医学講座

市橋容疑者の目

 市橋容疑者の目が、
 TVで話題になっています。
 今朝のとくダネ!で、
 小倉智昭さんが、
 整形する前の顔の方がよかった。
 お医者さんは
 (整形を)しない方がいい
 なんて言わないんですか?
 出演されていた
 聖心美容外科の先生に質問されていました。
      ■         ■
 手術をしない方がいい
 なんて言う‘先生’は…
 私くらいで…
 チェーン店の先生が…
 そんなことを言うと…
 経営者から、
 明日から来なくてもいい
 と言われてしまいそうです。
 番組で先生がコメントされていたように、
 市橋容疑者の目は埋没法だと思います。
      ■         ■
 もともとの目を見ると、
 眉が吊りあがっていて…
 黒目の上半分が隠れています。
 これは眼瞼下垂症の特徴です。
 埋没法で…
 眼瞼下垂症の男性を手術すると、
 二重はいずれとれます!
 眉の形が変わっているのは、
 おそらく自分で毛を抜いています。
      ■         ■
 挙筋法(きょきんほう)で手術をしていれば、
 目はもう少し大きくなっていたと思います。
 二重の埋没法は
 瞼板法(けんばんほう)だと推測します。
 出演なさっていらした美容外科の先生は、
 コメントでボトックスを使って、
 眉を下げた?
 と話されていました。
 私はボトックスは使っていないと思います。
      ■         ■
 眼瞼下垂症の方は、
 目を開こうとするために…
 眉の上にある前頭筋という筋肉を使います。
 市橋容疑者の眉の上が…
 少し盛り上がっているのは…
 この筋肉の収縮のためです。
 ボトックスを使うと…
 この盛り上がりが減ります。
      ■         ■
 市橋容疑者が、
 手配写真の二重を一重に戻そうとして、
 まぶたを毎日こすっている可能性もあります。
 実物の顔は、
 この手術後の顔よりマシだと思います。
 手配写真の顔ばかり強調されていると、
 また取り逃がすおそれがあります。
 顔以外の、
 歯ならび、
 歯の咬み合せ、
 長身(180㎝)など、
 もっと情報を提供すべきです。
      ■         ■
 市橋容疑者と同じ顔の男性が…
 札幌美容形成外科へいらしたとすれば、
 私でしたら…
 眼瞼下垂症手術をおすすめします。
 目が大きくなって…
 ものが見やすくなります。
 千葉大学に入学する学力があるのだから…
 頭が悪い人ではないと思います。
 もう少し目を開いて…
 自分がしたことをよく見つめて…
 早く自首して罪を認めることをすすめます。
 市橋くん、あなたの二重はいずれとれます。


市橋達也容疑者(30)
手術前と手術後

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院長の休日

市橋容疑者と整形

 千葉県市川市で2007年3月25日頃に、
 NOVAの英会話講師、
 リンゼイ・アン・ホーカー(22歳)さんが殺害され
 遺体が見つかった事件です。
 死体遺棄容疑で全国に指名手配されている
 市橋達也容疑者(30)とみられる男性が
 2009年10月24日に名古屋市内の美容外科で、
 鼻の手術を受けていたことが報道されいます。
      ■         ■
 今日は休診日だったので、
 午前中にTVを見ていましたら…
 手術を担当された先生が、
 インタビューに出ていました。
 声だけで…わかりました。
 お顔やクリニック名は出ていませんでした。
 私の知っている先生でした。
 (高須先生ではありません)
 学会でもよく発表をされている、
 腕の良い先生です。 
      ■         ■
 札幌美容形成外科にも、
 市橋容疑者の、
 指名手配写真が送られて来ました。
 顔は覚えていますが、
 身体的な特徴は忘れていました。
 おそらく私のところへいらして、
 手術を依頼されても、
 わからなかった可能性があります。
 (来ていないと思いますが…)
      ■         ■
 美容外科で手術を受ける際には、
 本人確認はしません。
 氏名、
 性別、
 生年月日、
 住所、
 電話番号などを書いていただきます。
 ホテルなどに宿泊する際に、
 フロントで記入するのと同じです。
 法律で定められています。
      ■         ■
 保険診療では、
 保険証を提示していただき、
 本人であることを確認いたします。
 自由診療では、
 運転免許証やパスポートで、
 本人であることを確認したりはしません。
 偽名で受診されて…
 偽名で手術を受けられても、
 医療機関では確認できません。
      ■         ■
 性別を男⇔女逆に書かれて…
 不審に思っても聞かないこともあります。
 一部で報道されているように、
 もし女装してお化粧もしていて、
 複数回の整形を受けていると…
 私が見ても…
 元の顔がわからないことがあります。
 変えるのが難しいのは、
 身長…
 くらいでしょうか…?
 声も変えることはできます。
      ■         ■
 名古屋では、
 鼻の手術を受けたそうです。
 シリコンプロテーゼの手術でしたら、
 抜糸は…
 自分で…
 鼻毛切りの鋏ですることも可能です。
 プロテーゼの抜去は…
 自分ではできません。 
 整形を繰り返しても、
 自分が犯したは消えません。
 早く自首して、
 罪をつぐなってほしいと思います。

