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救急当直
昨日の日記に市立札幌病院救命救急センターが素晴らしいと書きました。
私が市立札幌病院に勤務したのは平成元年から平成6年まででした。34歳の若い医師でした。当時の写真を見ると、自分でも若いなぁ~と思います。
私は皮膚科の所属でしたから、救急の当直はしませんでした。もっぱら救急の先生から呼ばれる役でした。
最初は、形成外科専門医は私一人。救急部に北大形成外科の後輩にあたる先生が一人いました。
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救急部の当直医は3人でした。ファースト、セカンド、サードと呼ばれていました。研修医でも、ある程度できようになるとファースト当直に当たるようになります。
当直は私の記憶では24時間勤務でした。朝から次の日の朝まで、救急部に搬送される重症患者さんの主治医になります。
‘運がいい’先生は、あまり患者さんが来ず、平穏無事に過ごすこともありましたが、極めてマレでした。
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消防指令や他病院から連絡があり受け入れを決めます。救急車の到着5分前になると救急ホールの電話が鳴りました。医師も看護師も緊張の瞬間です。薬剤を注射器につめて、処置器械を準備して待っています。ピーポーピーポーが聞こえてきて、病院近くになると音を止めます。救急車が到着し電動シャッターが開きます。
搬送されて来た患者様は心肺停止状態。すぐに気管内挿管をして、中心静脈へカテーテルを入れます。
心臓が原因、脳が原因、多発外傷、自傷、中毒、重症感染症などなど。とにかくさまざまな患者様がいらっしゃいました。
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ファーストの先生が形成外科医が必要と判断されると、研修医や私が呼ばれました。
私は34歳でちょうど医師になって10年目でした。それまでの10年で数例しか経験しなかったような重症外傷を、何例も立て続けに経験しました。
その当時は、札幌市の3次救急は、市立札幌病院と札幌医科大学で分担していました。市立札幌病院には‘一流’の重症患者が次々と搬送されていました。
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ファーストの救急医は、自ら処置をして、他科の応援が必要であれば要請します。検査技師への依頼。手術室の手配。家族への説明。クタクタになるまで働いていました。
手術が終わっても容体は安定しません。翌日も引き続き処置や検査です。形成外科の研修医も、救急のファースト当直に当たると、中毒や腹部外傷なども担当していました。
自分の専門外は専門の先生に相談して決めます。もちろん救急のカンファレンスもあります。救急のスタッフも充実していました。
現在、北海道大学医学部で救急医学講座を担当していらっしゃる、丸藤(ガンドウ)教授も当時は市立札幌病院にいらっしゃいました。
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私が担当させていただいたのは、顔面外傷、四肢の軟部組織損傷、熱傷などです。
救急医の中には、過労で病気になってしまった人もいました。一度、ファースト当直で重症患者さんを引き受けると、一週間も家に帰らない(帰れない)先生もいました。
救急の先生は信じられないくらい働いていたと思います。
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救急医療にはお金もかかり、人もたくさん必要です。
もし自分の大切な人が、急に倒れてしまったら何としても助かって欲しいと願います。救急の現場で働く医師が、自分が働いてよかったと思えるシステムを作るのは、実は大変なことです。
札幌を日本一安心で住みやすい街にするために、救急の先生も院長(事業管理者)も頑張ってくれています。
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札幌の救急医療
メディカルトリビューンという医師向けの新聞に札幌市の救命救急について載っていました。
札幌市の心肺停止症例の蘇生率が日本一で、極めて高いことが掲載されていました。
簡単に言うと、札幌で突然心臓が止まって、救急車で運ばれたら、日本で一番助かる率が高いということです。
これは実に素晴らしいことです。‘美しい国’よりも‘安心して暮らせる街’が大切です。サミットで諸外国の首脳がいらして突然死しそうになっても、東京より札幌の方が助かる率が高いのです。
