医学講座

棺桶に足を入れる

 棺桶に足を入れるという言葉があります。
 棺桶に足を突っ込むと言うこともあります。
 地方によって言い方はさまざまです。
 はっきりとした語源はわかりません。
 あまり良い意味では使いませんね。
 私が昔、治療させていただいた、
 糖尿病性足病変の患者さんです。
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 先生、俺の片足、
 もう棺桶に入って…
 火葬場で火葬して…
 お墓に入っている…
 だから…
 残っているこっちの足は…
 何とか切らないでほしい…
 正直なところ…
 切断した下肢を火葬するとは…
 それまで、知りませんでした。
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 学校で習ったのに…
 居眠りしていて
 聞き逃したのか…?
 でも、
 医師国家試験にも出ませんでした。
 形成外科で扱うのは、
 せいぜい指や足趾(あしゆび)の切断です。
 切断した部位に、
 皮膚悪性腫瘍などがあるために、
 そのままホルマリン固定をして、
 病理検査室へお願いします。
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 病理検査室では、
 細胞を検査するために、
 切り取られた部位を、
 細かく切り分けて、
 それを標本にして、
 染色(せんしょく)という色をつけて…
 顕微鏡で検査をします。
 残った組織もある程度は保存しておき、
 一定期間が過ぎると…
 医療用廃棄物として処理されます。
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 足趾(あしゆび)程度の大きさでしたら、
 糖尿病による血管病変の程度などを調べるために、
 病理検査をします。
 この病理検査だけで、
 火葬まではしません。
 ところが…
 膝のレベルで切断となると、
 ご家族にお願いして、
 切断された下肢を、
 火葬していただくことになります。
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 幸いなことに…
 私が担当させていただいた、
 お墓に片足が入っている患者さんは、
 もう片方の足を残すことができました。
 糖尿病内科の先生と相談して、
 血糖のコントロールをしっかりしました。
 堀内先生のご講演をお聞きした時には、
 片足が切断されていると、
 残った足にも病変が見られて、
 両下肢の切断となるリスクが増えると
 伺ったように記憶しています。
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 糖尿病は怖い病気です。
 目が見えなくなったり…
 人工透析になったり…
 神経障害から勃起不全にもなります。
 食事と運動に気をつけて、
 発症したら…
 しっかりと治療を継続することが大切です。
 足病変の治療を研究している、
 日本フットケア学会という学会もあります。

“棺桶に足を入れる”へのコメント

  1. 函館の看護師 より:

    私がまだ看護助手だったころ下肢の切断で、火葬をすることを知りました。
    手術が終わって納骨箱に入った下肢を涙を流してドクターから受け取ったご家族の姿は今でもはっきり覚えてます。
    まだ19歳の私は、こんなに辛いことがあるんだと思い、それからは高齢者や入院患者さんのフットケアやスキントラブルに気をつけることを心がけてきました。
    こんなに苦しいことはありません。
    自分の足が火葬場にいくのですから・・・

    どうかご家族のみなさん、高齢者や糖尿病の患者さんの足をどんどん観察するようにしてあげてください。
    これからの時期、湯たんぽを使う時期です。
    熱傷を起こしやすくなる時期でもあります。

    早期発見が一番大切だと思います。

  2. さくらんぼ より:

    棺桶に足を入れるとは私の地方では 冗談で言う事もありますが、普通は 死期が近くてお迎えが来り、死にそうになった時に使う人もいるようです。でも 切断した足を火葬するとは知りませんでした。
    足の親指を抜いた時皮膚科の先生に抜いた爪「要りますか」と聞かれたので、処分してくださいと 伝えたように記憶しています。 脊髄腫瘍は 入れ物に入れた状態で 家族に見せられたそうで 病理検査のあとは捨てられたのでしょうか? 母が 昔 ある病院で付き添いしていて 院内で迷い いろんな 奇形の赤ちゃんのホルマリン漬けの部屋に入ってしまい びっくりして逃げてきたと言ってましたが 病院内にそんな標本のような部屋は今もあるのでしょうか?
    私の家系も糖尿病なので 私も気をつけたいと思います。

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