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お金の計算
開業すると、お客様から料金をいただいて、お釣りも差し上げなければなりません。いつもは払う立場だったのが逆になります。
毎日、お釣り用の小銭をいくら準備して、どうやって補充するか?大切なことですが、どこでどうやって教えてもらえばよいのかわかりません。
勤務医の多くは、自分が勤務している病院でも会計窓口に行くのは、自分が‘患者’になった時だけで、窓口の内側は全くわかりません。
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恥ずかしながら、私は開業してから一度もお金の計算をしたことがありません。
税務署の方が休診日に税務調査にいらっしゃいました。私と会計事務所の公認会計士の先生が立ち会いました。
レジのお金や日報をお見せしました。
税務署:「現金はこれですべてですか?」
私:「はいそうです(少なかったのかなぁ?)」
税務署:「日報と合っていますか?」
私:「はい、あっていると思います」
税務署:「先生はご自分で確認なさらないのですか?」
私:「はぁ、お金の計算は苦手なもので…」
税務署:「たまには、ご自分で確認なさった方がよろしいですょ」
私:「はぁ、私が計算しても合わないと困るので…」
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先輩や友人から、職員にお金をごまかされないように注意しなさいと言われたことがあります。
一流の会社や大きな病院でも、お金をごまかす職員がいます。銀行員ですら、お金をごまかして懲戒免職になる人がいる時代です。
不正をする職員自身に問題があるのは明らかですが、お金をごまかされる側に問題があることがあります。脱税や不正をしていれば、ごまかされても告訴できません。
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開業した時に、お釣りの小銭の準備やレジの打ち方を教えてくれたのは、実家がレストランを経営していた受付の子でした。
私も家内も‘お店屋さんごっこ’すらしたことがなかったので、その子に教えてもらました。
カード払いも多いので、カードも導入しましたが、私は未だにカードを切れません。
一日の‘売り上げ’や一ヵ月の‘売り上げ’は私がチェックしていますが、現金やレジの管理は任せています。私がチェックしなくても、お金が合わないことはありません。明朗会計です。
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会計業務は会計事務所にお願いしています。開業すると税金や消費税の申告も大変です。
弥生会計という会計ソフトに入力して、会計事務所でチェックしていただいています。
開業するまでは、簿記なんてまったく縁がありませんでした。それこそ、簿記の右も左もわかりませんでした。
今でこそ少しはわかるようになりましたが、ダスキンのレンタルマット代は何費になるの?業務委託費?消耗品費?なんてことはわかりません。
開業すると医師としての業務以外で困ることがたくさんあります。信頼できる会計事務所にお願いするのがよいと思います。
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大きな会社でしたら、人事・総務・経理とそれぞれに専門家がいますが、個人経営のクリニックではすべて院長の責任です。
自分でできないことは、その道のプロに任せて適切に対処してもらうのが早道です。
私はお金の計算は不得意なので、職員に任せて、経理も会計事務所にお願いしています。その方が安心して手術に専念できます。
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開業時の苦労
3年前に開業した時に苦労したのが、人事・労務管理といわれる、ヒューマン・リソース・マネージメント(HRM)でした。
最近のビジネス英語会話で、杉田先生が取り上げていらっしゃいました。いわゆるHR(エイチアール)です。
今まで、25年近くも勤務医を続けてきて、雇われる側だった医師が、突然、雇用主になりました。労働基準法にも労働基準監督署も縁がありませんでした。
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まず、人を雇用する時には労働条件を明示しなくてはいけません。普通の人には当たり前のことですが、私は労働契約書なんてのは見たこともなかったですし、一度も署名捺印をしたことはありませんでした。
人事は大学の医局か教授が決めて、そのまま赴任というパターンでした。ハローワークにも行ったことがないし、どこにあるかも知りませんでした。
雇用保険もいただいたことはありません。私の知人の先生でも雇用保険をもらったという話しは聞いたことがありません。