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AEDという止まった心臓を動かす器械が、駅や空港、航空機に備えられていることはご存知だと思います。
AED(自動体外式除細動器)とは、心臓がけいれんし血液を流すポンプ機能を失った状態(心室細動)になった心臓に、電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための医療機器です。
心室細動とは、心臓の筋肉がけいれん状態になり、全身に血液を送るポンプ機能を失った状態になる致死性不整脈の一つです。 心室細動の唯一の治療方法が、除細動器(AED)で電気ショックを与えることです。
2004年7月より医療従事者ではない一般市民でもAEDを使用できるようになり、空港、駅、スポーツクラブ、学校、公共施設、企業等人が多く集まるところを中心に設置されています。
確かにAEDでも動く心臓はあります。ただ、すべての心肺停止がAEDで動くのではありません。
札幌だけAEDが多いので助かる率が高いのではありません。
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札幌の蘇生率が高く、元気で社会復帰できる率が高いのは、市立札幌病院救命救急センターと札幌市消防局の救急隊の協力のおかげです。
平成7年に市立札幌病院が現在地の桑園に移転する際に、隣接して消防局の救急隊も移転しました。当時の桂信雄市長の英断です。
札幌市の全救急隊員のうち、約7割を救急救命士が占めています。その結果、救急現場で気道確保ができる率が90%以上、静脈路確保率が43%と他都市に比べて優れています。病院と救急隊が力を合わせているからです。
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消防本部から要請があると、市立札幌病院救命救急センターから医師が同乗して、ドクターカーが出動します。
ドクターカーには救急の医師が同乗しているため、現場に着いたその瞬間から治療が始まります。
直近の救急隊から救急救命士が現場へ駆けつけるまで平均6分。救命士が蘇生処置を行っている現場へドクターカーが着くまで平均20分です。
2台の救急車が出動して、現場で救命処置が始まります。救急医は市立札幌病院と連絡を取り、救命救急センターで行う処置の準備を指示します。
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ここからが札幌方式のすごいところです。
一般に心臓と呼吸が止まった人には、気管内挿管といって口から管を入れて人工呼吸を始めます。これで酸素が入り肺が膨らみます。
心臓は動かないので、胸をグイグイと押して心臓マッサージをします。TVなんかでやっている、胸の上に乗っかって手で押しているヤツです。とても疲れます。疲れる割に心臓のポンプ作用は弱く、脳に血液は行きません。心臓マッサージでは脳血流の10~20%しか保障されず、脳はどんどん死んでしまいます。心臓だけ動いて体は温かくなっても脳死になってしまいます。
いくら頑張っても、脳死の患者さんを作るだけというのが真面目な救急医のジレンマでした。
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2000年4月から、市立札幌病院ではドクターカーから、人工心肺という心臓の代わりに血液を送る装置を指示するシステムを始めました。
正式には経皮的心肺補助(PCPS)と言います。心臓が止まっている人の血管に管を刺して、心臓の代わりに脳に血液を送るシステムです。一式約50万円と高価ですが、これで一人の人の命を救えるなら安いものです。
この装置は準備に時間がかかるため、ドクターカーから『PCPSを準備してください』と指令を出すと、病院でスタッフが準備して救急車の到着を待ちます。
こうして、脳が死んでしまうのを防ぐことができるため、突然死しそうになっても助かって社会復帰できる率が上がったのです。
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市立札幌病院救命救急センターの部長は牧瀬博(マキセヒロシ)先生です。私が昭和55年に北大病院で研修を始めた時には麻酔科医でした。
もの静かで真面目な先生です。私の恩師である、吉田哲憲先生が院長で、牧瀬先生が率いる(ヒキイル)救命救急センターが日本一になってとても嬉しいです。札幌市民でよかったと思います。札幌は日本一安心できる街です。
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電話再診料
保険診療の規定で、通院中の方からの電話による医学的なお問い合わせには電話再診料がかかります。医師が答え、医師がその相談に対して治療上の指示等を行った場合です。通院日の予約などはかかりません。
