医療問題

米国の医療問題

 平成20年7月26日、朝日新聞朝刊の記事です。
 治療の質、格差反映
 政府関与か市場原理か
 2008米国大統領選
 亀裂の現場から シカゴ
 医療保険制度
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 平日の午後1時、シカゴ郊外の病院の待合室で、患者たち十数人が、うつむきがちに診察の順番を待っていた。
 忙しく立ち回る医師や看護師。消毒薬のにおい。高価な医療器具。診察に必要なものをすべて備えたこの病院に、唯一 「ない」ものがある。
 診寮費を支払う窓□だ。
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 カルロスさん(62)とリリアさん(56)の夫婦は、この病院に通い始めて4年になる。
 「背中が痛むのだけど、健康保険がなく、お金が払えない。この病院がなかったら、どうなっていたか」。そう、スペイン語で話した。
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 この「コミュニティー・ヘルス」は全米で最も大きな無料病院のひとつ。寄付とポランティア医師らで運営され、シカゴ近郊から年間6千人以上の患者が訪れる。その6割以上は中南米系だという。
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 「どこから来たかとか、不法移民か、とかは一切聞かない。彼らは人間であり、医療が必要なのだから」。医師の一人、アーノルド・ワイデンさん(78)は言う。「なぜ、こんな活動をするのかって?米国は、公的な国民皆保険制度のない唯一の先進国だということを忘れてはいけないよ」
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 「病気し破産」
 医療保険制度の不備は、米国で深刻な内政問題となっている。一部に公的保険は存在するが、基本的に一般国民は民間保険会社による医療保険に加人するしかない。このため、全米で無保険なのは4700万人、実に7人に1人に及ぶ。世界保健機関(WHO)による医療制度のランキングで、米国は37位(日本は10位)という低さだ。
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 さらに、医療保険に加人している中流階級ですら、医療費に足元を脅かされている。
 「早く死んだ方が、家族に迷惑をかけずにすむ」。シカゴ市内に住むドナ・スミスさん(53)は10年ほど前、子宮がんの治療を受けていた時、こう考えたという。
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 夫のラリーさん(64)は病弱で、40代から心臓病に悩まされ、定職に就けずにたびたび手術を受けていた。一般向け医療保険は、私企業により営利目的で運営されているため、病気をするほど保険料が高額になり、カバーされない治療も増える。ドナさん自身も病気で職を失い、今まで入っていた企業加入の医療保険すら失ってしまった。
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 スミス夫妻は友人に借金を重ね、電気代の支払いも滞るようになり、ついには破産宣告を余儀なくされた。持ち家を手放し、引っ越した先は、娘の家の地下倉庫だった。
 「普通の中流家庭を築き、6人の子を育て、保険にも入って一生懸命に人生を送ってきた。それなのに、病気をしただけで破産するなんて、何かが間違っている」
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 「コミュニティー・ヘルス」から車で20分ほど、シカゴ名物の摩天楼の一角に、ゲーリー・アルキストさん(55)のオフィスがある。保険会社や製薬会社向けに、企業戦略を提案するのが仕事だ。
 「無保険者が存在するのは問題だが、政府による強制的な皆保険が正しいとは思えない。膨大な費用がかかり、増税につながる」。市街地を見下ろす高層ビルの一室で、アルキストさんは断言した。
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 「もし、英国のように医療制度を国営化したら、それは米国人にとって悪夢だ。選択と競争のない制度は、自由と自己責任の考えに慣れた私たちにとって耐えられないものに違いない」
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 ためらう世論
 大統領選で、医療問題は「経済」「イラク」に次ぐ重要な争点になっている。指名候補の座を手にした民主オバマ、共和マケイン両氏による改革案は次のようなものだ。
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 オバマ氏は国民皆保険を目指し、大企業に勉めていない国民を対象にした公的保険プランの新設を計画。全国民に加入は義務づけないが、児童については保険に強制加入させることを売り物にする。一方でマケイン氏は国民皆保険に反対し、税控除により個人の民間保険への加入を促進するという現状維持に近い小幅の改革を目指す。
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 つまるところ、2人の政策の違いは、政府の関与を重視するか、市場原理に任せるかという選択に行き着く。
 ラスムセン社の4月の世論調査によると、政府の運営による医療保険制度を支持する人は29%だった一方で、反対は39%にも上った。誰もが現状に不満を感じている一方で、公的医療保険に反発する人も少なくないのが米国の現実だ。
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 国民の生命と健康にかかわる医療制度を、効率優先の市場原理にゆだねるべきか、それとも税金で公的に支えるべきか。この問いに、米国民はまだ結論を出せずにいる。
 米国の医療保険制度の欠陥を追及したマイケル・ムーア監督のドキュメント映画「シッコ」(2007年)にも出演したスミスさんは言う。「今の制度を変えなければいけないことは誰でもわかっているはずだが、どちらの候補の案も不十分だ。私には遅すぎるが、子どもや孫の世代には間に合って欲しい」(真鍋弘樹)
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 キーワード 
 米国の医療保険制度
 米国には、日本の健康のような国民皆保険制度がない。高齢者向けの「メディケア」、貧困層向けの「メディケイド」という公的保険の対象者以外は、個人で民間の保険会社などによる医療保険に加入する必要がある。従業員に保険を提供していない企業も多く、高額な保険料を嫌って保険に入らない人は増加している。保険に加入しても、タイプや掛け金によって医療機関や治療が制限され、支払い上限額が決められるため、高額の自己負担が発生することも少なくない。国全体の総医療費は国内総生産(GDP)の15%を占め、他の主要先進国より高い水準にある。
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 オバマ氏
 「あなたが医療保険に加入していなくても、私の改革案が法制化されれば、それを手にするだろう」
 (2007年5月29日、アイオワ州での演説)
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 マケイン氏
 「医療保険の国営化が解決策だと考える人もいるが、それは増税や新たな規制を招くだけだ」
 (2007年4月29日、バージニア州での演説)
 (以上、朝日新聞より引用)

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 米国の医療者からは、
 もうやってられない!と悲鳴が聞こえてきます。
 健康保険制度は、病気になった人を助けるという、
 相互扶助の精神で運営されている筈です。
 人の不幸である病気で、
 一部の営利企業だけが儲けるのは許せません。
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 日本の厚生行政もダメです。
 このままでは、医師を志す若者が減り、
 優秀な人材が集まらなくなる恐れがあります。
 医療の原点は、
 困っている人を助けて、
 世の中をよくするお手伝いをする、
 ことだと思っています。
 美容外科といえど、
 社会の役に立たなくなったらおしまいです。

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