医学講座
お年を召した先生
昨日の院長日記、形成外科の大先輩2019
…になっちゅんさんから、
コメントをいただきました。
私は以前、お年を召した先生は
余り好みませんでした。
ごもっともです。
■ ■
貴重なコメントをいただきありがとうございます。
私は今年65歳になります。
お年を召した先生です。
私と同年代の大きな病院の二人の院長は、
2019年3月末で退職されました。
別の病院の院長に就任された先生が一人、
顧問になられた先生が一人です。
お二人の退職後の道は違いますが、
65歳でもまだまだ元気です。
■ ■
最近、高齢ドライバーの交通事故が問題になっています。
亡くなられた方は、
ほんとうにお気の毒だと思います。
涙が出そうになります。
心からご冥福をお祈りしています。
私もいつか自動車運転免許証は返納します。
交通事故は起こしたくありません。
■ ■
医師免許証に有効期限はありません。
免許の更新もありません。
適正検査もありません。
医師免許の返納もありません。
薬剤師免許も看護師免許も同じです。
高齢医師が医療ミスをしたという報道も聞きません。
■ ■
お年を召した先生でも、
立派に診療や手術をしている医師はたくさんいます。
ひざつき、患者の目線で
…という大切なことを教えてくださったのは、
聖路加国際病院の日野原重明先生です。
死亡医療事故を起こしたのは、
いけいけどんどんの美容外科医でした。
お年を召した先生でも活躍の場はあると思います。
医療事故だけは起こさないように細心の注意をしています。
医学講座
形成外科の大先輩2019
今日は2019年4月23日(火)です。
平成も残すところあと一週間です。
昨日の院長日記、
年をとっても元気な現役医師
…にさくらんぼさんから、
コメントをいただきました。
■ ■
医師ではないのですが
95歳で車の運転もするし、
農作業もバリバリするおじいさんがいます。
やる気がそうさせているのだと思います。
自分がやらねばと思う人は生涯現役です。
先生も大丈夫です。
ありがとうございます。
■ ■
日本形成外科学会の大先輩で、
学会に必ず参加され、
発表までなさる先生がいらっしゃいます。
すごいことだと思います。
筆頭は私の恩師、
大浦武彦先生です。
■ ■
大浦武彦先生は、
日本形成外科学会より、
褥瘡学会や足病学会でのご講演が多いです。
スキンコンディション
…という製品を、
ユニチャームと開発されました。
すごいことです。
■ ■
日本形成外科や日本美容外科学会で、
貴重な発表をしてくださるのが、
京都の冨士森良輔先生です。
来月、札幌で開催される、
第62回日本形成外科学会でも、
ご発表があります。
すごいことです。
■ ■
もうお一人は、
塩谷信幸先生です。
塩谷先生は、
日本形成外科学会だけではなく、
2つある日本美容外科学会
…の両方に参加されます。
私も形成外科の大先輩を見習って、
生涯勉強を続けるつもりです。
医学講座
年をとっても元気な現役医師
私の母親は91歳でもマンションで一人で暮らしています。
母親と同年代で、
現役の開業医の先生がいます。
アスティ相沢眼科
相沢芙束あいざわ・ふたば先生です。
1950年に札幌医大の前身である、
北海道立女子医学専門学校を卒業、
札幌医科大学眼科助教授、
市立札幌病院眼科主任医長・理事を経て、
1992年に開院されました。
日本緑内障学会名誉会員。
日本眼科学会認定眼科専門医。
■ ■
私は相沢芙束あいざわ・ふたば先生と、
市立札幌病院時代にご一緒でした。
学生時代には臨床実習でお世話になりました。
ご主人は故相沢幹先生です。
北大医学部病理学の教授で、
医学部長・医学研究科長をなさった大変ご立派な先生でした。
ご主人は2003年にご逝去されました。
ご夫婦そろってご立派な先生です。
■ ■
私の印象です。
眼科の先生は、