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私の先輩や知人が開業して、一番もめて苦労していたのが、この労働問題でした。
自分自身は有給休暇を取ったことがなくても、従業員から請求があった時には与えなくてはなりません。
医師は労働組合に入ったこともなく、労使問題にも疎い(ウトイ)ので、問題が起きることが多いようです。
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私は専門家にお願いしました。北海道医師協同組合に田中猛先生という社会保険労務士さんがいらっしゃいます。
以前から、保険関係をお願いしていたので、就業規則を作成していただきました。
田中先生は、病院や医院の労務管理に詳しく、たくさんの事例をご存知です。私が失敗する前に、適切に助言をしていただきました。
また、とても真面目で几帳面な性格の方です。私を社会保険労務士にしたようなタイプだと思います。
田中先生はご自身でブログも書いていらっしゃいます。
これから開業をお考えの先生には、北海道医師協同組合をお薦めします。DLSという会社が医師協同組合に併設されており、こちらでいろいろな相談や手続きができます。
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医業はサービス業なので、まずよい人を雇用しないと、快適でよいサービスは提供できません。
大手美容外科の雇われ院長だった時は、一番遅くに出勤して、一番最初に『お疲れ様でした』と見送られて帰宅していました。
キレイなお姉さんに『先生、お疲れ様でした』と見送られるのは、とても気分がよかったです。
開業してからは、私が一番最初に出勤して、一番最後に戸締りをして帰宅します。
『お疲れ様でした。ありがとうございました』と言うのが私になりました。開業医になり、経営者になったのだから当然だと思っています。
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正直な話し、お給料は雇われ院長の時の方が、今よりずっとずっとよかったです。拘束時間もずっと短かったです。
自分で開業して変わったのは、手術をしなくてもよい人には手術をすすめなくてもよくなったこと。他の病院も気軽に紹介できるようになったこと。手術料金が安くなったことなどです。
自分の夢とロマンを実現できることが、開業する一番のメリットだと思います。
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服装規定
札幌美容形成外科を開業する時に服装規定を作りました。いらしていただいた方はおわかりだと思いますが、当院では‘茶髪’は禁止です。採用の時に必ず確認しています。
どうして‘茶髪’がダメなのですか?と質問される方がたまにいらっしゃいます(特に看護師の採用で)。
その時には、一流ホテルのフロントや航空機の客室乗務員に‘茶髪’の方はいらっしゃいますか?と答えるようにしています。
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2004年3月20日の朝日新聞に『どこまで認める?意見多様で企業悩む ヘアカラー基準は色々』という記事が出ていました。
2004年の記事では、ヘアカラーを認めないのは、全日空(客室部門)、イトーヨーカ堂、ファーストリティリング、セブン-イレブン・ジャパン(本社)でした。
認めていても限りなく黒に近いのが、日本ヘアカラー協会レベルスケール6番の日本航空。
見た目はほとんど黒の日本ヘアカラー協会レベルスケール5番がパレスホテル、ホテルオークラ東京、三越日本橋本店でした。
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札幌美容形成外科の規定は、日本航空と同じ日本ヘアカラー協会レベルスケール6番です。
このレベルスケールは5→6→7→8と数字が増えるほど‘茶髪’になります。
1番が真っ黒で、20番が真っ白ですが、5番(ほぼ黒)~15番(金髪)までの11段階に染め分けられています。
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私が‘茶髪’嫌いになったのは、札幌医科大学の講師をしていた時でした。
私は解剖学教室で研究をしていましたので、学生さんの解剖学実習を見る機会がありました。
昨日まで高校生だったような、ニキビがたくさんある学生さんから、少し社会経験を積んだような方まで約100人が実習しています。
その中に、外人か?と思うような金髪で実習をしている男子学生がいました。耳にはピアスがついていました。
頭が良くて札幌医大医学部に入学したのでしょうが、私は献体してくださった、ご遺体に申し訳ない気持ちでした。
解剖学実習に服装規定はありませんでした。
