医学講座
医療行政に翻弄される病院2016
お正月から病院のことを書きました。
日本の保険医療システムは世界でもトップクラスの、
♡いい医療♡と言われています。
お金持ちも、
生活保護の方も、
同じ水準の医療を受けられます。
貧富の差が出るのは、
差額ベッドの病室くらいです。
■ ■
形成外科と保険診療、
2011年6月15日の院長日記です。
マイケル・ムーア監督の、
Sicko(シッコ)という映画があります。
DVDにもなっています。
こちらのブログで紹介された記事です。
ある中年の大工さんが不運にも仕事中に二本の指を切断してしまった。健康保険のない彼は、医師から素晴らしい選択をせまられた。
「中指をつなげるなら6万ドル、薬指なら1.2万ドル」
この大工さんはロマンチストだったので、薬指を選択。お別れした中指の方は、新居にお引越し。サヨナラ・・・、、、失われた中指の移転先はどこかって?そこは、ゴミ集積所だった。
これは、米国のマイケル・ムーア監督の新作映画『シッコ』の笑える一場面である。
■ ■
今の日本では、
健康保険で指をつなぐ手術が受けられます。
もちろん生活保護の方も受けられます。
おそらく、刑務所内作業で、
囚人が指を切断したとしても手術が受けられます。
私は、受刑者の手術をしたことがあります。
私は受刑者でも指をつなぐ手術が受けられる、
日本の医療システムはいいと思います。
■ ■
日本の医療財政が破綻しつつあるのは、
指つなぎの手術のためではありません。
高齢化のためです。
膨大になった医療費を、
何とか削減しようと躍起です。
その政策のために、
さくらんぼさんが指摘されたように、
入院と同時にくらい退院の話です。
儲からない老人や患者は長くいるなということです。
これが今の病院の実態です。
■ ■
私と同年代の病院長は、
いかに紹介率を上げるか?
平均在院日数を減らすか?
そんなことで翻弄されています。
患者さんのためのいい医療というより、
何とか病院の赤字を増やさないように…
これが一番の悩みの種です。
■ ■
私たち臨床医の間では、
今の臨床研修システムができた時から、
大学の医局に入る先生が減ることを予測していました。
マッチングというお見合いみたいなシステムです。
これで医学生が大学に残らなくなりました。
困った国は、
専門医システムを変えて、
大学以外では専門医を取得しにくい政策を考えています。
姑息的な方法だと私は思っています。
これからも病院長や主任部長の苦悩は続くと私は思います。
医学講座
主任部長の苦悩
昨日の院長日記に、
JA帯広厚生病院時代に、
毎年売上目標があったと書きました。
JAの病院だけではなく、
国公立や民間の病院にも、
売上目標ばあると思います。
■ ■
どの病院でも、
毎年予算を組みます。
金融機関から借入をして、
大きな建物を建てて、
立派な設備を整えるには、
お金が必要です。
お金を借りる時には、
必ず事業計画書を提出します。
■ ■
チェーン店の美容外科とJAの病院が違うのは、
たとえ売上目標が達成できなくても、
お給料が減らないのが、
JAの病院や国公立病院です。
高いお給料をもらっている先生が、
さっぱり働かなくて売上が大きく減ると、
さすがに病院でも問題になりますが、
基本的には俸給表という給与体系で医師の給与が決まります。
■ ■
チェーン店の美容外科の給料は、
クリニックごとに違うシステムです。
儲けや売上によって、
医師の給料が変わるのはどこでも同じです。
以前は年収数千万円の給与を提示していた、
有名な美容外科もありました。
売上が減ると、
先生や看護師への給料が払えなくなります。
倒産した美容外科もたくさんあります。
■ ■
JA帯広厚生病院の形成外科主任部長、
すごいと思いませんか?