年をとってもお元気で開業されている先生が多いです。
札幌医大名誉教授の、
中川 喬なかがわたかし先生は、
医大前中川眼科を開業されています。
札幌南高校卒業(1953年)
札幌医科大学卒業(1961年)
ニューヨーク州立大学眼科留学(1966年)
札幌医科大学眼科教授(1986年)
札幌医科大学名誉教授(2000年~)
医大前中川眼科開設(2001年1月~)
■ ■
中川先生は札幌医大8期です。
私より約20年先輩です。
私が形成外科を選ぶきっかけとなった、
札幌医大6年生の時に、
特別講義をしていただいた先生です。
信頼できるすばらしい先生です。
私には無理ですが、
年をとっても元気で現役を続けるのは素晴らしいことです。
医学講座
年をとっても元気な秘訣
本間瑞子91歳の誕生日に、
お祝いのお言葉をいただき、
ありがとうございました。
えりーさんから、
お元気で一人暮らし、
パソコンをお使いになり、株価や確定申告、
私も母もできません。スーパーお母様ですね。
お元気の秘訣を教えて いただきたいです。
…とコメントをいただきました。
■ ■
息子の私が言うのも何ですが、
確かにすごいばあさんだと思います。
元気な秘訣はわかりませんが、
何にでもチャレンジする精神
…だと思います。
iPadを使いはじめたのは、
80歳を超えてからでした。
自動車の運転免許を取得したのは、
50代だったと記憶しています。
■ ■
さすがに91歳になると、
何にでもチャレンジは無理なようですが、
株価をチェックして、
小さな字で数字をたくさんメモに書いています。
これが、
ボケない秘訣ではないか?
…と息子の私は思っています。
私もボケないように、
細々とでも仕事を続けます。
私が好きなのは、
手を動かして手術をすることです。
院長の休日
本間瑞子91歳の誕生日
今日4月20日は、
私の母親、本間瑞子の91歳の誕生日です。
おかげ様で元気です。
マンションで一人で暮らしています。
ネットで株価を見て、
株取引もしています。
確定申告も自分でしています。
■ ■
本間家の親戚で、
91歳まで生きた人ははじめてです。
息子として、
医者として、
あっぱれだと思います。
病院には通院していますが、
一人で暮らしています。
■ ■
2016年3月29日に親父が90歳で亡くなりました。
一人暮らしも丸3年になりました。
私は忙しいことを口実に、
実家にはあまり行きません。
家内と出かける時に、
うちのそら君を預かってもらっています。
ばあさんの家に行った時だけ、
犬は散歩に連れて行ってもらえます。
■ ■
病院通いをしていて、
あちこち痛いと言います。
ばあさんの同級生が入院したり天国へ行ったりして、
少しずつ仲間が減っているようです。
お世話になっている先生が、
2019年4月から病院を移られました。
先生について新しい病院に行くそうです。
私はいいことだと思います。
いい先生について行って、
天寿まで元気でいてほしいです。
医学講座
第107回日本美容外科学会(JSAS)東京③
今日は2019年4月19日(金)です。
昨夜、札幌に帰ってきました。
昨日の最高気温は北海道が高かったようですが、
今日の札幌は寒いです。
桜が山形で満開になったと、
帰宅後にTVを見たら大きく映っていました。
さくらんぼさんもお母様と行かれたそうです。
■ ■
2つある日本美容外科学会のうち、
こちらの日本美容外科学会(JSAS)は、
十仁系と呼ばれる美容外科学会です。
実際に美容外科だけをやっている先生が大部分です。
私などは門外漢です。
役に立つ情報がたくさん得られます。
■ ■
学会2日目は、
シンポジウム5
題名:二重形成術手技において最も大切と考 えているポイントを紹介
座長:小泉正樹
演者:水野 力、平田修人 、横谷仁彦、小野准平 、池田欣生
…を朝から聞きました。