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医療問題

システム障害

 電子カルテで一番怖いのは、
 システム障害です。
 2008年6月2日には、
 ANAのコンピューターシステムの障害で、
 一日中航空機のダイヤが乱れました。
 電子カルテを導入した病院で…
 もしシステム障害が発生すると、
 診療は大混乱します。
      ■         ■
 いままで勤務したどの病院でも経験しました。
 朝からPC端末の反応が遅く…
 何か変だなぁ~と思っていると…
 院内放送で…
 『ただいまシステム障害が発生しています』
 『各部署は手書き対応で診療を行ってください』
 『復旧の見通しは立っていません』
 という
 悪夢の放送が流れました。
      ■         ■
 私の時代は電子カルテではなく、
 まだオーダリングシステムという、
 検査やお薬の指示をPCで出して、
 医事課まで会計データーを送るという、
 電子カルテの一つ前の世代でした。
 この時はカルテは紙でしたので、
 システム障害が発生しても…
 診療は何とかできました。
 問題は検査やお薬と会計でした。
      ■         ■
 紙カルテの時代には、
 医師の
 読めない
 ミミズが這ったような字
 でも判読さえできれば何とかなりました。
 電子カルテだけで、
 紙カルテがなければ…
 システム障害が発生すると…
 患者さんの情報は何もなくなります。
      ■         ■
 私たちのような、
 個人のクリニックでしたら、
 手術や採血程度の検査は可能です。
 電子カルテがなくても…
 手術はできます。
 会計は手計算になります。
 大きな病院では手計算は無理です。
 大混乱になります。
      ■         ■
 幸いなことに、
 札幌美容形成外科で導入した電子カルテは快調です。
 システムのトラブルもありません。
 予備のサーバーも、
 予備のPCも準備しています。
 万一システム障害
 停電になっても大丈夫なように…
 紙カルテでも対応できるようにしてあります。
 私は慎重なので…
 機械が壊れても…
 対応できる準備をしています。

