医学講座
実験動物
さくらんぼさんから
縫い方の練習について
ご質問がありました。
私も血管の縫合(ほうごう)は、
ラットというネズミを使いました。
リスより少し大きな、
白いネズミがラットです。
小さなハツカネズミはマウスといいます。
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大きさや、系統によっても違いますが、
実験に使うラットは一匹3,000円程度でした。
専門の業者に注文して、
航空便で大学の動物実験施設に届きます。
各大学によって違いますが、
動物を使って実験や手術練習をするには、
まず学内の講習を受けて…
ちゃんと安楽死させます!
とか屍体処理の方法などを学んで、
許可をいただいてからでないと…
医師免許だけではできません。
また医師免許がなくても実験はできます。
■ ■
北大には立派な動物実験施設があり、
私はラットで動物実験をしていました。
そこでは、専任の飼育員の方が、
動物に餌をやり、
排泄物の始末など、
日常のお世話をしてくださいます。
私たちが施設へ行けるのは、
夜とか休日ですので、
動物のお世話をしていただけるというのは、
ほんとうにありがたいことでした。
■ ■
ラットのケージには、
そのラットの所属科と
担当者の名前が記載されています。
他の研究者と会うことはめったにありませんが、
ラベルを見て、
あぁ、あの先生のラットだ。
とか、
あぁ、あの先生も実験してるんだぁ。
などと思ったものでした。
■ ■
北大医学部の動物実験施設は、
各階ごとに、
動物の種類が決まっていました。
ラットとマウスの階。
ウサギやモルモットの階。
ニワトリの階。
私は使ったことがありませんが、
ブタやヒツジもいたようです。
山形大学整形外科の荻野教授は、
北大にいらした時には、
ニワトリで実験をなさっていらしたと記憶しています。
■ ■
私は市立札幌病院に勤務しながら、
病院長から許可をいただいて、
夜間や休日に北大で実験をしました。
手術の練習だけに、
動物を購入して、
実験施設を使うことは難しかったので、
実験をしながら、
ラットで血管吻合の練習をしました。
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私が血管吻合を教えていただいたのは、
日本マイクロサージャリー学会の講習会でした。
私の先生は、
オーストラリア人の女性でした。
学会へ招待された先生の
実験助手をしているという、
女性の方でした。
医師ではありませんでしたが、
とても上手でした。
この講習会は、
当時、山口大学整形外科助教授でいらした、
土井一輝先生が主催してくださいました。
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手術用顕微鏡にも慣れていなかったので、
最初は糸が絡(から)まったり、
血管が詰まったりで大変でした。
私が上手になるまで、
どの位のラットが犠牲になったことか?
ラットには申し訳ないことをしました。
ラットの血管はとても細くて弱いので、
ラットの血管を縫えるようになると、
ヒトの血管でも大丈夫です。
形成外科や整形外科で、
マイクロサージャリーをする先生は、
だいたいラットで練習をするのが一般的です。
今、顕微鏡を使って目の手術ができるのも、
ラットの犠牲があってのことです。