とても勉強になりました。
■ ■
美容外科を専門としていて、
二重手術の経験が多い先生でも、
♡理想の二重♡を作るのは難しいです。
もう少し詳しく説明すると、
誰が手術をしても、
♡理想の二重♡
…を作るのが難しい目の人がいます。
■ ■
私は最初の演者、アネシス美容外科の、
水野力みずのつとむ先生のご発表が印象に残りました。
埋没法でも、
きれいな二重がずっと持続する人は持続します。
できるだけ副作用が少ない埋没法がいい
私もその通りだと思いました。
埋没法は簡単だと思うのは間違いです。
大きな副作用が出ることもあります。
経験豊富な先生に丁寧に手術をしてもらうことです。

学会長の久次米先生ありがとうございました
医学講座
第107回日本美容外科学会(JSAS)東京②
第107回日本美容外科学会(JSAS)一日目で、
一番印象に残った発表です。
エキスパート1
題名:鼻尖の美容外科における名医
座長:福田慶三
演者:草野太郎、大場教弘、福田慶三
座長の福田慶三先生の抜群のアイデアで、
とても有意義な企画になりました。
■ ■
私は鼻の手術はしませんが、
目の手術以上に難しいのが、
鼻の手術です。
エキスパートで、
名医と言われている先生でも、
とても苦労していらっしゃいました。
難しいです。
■ ■
福田慶三先生のすごいところは、
患者さんの長期フォローです。
名医を求めて複数の先生に手術を受ける患者さんがいます。
自分がした手術の結果、
数年後にまた手術を受ける人がいます。
他の先生のところに行って、
また戻って来る人もいます。
■ ■
手術記録や写真をしっかりと保存して、
何が原因か?
どの材料が原因か?
しっかり分析をして手術をしています。
ほんとうの名医は、
自分の手術をしっかりと分析して、
常に改良を重ねる医師だと思いました。
素晴らしい企画をしてくれた福田慶三先生に感謝しています。
医学講座
第107回日本美容外科学会(JSAS)東京①
今日から、
第107回日本美容外科学会(JSAS)です。
学会長は、
医療法人社団美人会・共立美容外科・院長の
久次米秋人くじめあきひと先生です。
会場は東京都港区赤坂の、
ANAインターコンチネンタルホテル東京です。
2年前の第105回日本美容外科学会と同じ会場です。
■ ■
日本には2つの日本美容外科学会があります。
私は毎年両方の美容外科学会に参加しています。
私が美容外科を志した20年前には、
形成外科医は、
いわゆる十仁系の日本美容外科学会には、
参加していけない
…という暗黙のルールがありました。
■ ■
今は違います。
大学の形成外科教授も、
日本美容外科学会(JSAS)に参加されます。
時代も変わったものです。
今朝は眼瞼下垂のライブサージェリーからはじまりました。
ベテランの先生が手術をしても眼瞼下垂症手術は大変そうでした。
2日間しっかり勉強して、
最新の知識を仕入れて帰ります。
医学講座
性器の手術_男女差2019
昨日の院長日記、
がんばっても報われない社会
素晴らしい祝辞だと思いました。
東大の新入生だけではなく、
選挙で当選した人たちにも、
ぜひ読んでいただきたい内容です。
■ ■
札幌美容形成外科を開業して15年、
保険診療で治してあげたいと思う方がたくさんいます。
私個人がどうがんばっても、
保険適応にできないのが、
小陰唇縮小手術です。
外国人でも困っている人がたくさんいます。
私は美容目的の手術ではないと思います。
■ ■
かゆい
痛い
黒い
ひび割れて血がでる
たくさんの症状があるのに、
保険適応で手術ができません。
男女差です。
■ ■
男性の包茎は、
真性包茎のままでも、
困ることはめったにありません。
ちゃんと子供もできますし、
おしっこも出ます。
かゆいこともありません。
無症状の方が大部分です。
■ ■
それにくらべて、