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医療問題

入退院の管理

 JALやANAが赤字になりました。
 不況によるビジネス客の減少、
 新型インフルエンザによる旅行の減少などで、
 搭乗率が下がり利益が低下したのが、
 原因の一つと言われています。
 特にJALの再建は大変なようです。
 病院のベッドにも… 
 搭乗率があります。
 稼働率(かどうりつ)と言われます。
      ■         ■
 500床の病院は、
 450人の患者さんが入院していると、
 90%の稼働率となります。
 実際には、
 2人部屋を1人で使ったり、
 一日に入院できる人数に限度があるので、
 ベッドが100%埋まることは…
 なかなかありません。
 航空会社は搭乗率を、
 病院は稼働率を上げることが、
 健全経営への第一歩です。
      ■         ■
 入院希望の患者さんを、 
 単純に入院させれば…
 稼働率が上がるかというと…
 そう簡単ではありません。
 病院は大部分が相部屋です。
 男性と女性を、
 同じ部屋には入院させられません。
 男女同室なのは…
 ICU(あいしーゆー)など特殊な部署だけです。
      ■         ■
 外科系の科は…
 手術日程との調整もあります。
 さくらんぼさんが、
 3回も電話で入院日を変更させられたのは、
 手術部との調整もあれば、
 手術予定だった患者さんが、
 急に手術ができなくなったりしたためです。
 私が医師になった30年前の…
 北大形成外科は…
 手術待ちが3年と言われていました。
      ■         ■
 北大病院の他に、
 札幌市内に形成外科はありませんでした。
 天使病院と愛育病院のベッドをお借りして…
 北大の先生が出張して手術をしていました。
 手術がキャンセルになった場合には、
 キャンセル待ちの患者さんに…
 電話で連絡をして…
 来週、手術ができることになりました。
 ご都合はいかがでしょうか?
 と連絡する担当の係がありました。
      ■         ■
 今では信じられないことですが、
 患者さんは病院からの電話を、
 ただひたすら待っていらっしゃいました。
 昔は、形成外科の稼働率は高く、
 病院の優等生でした。
 午前中に退院して、
 午後から入院するというパターンで、
 一つのベッドを2人で使うと、
 稼働率は2倍になります。
 形成外科では稼働率が…
 100%を超えることもありました。
      ■         ■
 入退院の管理は…
 直接、病院経営に響く大問題です。
 看護部長を副院長に昇格させて、
 経営陣に加えた病院では、
 効率的な病床運営ができて、
 病院が黒字になったという話しを…
 聞いたことがあります。
 医師だけの力ではなく、
 看護師さんや事務系の力もお借りしなくては、
 病院の健全経営はできなくなっています。

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昔の記憶

入退院板(ばん)の想い出

 私が北大形成外科の
 チーフレジデントをしていた、
 約25年前の想い出です。
 レジデントと呼ばれる研修医の最後が、
 チーフレジデントでした。
 病棟チーフという役割です。
 北大形成外科病棟の責任者をしました。
 病棟の入退院管理と
 入院患者さんの担当責任者です。
      ■         ■
 病棟チーフは
 入退院(にゅうたいいんばんという…
 B4程度の大きな紙を持っていました。
 この入退院板には…
 病棟の全患者さんの…
 入院予定日や、
 退院予定日が記入されていました。
 大至急入院が必要な患者さんは、
 病棟チーフへ伝えられ…
 入他院板に記入しました。
      ■         ■
 『板(ばん)にのせる』という言葉がありました。
 病室が空いたら、
 一番先に優先的に入院させることを指しました。
 悪性黒色腫などの癌患者さんで、
 大至急入院が必要なので、
 最優先で入院させてくださいという意味です。
 現、市立札幌病院病院長の吉田哲憲先生は、
 皮膚悪性腫瘍の権威です。
 北大時代には、
 吉田先生の患者さんがたくさんいらっしゃいました。
      ■         ■
 外来から病棟へ電話があります。
 本間先生、ごめんね。
 今、いい?
 メラノーマの○○さん、
 具合が悪くていらしるんだけど…
 (ばん)にのせてもらえる
 こんな感じで、穏やかな先生でした。
 病棟チーフは病棟婦長やリーダーと相談して、
 病室をやりくりして入院を決めました。
      ■         ■
 私の時代はすべてアナログで、
 入院申し込みも紙の複写でした。
 病棟チーフは、
 ボックスと呼ばれた、
 入院予定患者さんのカルテを入れた、
 プラスチックの箱と
 この入退院板を持ち歩いていました。
 スタッフの出張予定や…
 手術予定を見ながら…
 どの患者さんをいつ入院させて、
 いつ手術を組むかを決めるのは…
 なかなか大変な仕事でした。
      ■         ■
 私たちは、
 このチーフレジデントを6ヶ月間担当しました。
 その後に…
 形成外科認定医(今は専門医)を取得し、
 地方病院の形成外科医長として赴任しました。
 病棟チーフの間はアルバイトも制限され、
 収入も少なくなり大変でしたが、
 今から思うとよい想い出です。
 電子カルテの時代になって、
 入退院板があるかどうか…?
 私は知りませんが、
 PCにはできない…
 よいものがあったと懐かしく思います。

