昔の記憶
衆議院議員選挙投票日2017
今日は衆議院議員選挙の投票日です。
私は仕事が終わってから投票に行きます。
2012年の選挙は12月、
衆議院議員選挙投票日2012
2014年の選挙も12月でした。
師走選挙、嘆きの道内歓楽街
今年の選挙はまだ雪が降っていないので、
12月よりは暖かいです。
■ ■
日本はどうなるのだろう?と、
安倍首相と同い年の私は心配しています。
本間家では、
安倍首相が嫌いな朝日新聞を購読しています。
安倍首相が好きなのは読売新聞のようです。
ネットで2紙の社説をくらべてみました。
ちょっと興味深いです。
■ ■
平成29年12月22日、朝日新聞朝刊の社説です。
【朝日新聞社説】
衆院選 きょう投票 棄権なんてしてられない
さて、誰に、どんな思いを託そうか。思案の雨の朝である。
訳のわからぬ理屈で首相が衆院を解散したと思ったら、あれよあれよという間に野党第1党も自ら散り散りになった。打算と駆け引きの果て、置き去りにされたのは、理念と丁寧な説明、そして国民である。
一連の騒ぎにはほとほと愛想が尽きた。投票に行く気になれない。そんな声もしきりだ。
だが今回の一票は、時代を画する重みを持つ。
■ヒラリー氏の嘆き
3年前の衆院選の投票率は52.66%と戦後最低を記録した。
多くの人が投票し、さまざまな意思が反映された代表者を通じて、国を運営してゆく。それが近代民主主義の姿だ。ところが大勢の人がそこに集うほど、一人ひとりの声は相対的に小さくなり、政治に参加している実感や責任感は薄まる。
制度が抱えるジレンマ、と言っていい。しかし「しょせん選挙なんて」というニヒリズムが広がれば、堅固に見えた社会の土台も崩れる。
昨年の米大統領選。世界中がまさかと思っていたトランプ氏が当選し、ヒラリー・クリントン氏は一敗地にまみれた。
投票率は50%台だった。過去に比べ特に低かったわけではないが、選挙が終わった後に、多くの市民から「実は投票に行かなかった」と謝られたと、ヒラリー氏が近著で明かしている。「市民としての責任を最悪の時に放棄したのね」という言葉が口をつきそうになったという。
街の灯が一つ消えても、目に映る風景はほとんど変わらない。やがて「なんだか暗いね」と皆が気づいた時には、もう元に戻れない地点に来ているのかもしれない。
棄権という選択は、将来を白紙委任することに他ならない。
■お客様か主権者か
いつの世も、候補者は耳に聞こえの良いことしか語ろうとしない。ならば有権者の側が、その甘い言葉の先を考えたい。
朝日新聞の社説は、選挙の最大の争点は安倍1強政治の評価だと主張してきた。ためしに、首相の政権運営が評価されて、あと4年、2021年までこの政治が続く姿を想像してみよう。
このころから、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になっていく。社会保障の経費をまかない、あわせて財政の健全化を進めるという困難な課題に、「アベノミクスの加速」は有効な答えを出せているだろうか。
政権は原発を基幹電源と位置づけ、再稼働を進める。たまり続ける「核のごみ」を処理し、未来に負担をかけない道筋が、4年後には描けているか。
そして憲法。例によって街頭演説などでほとんど触れない首相だが、今回、自民党は「自衛隊の明記」をはじめ、具体的な改憲項目を公約に盛りこんだ。選挙が終われば、国民との約束を果たすとして改憲への動きを加速させるだろう。有権者にその覚悟と準備はあるか。
自分が思い描く望ましい未来像と照らし合わせてほしい。
留意したいのは、消費者の気分で政治を見るわけにはいかないということだ。
政党は、自動販売機に並ぶお茶やジュースではない。「お客様」なら好みのものがなければ買わなければいい。だが「主権者」はそれでは済まない。選挙の先にたち現れる政治は、日々の生活を規定し、支配する。無関係や没交渉はあり得ない。
ならば、品ぞろえに不満があっても、その中からましな一つを選ぶ。その選んだ先と対話を重ね、次はこういう政策が欲しいと働きかけ、国を動かす。そうやってはじめて、「主権者」たり得るのではないか。
自販機と違って、すぐには渇きを癒やせないかもしれない。期待していたとおりの味でないこともあるはずだ。それでも選ぶことをしなければ、民主主義は始まらない。
■物差しを決める
