昔の記憶
マイクロサージャリー
私たち形成外科医は、
細かい作業をします。
切断された指をつなぐには、
髪の毛よりも細い糸で、
血管や神経を縫います。
この手術を…
マイクロサージャリーと呼びます。
山形大学整形外科の荻野利彦先生のように、
手の外科を専門とする整形外科の先生も、
マイクロサージャリーがお得意です。
■ ■
マイクロサージャリーには、
手術用顕微鏡(しゅじゅつようけんびきょう)が必要です。
学校の理科室にあるような顕微鏡ではなく、
私の背丈よりも高いような、
大きな設備です。
この顕微鏡…
お高いのです。
世界的に高性能の顕微鏡は、
ドイツ製と言われています。
カールツァイスや
ライカという会社が有名です。
■ ■
顕微鏡を使って手術をするのは、
形成外科や整形外科の他に
眼科
脳神経外科
耳鼻咽喉科
があります。
最初に使ったのは耳鼻科の先生だそうです。
最近では、
歯科や
産婦人科でも
手術用顕微鏡を使って
手術をするところがあります。
■ ■
形成外科医が
マイクロサージャリーを使うのは、
組織移植という分野です。
事故やガンなどで、
組織が大きく欠損した時に
身体の他部位から、
組織を移植します。
血流がないと組織は死んでしまいます。
そのために、
血管を吻合(ふんごう)します。
この血管が細いのです。
■ ■
現在、日本の形成外科で、
各大学の教授に就任されている先生は、
このマイクロサージャリーがお得意で、
たくさん英文論文を書いた方が多いです。
ちょうど私が形成外科医として活躍した、
今から20~25年前頃から、
この手術が盛んになってきました。
優秀な形成外科医になるためには、
マイクロが必須科目になりました。
■ ■
私は日本マイクロサージャリー学会の講習会に参加したり、
北大に通ってマイクロの練習をしました。
手術用顕微鏡で拡大すると…
信じられないほど良く見えます。
今では、すいすい手術ができますが…
最初は、
拡大されているために…
どこを見ているのかわからず…
自分の指先を確認するのも大変でした。
高価なマイクロ用の糸を、
からませては…
何本もダメにしてしまいました。
■ ■
30歳台で習得した…
マイクロの技術は、
55歳のおっさんになっても役立っています。
手術用顕微鏡があれば…
若い人以上によく見えます。
長年の経験が役に立ち、
若い人に見えない、
埋没法の糸も見つけられます。
美容外科で、
マイクロが役立つとは考えていませんでしたが、
おじさん先生の強力な武器となり、
腫れが少ない手術に役立っています。