医学講座

乳房外パジェット病の見落とし

 昨日届いた、
 医療事故情報センターの、
 センターニュースNo375号です。
 われわれ形成外科専門医や、 
 皮膚科専門医にとって、
 重大な裁判例が載っていました。
 同じ誤診を繰り返さないために、
 全文を引用して掲載します。
      ■         ■
 症例報告 その4
 乳房外パジェット病が4年5ケ月にわたり見落とされ、広汎な皮膚切除を余儀なくされた事例
 佐藤克哉(新潟県弁護士会)
 事件番号:新潟地方裁判所 平成29年(ワ)第529号 和解日:平成30年12月27日
【患者】46歳・男性
【医療機関】開業医・皮膚科
事案の概要
 患者は、左陰嚢部に痒みを伴う紅斑と陰茎部に1円玉大の白斑があるのを自覚し、平成20年9月11日、相手方を受診した。
 相手方医師は、将来乳房外パジェット病の鑑別が必要になるかもしれないと認識しつつ、湿疹と診断し、ステロイドを処方した。患者がステロイドを外用すると、痒みは軽快し、紅斑は縮小。同月16日の2回目の受診をもって治療終了となった。
 しかし患者がステロイドの外用を中止すると症状が再燃。外用を再開すると症状が軽快するため、ステロイドを使い切るまで症状の軽快と再燃を繰り返していた。
 平成22年5月、3回目の受診。同様に湿疹と診断され、ステロイドが処方された。このとき相手方医師は、後日の患者の再来に備え、乳房外パジェット病の鑑別診断を依頼する公立病院宛ての紹介状の下書きを作成していたが、当該作成の事実は患者に知らされておらず、患者も再来しなかったため、紹介状は使用されなかった。
 平成24年7月には4回目の受診が、同年8月には5回目の受診がなされたが、同様に湿疹と診断され、ステロイドが処方されただけであった。
 なお、相手方医師は、5回目の受診終了後にも公立病院宛ての紹介状の下書きを作成していたが、前回同様、当該作成の事実は患者に知らされず、紹介状が使用されることもなかった。
 平成25年3月、患者が別の皮膚科開業医を受診したところ、直ちに大学病院を紹介され、皮済生検の結果、乳房外パジェット病と確定診断された。
 平成25年7月、拡大皮膚切除術施行。悪性細胞は陰嚢や陰茎から肛囲まで進展しており、広汎な皮膚切除を余儀なくされた。その結果、10ケ月間、人工肛門での不自由な生活を強いられ、さらに、術後、下肢にしびれ感が残った。
争点
①乳房外パジェット病鑑別のための皮膚生検を実施すべき時期
②上級医療機関へ紹介する可能性を認識した医師が患者に対して取るべき対応
③注意義務違反と損害との因果関係
④損害評価
経過
 平成28年4月証拠保全実施。協力医面談により、3回目の受診時(平成22年5月)ないしは4回目の受診時(平成24年7月)には皮膚生検を実施すべきであったと考えられるとのアドバイスを受け、示談交渉を実施したが、合意に至らず。
 平成29年11月提訴(請求額1100万円)。相手方医師及び患者本人の人証調べが行われ、平成30年12月和解成立(和解額250万円)。
コメント
 乳房外パジェット病は高齢者によくみられる皮膚がんの一つである。一見すると湿疹や白癬にも見えるため、皮疹の性状を熟知した皮膚科専門医でなければ臨床的に鑑別することは難しい。もっとも、文献では、そうであるからこそ、疑いが強い場合や、紛らわしい場合には、積極的に皮膚生検を実施する必要があると指摘されていた。
 また、乳房外パジェット病にステロイドを外用すると、臨床症状が一過性に軽快するため、患者が症状が改善したと述べている場合であっても要注意であるとも指摘されていた。
 本件では、まさに、ステロイド外用により症状が終決したため、受診の間隔が空いてしまったものである。
 もっとも、相手方医師はホームページ上で大学病院時代と同レベルの診療水準の維持を標榜している皮膚科専門医であったことから、2回目の受診時、遅くとも3回目の受診時には、自ら皮膚生検を実施するか、上級の医療機関を紹介すべきであったとして提訴した。
 当初、争点は過失ではなく、損害の評価と因果関係に収斂するものと予想していた。
 しかし、裁判所は、3回目の受診時に医師が患者に再来を指示した旨のカルテの記載があるにもかかわらず、患者がその後しばらく再来しなかったことを疑問視する姿勢を示した。
 患者にはこのとき医師から再来を指示された記憶はなかった。
 当方は、医師が紹介状の下書きを作成しておくほど患者に乳房外パジェット病を疑っていたのであれば、その旨を患者に具体的に説明して、必ず再来するよう約束させるべきであり、そのような説明をしていなかったからこそ患者は再来しなかったのであると主張したが、和解勧試の際にも裁判所からこの点を指摘され、結果として裁判所の提示額である250万円で和解する形となった。
 一定の経済的填補はなされたが、立証のハードルを痛感させられた事案であった。
 (以上、センターニュースより引用)

