医学講座
熱傷学会①
日本熱傷学会に参加するため金沢に来ています。熱傷学会はヤケドの学会です。すべての形成外科医がヤケドを専門にしているわけではありません。北大は私の恩師である大浦武彦先生が熱傷の専門家だったので、特に熱傷に力を入れていました。
理由の一つは、北海道に炭鉱が多かったことです。私が中学校3年間を過ごした、北海道夕張市は代表的な炭鉱都市でした。私の中学時代に、父親が勤務していた三菱大夕張炭鉱で大規模な炭鉱事故がありました。炭鉱は燃料になる石炭を掘り出す鉱山なので、事故が起こると石炭に火がついて火災になります。
狭い坑道に炭塵(タンジン)という石炭の粉が充満しています。事故で坑内火災が起きるとそれに火がつきます。一度にたくさんの人がヤケドをします。特に、気道熱傷という、高温の煙を吸い込むことによる、のどから肺にかけてのヤケドで命を奪われます。もちろん、顔も手も体も重症のヤケドになります。
私が中学生の頃の事故でも重傷者がたくさん出ました。父親は薬剤師でしたが、受傷者の血液を検査して一酸化炭素の濃度を測定する仕事をしていました。ヤケドの治療に使う薬を大量に札幌から取り寄せていました。何日か病院に泊り込んで家に帰られず、母親が下着を届けていたのを記憶しています。
私は北大形成外科の先生が大夕張の炭鉱事故の治療をしたのを知りませんでした。北大に入ってから、本間君は大夕張にいたんだね。昔、大夕張の炭鉱事故で大変だったんだよ。とはじめて聞かされました。何かの縁を感じました。
私の札幌医大の先輩である阿部清秀先生は、ロシアから来た重症のヤケドの子供を治療しました。TVに出て有名になったコンスタンチン君です。もう立派な青年になったそうです。私も札幌医大に勤務していた時にジェーニャ君という子供の治療をしました。
北海道はロシアに近いので、ロシアからの熱傷患者も治療する機会があります。熱傷治療はキズを治す根本を知らないとキレイに治せません。私は熱傷治療を通じて多くのことを学び、現在の美容外科診療に役に立っています。
熱傷治療も進歩して、従来は必ず痕が残ったヤケドでも、キズを早く治すことにより目立たなくすることもできるようになっています。明日から2日間勉強して帰ります。
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病院の形成外科
私が勤務した総合病院の形成外科で多かった手術は、皮膚のできもの(皮膚腫瘍)の手術でした。地域の特殊性もあると思いますが、皮膚科の先生から多くの患者様を紹介していただきました。
腋臭症手術(わきが手術)は今から考えると驚くほど少なかったです。市立札幌病院のHPでは手術件数を年度毎に報告しています。腋臭症手術は2001年6例、2002年5例、2003年5例。3年間合わせても16例です。
全国の形成外科学会認定施設では、毎年認定施設の更新のために手術症例数を学会に報告します。大学病院や総合病院では病院のHPに症例数を掲載しているところもあります。
広告規制の緩和から、一年間の手術症例数を広告に載せることができるようになりました。札幌美容形成外科でも、手術症例数をHPに掲載しようと計画しています。
どんな大学病院でも、腋臭症手術の数は大手美容外科にはかないません。美容外科はやはり広告宣伝を派手にしないと数は集まりません。30分で治るわきが手術とか、通院は不要ですという広告に魅力を感じて受診なさる方が多いと思います。
手術症例数が多いと上手かというと、美容外科では当てはまらないことがあります。何度も書いていますが、昨日まで内科の先生だった人が、いきなりわきが手術は上手にできません。わきが手術で失敗してキズが残ったなんて、人に言えないので、泣き寝入りしている方がたくさんいるのです。
形成外科の門を叩いた先生が、専門医も取得せずに美容外科に転向するケースが多くなっているように思います。自分が想像していた形成外科と実際の診療内容が異なる。なかなか手術を教えてもらえず、いつまでたっても上達しない。さまざまな理由で形成外科を去って行かれました。
医師としての生き方はひとそれぞれです。その人の生き方に文句は言えません。ただ、皮膚腫瘍の手術も満足にできない医師に美容外科は無理だと思います。
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整形外科の大先輩