女性は大変です。
毎月生理が来るたびに大変です。
ただでさえめんどうなのに、
かゆかったり、
痛かったりすると苦痛です。
私が生きている間に、
ぜひ女子外性器縮小手術を、
保険適応にしていただきたいです。

医学講座
がんばっても報われない社会
今日は2019年4月15日(月)です。
今朝のTVで、
4月12日に行われた、
東京大学入学式で、
同大名誉教授の上野千鶴子さんの祝辞が、
話題になっていました。
私はとてもいい祝辞だと思いました。
■ ■
2019年4月15日のYahoo!ニュースです。
「がんばっても報われない社会が待っている」
東大の入学式で語られたこと【全文】
「ご入学おめでとうございます。あなたたちは激烈な競争を勝ち抜いてこの場に来ることができました」
「その選抜試験が公正なものであることをあなたたちは疑っておられないと思います。もし不公正であれば、怒りが湧くでしょうーー」
4月12日に開かれた東京大学の入学式の祝辞が、話題を呼んでいる。【BuzzFeed Japan/伊吹早織】
新入生約3100人を前に祝辞を述べたのは、ジェンダー研究(女性学)の第一人者として知られる、同大名誉教授の上野千鶴子さん。
上野さんは、東京医科大学が女子受験者を差別していた入試不正問題に触れ、「あなたたちはがんばれば報われると思ってここまで来たはずです。ですが、がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています」と述べた。
「がんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください」と言い、社会に根付く構造的差別に目を向けるよう求めた。
さらに、東大入学者の女性比率が「2割の壁」を超えないことを挙げ、「社会に出れば、もっとあからさまな性差別が横行しています。東京大学もまた、残念ながらその例のひとつです」と指摘。
高校生新聞によると、同大の2019年度一般入試合格者のうち、女子は510人で、全体の16.9%だった。17年度の19.3%、18年度の18.2%と比べて比率は下がっている。
「世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひとたちがいます。がんばる前から、『しょせんおまえなんか』『どうせわたしなんて』とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます」
「あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください」と訴えた。
上野千鶴子さんの祝辞全文は、以下の通り。
■ ■
ご入学おめでとうございます。あなたたちは激烈な競争を勝ち抜いてこの場に来ることができました。
その選抜試験が公正なものであることをあなたたちは疑っておられないと思います。もし不公正であれば、怒りが湧くでしょう。
が、しかし、昨年、東京医科大不正入試問題が発覚し、女子学生と浪人生に差別があることが判明しました。
文科省が全国81の医科大・医学部の全数調査を実施したところ、女子学生の入りにくさ、すなわち女子学生の合格率に対する男子学生の合格率は平均1.2倍と出ました。
問題の東医大は1.29、最高が順天堂大の1.67、上位には昭和大、日本大、慶応大などの私学が並んでいます。1.0よりも低い、すなわち女子学生の方が入りやすい大学には鳥取大、島根大、徳島大、弘前大などの地方国立大医学部が並んでいます。
ちなみに東京大学理科3類は1.03、平均よりは低いですが1.0よりは高い、この数字をどう読み解けばよいでしょうか。統計は大事です、それをもとに考察が成り立つのですから。
女子学生が男子学生より合格しにくいのは、男子受験生の成績の方がよいからでしょうか?
