医療問題
不必要な検査
平成20年7月27日、朝日新聞朝刊、
声の欄への投稿記事です。
不必要な検査
医療費の無駄
脳神経外科医 松島善治
(東京都小金井市 72歳)
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私は幾つかの病院で頭痛外来を担当しているが、
院内外から紹介されて来る慢性頭痛の
患者のほぼ全員が、
既にCT(コンピューター断層撮影)
またはMRI(磁気共鳴断層撮影)
を実施されている。
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慢性頭痛でこれらの検査が必要なことはまれで、
重要なのは正確な頭痛の知識だ。
だが日本の病院では、
検査が収入につながるためか、
検査は不必要だと説明する時間を省くためか、
頭痛と言えば直ちにCTやMRIの検査を実施してしまうのである。
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これは医師の勉強不足にもよるが、
他方では「頭痛があるから頭のCTを撮って下さい」
と患者から望まれる場合が多いためだ。
不必要だと説明しても納得させるのは実に難しい。
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こうした不要な検査の数は膨大で、
全国の診療所や病院で毎日行われる
無駄な検査に支払う費用は、
国の医療費のかなりの部分を占めている。
不要な投薬も同様である。
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医療崩壊が叫ばれる今、
医師の実力や、
患者にとっての必要の有無に関係なく、
官僚の天下り先ともなりうる会社の
医療機器、
検査、
薬などを使った時に限って
医療側に金が入るような
今の仕組みは早急に改めるべきだ。
(以上、朝日新聞より引用)
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日本の医療保険制度の問題点です。
出来高払いと呼ばれる方式です。
不要な検査が多いことも確かです。
投稿者の先生がご指摘なさっていらっしゃるように、
医療者側だけの問題でもありません。
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『あの病院へ行ったけど、検査もしてくれなかった』
『あそこの病院の先生は、すぐに注射をしてくれる』
『注射一発ですぐに治る』
などは、日常よく耳にする会話です。
医療者側にとって、
もしCT検査をせず、
後で脳腫瘍などが見つかったとすると、
(頭痛との因果関係がなくても)
訴訟になる恐れもあります。
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CTやMRI検査は、
造影剤を使わない限り、
痛くもありません。
検査によるリスクも少ないので、
安易に行われることもあると思います。
私は投稿者の先生の意見に賛成ですが、
高額のCTやMRIを導入した医療機関では
今日も不要な検査が行われていると思います。