国が決めた健康保険の決まりです。札幌美容形成外科で保険診療で通院中の方から、お電話をいただき、医師である私がお答えすると料金がかかります。
自由診療の二重まぶた手術などは、保険外診療ですから電話再診料はいただいておりません。
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手術後に何か不具合が発生することも考えられます。札幌美容形成外科では、手術の難易度によって、術後に数時間院内で様子をみてから帰宅していただいています。
例えば、ワキガ手術の場合などは、手術後最低2時間以上は院内で休んでいただき、出血がないことを確認してから帰宅していただいています。
豊胸術を全身麻酔で行った場合は、必要に応じて職員が付き添い、ご自宅やホテルまで車でお送りしています。
開院以来約3年になりますが、これでトラブルはゼロです。
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電話再診は保険診療で再診のみの規定です。初診の前に電話でご相談をいただき、私がお答えした場合は、医学的な説明をしてもかかりません。これも保険の規定です。
市立病院でも、国立病院でも、大学病院でも同じです。ただ大きな病院では‘先生’が直接電話で話してくれることはマレです。
病院には当直医がいるため、手術後に何かあった場合は、まず病院へいらしてくださいとお伝えします。当直医が診察して主治医を呼ぶべきだと判断した場合に主治医に連絡します。これが私が勤務した総合病院のシステムでした。
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札幌美容形成外科で行っている手術は、術後に大きなトラブルになる可能性はまずございません。
入院が必要な手術や入院が必要と考えられる方には大きな病院をご紹介しています。
札幌美容形成外科では、安全に手術をするために、手術前に血液検査もしますし、手術後のケアーについても詳しい説明書を差し上げています。
説明書がない手術については、その都度、医師・看護師からご説明しています。
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電話再診料の料金は、時間帯や自己負担割合によって異なります。
電話を受ける時にカルテが手もとにない場合もあります。私が話す前に、念のために電話再診料がかかることをご説明すると、『お金がかかるならいらない』と言われることもあります。そう言われると、こちらからはご説明できません。
成人の電話再診料金は、3割負担の方で自己負担が一回210円(診療時間内)です。『なぁ~んだ、210円なら聞いとけばよかった』と言われました。夜間・深夜(22:00~6:00) は高く一回1,470円です。休日は高くなりますし、6歳未満の乳幼児も高くなります。診療所へいらしていただき、処置をした場合は処置料・薬剤料が加算されます。
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保険の有効期限が切れてしまった場合や保険証がない場合は全額自己負担になり消費税もかかります。
自費の料金は750円(診療時間内)。夜間・深夜(22:00~6:00)は5,160円です。
術後に何かあっても、これ位の料金でお医者さんから直接説明を聞ける方が安心だと私は考えます。
院長の休日
旭岳登山
中富良野からの帰りに旭岳へ行ってきました。旭岳は北海道の最高峰で2,290mあります。北海道は緯度が高いため、2,000mでも日本アルプスの3000m級に匹敵する高山環境を持ち、多彩な高山植物群落が見られます。
旭岳へは、東川町の旭岳温泉(標高1,100m)からロープーウェーで姿見駅(標高1,600m)まで上がることができます。そこまでは昨年秋に行ってきました。
姿見の池に写った旭岳がとてもキレイだったので、今年は是非山頂までと考えていました。
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私は登山の趣味はありませんが、自然を観察するのが好きで、学生時代には利尻岳に登ったこともあります。
ここ30年くらいは登山はしていませんでした。旭岳は正直なところキツかったです。私たちのように軽装で上がるべき山ではないと、帰ってきて改めて思いました。
事前にネットで調べて、頂上付近は夏でも気温が0℃近くになることは知っていました。
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姿見の池までは、スニーカーでも、ちょっと歩きやすい靴でも行くことができます。息子が高校時代に学校で旭岳に登っていたので、安易に考えていたと思います。