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おそらく解剖学実習を茶髪でした学生さんが、医師になって美容外科医になると、茶髪で診察して手術もする先生になるのだと思います。
私は医業はサービス業だと思っています。快適な空の旅を提供する一流の航空会社は茶髪は禁止です。
茶髪のCAが日本の空を飛ぶようになれば話しは別ですが、今の日本社会では、接客サービス業で茶髪は受け入れられません。
お客様に快適に治療を受けていただくのが私の目的です。この服装規定は当分の間変えるつもりはありません。
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これから就職試験や面接を受ける方は、髪の毛の色は黒くするべきです。面接担当者には私くらいのおじさんもいます。
茶髪にしていて悪い印象を持たれることもあります。
目を二重にしてもわかりませんが、茶髪はすぐにわかります。その方の自己表現の一つなのでしょうが、接客サービス業には向かないと思います。私の考えです。
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開院3周年
今日で札幌美容形成外科は開院3周年を迎えました。‘石の上にも3年’という言葉があります。順風満帆な3年間ではありませんでしたが、皆様のご支援のおかげで3年目を迎えられました。この場をお借りして、こころから御礼申し上げます。
3年間でもっとも苦労したのは職員の採用でした。
お恥ずかしい話しですが、3年前の開業時から勤務している職員は一人もおりません。私だけです。
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職員の募集は、先輩の意見をお聞きして始めました。一番難しそうだった看護師さんの募集は、意外とすんなり決まりました。
受付は医療事務の資格が必要で、私も医療事務の経験がなかったので人材派遣会社にお願いしました。
先輩のクリニックでお願いしていた、大手の医療事務の会社です。大病院の医療事務もなさっています。
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人材派遣の場合は、採用は派遣会社で行います。私は事前に面接をすることはできません。法律で決まっているそうです。
私は面接といっても学生の面接でしたら得意でしたが、採用の経験はありませんでしたのでプロに任せました。
美容外科という職種のためか、応募者はかなりあったそうです。会社の担当者から『いい人が応募してくれました。この方なら確実です』と太鼓判を押していただきました。
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7月から研修を行い、開業に備えました。派遣でいらしていただいたお嬢さんも美人でハキハキしていました。
派遣で2人の受付さんをお願いしました。その他に私が直接採用した経験者が一人で合計3人です。
開業して一週間もたたないうちに、派遣でいらしていただいたお一人が突然辞めることになりました。
派遣会社の方が太鼓判を押してくださった方でした。
突然のことで戸惑いました。私は『僕、何か悪いことしました???』
何がなんだかわからないうちに、一人いなくなってしまいました。
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その後、次の人がなかなか決まらず欠員が続きました。派遣会社も慎重になったのだと思います。
もう一人の派遣の方も、3ヵ月でお辞めになることになりました。正社員と派遣社員が混在すると待遇が違うため難しいようです。最初は気がつきませんでした。
今度は、アルバイト北海道に募集広告を出して、私と家内で面接をして、開業に至った経緯を話しました。
私など、ニトリの似鳥社長の足元にも及びませんが、私の夢とロマンを話し、私のクリニックに力を貸してください、とお願いして3人の方にいらしていただきました。
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そうして採用した3人の受付さんが、その後ずっと勤務してくれています。私の貴重な財産です。
事業をはじめる時に、大切なのが‘人・もの・金’とよく言われます。お金さえ出せばよい人が集まるわけではないと思います。
私の『最高の美容外科医療を‘適正’な価格で提供する』という‘夢とロマン’に賛同してくれた職員が私を支えてくれています。これからも、私も職員もよろしくお願いいたします。
私の貴重な財産です
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北海道の花人
午後9:00からのNHK教育テレビで、趣味の園芸40年スペシャル、‘北海道 花園を作った人たち’を放送していました。
私は弟にバカにされながら、高校生から趣味の園芸を見ていた花好きです。