こう言うと、選ぶことの重さにたじろぐ人がいるだろう。「そんな必要はない。肩の力を抜いて」と、著書「世論」などで知られる米国の評論家リップマンなら助言するに違いない。
仕事や家事で忙しいのに、複雑な政治課題への見聞を深め、合理的な判断を下すなんて教科書だけの世界だ。有権者にできるのは、政治家が世の中のルールと己の欲望のどちらに従っているかを判断することだ――。そんな趣旨の文章を、90年以上前に書き残している。
彼に励まされて、もう一度、候補者の考えを比べてみよう。
自分が最も大切だと考える政策や、政治家に求める姿勢を一つ決め、その物差しで投票先を決めてもいい。それでも考えあぐねるなら、今晩どの党首が笑顔でいると「いいね」と感じるか。それも選び方だ。小選挙区と比例区で投票先を使い分けても、一向に構わない。
関心が高いから投票へ行く。投票へ行くから関心が高まる。どちらも真理だ。さあ一歩を。
(以上、朝日新聞より引用)
■ ■
平成29年12月22日、読売新聞朝刊の社説です。
【読売新聞社説】
きょう投票 日本の針路を正しく定めたい
◆政策の質と説得力を見極めよう◆
第48回衆院選は、きょう投票日を迎えた。
様々な課題に直面する日本の新たな針路を選択する機会である。政党や候補の主張を冷静に見極め、貴重な1票を投じたい。
今回の特徴は、野党第1党の民進党が公示前に分裂し、候補が希望の党、立憲民主党、無所属に分かれたことである。
与党の自民、公明両党に対し、希望の党、日本維新の会の保守・中道系野党と、共産、立憲民主、社民の左派・リベラル系野党が挑戦する3極の構図となった。
◆アベノミクスの功罪は
「寄り合い所帯」が分裂し、基本理念や政策を軸に再編成されたことで、各党の違いが有権者に分かりやすくなったのは確かだ。
北朝鮮情勢が緊迫し、安倍首相が「国難」と位置づけた中での選挙となったのも異例だった。
衆院選は本来、政権選択選挙である。だが、政権獲得を目指したはずの希望の党は、過半数ぎりぎりの候補しか擁立できなかった。安倍政権を信任するのか。どの党に伸びてほしいのか。有権者は選択する必要がある。
与党は、目標とする過半数の233議席からどこまで上積みできるか。希望の党と立憲民主党の野党第1党争いも注目される。
アベノミクスの功罪、急速に進む少子高齢化への対応、厳しさを増す安全保障環境に対する備えなどが投票の判断材料となろう。
アベノミクスに関して、安倍首相は演説で、日経平均株価の21年ぶりの高値などを挙げ、「一つ一つ実現してきた」と強調する。
雇用改善や企業業績回復で成果を上げる一方、賃金が伸び悩むなど、停滞感も漂っている。
希望の党の小池代表は「経済成長が進まない」と批判し、徹底した規制改革を求める。立憲民主党の枝野代表も「強い者をより強くし、偏った経済政策を進めた」として賃金の底上げを訴える。ただ、具体案を示せたとは言い難い。
◆安保法の意義が高まる
2019年10月の消費税率10%への引き上げを巡っては、与党と野党の主張が衝突した。
与党は、消費増税を実施し、赤字国債縮減に充てる増収分の使途の一部を教育無償化などに変更すると公約に掲げた。新たな財政再建目標は示していない。
希望、立憲民主両党と日本維新の会は「凍結」を求めた。共産、社民両党は引き上げに反対する。しかし、新たな財源確保については、「身を切る改革」などと掛け声ばかりで、実効性に乏しい。
各党とも、将来世代へのつけ回しを抑制する「痛み」の伴う施策を避けたのは残念である。
安全保障を巡っては、希望の党が安保関連法を容認したことで、与党と野党が厳しく対立した従来の構図が変化した。日本維新の会も一定の理解を示す。
自衛隊が、より幅広い支持を得て、関連法に基づく米艦防護などを遂行できる意義は大きい。
共産、立憲民主、社民の各党は関連法廃止を主張している。
北朝鮮の脅威が高まる中で、安保関連法を土台にして日米同盟の信頼性を一層高める必要があることを忘れてはなるまい。
衆院選の結果、自公両党と、憲法改正に前向きな希望、維新の両党の合計の議席数が、発議に必要な3分の2に当たる310を上回る可能性が高まっている。
自民党は自衛隊の明記などを掲げる。公明党は環境権などの「加憲」を主張する。希望の党は「知る権利」など、日本維新の会は教育無償化などを優先する。
各党がどのような憲法改正を目指しているのかも、投票する際の参考にしたい。