      ■         ■
 皮膚がんの見落とし
 2015年2月10日の院長日記です。
 私たち形成外科医は、 
 皮膚がんの手術をします。
 乳房外パジェット病
 乳房外ぺージェット病
 乳房外Paget病は、
 男性にも女性にもできます。
      ■         ■
 あそこが赤くなります。
 かゆみがある場合も、
 ない場合もあります。
 手術をする時には、
 何箇所も生検を取って、
 正確に切除範囲を決めます。
 それでも再発することもあります。
      ■         ■
 残念なことに、
 患者さんが亡くなってしまうこともありました。
 CEAという腫瘍マーカーが上昇することもあります
 皮膚科専門医だけではなく、
 形成外科専門医、
 婦人科の先生、
 泌尿器科の先生にも、
 ぜひ覚えていただきたい疾患です。
 生検を取る時には、
 あやしいところは何箇所も取ることです。
      ■         ■
 貴重な症例を報告してくださった、
 医療事故情報センターに感謝いたします。
 センターニュースの購読をおすすめします。
 医療事故情報センター
 〒461-0001
 名古屋市東区泉1丁目1-35ハイエスト久屋6階
 電話:052-951-1731
 FAX:052-951-1732

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医学講座

政治家の病気と予算

 昨日の院長日記、
 レーザーによるわきが治療
 …に国立わきが研究所ができて、
 わきが治療の研究が進むといいなぁ~
 …と書きました。
 日本はわきが治療の先進国です。
 わきが治療の先駆者は民間の医師です。
      ■         ■
 日本は顔面神経麻痺治療の先進国です。
 健康保険の適応になる、
 顔面神経再建手術もあります。
 顔面神経麻痺になる原因の、
 ヘルペスウイスルの薬も保険適応です。
 私は保険適応で治せるのは、
 とてもいいことだと思います。
      ■         ■
 日本が顔面神経麻痺治療先進国になったのは、
 有名な政治家が顔面神経麻痺で悩み、
 顔面神経麻痺の研究や治療に、
 たくさんの予算をつけたからだと、
 専門家の間で語り継がれています。
 (知らない医学生もいると思います)
 国の予算を決めるのは政治家ですから、
 患者さんの悩みを政治家自身が知れば知るほど、
 たくさんの予算がつくと思います。
      ■         ■
 もしわきがで悩む政治家がいて、
 超党派でわきが予算をつけてくれたら、
 日本のわきが治療は、
 間違いなく進歩すると思います。
 新しい機器が承認を受けて、
 保険適応になるのは大変なことです。
 わきがで悩む政治家は、
 必ずいると思います。
 政治家でも、
 私もわきが困っているので
 わきが予算
を増やします、、、
 …なんて言えないんです。

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わきが

レーザーによるわきが治療

 私が第62回日本形成外科学会で発表した、
 エルビウムグラスフラクショナルレーザーを用いた腋臭症治療は、
 米国サイノシュア社製の、
 アイコンiconというレーザー装置を使った治療です。
 もともときずあと
 ニキビあと
 …の治療用として米国FDAの承認を得た機器です。
      ■         ■
 このフラクショナルレーザーをわきに当てると、
 アポクリン腺がダメージを受けます。
 病理組織学的にも、
 アポクリン腺がダメージを受けたことが証明されました。
 残念なことに、
 アポクリン腺ができあがった、
 成人の腋窩に照射しても、
 深部まではレーザーが届きませんでした。
      ■         ■
 腋窩のアポクリン腺は、
 中心部が一番厚く、
 周辺に行くにしたがって薄くなります。
 客室乗務員さんの手術
 …に書いたように、
 反転剪除法で残った、
 乳房側の、
 薄いアポクリン腺には効きました。
      ■         ■
 私が手術をさせていただいたCAさんも、
 今だったらレーザーで治せる可能性があります。
 申し訳ないことをしました。
 同じことが、
 思春期の子供さんにも言えます。
 まだアポクリン腺が厚くなる前に、
 レーザー治療を繰り返すと、
 アポクリン腺の発達を阻害できる可能性があります。
      ■         ■
 残念なことは、
 こうした先進的な治療には、
 健康保険が使えないことです。
 2019年5月現在で保険適応になるのは、
 腋臭症手術と、
 重度原発性腋窩多汗症に対するボトックス注射だけです。
 私のような個人開業医ではなく、
 国立わきが研究所ができて、
 わきが治療が進歩するといいのですが、、、 