北海道の十勝地方で、
一番大きな病院です。
私は40歳から43歳まで勤務しました。
正直に言うと、
毎年の売上目標達成は大変でした。
■ ■
当時のJA帯広厚生病院形成外科には、
3人の形成外科医が勤務していました。
私を含めて北大形成外科から派遣された形成外科医です。
私は学位記をいただいて、
北大の大浦武彦教授から、
JA帯広厚生病院の固定医として勤務していました。
固定医とか固定というのは、
医者の業界用語です。
自分で退職の意思を表示しない限りは、
JA帯広厚生病院に永久就職するという意味です。
■ ■
私以外の2人の医師は、
北大形成外科医局からの派遣です。
人材派遣会社からの派遣とは違います。
北大形成外科から、
JA帯広厚生病院に行きなさいと言われて、
北大から期限付きで赴任した先生のことです。
■ ■
派遣された医師の人事権は、
北大形成外科の医局にあります。
JA帯広厚生病院の院長が、
この先生にはぜひ長く帯広にいてほしいと思っても、
主任部長が最低3年はいてほしいと思っても、
ある日突然、大学の都合で人事異動になることがあります。
これが形成外科主任部長の一番の苦悩でした。
■ ■
全国どこの病院でも同じだと思います。
自分が持っている知識とか技術を、
下の先生に伝承するのが私たち上級医の仕事です。
自分以外の2人の先生が優秀だと、
病院から提示された売上目標も楽にクリアーできます。
ところが、
3人だった常勤医が大学の人事で、
ある日突然2人になることもあります。
■ ■
医師3人でやっていたことを、
2人でこなすのはかなり大変なことです。
形成外科専門医が3人なのと、
形成外科専門医1人と研修医2人では、
できる手術に大きな違いがあります。
大学から派遣される医師によって、
仕事内容も売上も大きく違ってきます。
■ ■
私がJA帯広厚生病院形成外科主任部長だったのは、
今から20年前です。
今は大学医局を選ぶ医学部卒業生が減りました。
大学も派遣する医師が少なくて困っています。
常勤医3人だった形成外科が、
ある日突然、部長職が一人になることもあります。
売上目標達成どころか、
毎日の患者さんの診療にも支障をきたします。
私の形成外科主任部長時代の一番の苦悩は、
下の先生が一年毎に変わることでした。
40歳を過ぎていろいろ考えて、
私は開業医の道を選びました。
医学講座
2016年の目標
今年は暖冬でおだやかなお正月です。
札幌に住んでいるのに、
寒いのが苦手な私にはありがたいことです。
お正月に2016年の目標を考えました。
毎年初詣に行った時に、
今年は何をお願いしようか?と考えます。
その時に今年の目標も考えます。
■ ■
医療関係者でもあまり知らないと思いますが、
私が勤めたJA帯広厚生病院や、
釧路労災病院にも、
毎年売上目標がありました。
チェーン店の美容外科だけではなく、
JA北海道厚生連や、
昔の労働福祉事業団が経営していた公的な病院にも売上目標がありました。
■ ■
おそらく、
国立大学附属病院や、
地方公共団体が運営する、
全国の自治体病院にも売上目標があると思います。
私が働いていた頃の、
JA帯広厚生病院では、
毎月、部長・科長会議というのがありました。
通称、部科長会議と呼んでいました。
■ ■
会議には、
病院長、副院長、
各診療科の部長、
看護部長、
薬剤部長、
検査科の科長、
病院の偉い人が集められました。
院長が挨拶をして会議がはじまります。
■ ■
この部科長会議で、
毎回、事務方から、
売上目標、
各科ごとの売上、
対前年比の数字、
目標達成率、
診療報酬の返戻(へんれい)など、
病院のお金にかかわることが、
細かく数字で示されました。
■ ■
JA帯広厚生病院は、
JA北海道厚生連が運営する大きな病院です。
私が勤務していた頃は、
JA帯広厚生病院が、
北海道で一番の売上、
北海道で一番の黒字でした。
JA北海道厚生連の事務方が優秀でした。
■ ■
私が働いていた頃の、
労働福祉事業団釧路労災病院も、
全国の労災病院の中で、
全国一の黒字病院でした。
釧路労災病院は、
故新田一雄院長の経営手腕により、
設備も黒字も最高の労災病院でした。
■ ■
さて、医療法人札幌美容形成外科の2016年の目標です。
2016年4月には診療報酬の改定があります。
私が聞くところによると、
残念なことに医療機関にとって厳しい内容です。
がっぽりもうけるつもりはありません。
赤字にならなければいいです。
一番の目標は♡安全な医療♡です。
私は臆病者なので無理な手術はいたしません。
■ ■
自分自身については、
まず健康でいることです。
自分が病気になって、
患者さんに迷惑をかけない。
職員に迷惑をかけない。
家族に迷惑をかけない。
これを目標にします。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
院長の休日
謹賀新年2016
あけましておめでとうざいます。
本間家恒例の新春撮影会です。
昨年のクリスマスイヴに、
実家に行って撮りました。
私の父:本間寛(ほんまゆたか)2016年3月4日で満90歳。
私の母:本間瑞子(ほんまみずこ)2016年4月20日で満88歳。
家内の母:片寄登喜子(かたよせときこ)2016年1月20日で満82歳。
私が今年9月で62歳。
家内が今年4月で60歳です。
■ ■
私の父親は、
昨年12月に入院しました。
3月まで生きられないかも?
