昔の記憶

おくりびと

 さくらんぼさんから
 『おくりびと』についてコメントをいただきました。
 私は、まだ見ていません。
 昨年、クライマーズ・ハイ
 見に行った時に、
 『おくりびと』の予告編を上映していました。
 その時に、見たいと思ったのですが、
 残念なことに、まだ見ていません。
      ■         ■
 私はエンバーミング (embalming) という、
 ご遺体の処置に、
 以前から関心を持っていました。
 『おくりびと』とは違います。
 エンバーミングは外科の『おくりびと』
 といったところでしょうか?
 つまり、防腐処置、殺菌消毒、お化粧などを、
 血管に防腐剤や色素を注入して行うのが、
 エンバーミングです。
      ■         ■
 医師でなくてもできるようです。
 欧米では、かなり普及していますが、
 日本ではまだ一般的ではないようです。
 ネットで検索すると、
 何件もヒットします。
 ウィキペディア(Wikipedia)には、
 エンバーミング (embalming) とは、
 欧米で遺体を消毒、保存処理を施し、
 また、必要に応じて修復し、
 長期保存を可能にしようとする技法。
 日本語では死体防腐処理、
 遺体衛生保全などと翻訳される。
 と書かれています。
      ■         ■
 私自身は、
 患者さんが亡くなった後で、
 死後の整形手術をしたことがあります。
 まだ、お若い患者さんでした。
 私が勤務していた病棟の患者さんでしたが、
 他科の患者さんでした。
 残念なことに…
 若くしてお亡くなりになってしまいました。
      ■         ■
 癌の患者さんで、
 癌が顔に出て変形してしまっていました。
 病理解剖をさせていただくことになりました。
 私も何度か診察していたので、
 その方のことを存じていました。
 解剖の前に、
 ご家族から、
 顔の癌の部分だけでも、
 何とか見やすくできないでしょうか?
 と相談があったそうです。
      ■         ■
 私は病棟婦長と主治医から相談を受けました。
 他の部位には異常がなかったので、
 私は病理解剖の最後に、
 癌の部分を切除して、
 きれいな皮膚を移植しました。
 私は解剖の補助という立場で、
 死後の整形手術をしました。
      ■         ■
 後にも先にも、
 死後に手術をしたのはその方だけです。
 ご家族が喜んでいらしたと
 病棟婦長から聞きました。
 私がトシをとって…
 形成外科の手術ができなくなったら、
 形成外科の技術を生かして、
 エンバーミングをしようと思ったのです。
 人間は死ぬ時も、
 死んだ後もキレイでいたいものです。

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医療問題

大学の順位

 早いもので3月になりました。
 卒業式や合格発表の時期です。
 18歳という年齢で、
 これからの人生の進路が分かれます。
 大学
 専門学校
 へ進学する方。
 卒業して就職なさる方。
 さまざまな人生のスタートになります。
      ■         ■
 大学というところは、
 学問を学ぶところです。
 国立大学へ合格するには、
 小さい時から塾に通い、
 家庭教師の先生をお願いして、
 進学校といわれる、
 名門高校に進み、
 そこでも猛勉強をしないと、
 なかなか合格できません。
      ■         ■
 国公立大学の医学部は、
 難関中の難関で、
 名門校といわれる高校でも、
 成績が優秀でなければ
 現役合格はできません。
 名門校を卒業しても、
 何年も浪人して合格する人もいます。
 その位、難関です。
      ■         ■
 私が受験生だった35年前から、
 一番難しいのが
 東大医学部(東大理Ⅲ:とうだいりさん)。
 次に京大医学部、
 慶應医学部と続きました。
 今でもこの順位は同じだと思います。
 私の同級生だった友人にも、
 東大理Ⅲや慶應医学部へ合格した、
 ‘超’優秀な先生がいました。
      ■         ■
 美容外科を専門としている、
 先生にも
 東大理Ⅲや慶應(医)をご卒業された、
 優秀な先生がいらっしゃいます。
 私は頭が悪かったので、
 東大や慶應どころか、
 北大(医)も難しかったので、
 一浪して無難
 札幌医大へ進学しました。
      ■         ■
 私は、今年55歳になります。
 18歳から数えて37年です。
 負け惜しみで言うわけではありません。
 大学の順位は、
 美容外科医の世界では、
 まったく関係ありません。
 美容外科を早くから開設したのは、
 国公立大学ではなく、
 私立医大でした。
      ■         ■
 看護師さんの世界でも、
 大学の看護学科を卒業され、
 看護師・保健師の資格を取得される方がいます。
 一方で、
 3年間の看護専門学校を卒業して、
 看護師の資格を取得された方。
 准看護師として勤務された後で、
 看護師資格を取得される方もいらっしゃいます。
      ■         ■
 看護師としての技量や能力については、
 大卒でも、
 専門学校卒でも
 准看護師→看護師でも
 まったく関係ありません。
 出身校による差もありません。
 実務能力があるのは、
 准看護師→看護師の方です。
      ■         ■
 私が申し上げたいのは、
 大学の順位はあっても、
 その偏差値が、
 そのまま
 個人の順位
 人間としての価値
 にはならないということです。
 昔、旺文社(おうぶんしゃ)という出版社が、
 大学受験ラジオ講座を放送していました。
      ■         ■
 数学担当の、
 勝浦捨造(かつうらすてぞう)先生
 東北大学助教授→代々木ゼミナール副校長
 がラジオ講座で同じことを話されていました。
 毎年、春にはさまざまな人生があります。
 第一志望に合格できれば最高ですが、
 たとえ第一志望でなくても、
 これからの人生が否定されたのではありません。
 その人その人の生き方が
 一番大切なのだと思います。