ロープーウェーで姿見の池に上がると、高山植物の美しさに目を奪われます。7月上旬はちょうど良い時期でした。
自然保護監視員の方から説明を受けて、楽しく散策ができます。山に登る人が多いし、昨秋はすぐそこに旭岳が見えたので‘簡単に’上がれるだろうと思ったのが間違いでした。
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私がいつもワキガ手術は‘簡単’ではありません。と申し上げているのを逆に教えていただいた気がしました。
ウインドブレーカーにスニーカーで家内と登りましたが、下りがきつかったです。途中まで登ったところで、家内がもうダメと音をあげました。
たまたま私たちの前に東京からのツアー客22人が団体で上がっていらっしゃいました。
そのツアーのしんがりにくっついて上がりました。男性のガイドさんが案内をなさっていて、それをしっかりタダで盗み聞きしながら上がりました。
頂上の手前、9.5合目のところで『ここが有名なSOS事件があった、ニセ金庫岩です』と説明を受けた時もなんのことかさっぱり『???』でした。
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1989年に道に迷った、愛知県の青年が木で‘SOS’と印を残し、捜索隊に発見された時は、白骨死体だったという恐ろしい話しです。
昨秋に来た時も、その日の朝に東京からいらした有名な先生が死体で発見されたとニュースで報道していました。
帰ってきてから、ネットでSOS事件を調べて、改めて恐ろしさを知りました。
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山頂からの大パノラマは素晴らしく、高山植物の美しさとは別の自然の素晴らしさを味わいました。
今度はちゃんと登山靴を買って、装備も万全にして、もう一度チャレンジしてみようと思っています。
旭岳へ行かれる方は、決して私たちのマネをしないでください。山を甘くみてはいけないという教訓を得ました。
旭岳山頂にて
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院長の休日
ファーム富田
休診日を利用して中富良野のファーム富田へ行ってきました。ちょうど10日前の7月2日の日記で札幌のラベンダーが開花したことをお知らせしました。
例年、7月中旬には中富良野のラベンダーが開花します。札幌より富良野地方は開花が遅れます。
今年は例年より、お花全体の開花が遅く、ちょうど濃紫早咲が咲きはじめたところでした。残念なことにオカムラサキはまだ蕾(ツボミ)でした。開花まであと1週間はかかりそうです。札幌より20日も遅れることは珍しいと思います。
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本州では梅雨前線の影響で大雨と聞きますが、今年の北海道は少雨です。6月の降水量が少なく農作物の生育に影響が出ているようです。
そのためかどうか?わかりませんが、ファーム富田のお花も例年より背丈が小さく感じられました。
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私は毎年ファーム富田に何回か伺います。ラベンダーの時期の他に秋にも行くことがあります。
札幌美容形成外科に飾るカレンダーを購入したり、院内で使うラベンダーオイルを購入に行きます。
ファームで働いているのは花好きな方で、皆さんとても親切で丁寧です。若い方が多いのも特徴です。
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今のシーズンは一年中で最も混んでいる時期です。日本人以外に台湾、韓国、中国からもたくさんのお客様がいらしています。
顔だけ見ても日本人と区別がつきませんが、言葉を聴くと韓国語や中国語なのでわかります。若いカップルも海の向うからいらしています。韓国の知人に聞いたところ、韓国にはファーム富田のように花を育てている農場はないようです。
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ファーム富田のよいところは、ラベンダーから作られたさまざまなGoodsを販売しているところです。
あれだけの花畑なのに入園料はゼロ円。おそらく販売料収入で維持管理なさっていらっしゃるのだと思います。
毎年、確実に成長しているラベンダーとお花の楽園です。オーナーのラベンダーにかける強いお気持ちが伝わってきます。
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ラベンダーの他に、赤のポピーがキレイに咲いていました。
