医学講座

棺桶に足を入れる

 棺桶に足を入れるという言葉があります。
 棺桶に足を突っ込むと言うこともあります。
 地方によって言い方はさまざまです。
 はっきりとした語源はわかりません。
 あまり良い意味では使いませんね。
 私が昔、治療させていただいた、
 糖尿病性足病変の患者さんです。
      ■         ■
 先生、俺の片足、
 もう棺桶に入って…
 火葬場で火葬して…
 お墓に入っている…
 だから…
 残っているこっちの足は…
 何とか切らないでほしい…
 正直なところ…
 切断した下肢を火葬するとは…
 それまで、知りませんでした。
      ■         ■
 学校で習ったのに…
 居眠りしていて
 聞き逃したのか…?
 でも、
 医師国家試験にも出ませんでした。
 形成外科で扱うのは、
 せいぜい指や足趾(あしゆび)の切断です。
 切断した部位に、
 皮膚悪性腫瘍などがあるために、
 そのままホルマリン固定をして、
 病理検査室へお願いします。
      ■         ■
 病理検査室では、
 細胞を検査するために、
 切り取られた部位を、
 細かく切り分けて、
 それを標本にして、
 染色(せんしょく)という色をつけて…
 顕微鏡で検査をします。
 残った組織もある程度は保存しておき、
 一定期間が過ぎると…
 医療用廃棄物として処理されます。
      ■         ■
 足趾(あしゆび)程度の大きさでしたら、
 糖尿病による血管病変の程度などを調べるために、
 病理検査をします。
 この病理検査だけで、
 火葬まではしません。
 ところが…
 膝のレベルで切断となると、
 ご家族にお願いして、
 切断された下肢を、
 火葬していただくことになります。
      ■         ■
 幸いなことに…
 私が担当させていただいた、
 お墓に片足が入っている患者さんは、
 もう片方の足を残すことができました。
 糖尿病内科の先生と相談して、
 血糖のコントロールをしっかりしました。
 堀内先生のご講演をお聞きした時には、
 片足が切断されていると、
 残った足にも病変が見られて、
 両下肢の切断となるリスクが増えると
 伺ったように記憶しています。
      ■         ■
 糖尿病は怖い病気です。
 目が見えなくなったり…
 人工透析になったり…
 神経障害から勃起不全にもなります。
 食事と運動に気をつけて、
 発症したら…
 しっかりと治療を継続することが大切です。
 足病変の治療を研究している、
 日本フットケア学会という学会もあります。

“棺桶に足を入れる”へのコメントを見る

TEL 011-231-6666ご相談ご予約このページのトップへ