◆「資質」の吟味が重要だ
森友・加計学園問題について、首相は遊説で言及しなかった。党首討論会でも、「反省」を口にしつつ、「私が関与したと言った人は一人もいない」と繰り返すにとどめた。首相の説明責任に関する評価が問われよう。
疑問なのは、民進党の参院議員らが、立憲民主党や無所属の候補などによる民進党の「再結集」に言及していることだ。
希望の党には、自党の公約を公然と批判したり、当選後の離党まで口にしたりする候補がいる。
にわか作りの新党であっても、政党としてきちんと結束できるかどうかを見定める必要がある。
自民党にも、失言や不祥事が問題視された前議員がいる。自分の選挙区の候補が、選良にふさわしい資質を有するのか、厳しく吟味するのは有権者の責任だ。
(以上、読売新聞より引用)
■ ■
私は朝日新聞も読売新聞も好きです。
どちらの記者さんにも取材を受けたことがあります。
私の加湿器のやけどを
最初に取材してくださったのは、
読売新聞の記者さんでした。
政権に対する意見は、
どちらも参考になります。
両紙とも自民党が勝つだろうという予測です。
少しでもいい世の中になってほしいです。
医学講座
弁護士から学ぶ医療事故
昨夜(2017年10月20日金曜日)19:00~20:30まで、
札幌市保健所の主催で、
平成29年度医療安全講習会が、
札幌市保健所がある建物、
WEST195階講堂で開催されました。
講演は、
①弁護士から学ぶ医療事故
講師:札幌市弁護士会 田端綾子 弁護士
②札幌市医療安全相談窓口に寄せられる相談事例について
講師:札幌市保健所医療政策課 西澤美幸さん
でした。
■ ■
弁護士の田端綾子先生は、
札幌のラベンダー法律事務所の先生です。
先生は、
札幌医療事故問題研究会、事務局次長、
医療事故情報センター(名古屋)、理事、
市立札幌病院医療安全対策会議のメンバーです。
医療事故に、
患者側弁護士としてご活躍中です。
■ ■
田端先生から、
裁判所における医療事故の年次推移や、
和解率、認容率、
通常訴訟と医療訴訟の違いなど、
興味深い内容を教えていただきました。
医療事故は、
通常訴訟と違った難しさがあります。
弁護士さんの中でも、
医療訴訟に詳しい先生でなければ、
患者側が医療機関を相手に裁判をするのが、
大変なことがわかりました。
■ ■
田端先生の講演で、
日本の裁判所における医療事故の提訴件数が、
年間800件~1000件で推移していること、
和解率が50%程度、
認容率が20%程度と教えていただきました。
和解率や認容率などは、
素人には難しい言葉です。
患者側が訴訟を提起しても、
勝訴するのが難しいことがわかりました。
■ ■
裁判には至らない、
患者さん側の不満が、
とても多いことを教えていただきました。
医療事故被害者には5つの願いがあるそうです。
原状回復
真相究明
反省謝罪
再発防止
損害賠償
もっともなことです。
■ ■
裁判所における医療事故を診療科目ごとにみると、
平成28年度では、
内科
外科
歯科
整形外科
産婦人科
精神科
形成外科
その他の順番です。
■ ■
絶対数が少ない形成外科が、
診療科目ごとランキングに入るのは、
あまり名誉なことではありません。
患者さんから訴えられないように、
毎日の診療を
安全
正確
親切
丁寧
…にする必要があると感じました。
■ ■
札幌医療事故問題研究会の弁護士さんや、
ラベンダー法律事務所では、
患者側からの相談は、
原則無料だそうです。
医療事故の被害者になった方は、
弁護士の田端綾子先生にご相談なさってください。
とても優しくて親切な先生です。
頼りになる弁護士さんです。
医学講座
病気腎の移植、先進医療に
平成29年10月20日、朝日新聞朝刊の記事です。
病気腎の移植、先進医療に
徳洲会の申請認める 厚労省部会
がんの治療で取り出した腎臓を、別の腎臓病患者に移植する「病気腎移植」について、厚生労働省の審査部会は10月19日、条件付きで先進医療として認めることを決めた。実施施設は治療の経過などを厚労省に報告せねばならず、国の仕組みのもとで実施される。安全や倫理面で批判されてきたが、実績をつめば技術自体が公的保険の対象になりうる。