クリニックにもラベンダーを飾って、ファーム富田の富田忠雄さんからいただいた、‘花人’の称号カードを掲示しています。
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今日のNHKテレビでは、大空町(東藻琴村)のシバザクラ、上湧別町のチューリップ、帯広の紫竹ガーデン、旭川のオープンガーデン上野様、中富良野のファーム富田が紹介されていました。
私が毎年訪れているのは、ファーム富田だけですが、どこも花を愛する、花人がキレイに花を咲かせていました。
自分が育てた花を他人が喜んでくれ、それが励みになって、また花作りをする。とてもよいことだと思います。
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ファーム富田は、‘農業’としては成り立たなくなったラベンダー栽培を続けたおかげで、現在年間100万人もの人が訪れる、北海道の代表的なフラワーガーデンができました。
今日のテレビでも、偶然に昭和48年の国鉄カレンダーで、取り上げられ、カメラマンがたくさん来てくれたのがはじまりだったと話されていました。
私がラベンダーを知ったのも同じ頃でした。
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ラベンダーは紫の小さな花です。ひとつ一つの花は小さくて、一つだけ見ても大したことはありません。
畑で紫の絨毯(ジュウタン)のように、一面に咲いていると見ごたえがあります。
富田さんが、番組で小学生3~4年生の目の高さから見るラベンダーが、一番キレイに見えるとお話しなさっていました。
山の斜面に植えられたラベンダーもやや低い位置から眺められるのでキレイです。
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キレイな花を咲かせるには、雑草だらけの土地を開墾し草の根と石を取り除きます。
土を篩(フルイ)にかけて、小石を取り除き、まず土を作ります。
そこに有機質の堆肥を入れ、種を蒔いて、芽が出たら草取りをして花を育てます。
苦労して花を咲かせ、他の人に見ていただいて喜んでいただき、それを励みにまた花を作ります。
北海道には心優しい、花好きの花人がたくさんいます。
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今日から8月
札幌美容形成外科は3年前の8月3日に開院しました。3日が火曜日でした。予約が入って、3日は空きがなくなってしまったので、正確には2日(月)から手術を始めました。幸先の良いスタートでした。
札幌美容形成外科のようなクリニックを‘専門用語’では無床診療所(ムショウシンリョウジョ)と呼びます。入院するベッドを持たないクリニックのことです。
Dr.コトー診療所のように、入院できるベッドがある診療所は有床診療所(ユウショウシンリョウジョ)と言います。病院は20床以上の入院ベッドを持つ医療機関のことです。
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診療所を開設するには、保健所に‘診療所開設届’を出します。保健所から検査を受けて、合格すると‘診療所開設届済証’をいただきます。これで晴れて診療を開始できます。
保険医療機関の場合は、保健所から‘診療所開設届済証’をいただいてから、更に厚生労働省の社会保険事務局に申請する必要があります。
美容外科の自由診療だけでしたら、厚労省の許可は不要ですが、保険医療機関は手続きが面倒です。
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これから保険医療機関として新規開業をお考えの先生は、この届出にかかる時間を考慮しないと開院日から保険診療ができません。
つまり、保健所の検査に合格して‘診療所開設届済証’をいただき、社会保険事務局から‘保険医療機関指定通知書’という保険医療機関としての指定を受け取るまで、最短で約1ヵ月はかかるのです。
ですから、札幌美容形成外科が保健所に開設届を出したのは、平成16年7月でした。北海道社会保険事務局長から平成16年8月1日から保険医療機関として指定を受けました。
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大学の医学部では、開業に関する手続きについて学ぶことはまずありません。
開業した先輩が『大変だぁ~』と言っていたのを、ウロ覚えに覚えていた程度です。
医学部には‘医学’に関する専門家はたくさんいますが、開業のノウハウを教えてくれる先生はいません。教官自身が‘勤務医’なので、開業の苦労を知らないのです。
自分が知らないことを一から一人でするのはとても疲れます。私は幸いなことに、よいコンサルタントにお願いできました。
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私がお願いしたのは、(有)メイプルの武田栄治社長です。ムトウという大きな医療関係の会社に長くいらした方です。