市立札幌病院で形成外科をなんとか‘宣伝’しようと考えていた頃です。整形外科の大先輩から言われました。
『先生、焦るんでない!』
『俺たちだって最初は外科の片隅でやっていたんだ』
『骨が折れたら骨接ぎに行ってた時代さ』
『整形外科って言ったらさ、美容整形ですか?って言われたもんだよ』
『最初は肩身が狭かったよ』
『ギプスの石膏で汚くなるって言われてね』
『でもね、整形外科で骨折を治すと、外科とはまったく違うってことがわかると、患者さんはどんどん来てくれましたよ』
『形成外科は、すばらしい技術があるんだから、これから必ず発展しますよ』
その大先輩をはじめとして、整形外科の先生からはたくさんの患者様を紹介していただきました。整形外科の先生とは何度も一緒に手術をしました。
『いやぁ~先生(私のこと)に来てもらってよかったよ』
『俺たちだけだったら、アンプタ(切断)しかなかった』
子供の下肢の重症の外傷です。骨はバラバラ、皮膚はベロンベロンです。整形外科の先生が骨を治して、私が皮膚と軟部組織を再建しました。深夜や朝までかかって、救急部や整形外科と一緒によく手術をしました。手術した患者様の中には、今でも年賀状をくださる方や結婚式に招待してくださった方もいらっしゃいました。
市立札幌病院では、外科系のすべての先生からとてもよくしていただきました。私の医師として青春時代です。毎日充実していました。器械や設備は予算の関係で揃っていませんでしたが、借りたり他の病院へ行ったりして手術をしていました。
今の若い先生は、形成外科に患者様が来るのが当たり前。他科の先生が紹介してくださるのが当たり前。形成外科医は‘楽して儲かりそう’だから形成外科を選ぶ、なんて思っている先生や学生さんがいるかも知れません。
私の時代は、北大の医局で、先輩でも‘○○さん’とか同期なら‘○○ちゃん’と呼び合って仲良く生活していました。ちなみに私は‘ホンマちゃん’と呼ばれていました。形成外科という新しい科をみんなで発展させようとしていました。
今は開業して、毎日一人で手術をしていますが、私が一人前になれたのは、たくさんの先輩から励まされ、教えていただいたおかげです。私が死ぬ前までに、私の技術や考えを後輩に伝承したいと思っています。
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形成外科と‘宣伝’
昨日、市立札幌病院で‘広報さっぽろ’に形成外科の宣伝を載せてもらった話しを書きました。なんで市立病院の先生が宣伝なんかするの?宣伝しなくても、病院はいつ行っても何時間も待たされるじゃないの?と思われた方(先生)も多いと思います。
今の若い先生に話しても信じてもらえないかも知れませんが、私が形成外科医になった25年前には、宣伝しないと患者様は集まりませんでした。
そもそも、私が北大形成外科に入局すると決めて、親が知り合いに『息子は形成外科に入りました』と言っても『はぁ?整形外科ね』とか『形成外科?美容整形?』なんて反応が多かったものです。
私の恩師、大浦武彦先生が北大病院で形成外科をはじめた頃は、苦労して苦労して形成外科を啓蒙されました。医師会の講演会や市民講座など、あらゆる機会を利用して形成外科を広められました。
北大の関連病院で、一番最初に形成外科を作っていただいたのが旭川厚生病院の菅野(カンノ)院長先生です。北大の先生が旭川に出張して手術をしていました。関連病院を増やすのも大変で、病院長の理解はもとより外科系の先生のご理解がなければできませんでした。形成外科ができるということは、自分の科の患者さんが減ることにもつながりかねません。患者をとられたら困ると思えば形成外科なんて作りませんし紹介もしません。
私が30代に勤務した函館中央病院では、外科の藤井正三院長が、自らたくさんの患者様を形成外科に紹介してくださいました。『形成外科で手術してもらった方がキレイに早く治るから…』と紹介してくださいました。私たち形成外科医は、それこそ一人ひとりの患者様を大切にして、失礼ながら一人ひとりが‘歩く広告塔’だと信じて手術をしました。
一人でも多くの患者様をキレイに治して、おばあちゃんにも『形成外科さぁ行ったらぁ、はぁ、キズがなぁ、キンレイに治るんだわぁ~』と言われて大満足していました。
私がキズにこだわるのも、キレイに治すのに命をかけているのも、北大形成外科の先輩の教えです。