病気腎移植は、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)などで万波誠医師(77)らが実施していたことが2006年にわかり、厚労省が監査に入った。患者の同意書がないケースもあった。関連学会が「安全性に問題あり」などと否定し、厚労省は臨床研究以外の実施を禁じた。
徳洲会(本部・東京)側は「移植する腎臓が不足し、患者のために必要」と、2009年12月から2016年5月の間に17例の臨床研究を実施し、2016年6月に先進医療に申請した。腎臓に直径7センチ以下のがんがあり、がんの部分切除が難しく、全摘出に患者が同意した場合が対象。がんを取った腎臓を腎不全患者に移植する。4年で42例の計画で、移植後5年間の生存率やがんの発生がないかなどを調べる。
10月19日の部会では、説明文書や治療経過のチェック体制の整備が進み、安全性や妥当性に大きな問題はないとされた。摘出が適切かどうかを検討する委員会に、泌尿器科や移植の関係学会の委員を入れることなどを条件とした。また移植した腎臓が機能しない例が4例出れば中止する。
移植手術をしてきた万波氏は、「(腎臓を提供する)ドナーが足りていない。ドナーが1人でも2人でも増えてくれるとうれしい」と話した。
(以上、朝日新聞より引用)
■ ■
ドナーカード
2006年11月7日の院長日記です。
腎移植には、
私の強い思いがあります。
恥ずかしながら、
私自身が臓器提供に抵抗がありました。
■ ■
実は医師になって働きはじめた頃は
自分の組織を提供することには抵抗がありました。
1989年4月から市立札幌病院に勤務し、
毎日救命救急センターへ行って、
外傷や熱傷の患者さんを救急の先生と一緒に治療していました。
私はそこではじめて脳死の患者さんを診察しました。
いままで漠然としか脳死を知りませんでしたが、
救命救急の現場で、
脳死とはどのような状態であるかを知りました。
■ ■
市立札幌病院には救命救急センターのほかに
腎センターと腎移植科がありました。
腎移植科の平野哲夫先生は献身的に腎移植に取り組んでいらっしゃいました。
市立札幌病院ではたくさんの患者さんが人工透析を受け、
腎移植を希望する方もたくさん待っていらっしゃいました。
ある日、腎バンクの登録希望者を募集していたので、
私はすぐに腎バンクに登録しました。
■ ■
その後、臓器移植法が整備され、
臓器提供意思表示カードを医師会でもらったので、
腎臓提供カードから、
腎臓以外の組織もすべて提供できる、
臓器提供意思表示カードに切り替えたのが1998年でした。
私は自分の死後に、
もし自分の臓器が役に立つなら喜んで提供します。
■ ■
ちょうどこの院長日記を書いた、
2006年に宇和島徳洲会病院の万波誠先生のことが報道されました。
ドナーカード
2006年11月7日の院長日記に書いた言葉です。
最近、病気の腎臓を移植した先生のことが問題になっています。
家内は『取らなくてもよい腎臓をとって移植したんじゃないの!』と怒っています。
私はもし自分の腎臓が病気でそれを摘出して
他人の役に立つなら喜んで提供します。
腎臓は部分的に切除するより
全摘出のほうがリスクが少ない場合もあると思います。
一部で報道されているように
医師が自分の功名心のために腎臓移植をするとは到底考えられないからです。
■ ■
毎日、透析を受けて腎移植を待っている人を見れば
誰でも助けてあげたいと思います。
今の日本に必要なのは、
もう少し臓器移植を円滑に進めることができるシステムです。
お金持ちだけが中国へ行って
死刑囚の腎臓を移植してもらう方がよほど問題だと思います。
■ ■
腎移植は進歩しました。
死体腎移植を待っていても順番が来ないので、
生体腎移植を受ける人が増えました。
自分の奥さんから、
腎臓をもらって元気で働いている人を知っています。
私は自分が患者だったら、
病気の腎臓を移植してもらいます
病気の腎臓が役に立つのだったら差し上げます
もっと移植医療の研究が進むことを祈っています。
私は宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)は、
♡いい病院♡だと思います。
院長の休日
心に残るひととき「宝物の1円玉」
平成29年10月18日、朝日新聞朝刊の記事です。
渡辺えりの心に残るひととき
「宝物の1円玉」
相手思いやる心、私も磨きたい