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院長の休日

グリム会2009

 昨夜、市立札幌病院グリム会がありました。
 市立札幌病院に在籍したことがあるOB医師と
 在籍中の医師の親睦会です。
 OB22名と
 現役の3名の先生、
 合計25名が参加しました。
 市立札幌病院は、
 今年で創立140年にもなる、
 伝統のある病院です。
 私も市立札幌病院で生まれました
      ■         ■
 昨夜、参加した先生の最高齢は86歳。
 80台の先生が何人かいらっしゃいました。
 最初に亡くなられた先生への黙祷がありました。
 その後に各先生の挨拶がありました。
 冗談とも取れないお言葉で、
 『私は昨年、大病をしまして…』
 『危うく…』
 『冒頭で黙祷される側になりそうでした…』と、
 現役時代には、元気いっぱいで、
 バリバリだった先生が気弱に話されました。
      ■         ■
 私がお世話になり、
 大変尊敬していた先生も、
 60台でお亡くなりになりました。
 医師は短命なのかも…?と思いました。
 病気になれば…
 医者も患者さんです
 病気のことをよく知っているだけ…
 自分に残された時間のこともわかります。
 胃癌と食道癌になり、
 お酒が飲めなくなったと…
 話された先生もいらっしゃいました。
      ■         ■
 全員に共通しているのは…
 市立札幌病院に勤務した時代の、
 医師として充実した
 楽しい想い出です。
 私に手術用顕微鏡を買ってくださった
 片岡元副院長にもお会いできました。
 片岡先生は腎臓内科がご専門です。
 まだお元気で、
 宮の森記念病院の会長をなさっていらっしゃいます。
      ■         ■
 現在、市立札幌病院の院長は、
 私の先輩である吉田哲憲(よしだてつのり)先生です。
 自治体病院の経営はどこも大変です。
 札幌市も例外ではありません。
 吉田先生は、
 北大時代にはヨーさんと呼ばれていました。
 とても気さくで優しい先生です。
 山形大学整形外科の荻野利彦先生と同期です。
 下の写真が昨夜の参加者です。
 55歳の私(後列左から2人目)ですら、
 若い方でした。
 全員がまた来年も元気で参加できるように…
 と語り合って会が終わりました。


2009年10月31日
札幌第一ホテルにて

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医療問題

医療とパソコン

 半年前から…
 札幌美容形成外科でも、
 電子カルテを導入しました。
 導入のきっかけとなったのは…
 カルテの保管場所です。
 法律でカルテには、
 5年間の保存が義務づけられています。
 カルテなどの診療記録は、
 医師としての貴重な財産です。
      ■         ■
 開院して5年が経過して、
 カルテの保管場所が少なくなってきました。
 嬉しいことですが、
 カルテは個人情報のかたまりです。
 24時間SECOMの監視カメラで、
 セキュリティーをチェックしています。
 個人情報保護保険にも入っています。
 それでも…
 カルテの管理と保管は大変です。
 信用にかかわる大問題です。
      ■         ■
 電子カルテの導入に当たっては…
 何社かの電子カルテを比較し、
 東京のショールームまで行って、
 現物を確認して慎重に選びました。
 最終的に選んだのは、
 札幌のアイレックスという会社の製品でした。
 私が選んだのは、
 製品自体の使い勝手もそうですが、
 サポート体制でした。
      ■         ■
 どんな大病院で導入している電子カルテでも、
 完璧な製品はありません。
 紙カルテの方が優れている点は、
 たくさんあります。
 電子カルテにして、
 よかった点も
 不便になった点もあります。
 幸いなことに、
 私が選んだ会社は、
 困ったことがあっても、
 すぐにサポートしてくださいます。
      ■         ■
 私が若い頃の大学病院では、
 処方箋や検査伝票の記載は、
 すべて(新人)医師がしていました。
 こうして先輩の仕事を見て覚えました。
 地方病院へ行くと、
 医師は指示簿に記入するだけで、
 検査伝票へは看護婦さんがしてくれました。
 名前を記入することや、
 項目をチェックするのも、
 看護婦さんがしてくれました。
      ■         ■
 昔は…
 指示簿や検査伝票を通じて、
 医師⇔看護師の、
 コミュニケーションがありました。
 汚い字で書いても、
 何とか判読してくれました。
 看護記録も手書きだと、
 誰の字か?
 すぐにわかりました。
 キレイな字で丁寧に書かれていると…
 その人の性格までわかるようでした。
 疲れているのに…
 一生懸命書いたのもわかりました。
      ■         ■
 私は医療分野にPCが導入されるのは、
 時代の流れとして当然で、
 避けては通れないものだと思います。
 電子カルテへの入力が、
 PC画面ではなく、
 携帯端末のようなものから、
 簡単に入力ができて、
 同時に医師⇔看護師が、
 チャットのようにできる電子カルテがあれば、
 ずいぶん使いやすくなると思います。