全国医学部調査結果を公表した文科省の担当者が、こんなコメントを述べています。「男子優位の学部、学科は他に見当たらず、理工系も文系も女子が優位な場合が多い」。
ということは、医学部を除く他学部では、女子の入りにくさは1以下であること、医学部が1を越えていることには、なんらかの説明が要ることを意味します。
事実、各種のデータが、女子受験生の偏差値の方が男子受験生より高いことを証明しています。
まず第1に女子学生は浪人を避けるために余裕を持って受験先を決める傾向があります。
第2に東京大学入学者の女性比率は長期にわたって「2割の壁」を越えません。今年度に至っては18.1%と前年度を下回りました。
統計的には偏差値の正規分布に男女差はありませんから、男子学生以上に優秀な女子学生が東大を受験していることになります。
第3に、4年制大学進学率そのものに性別によるギャップがあります。2016年度の学校基本調査によれば4年制大学進学率は男子55.6%、女子48.2%と7ポイントもの差があります。
この差は成績の差ではありません。「息子は大学まで、娘は短大まで」でよいと考える親の性差別の結果です。
最近ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイさんが日本を訪れて「女子教育」の必要性を訴えました。それはパキスタンにとっては重要だが、日本には無関係でしょうか。
「どうせ女の子だし」「しょせん女の子だから」と水をかけ、足を引っ張ることを、aspirationのcooling down、すなわち意欲の冷却効果と言います。
マララさんのお父さんは、「どうやって娘を育てたか」と訊かれて、「娘の翼を折らないようにしてきた」と答えました。そのとおり、多くの娘たちは、子どもなら誰でも持っている翼を折られてきたのです。
そうやって東大に頑張って進学した男女学生を待っているのは、どんな環境でしょうか。
他大学との合コン(合同コンパ)で東大の男子学生はもてます。
東大の女子学生からはこんな話を聞きました。「キミ、どこの大学?」と訊かれたら、「東京、の、大学…」と答えるのだそうです。なぜかといえば「東大」といえば、ひかれるから、だそうです。
なぜ男子学生は東大生であることに誇りが持てるのに、女子学生は答えに躊躇するのでしょうか。
なぜなら、男性の価値と成績のよさは一致しているのに、女性の価値と成績のよさとのあいだには、ねじれがあるからです。
女子は子どものときから「かわいい」ことを期待されます。ところで「かわいい」とはどんな価値でしょうか?
愛される、選ばれる、守ってもらえる価値には、相手を絶対におびやかさないという保証が含まれています。だから女子は、自分が成績がいいことや、東大生であることを隠そうとするのです。
東大工学部と大学院の男子学生5人が、私大の女子学生を集団で性的に凌辱りょうじょくした事件がありました。加害者の男子学生は3人が退学、2人が停学処分を受けました。
この事件をモデルにして姫野カオルコさんという作家が『彼女は頭が悪いから』という小説を書き、昨年それをテーマに学内でシンポジウムが開かれました。
「彼女は頭が悪いから」というのは、取り調べの過程で、実際に加害者の男子学生が口にしたコトバだそうです。この作品を読めば、東大の男子学生が社会からどんな目で見られているかがわかります。
東大には今でも東大女子が実質的に入れず、他大学の女子のみに参加を認める男子サークルがあると聞きました。
わたしが学生だった半世紀前にも同じようなサークルがありました。それが半世紀後の今日も続いているとは驚きです。
この3月に東京大学男女共同参画担当理事・副学長名で、女子学生排除は「東大憲章」が唱える平等の理念に反すると警告を発しました。
これまであなたたちが過ごしてきた学校は、タテマエ平等の社会でした。偏差値競争に男女別はありません。
ですが、大学に入る時点ですでに隠れた性差別が始まっています。社会に出れば、もっとあからさまな性差別が横行しています。東京大学もまた、残念ながらその例のひとつです。
学部においておよそ20%の女子学生比率は、大学院になると修士課程で25%、博士課程で30.7%になります。
その先、研究職となると、助教の女性比率は18.2、准教授で11.6、教授職で7.8%と低下します。これは国会議員の女性比率より低い数字です。
女性学部長・研究科長は15人のうち1人、歴代総長には女性はいません。
こういうことを研究する学問が40年前に生まれました。女性学という学問です。のちにジェンダー研究と呼ばれるようになりました。
私が学生だったころ、女性学という学問はこの世にありませんでした。なかったから、作りました。
女性学は大学の外で生まれて、大学の中に参入しました。4半世紀前、私が東京大学に赴任したとき、私は文学部で3人目の女性教員でした。そして女性学を教壇で教える立場に立ちました。
女性学を始めてみたら、世の中は解かれていない謎だらけでした。
どうして男は仕事で女は家事、って決まっているの?主婦ってなあに、何する人?ナプキンやタンポンがなかった時代には、月経用品は何を使っていたの?日本の歴史に同性愛者はいたの?