俳優の渡辺えりさんに、本紙生活面の「ひととき」に掲載された中から印象に残った投稿を紹介してもらう「渡辺えりの心に残るひととき」。3回目となる今回は、今年7月から9月までの投稿が対象です。渡辺さんが選んだ「宝物の1円玉」を書いた鎌田啓子さんに、記者がお話をうかがいました。
■相手思いやる心、私も磨きたい
宮城県大崎市の鎌田啓子さんの「宝物の1円玉」(8月28日、東京本社版)。レジ係の方の生真面目で温かく、年配の方を尊重する心に私も思わず泣いてしまいました。
年を重ねてきたからこそ感じる感情があります。若い頃はついつい仕事に追われ、出会う方たちに冷たい態度を取ってしまったことも度々あったように思います。後悔しても取り返しのつかない苦い思い出も、多々あります。
老齢に差し掛かり、客観的に周りを見渡すことが出来てくると、思いやりのある心の濃い人を乞う気持ちが強くなってきます。あいさつを交わしたり、笑顔で接したり。若い頃はあまり気にならなかった人のしぐさに心が癒やされ、生きる勇気を得られたりしてくるのです。
*
相手の身になって考える思いやりの心というのは、どうやると育っていくのでしょうか? この「リサ」さんという元気の良い店員さんが残したメモに泣かされました。
「1円くらいどうということはない」と思うのが普通かもしれません。しかし、この店員さんは、高齢になった男性が小銭入れからパラパラとお金を落としてしまい、「慌てて拾って会計を済ませて」いく様子を見ていたのでしょう。その姿に、「気の毒な事をした。自分も手伝ってあげれば良かった」と後悔したのではないでしょうか。落ちていた1円玉を見つけたとき、なんとしてでもお返ししなければと考えたこの店員さんの自立した精神の素晴らしさ、正しさに感動します。
真正直ではつらつとした店員さんのいるスーパーは信用できます。私の近所にも、いつもトイレがピカピカに磨かれているスーパーがあります。隠れた見えない部分を磨き上げる精神を育てていきたいと、強く思います。
劇場に入ったときも出ていくときも、必ずトイレ掃除をしてトイレットペーパーを補充するようにと、劇団員には最初に教えています。しかし、今は劇場には係の方がいらっしゃるようになり、若手も昔からの思いやりの精神を学ぶ機会が少なくなってしまいました。みんな悪気はなく、何も気づかなくなってしまったのです。1円玉が落ちていることさえ気が付かないくらいの、ぼんやりした感覚でも生き延びられるようになってしまった現代の日本という国があります。
*
ぼんやりと薄暗い社会の中で光を生み出していくのは、血のつながりのない者たちが互いに思いやり支えあう心なのではないでしょうか?
私も諦めず人を信じて愛して、観客の笑顔のために頑張ります。
◇
わたなべ・えり1955年、山形県生まれ。デビュー40周年を記念したファーストアルバム「夢で逢(あ)いましょう」が発売中。来年2月には、主演舞台「喜劇 有頂天一座」を上演。
■宝物の1円玉(2017年8月28日付、東京本社版)
いつも行っているスーパーでのこと。会計の時、夫が小銭入れからパラパラとお金を落としてしまい、慌てて拾って会計を済ませて帰ってきました。
それから数日経ったある日。元気のいいレジ係の女性が寄ってきて、「先日落としたお金です。レジの下に落ちていました!」と、紙に包んだ1円玉を差し出しました。紙を破って1円玉を取りだそうとしたので、私はとっさに止めました。「汚い字なので」とためらう彼女に頼んで、包んだままをいただきました。こんなに大事に包まれた1円玉を見て、彼女の気持ちを破るのはもったいないと感じたのです。
広告の裏紙で作ったその小さな袋には、こうメモしてありました。
「5月24日(水) いつも来るお客様の1円です!次に来た時に渡すのでおいてて(保管)下さい(落としていった)!(リサ)」
彼女はいつも笑顔で声をかけてくれます。私たち夫婦はこの方に元気をいただくので買い物を楽しみにしています。1円玉は袋に入ったままで封を切っていません。大事な大事な私の宝物だからです。あなたの元気で明るく誠実なお客様への対応に感謝しています。
(宮城県大崎市 鎌田啓子 無職 72歳)
■<投稿者から>彼女の素晴らしさ伝えたくて
ひとときに投稿しようと思ったきっかけは、このリサさんが、レジ係からほかの業務に移ってしまうと聞いたことでした。
