 市立札幌病院HPには、
 緊急その他やむを得ない事情(救急車による搬送等)により来院された場合は、
 特別の料金はいただきません。

 …と記載があります。
 救急車をタクシー代わりに使う人が実際にいます。
      ■         ■
 救急車で来れば3240円の選定療養費がかからないと説明を受けたら、
 誰でも、
 私、次からは絶対に救急車呼んでやる!怒!
 …と思います。
 市立札幌病院では選定療養費
 非紹介患者加算額と呼び、
 5000円(税込)です。
 救急患者の選定療養費については、
 都道府県や病院によって対応が違うようです。
      ■         ■
 (医師の判断で)
 救急搬送が必要と認められる場合
 外来受診後、
 入院や経過観察となった場合

 …は、選定療養費の対象外としております。
 …とHPに記載してある病院もあります。
 夜間に急にお腹が痛くなったら、
 誰でも不安になります。
      ■         ■
 急性腹症きゅうせいふくしょう
 といって、緊急手術になることもあります。
 素人にはなかなか判断がつきません。
 どこの都市でも、
救急車で搬入された患者さん
・緊急で入院治療を要する患者さん
・緊急処置、緊急手術等を要する患者さん
・救急外来を受診するため、 他院からの紹介状を持参された患者さん

 …は、選定療養費の対象外です。
 今朝の朝日新聞を読むと、
 ちょっとでも心配なら救急車を呼ぶのがいいようです。
 私も勉強になりました。

“救急車控えたのに負担増とは”へのコメント

  1. さくらんぼ より:

    そうです。山形市の山形大学生の事件を思い出します。やっとの思いで 119番に電話したのに タクシーで行けますか? そういわれたら行けるかもと思ったのでしょう。救急車は一台も出ていなく すぐに行ってくれたら彼は死ぬ事はなかったと思います。同時の市長さんは謝罪しませんでしたが、今の佐藤市長さんはきちんと彼の家に謝罪に行ってくれました。北海道生まれの方ですが、山形思いの方なのでFB友達になって応援しています。 近くの大きな病院に紹介状なしでいったら MRIなどの検査もあったので17000円くらいでした。父が救急車で行った時はすぐ入院になったので いくらかかったのか請求書をみないとわかりませんが、ほんとに夜間救命救急は子供の風邪が多いのにはびっくりします。

    【札幌美容形成外科@本間賢一です】
    コメントをいただきありがとうございます。救急車で受診したら割安になるなら全員救急車を利用しますよね。昼間は混んでいるので夜間に来たという患者さんもいます。ご両親とも働いていらしたら帰宅してから夜間外来しかやってません。どうしたものやら?です。

  2. なっちゅん より:

    知らない方が多いのですよね。

    以前、父が腹痛の為、動けなくなり
    救急車を呼びました。

    病院に到着すると
    紹介状がない場合、5000円かかります。
    と記載された紙を見て驚きました。
    お財布にそんなにお金がありませんでした。

    受付で聞くと
    救急車で搬送された患者さんは
    不要ですと言われ
    支払いがなんとかできると思いました。

    てすが父は腹膜炎の為
    そのまま入院しました。

    救急車を選択した事は
    間違ってなかったと思いました。

    それから、父は歩けなく
    救急車で何度か搬送されました。

    デイから救急車で搬送された事もあります。

    知らないと損をしますね。

    【札幌美容形成外科@本間賢一です】
    コメントをいただきありがとうございます。私が大きな病院で働いていた頃は選定療養費なんてものはありませんでした。国の方針とはいえ、いろいろなことを考えるものです。私は救急車で来院した場合は全員負担なしという制度は止めるべきだと思います。

  3. すみれ より:

    今回の話は大変参考になりました。私も救急車を使うかどうか、迷うと思います。詳しく解説頂きまして有り難うございました。

    【札幌美容形成外科@本間賢一です】
    コメントをいただきありがとうございます。病院側にとっても厄介なのがこの選定療養費です。例えば市立札幌病院の真ん前に住んでいて、毎日救急車のサイレンを聞いている桑園の住民が夜間にお腹が痛くなっても目の前の市立札幌病院にかかれないのです。紹介状がないとダメです。おかげで患者数が激減し病院は赤字です。市立札幌病院の周囲にはたくさんの開業医ができました。開業医の先生から紹介状があれば受診できます。変な制度です。病院の目の前に住んでいる人でもお腹が痛くて動けないから救急車に来てくださいとお願いして救急車で入院すると選定療養費がかかりません。何か変です。

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