昨夜、北大形成外科の集まりがありました。25年前と比べると全員歳をとって、頭に白いものが増えましたが、親兄弟に会って話すような懐かしい楽しい時間でした。
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新聞の影響
私は平成元年4月から市立札幌病院で形成外科の診療をはじめました。当時は、皮膚科外来で午後から週に2回外来診療を行っていました。
私の職位は皮膚科医師。皮膚科専門医でもないのに、皮膚科医になってしまいました。市立札幌病院内でも形成外科で、どんな治療をしているか知られていませんでした。まして札幌市民で市立病院に形成外科医がいることを知っている人は皆無でした。
宣伝ができないため、外来を開いても‘お客様’の数は少なく、何とか形成外科を‘宣伝’したいと考えていました。平成元年の札幌市長は板垣武四さんでしたが、平成3年から桂信雄市長にかわられました。私は桂市長に直訴して、市立病院で形成外科の診療をしていることを、札幌市の広報に載せていただきました。
保健所に届けた標榜科目ではないので、市立札幌病院皮膚科の‘形成外来’としてです。字で見ると、形成外科も形成外来も同じように見えます。広報さっぽろに載せていただいた時はとても嬉しかったです。
広報さっぽろには、形成外科とはどんな科で、何を治療しているかを掲載していただきました。その中で、わきがを保険で治療できると載せました。札幌美容形成外科の診療方針の原点です。
広報を読まれたご婦人が、古い北海道新聞の切抜きを持参して市立札幌病院へ来院されました。その記事には、3人の形成外科医が登場し、わきがの治療法について述べていました。3人とも開業医でしたが、わきがには保険はききませんと書いてありました。
開業医でも形成外科メモリアル病院などでは、保険診療でわきが手術をしていましたが、北海道新聞に保険がきかないと書かれていたため、そのご婦人はずっと保険がきかないものと信じて疑わなかったそうです。
広報さっぽろと道新の切り抜きを持参され、『本当に保険がきくのですね』『これでようやく手術を受けられます』と手術をお受けになりました。
新聞の影響は大きく、記事の内容は無条件で信用されます。わきが手術は簡単ではありません。北海道新聞社がわきが特集を組んでくれることを期待しています。
医学講座
わきが手術と汗
昨日の日記にわきが手術のことを記載しました。欧米では臭いのために手術を受ける方はマレですが、多汗症の手術は教科書にも記載されています。いわゆるワキガ手術をすると汗も減りますが、ゼロにはなりません。これは次のような理由によります。
汗の原因になるエクリン腺は皮膚の浅い層にあるため、アポクリン腺よりも取り除くことは難しいのです。欧米の教科書にも文献にも、わきが手術をすると多汗症が改善すると記載されていますが、ゼロになるとは書いていません。
わきが手術をして半年くらいの間は汗は劇的に減ります。ところが、術後3ヵ月程度経過すると神経が再生してくるため、少しずつ汗が出るようになります。これはどんな手術法でしても同じです。唯一異なるのがワキの皮膚をすべて切り取ってしまう手術ですが、大きなキズが残るためこの手術を行う美容外科医はいません。
この神経の‘再生’による発汗を‘再発’と勘違いして治っていないと言う方がいらっしゃいます。以前、診察した方は、手術を受けたのに『緊張すると服に汗染みができます!』といらっしゃいました。診察するとワキからは汗は出ておらず、汗染みは肩から出た汗がワキに流れてできていました。
私だって、緊張したり興奮するとワキに汗がたまり、胸の横をツゥ~っと汗がしたたり落ちます。これは生理的な現象で‘病気’でも‘異常’でもありません。
確かに、汗の臭いが気になることもあります。通常は汗をかいたら、下着を取り替えるとか、シャワーを浴びて対処します。一日に3枚も4枚もシャツを取り替える必要があって仕事に差し支えるような方は‘病的’な発汗の可能性があります。
汗を止めるのに、効果的な治療法はボトックスの注射や交感神経の手術です。性格的に緊張しやすい方には、一部のメンタルクリニックで行っている、‘自律神経訓練’があります。交感神経の過緊張を止めるために、自律神経の訓練を行います。効果は速効性ではありません。
わきが手術も汗を止める治療も簡単ではありせん。自分の症状と、何がどう困っているかを整理して相談にいらして下さい。
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新聞記事の誤り