…誰も調べたことがなかったから、先行研究というものがありません。ですから何をやってもその分野のパイオニア、第1人者になれたのです。
今日東京大学では、主婦の研究でも、少女マンガの研究でもセクシュアリティの研究でも学位がとれますが、それは私たちが新しい分野に取り組んで、闘ってきたからです。そして私を突き動かしてきたのは、あくことなき好奇心と、社会の不公正に対する怒りでした。
学問にもベンチャーがあります。衰退していく学問に対して、あたらしく勃興していく学問があります。
女性学はベンチャーでした。女性学にかぎらず、環境学、情報学、障害学などさまざまな新しい分野が生まれました。時代の変化がそれを求めたからです。
言っておきますが、東京大学は変化と多様性に拓かれた大学です。わたしのような者を採用し、この場に立たせたことがその証です。
東大には、国立大学初の在日韓国人教授、姜尚中さんもいましたし、国立大学初の高卒の教授、安藤忠雄さんもいました。また盲ろうあ三重の障害者である教授、福島智さんもいらっしゃいます。
あなたたちは選抜されてここに来ました。東大生ひとりあたりにかかる国費負担は年間500万円と言われています。これから4年間すばらしい教育学習環境があなたたちを待っています。
そのすばらしさは、ここで教えた経験のある私が請け合います。
あなたたちはがんばれば報われる、と思ってここまで来たはずです。
ですが、冒頭で不正入試に触れたとおり、がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています。
そしてがんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください。
あなたたちが今日「がんばったら報われる」と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです。
世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひと…たちがいます。がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。
あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。
恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。
そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。
女性学を生んだのはフェミニズムという女性運動ですが、フェミニズムはけっして女も男のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です。
あなた方を待ち受けているのは、これまでのセオリーが当てはまらない、予測不可能な未知の世界です。
これまであなた方は正解のある知を求めてきました。
これからあなた方を待っているのは、正解のない問いに満ちた世界です。
学内に多様性がなぜ必要かと言えば、新しい価値とはシステムとシステムのあいだ、異文化が摩擦するところに生まれるからです。
学内にとどまる必要はありません。東大には海外留学や国際交流、国内の地域課題の解決に関わる活動をサポートする仕組みもあります。未知を求めて、よその世界にも飛び出してください。
異文化を怖れる必要はありません。人間が生きているところでなら、どこでも生きていけます。
あなた方には、東大ブランドがまったく通用しない世界でも、どんな環境でも、どんな世界でも、たとえ難民になってでも、生きていける知を身につけてもらいたい。
大学で学ぶ価値とは、すでにある知を身につけることではなく、これまで誰も見たことのない知を生み出すための知を身に付けることだと、わたしは確信しています。
知を生み出す知を、メタ知識といいます。そのメタ知識を学生に身につけてもらうことこそが、大学の使命です。
ようこそ、東京大学へ。

(以上、Yahoo!ニュース、BuzzFeed Japan/伊吹早織より引用)
■ ■
あらためて全文を読んで、
すばらしい祝辞だと思いました。
しょせんおまえなんか
どうせわたしなんて
…という部分に共感を覚えました。
どんな環境でも、
どんな世界でも、
たとえ難民になってでも、
生きていける知を身につけてもらいたい。
私もそう思います。
■ ■
あなたたちのがんばりを、
どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。
恵まれた環境と恵まれた能力とを、
恵まれないひとびとを貶おとしめるためにではなく、
そういうひとびとを助けるために使ってください。
私もその通りだと思います。
上野千鶴子先生、
すばらしい祝辞をありがとうございました。