この美しいラベンダーの楽園をいつまでも維持していただきたいと願っています。
札幌美容形成外科に飾ってあるカレンダーでファーム富田の四季がご覧いただけます。
ファーム富田にて
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医学講座
手術室の掟2
手術を安全に遂行するために、手術室にはさまざまな掟があります。昨日は挨拶について書きました。
手術をするには、麻酔をかける必要があります。麻酔薬は手術の苦痛を取り除いてくれる有用な薬ですが、使い方を誤ると生命の危険を伴うことがあります。
私が麻酔科研修で習ったことは、薬の誤認を防ぐことです。注射器に詰めてしまえば、みな同じ無色透明の液体が大部分です。
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麻酔科や手術室では、注射器に詰めたら必ずシールを貼って間違いを防ぎます。薬によっては最初からシールがついている製品もあります。
麻酔に使う薬は、希釈して使う場合も多いので、希釈した場合は希釈した濃度も書きます。
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麻酔科医や術者の指示で、薬剤を注入する時は必ず復唱します。
麻酔科医:『それでは看護婦さん、プロボフォールを10cc入れてください』
看護師:『はい、プロボフォール10cc入ります』
麻酔科医(患者様へ):『点滴から麻酔のお薬が入りますので眠たくなります』
ミルクのような白い液体が点滴から入ると、患者様はあっという間に眠ってしまいます。豊胸術では気が付いたら、胸が大きくなっていて、まったくわからない間に手術は終わります。
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手術中も常に声を出して確認するのが掟(オキテ)です。
外科医:『15番お願いします』
看護師:『はい、15番です』
外科医:『電メス(電気メスの略)のパワーを5に上げてください』
看護師:『はい、5に上げました』
局所麻酔で手術をする時には、あまり声を出さないようにすることもありますが、『はい』は常に声に出して言うようにします。
ミスや事故を防ぐために、昔から手術室の掟(オキテ)として伝えられた決まりです。
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手術中にもさまざまな掟があります。術者と器械出しの直接介助者は‘清潔’なので、手は胸より下に下げてはいけません。
鼻の頭が痒くても、眼鏡がずれても、マスクがずれても自分では直せません。すべて、外回りと呼ばれる間接介助者にしてもらいます。
手術中はトイレにも行けませんし鼻もかめません。風邪を引いて鼻水がズルズルの時は大変です。
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このような手術室の掟は、医学部でも、看護学部でも、看護学校でもあまり教えなくなりました。国家試験にもあまり出題されません。
私が北大病院の手術室へはじめて入った時、ベテランの看護師さんから、『先生、手洗いしていたら失敗しても頭をかいたらダメょ』と優しく教えていただきました。
医学講座
手術室の掟(オキテ)
手術室は外科医が技を披露する劇場だと書きました。私たち外科医にとって大切な仕事場が手術室です。総合病院では中央手術部という部門があって、専任の看護師が数十名も勤務している病院もあります。私が麻酔科研修をした昭和57年は、札幌医科大学附属病院の中央手術室には麻酔科専任の看護師さんもいらっしゃいました。
医師免許を取得して、大学病院に勤務しても何もできません。手術器械の名前すらわかりません。
通常の手術では、‘器械出し’または‘直接(介助)’と呼ばれる看護師さんが手術につきます。新米の医師は足元にも及ばないほど何でもよく知っていて優秀です。
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私が医師になって、はじめて手術室に入った北大病院では、看護師さんはグリーンの帽子とマスクをしていました。目元しか見えませんでしが、美人でかっこよかったです。
私たち研修医は、何もできず、ただ毎日叱られてばかりいるのに、看護師さんはキリっとして実にてきぱきと器械を渡します。術者が何も言わなくても、手術の流れがわかっていて、手を出すと間髪入れずに器械が出てきます。
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手術室には掟(オキテ)があります。まず、挨拶をすること。しっかり声に出して挨拶をします。
