医学講座
ペースメーカー
平成21年2月23日(月)朝日新聞朝刊
声の欄への投稿です。
車内の携帯にびくびく無用
団体役員 日高進 (東京都町田市78)
「携帯びくびく命がけ優先席」(7日)を読みました。
日本心臓ペースメーカー友の会副会長の私としては、
投稿の方の心理的な不安は理解しつつも
「そこまで不安がる必要はありません」
と一声かけたくなりました。
■ ■
確かに、
総務省は携帯電話とペースメーカー装着部位の距離を
「22㌢程度以上はなすこと」という指針を示しています。
この指針に基づいて、
交通事業各社は
「優先度付近では携帯電話の電源をお切り下さい」
と表示し、
アナウンスしています。
■ ■
総務省の指針は、
もちろん科学的な実験を踏まえたものですが、
「22㌢」には万一の事故に備えての、
厳重な危機管理意識が込められています。
とくに古い機種の方は影響する恐れもあります。
私も機器を装着しており、
ペースメーカーの説明書も
「22㌢以上離れること」とあります。
■ ■
しかし、「最近の機種は携帯電話の影響は受けない」と言えます。
これも科学的なデータに基づいています。
ですから、過剰な心配は無用です。
車内では、どうか、もっとリラックスしてください。
ただし、このことは心臓のペースメーカーに限ったことで、
優先席でのマナーが大切なことは言うまでもありません。
(以上、朝日新聞より引用)
■ ■
心臓ペースメーカーを装着した方にとって、
携帯電話は不安だと思います。
私たち外科医にとっても、
心臓ペースメーカ装着者の方の手術は、
電気メスという医療機器の使用で問題があります。
心臓ペースメーカの埋込み手術や、
ペースメーカ埋込み後のトラブルで、
何度か循環器の先生から手術を依頼されました。
■ ■
電気メスは、
携帯電話以上にペースメーカーに影響を与えます。
電気を使って血を止める(止血)のが
電気メスです。
体内に電流が流れます。
最初に手術を依頼された時は、
緊張して手術をしました。
ペースメーカーのすぐ上の皮膚の処置です。
電気がまともにペースメーカーへ届きます。
■ ■
最初はメーカーの技術者と一緒に
機器をつけて
異常がないか確認しながら手術をしました。
10年くらい前のペースメーカーでも、
異常を生じたことはありませんでした。
電気メスも影響を与えにくい、
バイポーラーというモードを使用しました。
■ ■
私は循環器の専門医ではありませんが、
投稿者の
日本心臓ペースメーカー友の会副会長様と同じように、
ペースメーカーを装着していても、
びくびくしなくても大丈夫だと思います。
現実には、
ペースメーカーを装着して、
携帯電話を使用していらっしゃる方は、
かなり多いと思います。
ご不安な場合は、
担当の先生とよくご相談になると、
安心していられると思います。