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医療問題

看護師さんの仕事と記録

 医療というのはチームプレーです。
 医師だけではできません。
 看護師さんは、
 よりよい医療を提供するために、
 なくてはならない大切なパートナーです。
 私は細かくて厳しい医師なので、
 形成外科部長をしていた頃には、
 看護婦さんから嫌われていたかも…?です。
      ■         ■
 最近の看護師さんは疲れています。
 函館の看護師さんが書かれていたように…
 大きな病院ほど、
 記録が多く、
 病室へ行って…
 患者さんのお話しを聞き…
 患者さんのお世話をする時間よりも…
 PCに入力したり、
 書き物をする時間が長いように…
 思うことがありました。
      ■         ■
 病院にPCが導入されて、
 オーダリングシステムや
 (処方や検査の指示を直接PCへ入力)
 電子カルテになってから…
 医師も患者の方を向かないで、
 パソコンの画面ばかり見ていると言われます。
 指示を間違えたり、
 入力ミスがあると大変なので、
 ついつい画面に目が行きます。
 2009年1月2日の日記、
 セカンドオピニオンにも書いてありますが、
 手術を決めるのも、
 PCに入力しなければできません。
      ■         ■
 私が医師になった30年前は、
 検査の指示も、
 お薬の処方も、
 すべて手書きでした。
 医療事務のプロは、
 先生がカルテに書いた
 ミミズが這ったような
 瞬時に判断しなければなりませんでした。
 大学病院で新人医師の仕事は、
 上の先生について、
 先生が言われたことをカルテに記載する、
 ベシュライバーbeschreiberという係りでした。
      ■         ■
 30年前から、
 大学病院の病棟勤務の看護婦さんは、
 記録が大変そうでした。
 医師のカルテより、
 よほど詳しく書かれていました。
 新人ナースが、
 夜10時頃まで、
 サービス残業で看護記録を書いていました。
 残念なことに…
 医師のカルテと看護記録が別だったために、
 私たちが看護記録を見ることは、
 めったにありませんでした。
      ■         ■
 看護師さんの仕事は3交代で、
 複数の人が担当します。
 記録を正確に残さないと、
 一貫した看護ができないことはわかります。
 医師の立場から見ると…
 この記録が重荷になって、
 本来、患者さんの傍に行って…
 お話しを聞いたり、
 お世話をしたりする時間が、
 少なくなっているように思ったことがありました。
      ■         ■
 アナログ時代の地方病院では、
 検査データーは看護婦さんが
 カルテに、
 紙を貼ってくれていました。
 私よりも検査結果をよく覚えている…
 優秀な看護婦さんもいらっしゃいました。
 先生、はい、今日の検査結果です。
 まだデーターが悪いですね。
 こんな会話が成立したのも、
 紙の時代の良さなのかも…?です。
      ■         ■
 今、大病院では、
 PC画面でリアルタイムに検査結果がわかります。
 プリントして患者さんに差し上げることもできます。
 看護師さんが入力した看護記録も、
 医師が外来や医局で見れると思います。
 私は、
 偉そうなことを言える立場ではありません。
 医療というのは、
 患者さんの傍へ行くことが大切で、
 記録がもっと簡単に入力できるようになると、
 患者さんの満足度も高くなると思います。