朝、入る時は『おはようございます』。これはどこでも当たり前ですが、特に手術室では挨拶を重要視します。
手術を始める時は、『おねがいします』と術者が言って、他の全員が『おねがいします』と復唱して始まります。これから手術を始めるので、麻酔科の先生、看護師さん、助手の先生、みなさんよろしくお願いします。という意味だと思います。
テレビドラマなどでは、イケメンの先生役が『メス!』なんて言いますが、私は言ったことも聞いたこともありません。
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メスにもいろいろな刃の形があるので、形成外科では『15番(ジュウゴバン)』とか『15番お願いします』と言って始めます。15番というのは形成外科で好まれる小型のメスの刃です。メスの刃は替刃式になっています。
メスを入れる前に、消毒をして、被布(オイフ)という清潔な布をかけて、局所麻酔の注射をします。
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手術が始まってからは、術者は原則として術野しか見ません(術野に集中しています)。術者が手を出すと、器械を術者の手にポンと渡してくれます。このポンが上手にできる人は優秀です。慣れない間はぎこちなくなります。
手術が終了すると『ありがとうございました』と術者が言って、最初と同じように全員が『ありがとうございました』と復唱しておしまいです。
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病院の他の部署と異なるのは、手術という一つの仕事をチームプレーで手際よく行うことです。そのため挨拶とか、作法が重んじられるのだと思います。
美容外科診療所(クリニック)は総合病院の手術室とは雰囲気が異なるところもありますが、私はしっかり挨拶をして、礼儀を重んじる手術室の掟が好きです。
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手術室へのこだわり
札幌美容形成外科の設計で私がこだわったのが手術室です。形成外科医として、四半世紀を手術室で過ごしてきました。手術室には窓がなく、朝、手術室に入ると外が晴天だろうが猛吹雪であろうが一切わかりません。
空調完備で夏でも冬でも一年中半袖の術衣を着ています。市立札幌病院で生後間もない未熟児の手術をした時は、患児の体温低下を防ぐため、手術室の室温を36℃にまで上げて手術をしました。
一度だけの体験で手術時間も2時間程度でしたが、全身汗だらけ、麻酔科医も看護師も全員汗だくで手術をしました。患者様に快適に手術を受けていただくのが手術室です。
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医療法で手術室の設備基準が詳しく決められています。3年前は手術用手洗い装置などが義務付けられていました。
変な話しですが、‘手術’は手術室でなくてもできるのです。一般の方には『???』、何の話しか見当がつかないと思います。病室で手術をする病院はないと思いますが、大部分の美容外科クリニックで手術をしているのは、実は処置室です。処置室で手術をしても違法ではありません。
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処置室は手術室と比べると、設備基準がゆるく保健所の検査でも特別な問題がなければ許可されます。
手術室を備えるには、それなりの設備が必要でお金もかかります。ビル内の診療所では前に書いた、給排水の問題があるため、手術室はおかずに処置室で手術をするところが大部分です。処置室で手術をしても、ちゃんとした先生がすれば‘手術’自体に問題はありません。
HPで‘宣伝’している手術室は、私がいままでに勤務していた総合病院の手術室をできる限り再現しました。
手術室は外科医の間では、術場(ジュツバ)とも呼ばれます。英語ではoperating theaterと言います。まさに外科医にとっては自分の技(ワザ)を披露する‘劇場’です。
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札幌美容形成外科は、たくさんの医療関係者にご利用していただいています。
どんなベテランの先生に、ベテランの師長さんに見ていただいても恥ずかしくない手術室です。私の自慢です。
ビルの改築でこの立派な手術室を壊すのはとてもとても残念です。でも、この次はもっと立派で快適な手術室を作ります。
自慢の手術室です
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イメージは自然
3年前に札幌美容形成外科を開業する時に困ったのが‘広告’でした。前の勤務先では、本部と広告代理店が全国の広告から地方の広告まで、細かく分けて出してくれていました。広告宣伝費もかなりかけていました。