「こんなにもお客のことを考えてくれる素晴らしい人は、なかなかいない」ということを多くの人に知ってほしかったのと、リサさんへのこれまでの感謝を、何か形にできないかと考えたのです。
いま、彼女は常に店頭に出るお仕事ではなく、商品管理のお仕事をされているそうです。レジでお会いできないのはさみしいですが、たまにお店で姿を見かけます。そのとき、彼女が必ず笑顔で声を掛けてくれるのが、またうれしくて。「今日は旦那さまは?」「体調どうですか」など、こちらのことをよく覚えていてくれます。「今日は会えるかしら」と、スーパーに行く別の楽しみができました。
あの1円玉は、財布の中に入れてあります。これからも、大事にとっておくつもりです。
■ひとときとは1951年10月2日に東京本社夕刊家庭欄に誕生。以来、女性のための投稿欄として歴史を重ねています。
◆「渡辺えりの心に残るひととき」は3カ月に1回掲載します。次回は1月の予定です。
(以上、朝日新聞より引用)
■ ■
私が2017年8月28日の院長日記でご紹介したひとときです。
たくさんの人の心に残ったのだと思いました。
新聞やTVでニュースを聞いても、
あまり楽しいニュースがありません。
札幌は寒くなってきました。
今日は旭岳で遭難した4人が救助されたという、
うれしいニュースがありました。
救助隊の方に感謝です。
ありがとうございました。
医学講座
皮膚移植2017
昨日の院長日記、
極薄分層植皮に、
さくらんぼさんから、
コメントをいただきました。
植物を植えるより難しそうな植皮ですね。
そうなんです。
皮膚を植える植皮はとても難しいのです。
■ ■
私たちの世代の形成外科医は、
まず、
植皮を100%生着させること!
…これが形成外科医への第一関門でした。
植皮がうまく生着しないことを、
植皮が落ちた
植皮が着かなかった
植皮グラフトが落ちた
植皮グラフトが着かなかった
…こんな言い方をしました。
■ ■
今の私ですら、
皮膚移植を100%成功させることは、
とても難しいです。
手術が下手な先生が植皮をしても、
また植皮が落ちた
○○先生のグラフトがまた落ちた
私も新人形成外科医の頃に、
何度か植皮が落ちて、
自分も患者さんと同じくらい落ち込んだことがあります。
■ ■
瘢痕拘縮
植皮術
2007年6月、
今から10年前に書いた院長日記です。
植物の苗を買ってきて移植しても、
水やりが悪かったり移植後の管理が悪いと枯れます。
皮膚も上手に移植することはもちろんですが、
移植後に動かないように固定しないと生着しません。
ベテランの形成外科医はこの固定が上手です。
皮膚の移植は植物の移植と同じ『移植』を用います。
英語でもtransplantationと言います。
plant(植物)をtrans(動かす)のです。
■ ■
植物の移植は、
根がついた苗を移植します。
皮膚移植は、
根のない、
葉を
挿し木で植えるようなものです。
挿し木で根付かせるのは
根がついた苗より難しいです。
■ ■
皮膚を上手に移植するには、
移植後に動かないように上手に固定する必要があります。
ベテランの形成外科医はこの固定が上手です。
植物と違って、
生きた人間に移植するので、
移植後に動かないように固定するのが大変です。
固定が下手だと生えた根が切れてしまいます。
■ ■
植物を移植して
根が伸びて生着します。
移植した皮膚に必要なのが血管です。
植物に根が生えるように、
移植した皮膚にも血管ができます。
これを血管新生と呼びます。
目に見えないような微小血管が生えて、
移植した皮膚が生着します。
■ ■
意外に思うかもしれません。
皮膚移植を生着させるために、
ギプス固定をします。
私も形成外科医になるまで、
形成外科でギプス固定をすることを知りませんでした。
植物の移植に添え木が必要なように、
皮膚移植には固定が必要です。
固定が下手だと皮膚は落ちます。
医学講座
極薄分層植皮
第8回北海道形成外科フォーラム
…で私が一番勉強になった発表です。
【特別講演Ⅱ】
『極薄分層植皮 ―歴史と展望―』
愛知医科大学形成外科教授 横尾和久 先生
極薄分層植皮ごくうすぶんそうしょくひ
…と読みます。
■ ■
私たち形成外科が得意なのが、
植皮術しょくひじゅつです。
皮膚を植える手術です。
そんなの簡単じゃん!
皮膚を植えればいいんでしょ?