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院長の休日

札幌市形成外科医会2009

 平成21年2月28日(土)
 札幌市形成外科医会(新冨芳尚会長)の
 例会が開催されました。
 この院長日記の一番最初が、
 2006年10月22日(日)でした。
 昨日10月21日(土)札幌市形成外科医会がありました。
 出席者は新冨芳尚会長、武藤靖夫先生、
 有賀昭俊先生、本田耕一先生、松本敏明先生など
 札幌市内形成外科重鎮の諸先生のほか
 札幌市内の形成外科医の大部分が参加いたしました。
 と書いてあります。
      ■         ■
 昨夜はKKR札幌医療センター斗南病院形成外科科長、
 佐々木了(ささきさとる)先生の講演がありました。
 佐々木先生のご専門は、
 血管やリンパ管などの異常が原因となる、
 さまざまな疾患の治療です。
 従来の形成外科手術では治せなかった、
 血管異常による変形を、
 硬化療法(こうかりょうほう)という、
 薬剤を使った治療で見事に治します。
      ■         ■
 佐々木先生のところへは、
 北海道のみならず、
 日本全国から患者さんが治療にいらしています。
 こちらの血管腫・血管奇形の患者会
 協力医師としてもご活躍です。
 また、血管腫・血管奇形研究会
 代表世話人もなさっていらっしゃいます。
 さまざまな血管異常の患者さんを
 どうやって治していくかという治療戦略について、
 詳しく解説してくださいました。
      ■         ■

佐々木 了先生

      ■         ■
 佐々木先生の講演の後で、
 札幌中央形成外科の
 故武藤靖夫先生を偲ぶ会が
 約2時間半にわたってありました。

武藤先生を偲ぶ会

      ■         ■
 札幌スキンケアクリニックの
 松本敏明先生の司会で、
 札幌中央形成外科院長で、
 ご子息の武藤英生先生が、
 スライドを使って、
 お父様である、
 武藤靖夫先生の生い立ちから、
 昔のススキノでの診療風景などを
 ご紹介してくださいました。
      ■         ■
 武藤靖夫先生が
 札幌中央整形をご開業なさったのが、
 昭和35年(1960年)。
 当時、二重まぶた埋没法が5,500円。
 大卒初任給が1万円台だったので、
 現在でいうと10万円程度だったのでしょうか?
 休診日は毎月第三日曜日だけ。
 つまり月に一度しか休まず、
 ススキノの角で
 診療を続けられました。
      ■         ■
 お若い頃の武藤靖夫先生の、
 素敵な写真がたくさんスクリーンに映りました。
 とてもハンサムで
 素敵な先生でした。
 参加者全員が、
 口々に優しい先生だった
 言われていました。
 武藤先生の想い出を、
 参加した先生が一人一人話されました。
      ■         ■
 昨日の参加者。
 浅見謙二先生、大谷地形成外科・美容外科クリニック
 有賀昭俊先生、二十四軒中央クリニック
 飯田和典先生、耳鼻咽喉科、麻生病院
 奥田康二先生、札幌ストレスケアクリニック
 上林淑人先生、宮の森スキンケア診療室
 川嶋邦裕先生、市立札幌病院形成外科
 國分一郎先生、こくぶクリニック皮膚科形成外科
 佐々木 了先生、斗南病院形成外科
 新冨芳尚先生、蘇春堂形成外科
 竹野巨一先生、時計台記念病院
 野平久仁彦先生、蘇春堂形成外科
 松本敏明先生、札幌スキンケアクリニック
 皆川英彦先生、北海道がんセンター形成外科
 武藤英生先生、札幌中央形成外科
 吉田哲憲先生、市立札幌病院