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医学講座

看護の極意

 昨日らずべりーさんからいただいたコメントです。
私が注意している事、心がけている事、対処の方法の例です。その中でいくつか書かせて頂きます。
五感を使い、非言語的なサインに気づく
病室を退出する時、特に転倒しそうな方はスリッパや靴を次回降りやすいよう向き変えて揃えておく、障害物がないかも見ておく(夜急いでトイレに行く時に転倒される時がある)
 スリッパで足元が危ない場合は、滑らないシューズに変更出来ないかご本人やご家族に相談をしてみる。
頻尿の場合で転倒の危険がある場合は、トイレの近くの病室やトイレ付きの部屋を検討してみる。トイレまで間に合わないや歩行はいまいち厳しい時は、ポータブルトイレや尿器をどうかとお聞きしてみる。
 点滴が500ml×3本(24時間継続の指示ではない場合)の指示の場合、いつもより3時間早く(朝6時、7時~)スタートする事で消灯前に終わらせる事ができ、夜トイレに行く回数が減り、眠れるようになる事もあるので患者さんと相談してみる。
眠れないと訴えがあった時、原因をアセスメントしてその方にあった解決策を一緒に考えて対応を心がけています。第一選択は薬ではなくちょっとした配慮で入眠できる事があります。
 眠れない理由の一例として:{①腰が痛くて眠れない、②寒くて眠れない、③隣の人のいびきがうるさくて眠れない、④昼間寝ていたから眠れない ⑤ずっと眠れない
①の対応としては、整形的な疾患による腰の痛みかベッドのマットが硬くて眠れないのかお聞きします。医師の指示書に湿布や鎮痛剤の指示が記載してあり、ご本人がご希望の場合はそのように対応します。マットが硬くて辛い場合は中敷き布団を敷いたり工夫をしたりします。褥瘡が出来る恐れがあったりする方はエアーマットを入れるよう検討したりします。
②の場合は、熱がないか体温値を確認、室温を少し上げてみる、加湿。足を触って冷たいようであれば湯たんぽ(袋2重に)を足元に入れてお休みになると眠れるかもしれません。いかがですか?とお聞きしてみる。
③空いている部屋があれば一時的に移動して頂き、入眠出来る環境を整える。次の日、その病室に予約が入っている場合もあるのでその事も確認して伝えておく。上に報告しベッドコントロールを検討して頂く。
いびきをかく隣の患者さんですが、起こして注意するべきか悩むところですが、無意識なので罪はないので、その日の夜は無呼吸がないか観察して見守りとし注意しなかった事があります。結果、無呼吸が何秒かあり、朝、いびきがあったうるさかったとは言わず、無呼吸があった事の方が問題であると感じ、無呼吸があったんですとご本人と医師にお伝えし、後日、検査しましょうとなり、睡眠時無呼吸症候群でしたが、軽症だったように記憶してます。
教えてくれてありがとうと言ってくれましたが、大事なくて良かったと思った事でした。
④の方は昼間なるべく起きておくと夜眠れるようになります。中庭に花が咲いていますが気分転換になりますしどうですか?とお聞きしてみたりします。
⑤ずっと眠れない方は、原因が様々であったりします。精神的なものか、眠剤に対する耐性もあって効きが悪いのかアセスメントをして、まずは薬を追加しないで済むようにしてみても追加しない辛い場合は医師の指示書又は指示がこれ以上ない時は、医師に確認して眠剤をお渡しする事があります。
この対応が正しいのか間違ってるのか、迷う事もあります。個別性によって違うにかなっと思います。
 いびきをかいてる人を起こして注意する方もいます。無呼吸の秒数が長い場合は、声かけするかもしれませんが、いびきがうるさいと患者様から言われて、夜中にその方を起こすのは躊躇(ちゅうちょ)してしまいます。トイレに起きられた際で無呼吸の事はお知らせしてもいびきの注意は出来ないです。
      ■         ■
 私はこのコメントを読んだ時に、
 自分が患者だったら…
 こんな看護師さんがいる病院に入院したい…
 と思いました。
 私は大きな病院で、
 30年近く看護師さんと仕事をしてきました。
 正直なところ、
 看護師さん(看護婦さん)と衝突したことも…
 何度もありました。
      ■         ■
 お恥ずかしい話しですが、
 病棟で指示を出す時に、
 看護師さんがここまで考えて、
 患者さんのケアーをしてくださっているとは…
 考えたことがありませんでした。
 申し訳ございませんでした。
 朝の申し送りで…
 先生、○○さんが眠れないそうです。
 眠剤(みんざい)出していただけますか…?
      ■         ■
 はい、不眠時、○○シオン0.125mg
 最初は1/2錠でいいかな…?
 指示簿に書いておくね
 いびきがうるさくて眠れないと聞いたこともありましたが、
 いつも病室は満床でした。
 部屋移動はできませんでした。
 病室を決めるのは病棟婦長(師長)で、
 医師はよほどのことがなければ、
 婦長に一任していました。
      ■         ■
 きっとらずべりーさんの病院では、
 先生も看護師さんも、
 とても穏やかに…
 仕事をなさっているように思いました。
 私の勤務医時代は…
 今よりずっと忙しく、
 あまり細かいところまで
 気配りができませんでした。
 らずべりーさんが書いていただいた
 看護の極意は、
 医学部の学生さんに、
 是非知っていただきたいと思いました。