…と思うのは大間違いです。
経験約40年の私でも100%植皮を生着させるのは、
とても難しいことです ■ ■
植皮には大きく分けて2つあります。
分層植皮ぶんそうしょくひと
全層植皮ぜんそうしょくひです。
全層植皮は、
読んで字のごとく、
皮膚全層で植える手術です。
厚い皮膚を移植できます。
■ ■
分層植皮は、
皮膚を薄くむいて、
皮膚の上の方だけを植える手術です。
分層皮膚を採取した部位は、
ちょうど皮膚をすりむいたようなキズになります。
厚い分層皮膚を採取すると、
皮膚を採取した部位にキズが残ります。
■ ■
極薄分層植皮ごくうすぶんそうしょくひは、
透けて見えるくらいの薄い皮膚を移植する技術です。
採皮する技術も、
移植する技術も難しいです。
この極薄分層植皮ごくうすぶんそうしょくひの最大の利点は、
皮膚を採取した場所に、
♡キズが残りません♡
同じ部位から、
時間をおいて繰り返し採取できます。
■ ■
広範囲熱傷や、
難治性潰瘍など、
皮膚移植が必要な患者さんに有用です。
愛知医科大学形成外科教授
横尾和久先生が伝授してくださった、
極薄分層植皮ごくうすぶんそうしょくひは、
名古屋の中京病院形成外科で発案されました。
■ ■
中京病院形成外科の故井澤洋平先生が考案され、
刃物の街、
岐阜県関市にある、
貝印、
フェザーから、
専用の採皮刀が生まれました。
自分の身内でしたら、
採皮部に♡キズが残らない♡
極薄分層植皮ごくうすぶんそうしょくひを選びます。
横尾和久先生ありがとうございました。
医学講座
脂肪吸引後の乳房再建
第8回北海道形成外科フォーラムを聞いて、
これだけは、
院長日記でお伝えしなければ!
…と強く感じたことがあります。
筑波大学形成外科の関堂充教授のご講演です。
関堂せきどう教授は、
乳房再建のスペシャリストです。
筑波大学形成外科教授に就任されてから10年です。
■ ■
関堂せきどう教授は、
特にマイクロサージェーリーという、
微小血管吻合を用いた皮弁移植がお上手です。
2017年10月14日のご講演は、
形成外科領域のマイクロサージャリーにおけるトラブルシューティングと工夫
難しい題名ですが、
要は、
マイクロサージェリー後にトラブルになった時、
どうやって切り抜けたか?
…というとても参考になるご講演でした。
■ ■
患者さんは、
乳癌で手術後に乳房再建をされた女性です。
スペシャリストの関堂教授の手術なのに、
手術中に皮弁がうっ血しました。
静脈の流れが悪い時に起こる症状です。
最悪の場合は、
皮弁壊死という状態になり、
再建した乳房が失われます。
■ ■
原因として考えられたことは、
患者さんが受けた腹部の脂肪吸引でした。
病院に入院すると、
お医者さんや看護師さんが、
今までに受けた手術についてお聞きします。
言いにくいのが、
♡美容外科の手術♡です。
私、35歳の時に、
○○美容外科で脂肪吸引をしました。
100万円もしたのに、
さっぱり細くなりませんでした。
…なんてことは言いたくありません。
■ ■
美容外科にいらした患者さんですら、
過去に受けた手術について言わない人がいます。
お気持ちは理解できます。
大きな病院で、
家族もそばにいるのに、
○○美容外科で脂肪吸引をしました
…は言いたくありません。
腹部脂肪吸引のキズは、
へその中にあったり、
下着の中にあったりします。
外からはわからないこともあります。
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脂肪吸引の吸引管が、
腹部脂肪の中を傷つけます。
そうすると、
細い静脈が切れてしまいます。
乳房再建で使う皮弁の血流が、
悪くなることが考えられます。
そんな時には、
背中の筋肉と脂肪を使うと♡安全♡です。
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乳房再建をする先生で、
特にDIEPでぃーぷ皮弁を、
マイクロで移植する先生は、
脂肪吸引の既往歴に注意してください。
外からわからないきずでも、
皮弁挙上後の血流が悪くなることがあります。
関堂教授の教えです。
患者さんも、
こっそりでいいので、
小さな声で、
私、脂肪吸引をしました
…と伝えてください。
医学講座
第8回北海道形成外科フォーラム
昨夜、札幌プリンスホテルで、
第8回北海道形成外科フォーラム
北の大地2016が開催されました。
2010年から、
北大形成外科と札幌医大形成外科の共同企画としてはじまりました。
2015年からは北大形成外科が企画をしています。
2016年は北大形成外科連携施設における乳房再建の現状
…がテーマでした。
形成外科のことを学ぶよい機会なので毎年参加しています。
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日時:平成29年10月14日(土)16:00より
会場:札幌プリンスホテル国際館パミール5F「北斗」
札幌市中央区南2条西11丁目 ℡011-241-1111
【特別企画】
16:10~17:00
座長:
市立札幌病院形成外科 堀内勝己
北海道大学形成外科 村尾尚規
