医療問題
山形大学の事件②
報道発表によると、
20代の女性患者さんの医療事故の原因は
コンパートメント症候群です。
コンパートメント症候群?って何?
ネットで検索すると、いろいろな説明がでてきます。
どの説明を読んでも、あまりピンときません。
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話しをわかりやすくするために、
ブーツを例にとってお話しします。
女性が冬に履くブーツ。
いろいろなデザインがあります。
たいていのブーツに、ファスナーがついています。
体重が増えて、脚(下腿)が太くなったとします。
昨年は履けたブーツがきつくて入りません。
ショックです。
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気に入っていたブーツで、
あまり痛んでもいないので、
無理やりファスナーを引っ張り上げて…
ブーツが裂けそうになるくらい…
無理矢理ブーツを履きます。
ようやく入りました。
パンパンになったまま、朝お出かけします。
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最初はなんとかガマンできていても、
そのうち痛みで耐えられなくなってきます。
でもファスナーを緩めると、
ブーツが脱げてしまい歩けません。
仕事中に靴屋さんに行くこともできません。
痛みをガマンして歩いていると、
そのうち感覚が麻痺してしまいます。
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仕事で外回りをしている。
通勤に長時間かかる。
きついブーツを長時間履いて、
歩いていると、脚がパンパンになってきます。
感覚が麻痺しても歩いていると、
脚がしびれて、最後には血流が止まってしまいます。
これがコンパートメント症候群の原理です。
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つまり、脚をしめつけて血流が悪くなる病態です。
ブーツで…
そこまでガマンする人はいないでしょうが、
真冬の寒い時期などにガマンしていると
足先の感覚がなくなってしまうのと同じです。
痛みを感じているうちは大丈夫ですが、
きついブーツを履いたまま、
酔って泥酔してしまったりすると…
大変なことになります。
脚が壊死(えし)してしまいます。
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日本救急医学会HPの説明です。()内は私の捕捉です。
(下腿のように)複数の筋肉がある部位では,
いくつかの筋ごとに,
骨,筋膜,筋間中隔などで
囲まれた区画に分かれて存在する。
その区画のことをコンパートメントという。
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骨折や打撲などの外傷が原因で
筋肉組織などの腫脹(しゅちょう)がおこり,
その区画内圧が上昇すると,
その中にある筋肉,血管,神経などが圧迫され,
循環不全のため壊死や神経麻痺をおこすことがある。
これをコンパートメント症候群という。
とくに多くの筋が存在する
前腕,
下腿や
大腿部で起きやすい。
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骨折や打撲だけではなく
ランニングやジャンプなどの
激しい運動によってもおこりうる。
強い疼痛が特徴であり,
他に
腫脹(しゅちょう),
知覚障害,
強い圧痛などがみられる。
処置が遅れれば筋肉壊死や神経麻痺をおこす。
筋区画内圧が40mmHg以上であれば,
筋膜切開(減張切開)が必要となる。
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コンパートメント症候群は珍しい病態ではありません。
整形外科医、
救急医、
外科医、
形成外科医
であれば、
必ず知っているべき病態です。
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救急医学会HPにあるように、
処置が遅れれば後遺障害が残ります。
逆に処置が早ければ
後遺障害を残さずに治癒することもあります。
きついブーツだって、
早く脱げば脚はしびれませんし、
後遺障害が残るようなことはありません。
残念なのは、
山形大学医学部付属病院で
どうして早く処置ができなかったか?です。
この理由は、別の日に書きます。