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医学講座

2019年6月1日

 今日は2019年6月1日(土)です。
 今朝の札幌はさわやかないいお天気です。
 自転車で快適に通勤しています。
 ちょうど一年前から、
 自転車用ヘルメットを着用しています。 
 うちの奥さんは、
 髪がぺたんこになるので使わないそうです。
       ■         ■
 2019年5月から、
 元号が平成から令和に変わりました
 日本形成外科学会での発表も終わりました
 令和時代のわきが治療を考えていますが、
 今のところ保険適応で治せるのは、
 手術だけです。
 重度腋窩多汗症には、
 ボトックス注射です。
      ■         ■
 私が発表した、
 フラクショナルレーザーを用いた腋臭症治療は、
 残念ですが手術にはかないませんでした。
 有効だったのは、
 客室乗務員さんの手術
 …に書いたようなケースです。
 一度、外科手術を受けたものの、
 一部に薄いアポクリン腺が残存した方です
      ■         ■
 思春期で、
 まだアポクリン腺がそれほど発達していない時期に、
 レーザー治療をすると、
 においが改善する可能性が考えられました。
 あざのレーザー治療は、
 皮膚が薄い赤ちゃんによく効きます。
 アポクリン腺の治療は赤ちゃんでは無理ですが、
 においが気になる思春期の子供さんには、
 効く可能性が考えられます。
      ■         ■
 新しい治療法でエビデンスもないため、
 札幌美容形成外科では治療は行っておりません。
 患者さん本人が、
 においが原因で不登校
 …になっているとか、
 本人が強く治療を希望している場合は、
 診察をしています。
 腋臭症治療の研究が進んで、
 手術をしなくても治る時代になってほしいと願っています。

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医学講座

慢性色素性紫斑症

 さくらんぼさんが困っていらっしゃる、
 慢性色素性紫斑症に、
 まみ子師長さんから、
 アドバイスをいただきました
 さくらんぼさんの慢性色素性紫斑症は、
 ビタミンCの内服と
 弱いステロイドの外用で治ります。
 大丈夫ですよ。

 ありがたいお言葉です。
      ■         ■
 私は皮膚科は専門外なので、
 適切なアドバイスができませんでした。
 ネットで検索しても、
 信頼できる
 ヨミドクターyomiDr.に、
 慢性色素性紫斑
 まんせいしきそせいしはん
 Chronic pigmented purpura
 【初診に適した診療科】
 皮膚科、皮膚泌尿器科
 【どんな病気か】
 多くの場合、中年以降にみられる下肢の点状出血、毛細血管拡張、褐色調の色素沈着で慢性の経過をたどります。やや男性に多くみられます。臨床症状によりシャンバーグ病、マヨッキー(血管拡張性環状紫斑)、紫斑性色素性苔癬様(たいせんよう)皮膚炎の3型に分けられています。
 【原因は何か】
 真の原因は不明ですが、微小循環障害と血管壁の弱さが関係するようです。時に高血圧や静脈瘤を合併し、これらは静脈圧の亢進が要因と推定されます。
 【症状の現れ方】
 基本的には下腿に多数の点状紫斑が生じ、徐々に進行して大小の紅褐色の色素斑になります。繰り返すうち、下腿、大腿、腰臀部へと拡大していきます。全身症状は伴わず、かゆみはないことが多いようです。
 シャンバーグ病では、斑と斑の間に拡張した静脈あるいは静脈瘤の存在が認められることがあります。
 【治療の方法】
 根治的な治療法は今のところありません。対症療法的に、血管強化薬、止血薬、抗プラスミン薬などが使われます。副腎皮質ステロイド薬の外用が有効なことがあります。
 長時間の歩行や立ち仕事を避けます。静脈瘤を伴う例には弾力包帯、弾力ストッキングをすすめます。慢性かつ進行性で一進一退を繰り返し難治性ですが、自然軽快もありえます。
【病気に気づいたらどうする】
病気を正しく把握するためにも、医療機関(皮膚科)で相談してみることをすすめます

