医療問題
産科当直医不足
平成20年10月25日、朝日新聞朝刊の記事です。
妊婦死亡 墨東病院のみ当直医不足 都内の9センター
脳出血をおこした東京都内の妊婦が八つの病院に受け入れを断られ、その後死亡した問題で、最初に受け入れを断った都立墨東病院(墨田区)だけが、都内9カ所ある総合周産期母子医療センターのうち、最低2人とされている当直態勢を確保できていなかったことが分かった。7月以降、当直が1人の土、日曜日、祝日の急患受け入れは原則断ってきており、「センターの機能を果たせていない」との声が出ていた。
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総合周産期母子医療センターとは、危険性が高い出産や母胎管理のための地域の砦(とりで)的存在の医療機関。都の指定基準によると、24時間体制で産科を担当する「複数の医師」が勤務していることが望ましい、とされている。
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都によると、墨東病院では6月に産科の非常勤医が辞めた後は2人での当直が維持できなくなり、7月以降は土、日曜日と祝日に限って1人で当直を担当していた。
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このため、土、日、祝日の妊婦の急患受け入れは原則断り、平日でも2人の当直医のうち上席の医師が外部からの非常勤医の場合は「ハイリスク分娩(ぶんべん)の受け入れが困難なことがある」と地元の墨田区・江東区・江戸川区の産婦人科医会会員に伝えていた。
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地元の医師たちは「医師不足のなかで、墨東病院も頑張っていた」としながらも、最近の状況については「センターとして機能しないのは異常」との声が出ていた。
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しかし、墨東以外の8病院に朝日新聞が取材した結果、全病院で2人以上の医師を当直に配置。最大4人の当直を置く病院もあった。
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都立病院の医師不足について、都病院経営本部は24日に開かれた都議会委員会で「都立病院は給与水準も低く、敬遠される傾向にあった」と説明。都によると、2005年度の都立病院医師の平均給与は、47都道府県と14政令指定市の公立病院のなかで最下位だった。今年度から産科医については年収で200万~300万円上積みしたが、それでも中位程度とみられるという。
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日本赤十字社医療センター(東京・渋谷)の杉本充弘・産科部長は「かつて都立病院医師の給与は平均的な在京病院より高かった。待遇が悪くて人がいなくなり、仕事がきつくなり、さらに人が来なくなっている」として、「こうした状況を招いた都の責任は大きい」と話した。
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2007年8月13日に、
『お父さんの仕事は当直』という日記を書いています。
産科医が30人いると仮定した、
総合周産期母子医療センターでも、
3人で当直体制を組むと、
一ヵ月に10回の当直が当たることになります。
現実には、
大学病院の医局ですら、
当直ができる先生が、
30人もいるとことはまずないと思います。
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文部科学省が認めた教員定数は、
せいぜい
教授1
准教授1
講師2
助教4
の合計8程度で、
これでも多い方だと考えます。
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地域の総合周産期母子医療センターでは、
どんな難産や異常産にも
対応できるベテランの先生が…
10人以上も揃っているところは無いと思います。
私たち、医師にも…
勤務医には、労働基準法が適用されます。
救急外来など常に患者さんが来るところは別として、
夜間に仮眠が取れる状態でする当直は、
『断続的な宿直又は日直勤務』
に該当します。
この宿直ですら、
所轄の労働基準監督署長の許可が必要です。
しかも、認められるのは週に一回です。
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労働基準監督署が、
病院の医師当直(宿直)回数について、
監査とか指導をしたことなど…
聞いたことがありません。
大部分の産科医は、
週に2回も3回も当直をして、
翌日も外来勤務や手術をして、
クタクタになるまで働いています。
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われわれ医療者の間では、
今の産科医不足の原因を作った一つが、
福島県で起きた、
医師の逮捕であったと考えています。
逮捕する必要のない医師を逮捕したので、
医学生や臨床研修医は、
産科医になるのが怖くなったのです。
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もし国が、
本気で産科医を増やそうと考えているのなら、
①産科医の待遇の改善
②産科医が安心して働ける、訴訟に対するシステム作り
この2つを早急に実現すべきです。
そうしないと、
日本では安心して子どもが産めなくなります。
一人のベテラン産科医を育てるには、
長い年月がかかります。
早く、このことに気付いて欲しいと願っています。