私は銀行からお金を借りる相談から、各種届出まですべて相談してお願いしました。
医師は開業のことなどよく知らないので、信頼できるコンサルタントに相談するのがよいと思います。
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(有)メイプル
札幌市北区新川5条1丁目1番22号
新川駅前メディカルビル3階
電話:011-700-6361
最初のホームページで使用
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専門医10症例
日本形成外科学会専門医でも手術が下手な先生がいることを書きました。これは専門医認定制度をどんなに厳しくしても必ず出てくる問題です。現在の専門医試験で難関なのは、10症例(ジュッショウレイ)と呼ぶ、自身が術者として手術を行った10症例についての所定の病歴要約です。
4年間の形成外科研修中に、自分自身が術者として手術を担当した患者様の術前・術中・術後の写真、詳細な病歴、手術記録などを学会に提出し審査を受けます。
手術の腕前を写真で判定するのが、形成外科専門医試験の特徴です。
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幸い、私の頃は個人情報保護法も今ほど厳しくはありませんでした。大学病院という名前なので、若い先生が手術を担当しても不思議には思われませんでした。
私が「今度手術を担当させていただくことになった本間です」と申し上げても「よろしくお願いします」と言われた時代でした。
私が手術を担当する時でも、必ず上の先生がついて手術をしていました。これは今でも同じだと思います。ただ、大学によっては、あまり経験がない指導医の先生がいることも事実です。
手術の同意をいただく時に、『明日の手術は、○○先生が専門医を取得するために、はじめて執刀させていただきます』と正直に言って、同意してくれる患者様がいらっしゃるとは到底思えません。
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熱傷の手術でしたら、研修医も含めて大勢で手術をすることもあります。
問題なのは唇顎口蓋裂など先天異常の手術です。出生数の減少と医科大学の増加で、形成外科医一人が一生の間に手術する唇顎口蓋裂の数は減少しています。
生後3ヵ月の赤ちゃんの手術を、専門医試験のために研修医に任せてくれる親などいないと思います。
赤ちゃんの写真を専門医試験の書類に使わせていただく同意も取れないと思います。
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私がこのホームページで使わせていただいている写真は、すべて患者様の同意を得て使わせていただいています。
大学病院や認定施設で、どのように同意をいただいて写真を使わせていただいているかわかりません。よほど患者様との信頼関係がなければ難しいと思います。
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唇顎口蓋裂のような手術は、大学の講師クラス以上の先生がするのが一般的になっています。
研修医は手術に入って、術者の助手をするのが精一杯で、形成外科研修3年目とか4年目に任せられる手術ではありません。専門医試験に出す10症例は、先輩が手術して、自らはせいぜい抜糸を担当したというのが正直なところではないかと思います。
専門医試験で写真判定を受けた症例は、受験者本人が自ら手術したのではなく、上手な先輩が手術したのを‘いただいた’可能性が否定できないのです。こうして‘専門医’になった先生は誰も見分けがつきません。
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私も最初から上手にできたのではありません。先輩に教えてもらって、ドキドキしながら手術をして、少しずつ上達したのです。
私が幸せだったのは、丁寧で上手な先輩が何人もいて、実に家族的な雰囲気の医局で育ったことです。
外科医は職人です。腕のよい師匠について、お客様がたくさんいらっしゃる職場で修行をしないと上手になりません。
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医師選びは難しいと思います。専門医は一つの指標ですが、絶対ではありません。先生との相性もあります。
手術を受ける時は、その先生と何度か会って話してみるとか、症例写真を見て判断するとか、自分自身で‘この人なら’と思う先生を見つけることです。
私は人の性格と声と字はなかなか変わらないと思います。自己責任ですから慎重に先生を選んでください。
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形成外科専門医