 (以上、ヨミドクターyomiDr.より引用)
      ■         ■
 さくらんぼさんは、
 大学病院にかかったのに、
 大学病院では治療しなくていいと言われて困ってました。
 みんなから[わあー]と嫌がられます。

 上のヨミドクターにも、
 『根治的な治療法は今のところありません』
 …と書かれています。
 根治的な治療法がなくても、
 少しでも症状が改善するとありたがいです。
 さくらんぼさん
 慢性色素性紫斑症がよくなることをお祈りしています。

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医学講座

フィブラストスプレーと軟膏

 痛くないやけど治療①
 痛くないやけど治療②
 痛くないやけど治療③
 痛くないやけど治療④
 痛くないやけど治療⑤
 5回連載した痛くないやけど治療
 …のまとめです。
      ■         ■
 熱傷治療ガイドラインには書いていない、
 エビデンスがない本間仮説です。
 2019年5月30日の時点で私が考える治療法です。
 熱湯などで、
 深いやけどをしたら、
 すぐにフィブラストスプレーです。
 フィブラストスプレーを常備しているクリニックを探してください。
      ■         ■
 水疱膜は破らずに、
 フィブラストスプレーを噴霧して、
 その上から、
 バラマイシン軟膏と、
 フシジンレオ軟膏を、
 1:1に混合した軟膏を塗布します
 軟膏は厚めにします。
      ■         ■
 軟膏を塗った上は、
 医療用のフイルム材を使います。
 オプサイトという商品名の製品を選びます。
 滅菌していない、
 ロールタイプの製品が使いやすいです。
 他の製品でも構いません。
 軟膏を塗ったままだとべとべとになるからです。
      ■         ■
 毎日の処置は、
 生理的食塩水で洗い流します。
 ちょっと痛いですが、
 フィブラストスプレーを、
 シュっとして、
 その上から軟膏を塗ります。
 そうすると痛くないです。
 少しずつキズが治ってきます。
      ■         ■
 やけどの部位からにおいがしたり、
 赤くなったり、
 痛みが増強した時には、
 感染を疑います。
 抗生物質を投与します。
 小範囲のやけどでしたら、
 入院せずに、
 フィブラストスプレーと軟膏で治療できます。
 これが私のおすすめです。
 エビデンスはありません。
 経験だけです。 

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医学講座

痛くないやけど治療⑤

 痛くないやけど治療
 …の最後です。
 やけど治療は、
 フィブラストスプレーの登場で大きく変わりました。
 特に小児のやけどには、
 抜群の効果があります。
      ■         ■
 昔だったら手術が必要になったやけどでも、
 手術をしなくても治るようになりました。
 日本熱傷学会の熱傷治療ガイドラインにも、
 フィブラストスプレーが有効と出ています。
 ただ表現はわかりにくいです。
 私は熱湯でやけどをしたら、
 すぐにフィブラストスプレーで治療してくれる先生をおすすめします。
      ■         ■
 日本熱傷学会の熱傷治療ガイドラインです。
 日本熱傷学会
 ①Ⅱ度熱傷に対しては,湿潤環境維持を目的にワセリン軟膏基剤を基本とし,熱傷の広さ,深さの状況により主剤(抗生物質,ステロイドなど)を選択することが推奨される(C).
 ②Ⅱ度熱傷では,bFGF 製剤(フィブラスト®スプレー)の併用を考慮してもよい(A*).

 ガイドラインを作った先生にも、
 ジレンマがあったと思います。
 自分だったらすぐにフィブラストスプレーを使うのになぁ~
 …と思って書いたと(私は)感じます。
      ■         ■
 タイトルは痛くないやけど治療ですが、
 残念なことに、
 フィブラストスプレーはしみます
 痛いです。
 目薬くらいの容器に入っていて、
 化粧品のコロンのように、
 シュっと噴霧して創面にかけます。
 このシュが一瞬だけ痛いです。
      ■         ■
 フィブラストスプレーをかけた後の、
 創面の処置も、
 先生や施設によって違います。
 今は創傷被覆材そうしょうひふくざいという、
 いい材料ができました。
 残念なことに高価です。
 ガーゼの何倍もします。
 病院やクリニックで使った時だけ、
 保険適応になります。
      ■         ■
 自宅で処置に使うお薬は処方することができますが、
 2019年5月現在、
 自宅で使う創傷被覆材は、
 病院からもらうことはできません
 毎日通院することができない場合は、
 創傷被覆材を購入することになります。
 私でしたらフィブラストスプレーと軟膏の組み合わせを選びます。
 軟膏は自宅で使う分も処方することができます。
 