《下肢慢性創傷に対する治療戦略~当院における連携・経験より》
苫小牧日翔病院形成外科 川副尚史
時計台記念病院形成外科 内山英祐
市立札幌病院形成外科 齋藤典子
北海道大学病院形成外科 村尾尚規
函館中央病院形成外科 木村 中
【特別講演Ⅰ】
17:00~19:00
司会:北海道大学形成外科 山本有平
【特別講演Ⅰ】
『形成外科領域のマイクロサージャリーにおけるトラブルシューティングと工夫』
筑波大学形成外科教授 関堂 充 先生
【特別講演Ⅱ】
『極薄分層植皮 ―歴史と展望―』
愛知医科大学形成外科教授 横尾和久 先生
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形成外科医が診る診療範囲が30年前より広がっています。
下肢の難治性潰瘍を、
形成外科医が診る機会が増えています。
キズを見るだけでは、
治せないこともあります。
そんな時は血管の治療をして、
血流をよくして治します。
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下肢慢性創傷に対する治療戦略で、
函館中央病院形成外科の木村中先生が、
患者さんを八雲町立病院の循環器内科の先生に依頼して、
治療していただいていたことに驚きました。
現在は函館市の新都市病院との連携で治療されているそうです。
血管内治療は難しく、
誰にでもできる治療ではありません。
病院同士の連携が大切です。
治りにくい糖尿病性潰瘍も、
函館中央病院形成外科の木村中きむらちゅう先生のお力で、
よく治っていました。
昔の記憶
三谷正信先生ご逝去
私の札幌医大の同級生、
三谷正信先生が、
2017年10月11日にお亡くなりになりました。
64歳でした。
とても残念で悲しいです。
嫌な思い出が多い札幌医大形成外科講師の4年間で、
三谷先生との思い出は楽しいものばかりです。
私にAppleを教えてくれたのも、
iPhoneを教えてくれたのも三谷正信先生でした。
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三谷先生は内科医です。
専門は超音波機器診断です。
エコーという痛くない診断機器です。
今でこそエコーと言ってもふつうにわかる時代になりました。
私たちが学生の頃は、
白黒画像で、
昔のテレビ画面のように、
とても不鮮明な画像でした。
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ここに胆石が写っていますといわれても、
どれが胆石なのかなぁ~?という時代でした。
札幌医大は田舎の公立大学でしたが、
超音波機器のスペシャリストがいました。
私たちが学生だった頃は、
がん研内科と呼ばれた、
第4内科の福田守道先生です。
福田守道先生は超音波機器診断の先駆者です。
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三谷先生は、
福田先生がいらした札幌医大第四内科に入局され、
その後、札幌医大機器診断部講師に昇進されました。
私が札幌医大に在籍していた頃には、
保健医療学部助教授でした。
私は三谷先生から、
最先端の超音波機器のことを教えてもらいました。
形成外科領域で臨床応用もして英文論文も書きました。
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三谷先生のもう一つの顔が、
コンピューターです。
先生の研究室には、
大画面のモニターがいくつもあり、
私が使えこなせないようパソコンがたくさんありました。
三谷先生はカナダの研究者と共同研究をして、
有用なアプリを開発しました。
医学用の画像アプリなどたくさんのソフトがあります。
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下の写真は札幌医科大学HPから引用したものです。
札幌のアップルストアで、
学生が発表するのを指導している三谷正信先生です。
e-learningいーらーにんぐという言葉を教えてくれたのも、
三谷正信先生でした。
ほんとうに惜しい先生を亡くしました。
心からご冥福をお祈りしています。
三谷先生ありがとうございました。
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札幌医科大学写真ニュースです
札幌アップルストアにて、保健医療学部の学生がiPhoneアプリを活用したモバイルeラーニングの活用事例を学生自ら報告しました
平成22年4月11日(日)午後2時より、札幌アップルストアにて札幌医科大学を中心に行われているiPhoneアプリ「Handbook」を利用したモバイルeラーニングの活動を札幌医科大学保健医療学部看護学科 基礎・臨床医学講座准教授の三谷正信先生の司会により、本学保健医療学部の学生と千歳科学技術大学の学生たちがみずからコンテンツを作成し、活用している事例を、学生自身がご報告しました。
当日は、活気あふれる店内で、活発な質問のやりとりがありました。
経営企画課広報
発行日:2010年04月12日
三谷正信准教授によるe-learning紹介