医療問題
山形大学の事件④
北海道には、
北海道大学医学部、
札幌医科大学、
旭川医科大学の
3つの医育機関があります。
旭川医科大学には形成外科はありません。
形成外科専門医もいません。
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東北には、
青森県→弘前大学医学部、
岩手県→岩手医科大学、
秋田県→秋田大学医学部、
山形県→山形大学医学部、
宮城県→東北大学医学部、
福島県→福島県立医科大学
の医学部があります。
このうち、秋田大学医学部と
山形大学医学部には形成外科がありません。
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日本の医学部や医科大学には、
形成外科専門医すらいないところがあります。
何回か書いたことがありますが、
もともと形成外科は、
皮膚科や整形外科の一部から独立しました。
北大に形成外科ができたのが、
昭和53年でした。
私の恩師である、
大浦武彦先生が血の出るような努力をされて、
北大に形成外科をつくられました。
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北大に形成外科ができたのは、
大浦先生の恩師である、
北大皮膚科教授の三浦祐晶先生のおかげだと
私は大浦先生から何度もお聞きしました。
大学や大きな総合病院に新しい診療科をつくることは、
大変なことだというのは、
私自身が肌で感じてきたことです。
北大では、皮膚科から別れて形成外科ができました。
当時の詳しいことはわかりませんが、
一般的には形成外科ができるということは、
皮膚科の教官が減るということです。
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私の推測では、
三浦先生は皮膚科の教官数が減っても、
形成外科という新しい科をつくって、
手術が必要な患者さんを助けたいと思われたのです。
三浦先生のような、
よき理解者がいないと、
形成外科のような新しい診療科はできません。
もちろん、北海道大学医学部付属病院長や
北海道大学総長の英断もあったと思います。
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北大と同じ昭和50年代前半から、
形成外科があった国立大学は、
東大、
京大、
長崎大学
だけだったように記憶しています。
私は、30年近く形成外科を専門としてきました。
私自身が、市立札幌病院で、
平成元年から平成6年まで、
皮膚科医師として形成外科の診療を、
6年間も担当しました。
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交通事故で顔の骨を骨折した患者さんが搬送されました。
救急部へ行って、
『手術が必要です』
『手術は○○のように行います』と
ご家族に説明しました。
何も状況がわからないご家族から、
『失礼ですが…、
皮膚科の先生に顔の骨の手術ができるのですか?』
というようなことを聞かれたことがありました。
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山形にも、
脚のキズをキレイに治したい。
脚にある、アザをキレイに治したい。
という患者さんが必ずいると思います。
形成外科がないので、
患者さんはどこを受診したらよいかわかりません。
病院の受付で聞いてもわかりません。
皮膚のキズだから皮膚科?
なんて感じで皮膚科をすすめられたことも
実際にありました。
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もし、山形大学医学部に形成外科があれば、
形成外科専門医が最初から診察し、
入院・手術計画を立て、
患者さんやご家族に説明していたと思います。
そうすれば、形成外科の中で
手術法についてカンファレンスがあり、
術後も形成外科専門医がチェックできたはずです。
患者さんがご不幸だったのは、
しっかりとした形成外科の診療体制がなかったことです。
形成外科専門医として本当に申し訳なく思います。