申し訳ございません
札幌美容形成外科ではやけどの治療は行っておりません

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医学講座

痛くないやけど治療④

 痛くないやけど治療
 …の4回目です。
 学会の悪口を言うつもりはありません。
 でも、
 日本熱傷学会の熱傷治療ガイドラインも
 日本皮膚科学会の熱傷治療ガイドラインも
 わかりにくいです。
      ■         ■
 やけどは痛いです。
 お風呂に入るとしみます
 昔からやけどに効く温泉がありました。
 温泉に行った時に、
 小さな字で書いてある説明を読むと、
 やけどに効く
 …というところがあります。
      ■         ■
 私が医者になった40年前は、
 熱傷患者さんを、
 熱傷浴室で洗って、
 軟膏処置をしていました。
 新入医局員の本間先生は、
 毎日やけどの患者さんのお風呂係りでした。
 私の結婚式のスピーチで、
 上司だった形成外科メモリアル病院院長の、
 本田耕一先生から、
 風呂入れが上手だとほめていただきました。
      ■         ■
 ところが時代は変わりました。
 熱傷浴室が、
 院内感染の原因として取り上げられました。
 札幌医大の熱傷患者受入中止問題となり、
 札医大重症熱傷受け入れ再開まで、
 札幌医大の高度救命救急センターが閉鎖されました。
      ■         ■
 私はやけどのきずを洗う方法は、
 今でもいい治療法だと思っています。
 熱傷浴室ねっしょうよくしつ
 2009年6月23日の院長日記です。
 ある種の温泉は、
 やけどに効きます。
 生理的食塩水(0.9%)と同じ濃度の食塩水は、
 キズにしみません。
 生理的食塩水は、
 目に入っても、
 鼻に入っても痛くありません。
      ■         ■
 やけどをすると、
 皮膚がただれて、痛みがあります。
 キズからは滲出液(しんしゅつえき)という
 黄色の液体が出てきます。
 皮膚というバリアーがなくなるので、
 ばい菌が悪さをして化膿することもあります。
 生理的食塩水で、
 キズをキレイに洗い流すと、
 ばい菌の数が減ります。
 痛みもなく、キズをキレイにできます。
 これがやけど温浴療法(おんよくりょうほう)
 の原理です。
      ■         ■
 やけどの患者さんにとって、
 ガーゼ交換や、
 キズの処置は、
 痛くてつらいものです。
 特にキズにガーゼが固着(こちゃく:くっつくこと)てしまうと…
 はがす時に血が出たりして、
 それはつらいものです。
 生理的食塩水で濡らしてから、
 ガーゼを剥がすと痛みも無く、
 ばい菌を洗い流して、
 キズをキレイにすることができます。
      ■         ■
 やけどだけではなく、
 他のキズの処置でも、
 生理的食塩水で洗うことは、
 キズにとってよいことです。
 小さなキズややけどでしたら、
 ベッドサイドや
 洗面器を使ってもできます。
 問題なのは…
 全身の大やけどです。
 ベッドの上で処置をすると、
 水浸しになります。
      ■         ■
 そこで考えられたのが、
 熱傷浴室でした。
 やけどの患者さん用のお風呂です。
 ステンレスでできていて、
 横になったまま入れます。
 お湯1㍑に対して、食塩を9㌘入れます。
 そうすると、
 生理的食塩水と同じ0.9%の濃度になります。
 このお風呂でやけどのキズを洗い、
 軟膏処置をするのが、
 形成外科研修医の仕事でした。
      ■         ■
 私が形成外科医の卵になった、
 約30年前は、
 私の仕事はやけど患者さんの風呂入れでした。
 白いゴム長を履いて、
 茶色のゴムの長い前掛けをつけて、
 看護婦さんといっしょに、
 一日、数人の処置をしたこともありました。
 熱傷浴室は、
 寝たまま入れるお風呂なので、
 寝たきりで動けない方の、
 入浴にも使っていました。
      ■         ■
 ところが…
 30年の間に時代は変わりました。
 院内感染の原因として、
 この熱傷浴室が問題になりました。
 キズを洗い流すのは、
 今でもよい方法なのですが、
 MRSA(えむあーるえすえい)や
 多剤耐性緑膿菌などが、
 熱傷浴室で感染して問題となりました。
      ■         ■
 日本では、
 まだ熱傷浴室を使っている施設が多いと思いますが、
 一部の救命救急センターでは、
 感染の問題から廃止してしまったところもあります。
 ご自宅で、
 お湯1㍑に対して、食塩を9㌘入れて、
 それをペットボトルなどに入れて、
 キズを洗い流すのは、
 痛くなくてよい方法です。
 キズの処置として、
 覚えておかれるとよいと思います。