私は日本形成外科学会専門医です。厚生労働省が決めた学会専門医なので広告にも出せます。美容外科医の中には、形成外科専門医でない先生もいらっしゃいます。
形成外科専門医=(イコール)上手な美容外科医ではないと思います。形成外科専門医を持っていなくても、センスがよくて上手な美容外科医を私は知っています。
残念なことですが、形成外科専門医だからといって、全員が形成外科の手術が上手というわけではありません。
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昨日、形成外科専門医の認定施設になるための条件を一部書きました。形成外科専門医は厚生労働省が定めた臨床研修を終了してから、最短4年でなることができます。以下が日本形成外科学会の規定です。
【専門医申請資格】
専門医申請資格は,以下の各項を充足するものとする。
①6年以上日本国医師免許証を有するもの
②臨床研修2年の後、資格を有する研修施設において通算4年以上の形成外科研修を行うこと。4年以上ひきつづいて日本形成外科学会正会員であること。
③第19条に定める研修を終了し,第20条に定める記録を有するもの
④日本形成外科学会主催の講習会(学術研修会あるいはインストラクショナル・コース)受講証明書を4枚以上有すること。
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厚生労働省が臨床研修を義務付ける前は、形成外科研修が6年間必要でした。
2年間の臨床研修が義務付けられたので、4年間の形成外科研修で取得できるようになったのです。
学会が認めた施設で、きちんと修行を積まないと専門医はあげませんよ。という規定です。
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私は4年間で腕の良い形成外科医になれるとは思いません。以前のシステムで、6年間でも不十分だったと思っているほどです。
学会専門医は一つの基準ですが、専門医だからといって、すべての手術が満足にできるとは限らないのです。
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手術は車の運転と一緒で、実際にやらなければ上手になりません。運転を教わる教官にもよります。
丁寧で上手な教官に教わって、本人に素質があれば上達します。
下手な教官に教わって、十分に走らなければ、免許をもっていても危ないのと同じです。
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私が医師になった頃は、形成外科医が少なかったので、北大形成外科にはたくさんの患者様がいらっしゃいました。
全国の他大学からも国内留学の形で北大にたくさんの先生が‘修行’に来ていました。
先輩から手取り足取り教えていただいたので、今の私があります。先輩にはとても感謝しています。
これから形成外科医になろうと考えている先生は、よい先輩がいて、症例がたくさんあり、学会活動も盛んにしている施設を選ぶべきです。問題はそんな施設が少ないことと、よい施設は人気があってなかなか行けないことです。
医学講座
皮膚腫瘍の手術
日本形成外科学会認定施設は、毎年一回年次報告という報告書を提出しなければなりません。
手術件数や学会発表の数。指導体制の変更の有無などを学会に報告し審査を受け認定施設の更新をします。
最近は学会発表や学術論文発表を行っていないと認定施設が取り消されたり、教育関連施設という1ランク下の施設に格下げされたりします。
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認定施設になるためには規定の手術件数が必要です。
(1)新鮮熱傷(ヤケド)
(2)顔面骨骨折および顔面軟部組織損傷(顔のケガ)
(3)唇裂・口蓋裂
(4)手,足の先天異常,外傷
(5)その他の先天異常(耳がないなど)
(6)母斑,血管腫,良性腫瘍(アザや皮膚のできもの)
(7)悪性腫瘍およびそれに関連する再建
(ガンやガンの再建手術)
(8)瘢痕,瘢痕拘縮,ケロイド(キズのひきつれなど)
(9)褥瘡,難治性潰瘍(いわゆる床ずれ)
(10)美容外科
(11)その他。
(カッコ)内は私の注釈です。
これらの項目の手術が必要です。
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このうち圧倒的に数が多いのが、皮膚良性腫瘍の手術です。
一般の方は皮膚にデキモノができると皮膚科に行かれます。小さくて簡単に取れる腫瘍でしたら皮膚科でも十分に対応できます。皮膚科医にも上手な先生がいらっしゃいますし、形成外科で修行を積んだ先生もいらっしゃいます。
最初から形成外科にかかる方はマレです。形成外科医や形成外科学会の宣伝が足りないのかも知れません。