…と思いましたが、
適切な治療をしていただき、
生き延びることができました。
生命力の強い人です。
■ ■
うちの奥さんは、
今年4月で還暦です。
私の母親は米寿です。
高齢化社会を象徴するような、
本間家2016です。
願いはひとつ、
病気をしないで元気でいることです。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

医学講座
週刊文春 病院情報ファイル
今日は2015年大晦日です。
最後まで私の院長日記を読んでいただきありがとうございます。
今年、気になっていることです。
週刊文春に病院情報ファイルという連載があります。
恵原真知子さんという方が担当です。
医学的な内容が充実しています。
医師の私が読んでも参考になります。
私の院長日記も取り上げていただきました。
■ ■
その病院情報ファイルが、
2015年6月以降の文春に掲載されていません。
恵原真知子さんは、
とても正確に書かれます。
取材で全国を歩き、
直接ご自分の目で見て、
専門家の意見も入れて書かれます。
うそのない情報です。
■ ■
私のように楽しみにしている読者も多いと思います。
どうしていらっしゃるのか?
かなり心配しています。
最後に掲載された内容と、
掲載中止が関係あるのか?とも想像しています。
2016年には、
また病院情報ファイルが復活してほしいです。
■ ■
私が患者さんに渡したことがあるのが、
この自殺予防ケアです。
2007年9月30日の院長日記に書いてあります。
日本人の自殺者数は1998年に年間3万人を超え、以来9年間もその最悪の状態が続いている。
昨年「自殺対策基本法」が施行。自殺予防総合対策センターも設置され、自殺対策が整備されつつある。
自殺は個人的な問題としてのみとらえられるべきものではなく、社会的に取り組む必要性があると国レベルで認められるようになってきたのだ。
■ ■
しかし、個々人の自殺や遺族に対する理解はいまだ乏しく、誤った情報を鵜呑みにしていることが多いといわれる。例えば、以下の説明のうち正しいものを判定できるだろうか。
・自殺の動機で最も多いのは経済問題である
・自殺の多くは何の前兆もなしに起こる
・自傷行為を繰り返す人ほど死なない
・自殺未遂者はそっとしておいたほうがよい
・遺族の苦しみは時間が解決してくれる
・自殺は個人の哲学、死生観の問題である
・自殺を企てる人の気持ちは変えられず、自殺を防ぐことは不可能である
■ ■
「いずれも『ノー』が正解です。 ちなみに2006年に警察が行った調査によると自殺の動機の一位は健康問題(42%)、二位が経済・生活問題(29%)、三位が家庭問題(10%)となっています」
と横浜市立大学附属病院神経科(精神科)の河西千秋病棟医長(准教授)は説く。
同附属市民医療センター救急救命センターに入院する自殺未遂患者のケアも担当し、厚生労働科学研究費補助金事業による「自殺未遂者ケアガイドライン」作成にも関わる専門家だ。
■ ■
重症急患の2割が自殺未遂
高度の救急救命センターには重症のけがやヤケドなどの患者が搬送されるが、実は全体の10~20%が自殺を図った人だという。
「自殺者の約半数には自殺未遂歴があり、また未遂者を9年以上追跡した研究によると、自殺未遂者ないし自傷患者の3~12%はその後に自殺していることが確認されています。ということは、自殺未遂者を多く診る救急医療施設で自殺予防を考慮したケアを行えば予防につなげうる。そこで横浜市大では、一昨年から精神科医が救命センターに常駐し、命を取り留め意識が戻った段階から専門的なケアを行っています」
■ ■
自殺の引き金となる危険予測因子として、自殺念思や絶望感、自殺未遂歴、家族や親族の自殺、あるいは大切な人との離別・死別、失業や経済破綻、精神疾患、がんなど進行性の重い病気、身体機能の喪失などがある。これらは少なくとも医療関係者の間では知られるようになった。
また、最近ではうつ病患者は自殺の危険が高いとも流布されているが、現実に自殺者の多くがうつ病・躁うつ病であり(約30%)、依存症、統合失調症、人格障害が各十数%ずつを占めていたことも、既遂者の調査研究から明らかにされているという。