個人経営のクリニックはどう頑張っても、広告で大手チェーン店にかないません。
有名女性誌に広告を出すだけで、私の給料が吹き飛んでしまいます。北海道の小さなクリニックが全国誌に出したところで、効果はありません。
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医療法で診療所や病院の広告は厳しく規制されています。有名女性誌に出ている‘広告’は、診療所(クリニック)の‘広告’ではなく、本やビデオの‘広告’として出されています。
クリニックの広告として出せるのは、NTTタウンページに出ている内容程度しか出せません。
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私はHPなどで使う、広告のキャッチコピーを考えていました。
広告のデザインはデザイナーにお願いしましたが、内容は私が考えました。
このHPに出ている‘イメージは自然。自然な仕上がりを大切にします’は私が考えました。
毎日、いろいろな案を考えていました。ボ~っとしながら大通り公園を歩いていた時に、突然ひらめいたのが‘イメージは自然’でした。
受験生の時に、ずっと解けなかった数学の問題が、ある時突然ひらめいて解けた感覚に似ていました。
さっそくデザイン事務所にメールして、最初の広告ができました。
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下の広告が最初にできた札幌美容形成外科の広告です。地味な広告ですが、私なりに満足していました。
ラベンダーの形が札幌のSの形をデザインしています。ちょうどラベンダーが咲く頃にこの広告を出しました。
それから、あっという間に3年が経ちました。おかげさまで病気もせず元気に診療を続けています。
私は、いかにも整形しましたという目や鼻は嫌いです。開院の時からずっと自然な仕上がりを大切にしています。
2004年最初の広告です
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北海道臨床創傷治癒研究会
昨夜、札幌パークホテルで第4回北海道臨床創傷治癒研究会がありました。私の恩師である、市立札幌病院吉田哲憲院長が代表幹事をなさっていらっしゃる研究会です。
形成外科医は以前にも書いたように、キズを治すプロです。糖尿病や閉塞性(ヘイソクセイ)動脈硬化症で下肢(特に足指)が黒く壊死になってしまう病気があります。
重症の方は、膝から下を切断という、最悪の事態になることがあります。私は市立札幌病院や札幌医大に在籍していた時に、よく内科の先生とご一緒に足の難治性潰瘍(ナンチセイカイヨウ)の治療をしました。
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一番厄介なのが、糖尿病から腎不全になり、人工透析を受けていらっしゃる方です。動脈硬化症を合併していることが多く、血管も石灰化しているため、とにかくキズが治りません。
さすがの私も諦めて、足指や下腿で切断したことがありました。血流が悪いとどんなに軟膏を塗ったり、足を洗ったりしてもキズが治らないのです。
何とか、足を切断して欲しくないと願う患者様に「切断しなければ治りません」と言うのはとても辛いことでした。
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昨日は、時計台記念病院、循環器センター長の浦澤一史先生の特別講演がありました。
浦澤先生は、北海道大学をご卒業後、循環器内科を専攻、北海道大学講師を歴任され、平成18年4月から、時計台記念病院の循環器センター長にご就任されました。
浦澤先生は血管に細いカテーテルという管を刺して、詰まった血管をあの手この手で開通させるという得意技をもっていらっしゃいます。
血管が詰まって、枯れそうになっていた足が見事に生き返っていました。
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時計台記念病院では、キズを治すプロである形成外科医と、詰まった血管を再開通させる循環器内科医がチームを組んで、従来は切断を免れないような、枯れかけた足を見事に治していました。
私の81歳になる父も、足の血管が詰まってうまく歩けなくなりました。従来でしたら、治療は難しかったので、だましだまし使うしかないと思っていました。
昨日の特別講演をお聞きして、さっそく父にも治療を受けさせようと思いました。
医学の進歩はすごいものです。従来は治らないと思っていた病気でも、いつかは必ず治ることを信じて治療を受けるべきだと思いました。なにごとにも決して諦めないことが大切です。