医療問題
産科医を増やすには?
東京で妊娠9ヵ月の女性(36)が、
救急搬送を断られた末に
都立墨東病院(墨田区)で
出産後に亡くなったことが、
大きく報道されています。
亡くなられた女性のご冥福を、
心からお祈りいたします。
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受け入れを拒否した病院は、
都立墨東病院(墨田区)のほか、
大学病院など7病院でした。
①都立墨東病院(墨田区)
②順天堂大学医学部付属順天堂医院(文京区)
③東京慈恵会医科大付属病院(港区)
④日本赤十字社医療センター(渋谷区)
⑤日本大学医学部付属板橋病院(板橋区)
⑥慶応大病院(新宿区)
⑦東大病院(文京区)
ほとんどの病院は
ハイリスクの出産に対応する
「地域周産期母子医療センター」などに指定されています。
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東京だけではなく、
日本全国で産科医が不足しています。
私たち医師は、
医師免許を取得するまでに、
すべての科の勉強をします。
特に、産科と婦人科は、
医師国家試験での出題数も多く、
すべての医学生が必死で勉強します。
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医学部の中で、
臨床実習を行う時間数も、
他の診療科目と比較して多くなっています。
それは、医師になるためには、
産科や婦人科の知識が必須だからです。
では、産科医を目指す若い人が
少ないのはなぜでしょう?
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医学生や臨床研修医は、
勉強と平行して、
先輩医師の生活ぶりをよく観察しています。
いつも当直ばかりで、
毎日、クタクタになるまで働いて、
挙句の果てに…
‘医療ミス’で訴訟!
なんてことは誰でも避けたいと思います。
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あまりマスコミは書きませんが、
医師の給与(特に公立病院)は
医師俸給表という規定によって決められます。
当直料など、
若干の手当がありますが、
大部分は卒業年度や経験年数によって決められます。
時間外手当が支給される病院もありますが、
近年はカットされている病院も多いと聞きます。
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同じ会社に勤務していて、
ある人は8:45に出勤して、
昼休みもたっぷりとって、
17:15には退社。
ある人は、
朝5:30に呼び出されて、
緊急の手術をして、
昼休みもなく働いて、
クタクタになって…
22:45に退社。
経営が厳しいので…
超過勤務手当は無し!
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こんな‘会社’が現実に存在したら、
忙しい部門で働く人はいなくなります。
残念なことですが、
これが総合病院の実態です。
私は、産科医を増やすためには、
①産科医の待遇を改善する。
②医療訴訟に対する、医師側の不安をなくする。
この2つが必須だと思います。
産科医の給与を2倍にすれば、
人は集まると思います。
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2007年10月29日に書いた、
日本産婦人科医会会長、
浜松医科大学長の寺尾俊彦先生のエッセイを
医学生に、
是非、もう一度、
読んでいただきたいと思います。
私も医学生の頃に、
産科医になりたいと思ったことがありました。
‘生命の誕生’のお手伝いができる、
というのは素晴らしいことです。