■ ■
つまり、ある程度の知識とその人への関心があれば、素人でも自殺の危険を感じる想像力が働くということだ。河西医師らは自殺予防活動普及のため「自殺予防のための手引き」を学校関係者用、プライマリ・ヘルスケア従事者用など利用者別に作成した。詳しくは同大学精神医学教室(℡045-787-2667)へ。
救急救命センターにおける精神科医の関与は、自殺未遂者本人はもちろん、彼らを抱える家族、担当する医療スタッフにも不可欠だが、多くの病院では経済的理由などから夢のまた夢なのが現状だ。河西医師らの活動がよきモデルとなり普及することが期待される。
院長の休日
惜別2015
今年の診療は今日で終了です。
私の院長日記を読んでいただきありがとうございました。
年末になると新聞に、
惜別せきべつが載ります。
惜しい(おしい)
別れのこと、
ネットで調べると、
別れを惜しむことと書いてあります。
新聞で惜別は亡くなった方のことです。
■ ■
私にも、
残念なお別れがありました。
荻野利彦先生とのお別れが、
一番衝撃的でした。
私の五十肩を治していただきました。
さくらんぼさんと知り合ったのも、
荻野先生がきっかけでした。
偉大な先生でした。
■ ■
荻野利彦先生は2015年5月22日にお亡くなりなりました。
診療中に突然具合が悪くなられたと聞いています。
私など、
まだ信じられない思いです。
68歳は若すぎます。
私もあと7年で68歳になります。
私はあと何年生きられるかわかりませんが、
もう少し元気でいたいと思っています。
■ ■
今年は私の高校の同級生も亡くなりました。
クラスで一番頭がよかった男です。
東大に行きました。
がり勉タイプではなく、
いつ勉強しているのだろう…?
…と思うような人でしたが、
いつも成績優秀者でした。
東大合格も当然といった感じでした。
■ ■
それにくらべると、
私なんかはまじめに勉強をしていましたが、
なかなか成績は向上せず、
何度もダメかと思いました。
ファッションの流行にはうとかったのに、
インフルエンザや風邪は、
いつも流行の最先端でした。
よく保健室のお世話になりました。
■ ■
昔お世話になった、
北大形成外科の秘書さんもお亡くなりなりました。
52歳という若さでした。
家内の父が亡くなった時にも、
北大形成外科の医局から、
お花や弔電を手配してくださった、
優秀な秘書さんでした。
まだ子供さんも小さく、
無念だったことと思います。
家内とお通夜に行きました。
■ ■
他にも私より若い方が亡くなりました。
お通夜に行った帰りの車で、
家内と話しながら、
私はピロリ菌検査に行きました。
新谷直昭先生のおかげで、
ピロリ菌がいなくなりました。
いろいろなことがあった2015年でした。
61歳なのに元気で働けることに感謝して、
来年もがんばりたいと思います。

医学講座
レディエッセによる失明2015
今年も残すところあと3日です。
年末まで院長日記を読んでいただきありがとうございます。
私の一番記憶に残る今年の院長日記は、
レディエッセによる失明事故です。
数年前に美容外科チェーン店で起きた事故です。
業界では有名にな事故でした。
レディエッセで事故を起こしたチェーン店は、
メニューからレディエッセを外しました。
何の謝罪広告もありません。
■ ■
今年明らかになったのは、
克誠堂出版の形成外科
2015年9月号VOL.58に掲載された衝撃的な論文でした。
特集 美容医療の合併症から学ぶ1-フィラー編-
企画にあたって…細川亙
特集目次
・フィラー注入療法により失明に至った1例…井内友美ほか(近畿大学形成外科)
・ハイドロキシアパタイトジェルフィラー注入後の動脈塞栓により視力低下・皮膚壊死を来たした1例…山下健ほか(札幌医大形成外科)
・ハイドロキシアパタイト注入剤による血管塞栓が疑われた1例…島倉康人ほか(北里大学形成外科)
■ ■
大阪大学の細川亙(ほそかわこう)先生は日本形成外科学会理事長です。