今日の北海道新聞に汗の記事が掲載されています。汗…気になる季節。わきが、多汗症…という見出しです。須藤幸恵さんという記者の署名記事です。以下が北海道新聞の記事の冒頭です。
気温の上昇とともに、気になるのが汗。体温を調整するために重要な役割を果たしているが、わきがによるにおいや、大量に汗が出る多汗症で悩む人も少なくない。対処法は、大量に汗が出る周辺を清潔にするのが基本だが、制汗剤を使ったり、病院で簡単な手術を受ける方法もある。(須藤幸恵)
ここでは3人の医師がコメントを述べていますが、本文にはどこにも‘簡単な手術’とは書いてありません。私が何度も書いているように、わきが手術は簡単ではありません。簡単な手術と書いているのは、インチキ美容外科の宣伝だけです。簡単だと思って手術を受けると、とんでもない目にあいます。
さらに不適切な表現は、『脇の部分を2~3㎝ほど切り、はさみで汗腺を切り取る。アポクリン腺だけでなくエクリン腺も取るため、汗もある程度抑えられる』という表現です。エクリン腺は、アポクリン腺よりも皮膚の浅い層にあるため、はさみで切り取っても全部は取りきれません。エクリン腺もすべて切り取ると、皮膚はペラペラに薄くなってしまい、シワシワの拘縮になりキズがひどくなります。
わきが手術を数多く経験すると、半年位するとしっとりとする程度の汗をかくことは必ず経験します。これは、わきがの再発ではなく、神経が再生しエクリン腺に作用して汗が出るためです。
私は、アポクリン腺が多くて臭いがある腋臭症(わきが)ではなく、汗が多いだけの多汗症にはボトックス注射や交感神経の手術をお薦めしています。交感神経の手術は北海道新聞に出ていた本間英司先生にお願いしています。4月4日の日記に記載しています。
北海道新聞では、交感神経の手術をすると「代償性発汗」がほとんどの人に起こると書いてあります。今朝、早速、札幌南三条病院の本間英司先生にお電話しました。数日前に北海道新聞の取材を受たそうです。学会でも程度の差こそあれ、代償性発汗が起こることは事実として認められているそうです。ただ、手術を受けた全員が代償性発汗で悩んでいるのではなく、大部分の患者様は『あんなに悩んでいた汗がなくなり快適にすごしている』そうです。本間先生は適応を選んで手術を行えば、とてもよい方法だと話されていました。
今日の件については、北海道新聞社にメールしてみます。もし返答があればこのページでお知らせします。
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欠品
良い製品を安く売るチェーンストアで一番困るのが‘欠品’だそうです。おねだん以上の製品は人気が出るので、常に店頭に在庫しておかなければ売れません。製品を常時在庫しておくには費用がかかります。効率よく計画し生産・配送することが大切です。
美容外科はもっと大変です。‘製品’を作ることができるのは、医師免許を持った‘先生’だけです。医師の数は限られている上に、ちょっと教えた程度では上手な先生にはなれません。せっかく高い広告宣伝費をかけて‘お客様’がたくさんいらしても、『申し訳ございません。手術の予約がいっぱいです』では倒産してしまいます。‘先生’を確保しておかないとすぐに‘欠品’してしまいます。
腕が良くて、イケメンで女性に人気があり、人当たりもよく、たくさん‘売り上げ’をあげてくれる先生を雇用するのは至難のわざです。上手になった‘先生’は自分で開業し、お店を出して‘はいさようなら’です。
経営者もあの手この手で‘先生’を引き留めます。全部の手術を教えてしまうと簡単に辞められるので、少しずつ小出しに手術を教えるチェーン店もあります。
私は前職の中央クリニックを円満退職させていただきましたが、こういうケースはマレです。中央クリニック社長様のご理解があったからできました。感謝しています。
医師は医療技術者であり職人です。経営者から見ると、自分自身(私)を含めて一番わがままで扱いにくい職種だと思います。自分が思った通りに手術ができないと、いくらお金を出しても辞めます。逆に、どんなにお給料をいただいても、‘医師としての良心’がとがめるような治療はできません。忙しすぎて体を壊して辞める先生もいます。医師にとっては、毎日の診療で患者様から‘先生ありがとう’といわれるのが一番です。