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医学講座

プロからのコメント

 昨日の院長日記、
 頑張っている人からのエール
 らずべりーさんからコメントをいただきました。
 プロレスの番組があると言われた時、『何時頃あるんですか?何チャンネルであるんですか?』という会話があればなって思いました。
 首から下が動かない方は、テレビのチャンネルを押せないのだからその時間にチャンネルを変えに行くのは自分だと思わないといけなかったと思いますね。ナースコールも恐らく手で押すタイプの物ではなく何らか工夫されて顔の一部を使って押されていたのかなっと推測しました。
 忙しい看護師さんを見てなるべく迷惑をかけたくないとの思いの方もいらっしゃるかもしれません。
 『気を研ぎ澄ます、気を配る』というのは、簡単なようで難しい事なのかもしれません。 特に身体が不自由な方、病状や意識がいまいちで巡視を増やして患者様のサインを見て、聞いたりしながら、組みとらないといけない。
 首から下が動かない方の場合、褥瘡に注意が必要です。新たに作らないようにしないといけないです。
 体の向きの変更や除圧、浴衣などシワ大丈夫かなとか水分摂取や位置、排泄の有無、ナースコールの位置など他に不自由は無いか確認して退出したいところですね。
 新聞に掲載された看護師さんは最後に気づいてらっしゃっています。忙しいと心のゆとりが無くなる事は誰にでもあります。
 忙しいのはあっても、ほんの少しのスペースと気配りと心がけで違うように感じました。
      ■         ■
 私は看護学の専門家ではありません。
 頚部損傷患者さんの看護学で、
 テレビのチャンネルについて、
 看護学校や看護学部の講義で教えるかどうか…?
 正直なところわかりません。
 医学部では、
 このようなとても大切なことは、
 残念ながら教えません。
      ■         ■
 医師国家試験にも出ませんし、
 看護師国家試験の問題にもないと思います。
 実際の現場で、
 先輩に教えられたり、
 患者さんに言われたりして、
 気付くのだと思います。
 私たち医療にたずさわる者は、
 常に患者さんの目線で
 ものを見る必要があります。
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 私が釧路労災病院形成外科で
 医長をしていた時のことです。
 新田一雄先生という大院長先生の
 足の手術を担当させていただきました。
 院長先生でも
 手術後には、
 ベッド上で…
 安静にしていただかなくてはなりませんでした。
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 朝、回診に伺うと…
 『いやぁ~』
 『ベッド上で安静というのが…』
 『こんなに大変だとは思わなかったよ』
 『部屋の電気を消そうと思っても…』
 『ドアのところにしかスイッチがない』
 『こんなことで看護婦さんも呼べないし…』
 『自分が入院するまで気付かなかった』
 と私に話してくださいました。
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 新田先生は私が尊敬する、
 大先生です。
 もう故人となられてしまいましたが、
 元北大第一外科助教授で、
 釧路労災病院を築かれた方です。
 そんな大先生でも、
 部屋の電気のスイッチに気付かなかったことを
 院長として恥ずかしいと話されていました。
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 医学生や看護学生さんには、
 教科書に書いていない…
 ちょっとした大切なことを、
 先輩や患者さんから、
 真摯(しんし)に学ぶ姿勢を、
 しっかりと身につけて欲しいと思います。
 残念なことですが、
 医師も看護師も
 国家試験をパスしただけでは、
 何もできないのです。
 毎日が勉強です。
 私も同じです。
 らずべりーさん、
 ありがとうございました♪

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