日本形成外科学会理事長として、
細川先生の強いお気持ちが伝わります。
細川先生のお言葉です。
美容医療の合併症から学ぶ②
―骨切り他編―
企画にあたって
学術雑誌に論文を投稿する目的の1つは、個人的に経験した極めてまれな事象を読者に知ってもらい、多くの人が共有する知識と経験にする、ということです。
いわゆるまれな病気の1例報告などはこれに当たり、学術雑誌の重要な使命です。
永い間形成外科の診療をしておりますと、美容医療などで生じたまれな合併症を目撃する経験が幾度かあります。患者さん個人にはお気の毒なことですが、そのような貴重な事例は発表されて衆知され、その後の予防などに活用されなくてはなりません。しかし、美容医療での合併症を目撃しても、前医での治療前や治療中の情報が不十分であることが多く、論文として雑誌に症例報告することを断念せざるを得ない場合がほとんどなのではないかと推測します。今回の特集では、通常の論文で要求するような術前・術中に関する詳細な記載は必ずしも求めず、論文作成のハードルを極力低くすることで、貴重でありながら日の目を見ずそのまま闇に葬られてしまいそうな事例を拾い上げて光を当てようとしました。
このような企画に対して、さまざまな美容医療合併症例の投稿がありました。
前号にはそのうちフィラーの注入(脂肪注入を合む)に関する合併症のみを掲載致しましたが、本号ではフィラー注入を除く各種の合併症をまとめました。顔面骨切りをはじめとする各種の美容医療の施術により、思いもよらないような合併症を生じている現実を知っていただき、重篤な合併症の回避に留意していただくための警鐘になればと思います。
大阪大学形成外科 細川 亙
■ ■
私は美容医療に従事する医師の一人として、
日本国民に広くこの事実を伝えたいと思っています。
若い女性が、
鼻を高くする注射で失明は、
あまりに悲惨な事故です。
事故を起こした医師が何の責任も問われず、
堂々と診療を続けていることに違和感を覚えます。
細川理事長が書かれているように、
美容外科で思いもよらないような合併症を生じている現実を知っていただき、
重篤な合併症の回避に留意していただくための警鐘になればと思います。
私自身も気持ちを引き締め、
事故のない安全な医療に努めます。

医学講座
無保険に注意2015
今朝の札幌は寒いです。
路面はつるつるです。
ちょっと油断すると転びそうです。
昨日、JR北海道でトンネル火災がありました。
札幌⇔旭川の列車運行に支障が出ています。
年末の忙しい時なのに大変です。
早く復旧してほしいです。
■ ■
今日は年末年始の医療についてです。
医療機関もお正月は休みです。
札幌市は当番制で急患に対応しています。
残念ですが、
形成外科の当番医はいません。
事故でケガをしたら救急病院です。
■ ■
注意していただきたいのが、
12月で退職された方です。
12月28日付けで会社を退職されると、
ふつうは、
12月29日から無保険になります。
退職日に保険証を返却するのを忘れて、
そのまま持っていても無効です。
■ ■
前の会社の保険証を持って、
医療機関を受診されても、
その保険証が無効になっていることは、
医療機関ではわかりません。
無事に保険診療の3割負担で済んでよかったと思うと、
後からとんでもないことになります。
■ ■
退職後に前の会社の保険証で保険診療を受けると、
後から保険が負担した7割分も、
全額本人に請求されます。
病気で救急病院に搬送されて、
数百万円の医療費がかかったとすると、
その数百万円が全額自己負担です。
退職時に教えてもらえなかったと言っても、
言い訳は聞いてもらえません。
■ ■
退職時にはたくさんの書類をもらいます。
健康保険のことまで、
詳しく教えてくれる会社はまれです。
私も自分が開業医になるまで、
考えてもみませんでした。
12月退職の方は、
退職後の任意継続に加入するか、
市町村の国民健康保険に加入します。
■ ■
来年1月から次の仕事が決まっている人は、
次の会社の保険の有効期間が、
いつからになるのか?
