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過労自殺、電通社長辞任へ

 平成28年12月29日、朝日新聞朝刊の記事と社説です。
 過労自殺、電通社長辞任へ 労基法違反容疑、法人を書類送検
 厚生労働省東京労働局は12月28日、法人としての電通と、過労自殺した新入社員の高橋まつりさん(当時24)の上司だった東京本社の幹部を、社員に違法な長時間労働をさせた労働基準法違反の疑いで東京地検に書類送検した。電通の石井直(ただし)社長は書類送検を受けて同日夜に記者会見し、来年1月に引責辞任すると表明した。
 電通は国内最大手の広告会社で、売上高約5兆円。140を超える国・地域で事業を展開する世界有数の広告会社の違法残業が経営トップの辞任に発展したことで、日本企業にはびこる長時間労働の是正に向けた社会的関心が一段と高まりそうだ。
 石井氏は会見で、「社員が過重労働で亡くなったのは決してあってはならないこと。まったく慚愧(ざんき)に堪えず、経営を預かる身として深く責任を感じている」と陳謝。当局から指摘を受けたにもかかわらず、過重労働の是正が進まなかったとして、「全責任をとって、来年1月の取締役会で(社長職を)辞任する」と述べた。取締役には3月の株主総会までとどまる。
 昨年末に過労自殺し、書類送検のきっかけとなった高橋さんについては、「ご冥福をお祈りするとともに、ご遺族、社会に心よりおわびする」と述べた。
 東京労働局などによると、書類送検された幹部社員は、インターネット広告を扱う部署で、高橋さんの直属の上司だった。職場の労務を管理する立場にあったという。昨年10~12月に職場の部下だった高橋さんと、別の男性社員に、労使が結んだ時間外労働の上限を超える残業をさせた疑いがある。
 同局が違法だと認定した2人の労働時間は、月あたりの上限(50時間)を超える分が3時間54分~7時間44分。1日あたりの上限(5時間半)を超える日が8~13日あった。
 捜査を主導する、東京労働局の過重労働撲滅特別対策班(かとく)の樋口雄一・監督課長も同日、記者会見を開き、「事件の注目度、重大性にかんがみ、送検できるものからただちに送検した」と説明した。高橋さんの命日の12月25日に近い時期に書類送検となったことについては、「(命日を)意識しないわけではない」と述べた。
 今後の捜査は、全社的に常態化していた疑いがある長時間労働の全容と、役員や幹部社員が違法な労働環境をどこまで認識していたかを解明することが焦点となる。同局は、現時点で労務管理を担当していた役員を含む10人前後の幹部社員の書類送検を視野に入れており、必要に応じて今後も聴取を続ける方針だ。
 (千葉卓朗、和気真也)
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記者会見で険しい表情を見せる電通の石井直社長=28日午後7時40分、東京都中央区


社説
 電通違法残業 他社の話ではすまぬ
 広告大手の電通とその幹部が、社員に違法な長時間労働をさせたとして、労働基準法違反の疑いで書類送検された。
 今から1年前、新入社員の高橋まつりさん(当時24)が長時間の過重労働が原因で自殺し、労災と認定されたのを受けて、厚生労働省東京労働局などが捜査してきた。高橋さんを含む社員2人に対し、労使で決めた時間外労働の上限を超えて働かせていた疑いである。
 電通は、過去にも過労自殺した男性社員を巡って会社側の責任を認める最高裁判所の判決が示されたり、違法な長時間労働で労働基準監督署から是正勧告を受けたりしている。今回の捜査でも、複数の部署で違法な時間外労働や、勤務時間を実際より過少に報告させていた例が見つかっているという。
 長時間の残業を当然とする空気が電通の社内全体にあったということだろう。全容の解明を目指して捜査は続く。石井直社長は辞任を表明したが、実効性のある再発防止策を実施することが企業としての責務である。
 もっとも、これは電通だけの問題ではない。
 今年初めて公表された過労死白書によると、労災認定の目安とされる月80時間を超える残業をした社員のいる会社は約2割にのぼる。すべての会社、すべての職場が自らを省みて、社員に無理をしいていないか点検し、問題があれば改めていかなければならない。
 朝日新聞社も今月、社員に違法な長時間労働をさせたとして労基署から是正勧告を受けた。電通事件をはじめ違法残業問題を報じる立場として、自らが問われることを肝に銘じたい。
 政府が力を入れる「働き方改革」でも、長時間労働の是正は喫緊の課題だ。厚労省は、違法残業のあった企業名の公表対象を広げることをはじめ、緊急対策を示した。
 ただ、従業員を大切にすることは、政府に迫られてではなく、企業が自主的に取り組むべき課題だ。働く時間を抑えるには、仕事の中身やそのやり方を見直すことが欠かせない。
 難しい課題だが、従業員の意欲と生産性を高め、企業の収益改善にもつなげうるテーマである。集中して働き、給与もしっかりもらう理想の姿を目指し、まずは経営者が方針を明示して職場で知恵と工夫を重ねたい。
 「日本の働く人全ての人の意識が変わって欲しい」
 高橋まつりさんの母、幸美さんが、まつりさんの命日に公表した手記の言葉である。社会全体で受け止めねばならない。
(以上、朝日新聞より引用)

      ■         ■
 高橋まつりさんのご冥福をお祈りします。
 社長が辞めても、
 亡くなったお嬢様は帰ってきません
 社長一人の問題ではないと思います。
 朝日新聞朝刊の社会面には、
 残業が減った分だけ、
 家に持ち帰ってする仕事が増えた
 …と書いてありました。
      ■         ■
 労働時間だけの問題ではないと思います。
 私たち医師も厳しい労働条件です
 若い頃は、休みの日も、
 回診に行っていました。
 がんばれたのは、
 いい先輩がいて
 助けてくれたからです
 二度とこのようなことを繰り返さないために、
 社会全体で、
 困っている人を助けてあげるシステムが必要だと思います。

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