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料金は皮膚科で取っても形成外科で取っても同じです。形成外科で取ると高いイメージがありますが、自由診療の美容外科以外は料金は同じです。
形成外科で取ろうと思っても、形成外科は皮膚科ほど数が多くありません。形成外科がない医学部や医科大学があるくらいです。皮膚のデキモノですから、皮膚科や外科で取っていただいて構いません。
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私たち形成外科医は、他科より少しでもキレイにキズを少なく取るように努力します。
形成外科医が縫ってもキズは残ります。私たちは残るキズを少しでも目立たなくする努力をします。
抜糸した後も、最低一ヵ月、部位によっては3ヵ月もテープでキズを保護します。
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形成外科に入った研修医は、先輩から皮膚良性腫瘍の手術を教わります。最初にする手術はたいてい皮膚良性腫瘍の手術です。
他科の先生が手術するよりキレイでなければダメなので、研修医がする時には必ず指導医がつきます。
皮膚のデキモノを手術する時は、ぜひ形成外科にご相談なさってください。同じ料金でよりキレイに治すよう努力しています。
医学講座
皮膚ガンの手術
『ガンです。手術が必要です』と言われて驚かない人はいません。『まさか?ガン?手術?』と普通の人は狼狽(ロウバイ)し、どうしよう?と思います。
胃ガンができたとします。ガンは健康診断で見つかっても、更に内科で精密検査をします。ガンの組織型、つまりどんなタイプのガンか?悪性度は?他の臓器への転移は?などなど、詳しく調べます。最近はPET(ペット)という診断方法もあり、かなり詳細に調べられます。
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手術の適応が決まると、外科へ紹介されます。外科病棟へ転科して、手術前の検査・処置をして、いよいよ手術です。
白い巨搭の財前教授が外科。里見助教授が内科。二人の関係が外科と内科の関係です。
外科はメスを持って、病巣を切除し、切除した部位は縫合するか他の臓器で再建します。財前先生のような消化器外科でも形成外科と一緒に手術をすることもあります。私も消化器外科の先生と手術をしたことが何度もあります。
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皮膚ガンだけは、皮膚科の先生が診断も手術もする施設があります。札幌医大がそうでした。私の直接の上司は前任の皮膚科J教授でした。
彼の主張は『皮膚科医はメスを持たなければならない』でした。彼は悪性黒色腫というホクロのガンで有名でした。
彼の手術は形成外科から見ると、お世辞にも上手とは言えませんでした。皮膚移植をすると植皮が生着しないことがよくありました。
患者様は‘教授’が手術したのだからと諦めていましたが、中には形成外科へ助けを求める方もいらっしゃいした。
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私が在籍していた頃の北大病院は皮膚科と形成外科がとても仲良しでした。当時の皮膚科教授であった三浦先生が形成外科を作ってくださいました。
私の恩師である大浦名誉教授は、形成外科ができたのは、三浦先生のおかげといつも感謝していまいした。
当時の北大では、皮膚科が診断して、形成外科が手術する。小さなガンでしたら皮膚科が手術して形成外科が助言するという分業がうまくできていました。
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私の恩師である、市立札幌病院院長の吉田哲憲先生は皮膚ガンの権威です。私が札幌医大に在籍していた時も何度もご相談していました。吉田先生に助けていただいた患者様もたくさんいらっしゃいます。
形成外科医の中でも、皮膚ガンを専門にしている先生は多くありません。大学病院の形成外科でも皮膚ガンは取り扱わない施設もあります。
私は皮膚科医がメスを持っても悪いとは思いません。ただ、ただ切るにしても形成外科医がするのと皮膚科医がするのでは雲泥の差があります。
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良心的な皮膚科医は、形成外科医と仲良くして、手術の時にも協力を仰ぎます。
どのような手術法で切って、どうやって再建すると、患者様にとって最良なのかを考えてくれる先生がベストです。
自分の専門外のことは、信頼できる専門家に任せて、仲良く治療できる先生がベストです。
私は皮膚科は専門ではないので、皮膚科を標榜していません。皮膚病の方は信頼できる皮膚科専門医にご紹介しています。皮膚腫瘍については、診断も手術もしていますが、診療所でできる手術には限界があるので、皮膚ガンの治療は市立札幌病院にお願いしています。