よ~く確認してください。
仕事はじめが、
平成28年1月5日で、
保険の有効期間が1月5日から開始になると、
1月4日までは無保険になります。
お正月に子供さんが熱を出すこともあります。
無保険の期間がないかよく確認してください。
医学講座
メールで紹介状は書けません
当院のメール相談で、
お金を払うので、
メールで紹介状を書いてくださいという依頼があります。
残念ですがお引き受けできません。
それは医師法で禁止されている、
無診察診療の禁止に抵触する可能性があるからです。
ネットで、
無診察診療
医師法
非対面診療などを検索すると出てきます。
■ ■
医師法第20条(無診察治療等の禁止)
医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方箋を交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証明書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。
但し、診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。
…という規定があります。
■ ■
つまり、
患者さんを一度も直接みないで、
メールで診断書だけを書いたり、
処方箋を書いたり、
そんなことは法律で禁止しますという規定です。
私たちは医学部で教わりますし、
医師国家試験にも出ます。
あたり前のことだと思います。
■ ■
これを放置すると、
ネットで、
診療情報提供書を書きます
…という商魂たくましい業者さんが出現します。
さくらんぼさんに紹介状を出せたのは、
電話再診という仕組みです。
通院中の患者さんの具合が悪くなった時に、
電話で医師に診察を求めることができます。
■ ■
電話再診料
2007年7月14日の院長日記に書いてあります。
保険の規定には、
電話等再診と書いてあります。
電話とテレビ電話はOKです。
残念なことですが、
聴覚障害者以外は、
ファクシミリや電子メールは不可となっています。
しかも再診だけの規定です。
■ ■
診療所に通院中の患者さんが、
旅先で具合が悪くなった時などに、
先生に電話をして症状を話し、
大きな病院を紹介してもらうことができます。
先生から、
今までの経過などを診療情報提供書に書いてもらい、
病院の地域医療連携室にFAXで送信します。
そうすると紹介されされた先の先生も、
今までの経過がよくわかります。
私はこの仕組みはいいことだと思っています。
医療問題
大病院と紹介状2015
今朝の札幌は寒いです。
最高気温が-3.5℃の真冬日で、
観測史上最も遅い真冬日記録だそうです。
(過去は2004年の12月22日)
路面は凍結してつるつるです。
転ばないように、
慎重に歩いて来ました。
昨日の院長日記、
いい先生を紹介してくれない?
…の続きです。
■ ■
私は61歳です。
私と同年代の先生が、
大きな病院の院長になっています。
はっきり言って、
大変ですねぇ~
ご苦労様です。
院長になれなかったから、
くやししくて言っているのではありません。
ほんとうに大変なのです。
■ ■
国の医療政策で、
大きな病院の経営が大変になっています。
言い方は悪いですが、
簡単に言うと、
紹介状(診療情報提供書)を持ってこない患者さんには、
来てほしくないのです。
紹介状がない患者さんばかりになると、
病院が大赤字になるからです。
■ ■
ネットで、
特定機能病院とか、
地域医療支援病院
…という言葉と、
紹介率
逆紹介率
…という単語を検索するとヒットします。
紹介状を持ってくる患者さんの比率で、
病院の収入が変わる仕組みです。
■ ■
大病院は、
のどから手が出るほど、
紹介状(診療情報提供書)を持った患者さんがほしいのです。
紹介状を持った患者さんの比率、
紹介率が上がると収入が増えます。
昔は、
大きな病院の職員は、
自分の病院に簡単にかかれました。
たとえば皮膚科から軟膏をもらったり、
眼科で目を診てもらったりしていました。
■ ■
今は大病院の看護師さんでも、
自分の病院にかかれない人がいます。
特に、
特定機能病院とか、
地域医療支援病院の職員です。
自分の病院なのに、
紹介状がないからかかれないのです。
看護師さんたちは、
病院の近くにできた開業医に行っています。
■ ■
ちょっと軟膏を1本もらいたいんだけど…
そんな時には、
超不便です。
国の政策とはいえ、
こんなのはダメだと(私は)思います。
いい先生にみてもらいたいのは万人の思いです。
大きな病院に勤務していた先生が、
開業されたクリニックに行くのがいいです。
大病院で治療が必要な時には紹介してもらえます。
困った医療政策だと私は思っています。