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医学講座

痛くないやけど治療③

 痛くないやけど治療
 …の続きです。
 昨日の北海道は記録的な猛暑でした。
 5月に、
 北海道で猛暑という言葉が出るのは異常です。
 まみ子師長さんから、
 コメントをいただきました
 帯広が全国で2番目に暑かったとは、びっくりです。38.8℃でした。
 明日は日焼けの患者さんで溢れると思います。

      ■         ■
 5月の帯広で38.8℃も驚きですが、
 水疱ができた日焼け患者さんの治療法にも驚きでした。
 さすが、
 北海道で一番皮膚科の患者数が多い、
 高木皮膚科診療所は違うと思いました。
 高木皮膚科に行くと、
 水疱ができた日焼けも早く楽になってよくなります。
      ■         ■
 形成外科専門医や熱傷専門医とは、
 ひと味もふた味も違った治療です。
 毎日たくさんの日焼け患者さんを診察して、
 早くよく治る治療をしている、
 高木章好先生の教えだと思いました。
 形成外科の先生にも、
 ぜひ知っていただきたい治療法です。
      ■         ■
 私がつたない院長日記を続けている理由は、
 少しでも正しい治療法を知っていただきたいからです。
 無名の形成外科を、
 少しでも知っていただきたいからです。
 おかげ様で同業の先生にも読んでいただいています。
 ありがたいことだと感謝しています。
 正しい医学知識は、
 大学や教科書だけでは学べないことがあります。
      ■         ■
 日本熱傷学会にも、
 日本皮膚科学会にも、
 熱傷治療ガイドラインがあります。
 ガイドラインに沿って、
 正しい治療をしようと思っても、
 熱傷専門医の私ですら、
 はっきり言って、
 ちんぷんかんぷんです。
      ■         ■
 やたらエビデンスやら、
 推奨度が登場しますが、
 じゃあ、
 患者さんが痛いよぉ~
 いたいよぉ~

 …と泣いている時に、
 どんな治療をしたらいいのか、
 さっぱりわかりません。
 今日の院長日記でお伝えしたいことは、
 評判のよい高木皮膚科診療所のようなところで治療を受けると、
 早く痛くなく治るということです。

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医学講座

痛くないやけど治療②

 痛くないやけど治療①
 …の続きです。
 軽度のやけどでしたら、
 皮膚が赤くなるだけで、
 水疱すいほうができたり、
 皮膚がむけることはありません。
 病院に行かなくても治ります。
      ■         ■
 注意していただきたいのが、
 顔や頚部のやけどです。
 女性に多いのが、
 髪を整えるコテです。
 ねぼけて、
 あわてて、
 髪をととのえようとするとやけどをします。
      ■         ■
 水疱ができなくても、
 赤味がある間に紫外線があたると、
 しみになります。
 よく女の人が、
 『天ぷら油がはねたところが…』
 『しみになった』
 …ということがあります。
 これはやけど後の色素沈着です。
      ■         ■
 PIHぴーあいえっち炎症後色素沈着
 …と専門的な言葉で呼びます。
 レーザーでしみを取る治療も、
 しみの部分を焼く治療です。
 ちゃんと管理をしないと、
 高いお金を出して治療したのに、
 しみが黒くなります。
      ■         ■
 こてでやけどしたところは、
 水疱ができなくても赤くなります。
 ぴりぴりとした痛みがあります。
 アトピーや、
 かぶれにつけるお薬があります。
 弱いステロイドが入ったアトピーの塗り薬は、
 このコテやけどの、
 ピリピリとした痛みに効きます。
      ■         ■
 もし髪を整える時に、
 コテでやけどをしてしまったら、
 弱いステロイド剤をつけると痛みが和らぎます。
 しみになりたくなければ、
 しっかりと遮光をすることです。
 エアウォールUV(共和)
 …というテープがおすすめです。
 弱いステロイド剤を薄く塗ったあとで、
 慎重に貼ってください。
 貼り方にこつがあります。
 心配な人は病院に行ってください。
 AMAZONでも売ってます

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