よい品質の製品は見分けられますが。よい品質の手術をしてくれる医師は簡単には見分けられません。ホームページは‘商品カタログ’のようなものです。良く吟味して選んでください。
医療問題
自殺と救急医療
松岡利勝・農林水産大臣(62)が首をつって自殺した記事が新聞に掲載されていました。搬送されたのは慶応義塾大学病院です。相川直樹病院長が疲れた表情で安倍首相と写真に写っていました。相川教授はもともと外科の先生です。熱傷を研究されていました。外科→救急と活躍され、病院長に就任されました。医師国家試験の出題委員長もなさった立派な先生です。熱傷学会では毎年お会いしています。救命できなかった残念そうな表情が印象的でした。
救命救急センターに搬送されて来る患者様の中には自殺もよくあります。首をつった、飛び降りた、薬物を飲んだ、灯油をかぶって焼身自殺をした、などたくさんの患者様が搬送されてきます。
形成外科に関係するのが、焼身自殺による全身熱傷です。救命技術の進歩により自殺をしても助かることが多くなってきています。自殺した患者様でも、救急車で搬送されてくると救急医は懸命に夜も寝ないで治療に当たります。
全身熱傷を受傷すると簡単に死ねそうに思うかもしれません。ところが先にあげた自殺法の中で、一番最後まで意識があって苦しむのが焼身自殺です。
人間や動物が死ぬ時は心臓や呼吸が止まり、脳や臓器に酸素が行かなくなって死にます。熱傷を受傷しても簡単に心臓は止まらず、意識もあります。自分の体が黒焦げになって、手も指も炭のようになっているのも見えます。
何度もなんども手術を繰り返しても、‘絶対’に元のキレイな皮膚には戻れません。指もなくなってしまいます。さらに、自殺は自己の重大な過失による外傷なので原則的に健康保険は使えません。救命救急センターに入院すると、入院費が最高で一ヵ月に1,000万円にもなることがあります。全身熱傷も治療費が極めて高額になります。私が治療を担当させていただいた患者様で数ヵ月の治療費が2,000万円にもなって、両親が家を売って支払った症例もありました。残念なことに結局その方は亡くなりました。
救急医にとって懸命に治療したけれど命を救えなくて、治療費の借金だけが残った症例はとても悲しくつらいものです。
医学講座
ニキビと毛
昨日のレーザー研究会は皮膚科の先生も多数出席していらっしゃいました。皮膚科でも『たるみ』や『シミ』の治療をしているところが増えているようです。でも、皮膚科で圧倒的に多いのがニキビ治療です。
悪化したニキビは日常生活に支障をきたしますので、保険適応で治療を受けることができます。私は積極的にニキビ治療はしておりません。難治性のニキビは皮膚科の先生をご紹介しています。内服薬(漢方を含む)や外用薬で治療するのが一般的です。
ニキビの多くは毛に関係しています。毛が生えているところを顕微鏡で見ると、ニキビ性の方は毛穴に皮脂がたくさん詰まっています。皮脂はふつう少しずつ自然に排出され皮膚を潤します。ところが何らかの原因で排出できなくなるると硬くなり、そこにバイ菌がつくと感染して真っ赤なニキビになります。軽度の感染でしたら、抗生物質の内服や外用で治りますが、こじれると治りません。
何ヵ月も赤く硬くなって、いくらしぼっても出てこないニキビは、毛の奥深くで炎症をおこしています。こうなると皮膚科でいくらお薬をいただいても治りません。『肉芽腫(ニクゲシュ)』という状態になってしまったニキビは、麻酔をして顕微鏡で見ながら取り除くと驚くほど快くなります。毛の先にどろどろになった炎症性のかたまりがあります。皮膚科で治療してくれるところは少ないようです。札幌美容形成外科の職員は私が‘治療’しています。ご要望があれば時間がある時にお引き受けいたします。
ニキビは毛穴にある皮脂腺が関係していますので、レーザーで毛を焼くと快くなります。昨日のレーザー研究会でも発表されていました。当院の職員も悩んでいたニキビがレーザーフェイシャルで驚くほど快くなりました。毛がなくなりツルツルになって気分も良いそうです。
札幌美容形成外科にはありませんが、スムースビームというダイオードレーザーでニキビを照射すると皮脂腺が破壊されニキビが快くなります。ただし痛いのが欠点です。自分でしぼるよりはマシだと思いますが、レーザーフェイシャルよりも痛いです。
ニキビで悩んでいる女性は驚くほど多いものです。生理前に悪化するニキビなどは女性特有の悩みです。原因の一つである顔の毛が少なくなると、ニキビもできにくくなります。