医療問題
山形大学の事件③
ここからの記載は、一般的な術後経過です。
私は山形大学と何の関係もなく、
手術に入ったわけでもありません。
ひとりの形成外科専門医の推測です。
山形大学の先生は、
下腿のキズを丁寧に縫合したと思います。
手術終了時には何の問題もなく、
無事に終了してよかったよかった!
と手術を終わりました。
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手術のトラブルは手術後に起こります。
術後出血、
術後感染、
術後の肺合併症、
など
手術の後の管理が大切です。
外科医は、
研修医時代に先輩からイヤというほど叱られて
術後管理を覚えます。
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手術が終わると、
患者さんは入院していた皮膚科病棟へ帰りました。
ご家族が心配してお待ちになっています。
ふつうの一般的な大学病院でしたら、
患者さんの術後管理は入院している病棟、
すなわち皮膚科病棟で行います。
問題はそこからです。
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病棟へ戻ってから、
手術後の腫れが出てきます。
手術直後は問題がなくても、
手術後の腫れ(医学用語で腫脹(しゅちょう)といいます)
によって、血流障害が出ることがあります。
病棟では、担当の看護師が
術後の観察をします。
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麻酔が切れて、
腫れが強くなってくると、
患者さんは痛みを訴えます。
術後の一過性の痛みか?
合併症による痛みか?
の判断が重要になります。
持続硬膜外麻酔という麻酔が効いていると、
痛みを訴えないことがあります。
その時は、足先の血流を見て判断します。
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ベテランの看護師が夜勤をしていると、
すぐに判断ができて、医師へ報告されます。
報告先は、皮膚科の当直医です。
皮膚科の当直医は患者さんを診察して、
異常が認められれば、主治医へ報告します。
主治医は、診察をして、
自分で対応ができなければ、
手術を手伝ってくれた形成外科専門医へ報告します。
これが、大学病院のごく一般的な流れです。
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病棟での責任者は、
①主治医
②病棟医長(ふつうは皮膚科の准教授か講師)
③皮膚科診療科長(皮膚科教授)
④附属病院病院長
となるのが一般的です。
実際に毎日回診して、キズを診るのが、
研修医+指導医(皮膚科)
何か問題が生じたら…
整形外科の形成外科専門医に連絡!
というのが、
日本における平均的な医学部附属病院です。
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白い巨搭でおなじみの教授回診。
浪速大学医学部第一外科では、
外科の財前教授が回診をしていました。
内科の里見助教授は、外科の回診には来ません。
山形大学の患者様は、
皮膚科に入院されていたので、
ふつうの医学部附属病院であれば、
診療科長である皮膚科教授が責任者です。
皮膚科病棟の教授回診は皮膚科教授がします。
教授が不在の時は、准教授がします。
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医療事故の報告も同じです。
このような、事故があった際には、
まず担当した診療科の皮膚科医師から
診療科長の皮膚科教授に報告が上がり、
そこから病院長へと報告が上がるのが
一般的なルールです。
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山形大学の患者様の主治医は
皮膚科医師であり、
手術に際して、
皮膚科から整形外科に組織的な要請はなく、
整形外科の所属である形成外科専門医に
直接執刀をお願いしたことで、
結果的に、整形外科内でのカンファレンスがおこなわれず、
整形外科長(荻野教授)に状況が伝えられないまま
医療事故になりました。
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私は、
患者様が、
もし整形外科病棟へ入院されていたら…
この事故は防げたと考えます。
整形外科の病棟では、
術後に下肢の状態をチェックするのは…
日常茶飯事。
どんな新人のナースでも、
患者さんの訴えを見逃すはずはありません。
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荻野教授の指揮監督下であれば、
必ず教授回診で善処されたと思います。
この事故は、
荻野教授の守備範囲以外の部署で起こりました。
ですから、
処置が後手後手になったのだと推測します。
私は荻野教授の手術を知っています。
とても丁寧でキレイな手術をなさる先生です。
問題なのは山形大学医学部の診療体制なのです。
その理由を次に書きます。