医療問題
教授の人事権
昨日は昔の大学医局制度
について書きました。
それでは、何故?
大学医局の医局員(医師)は、
教授の指示に従ったのでしょうか?
それは、
教授に人事権があったからです。
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公務員になるには、
公務員試験があり、
それに合格しないと公務員にはなれません。
札幌市の市長になるには、
選挙があります。
選挙で当選しないと、
市長にはなれません。
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私は1989年から1994年まで、
札幌市の職員でした。
市立札幌病院に採用されたからです。
私は公務員試験は受けていません。
いきなり札幌市の係長職として採用されました。
35歳の時でした。
函館中央病院形成外科に勤務していた時に
北大の大浦武彦教授から
一本の電話をいただきました。
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ちょうどお昼時でした。
私は総合医局というところで、
函館中央病院の名物だった、
美味しいカレーライスを食べていました。
大浦教授からの電話は
4月から市立札幌病院皮膚科で
形成外科の診療をすることになった。
あなたが適任だと思う。
行ってくれないか?
という内容でした。
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大浦武彦教授のすごいところは、
決して強制しないところでした。
私が断れば次の候補者へ電話が行きます。
一瞬考えてお引き受けしました。
大浦教授は、
私の前に電話をした先生(私の先輩)は
‘皮膚科でやるのは…’
と断ったともお話しくださいました。
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こうして私は1989年4月1日付けで、
市立札幌病院皮膚科の医師となりました。
担当は‘形成外来’です。
形成外科ではなく、
皮膚科の‘形成外来’
毎週火曜日と金曜日の午後、
13:30~15:00まで
週二回の外来を担当しました。
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今でも臨床研修医などを除くと、
市立札幌病院には医師採用試験はないと思います。
大きな病院の医師は、
教授人事と呼ばれる、
大学医学部の教授と
病院長の電話で決まると言われています。
部長クラスの医師を
全国公募で募集する病院もあるようですが、
日本の大病院では、
この教授人事が主流です。
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大学の医局に在籍する医師は、
いずれはどこかへ就職することとなります。
その時に、よい病院へ就職するには、
教授から信頼を得て、
教授と仲良くしておかなくてはなりません。
ひどい教授になると、
露骨に差別をして、
本人の希望など無視して、
飛ばす教授もいたそうです。
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私は大浦武彦教授のおかげで、
市立札幌病院という立派な病院で、
医師としての青春時代
を過ごすことができました。
北大に通って研究もさせていただき、
博士(医学)の学位も取らせていただきました。
今でも大浦先生には心から感謝しています。
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市立札幌病院のような病院は、
教授に斡旋料は払いません。
大学の医局として、
大きな病院を関連病院として持つことが、
医局の発展にもなるからです。
医者の業界用語でジッツといいます。
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大浦教授は教室の発展をお考えになり、
形成外科のジッツを増やされました。
残念なことですが、
自分の私利私欲のために、
教授の人事権を振りかざした人も
いらしたと聞いたことがあります。
そういう教授の医局では、
権力争いや派閥抗争があったようです。