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医学講座

へそのゴマ

 函館の看護師さんから
 コメントをいただきました。
 さくらんぼさん
 へそのごま・・・ですが、
 ゴマといわれるものは垢です。
 その垢が長年蓄積されると
 本当にボタンくらいの大きさにまでなります。
      ■         ■
 私の場合は小豆くらいのゴマを
 へその奥からとってもらいましたが、
 今回はそのゴマと以前腹腔鏡をした
 おへその傷にバイ菌がついて臍炎になりました。
      ■         ■
 ふだんからお風呂上がりなどに
 ベビーオイルと綿棒を使って
 表面部分をきれいにしておくとよいそうです。
 私のかかった外科の先生は、
 心配ならばオキシドールを薬局で買って
 綿棒に塗ってとってもいいですよと言われました。
      ■         ■
 私のように炎症を起こすと、膿がでます。
 そのようになると炎症を起こし
 細菌感染しているので悪臭がします。
 そうなった場合は必ず
 外科か皮膚科を受診しましょう。
 治療は消毒して(ひどい場合は膿をだして)
 抗生物質を服用します。
      ■         ■
 あと私が看護師として
 外科のクリニックにいた時のことですが、
 生まれて一度も
 おへその手入れをしたことがない方が来ました。
 おへそを見ると真っ黒なソラマメくらいのものが見えています。
 ドクターがセッシ(ピンセット)でとってもとれません。
 もうこうなると自分でとることは不可能です。
      ■         ■
 結局そのクリニックで手術することになりました。
 局所麻酔で簡単に皮膚とへそのごまを取り外しました。
 結局おへその奥まで続いていましたので、
 ものすごい幅で
 ものすごい長さのへそゴマが取れました。
      ■         ■
 へその形も人それぞれで、
 でべそ、
 平らなおへそ、
 奥に引っ込んでるへそ
 いろいろです。
 皆さんもへそのゴマは清潔に保ちましょう。
 ただ、無理に取ろうとせず、
 ベビーオイルなどを使って
 やわらかくしてからとるといいでしょう。
      ■         ■
 もちろん変なにおいがする液が出てきたり、
 おへそが赤く炎症していたり、
 少しでも異常がある方は病院へ行ってください。
 臍炎(へその炎症)を起こしてしまうと
 かなり処置で痛みがありました。
 2日前に経験した話でした。
 さくらんぼさん、こんな感じでどうでしょうか?
      ■         ■
 貴重な体験談と経験談を
 ありがとうございました。
 形成外科にもへそのゴマの患者さんが
 いらしたことがありました。
 地方の病院に勤務していた時です。
 先生、へそにホクロの癌ができた
 へそにある、
 固い黒い腫瘤(しゅりゅう)を主訴に、
 患者さんが受診されました。
      ■         ■
 予診(よしん:私が診察する前に、お話しを伺うのが予診)
 をとった若い先生が、
 何でしょうね?
 メラノーマ(ホクロの癌)ではないと思いますが…?
 と不思議な顔をしていました。
 函館の看護師さんのコメントのように、
 摂子(せっし:ピンセットのこと)で引っぱっても、
 びくともしない固い腫瘤(しゅりゅう)でした。
 表面はややザラザラしていて、
 真っ黒でした。
      ■         ■
 昔の皮膚科の教科書には、
 へそのゴマが載っていました。
 確か…
 腫瘍(しゅよう)と間違えないように…
 と書いてあったように記憶しています。
 一度見ると誤診はしませんが、
 大都市の大病院で研修しても、
 経験できる疾患ではありません。
      ■         ■
 私は、
 局所麻酔はせずに、
 石のように硬いへそのゴマを
 手術用の器械で少しずつ崩して、
 取りました。
 一般的な取り方は、
 函館の看護師さんが書いてくださったように、
 ベビーオイルで柔らかくして、
 無理をせず、
 少しずつ取るのがベストです。

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医療問題

レーザーと価格

 以前の日記に書きました。
 美容外科の二重まぶたは、
 安売りのティッシュとは違います。
 ティッシュは特売でも中味は同じですが、
 低価格の整形にはワナがあります。
 私が美容外科医になる前1997年のことです。
 帯広厚生病院に勤務していた時に、
 手術室の看護婦さんが…
 帯広市内の有名エステ(全国チェーン)に行きました。
      ■         ■
 ワキの脱毛(針脱毛)を50万円で契約しました。
 当時はワキ脱毛=50万円が相場でした。
 その脱毛法は、
 電気で毛根を焼く施術でした。
 電気メスのような機器を使い、
 専用の脱毛針を毛穴に刺して、
 通電して毛根を焼く治療です。
 厚生労働省は、
 医療機関以外での施術を禁止しています。
      ■         ■
 看護婦さんは、
 こんな治療を、
 エステで無資格の人がしても、
 いいのかなぁ~と思いながら、
 施術を受けたそうです。
 いざ、脱毛がはじまると…
 針を刺して電気を通すと…
 飛び上がるほど痛い!
 痛いなんてモンじゃない!
 とにかく苦痛だったそうです。
      ■         ■
 私はその看護婦さんから相談を受けました。
 当時、医療機関(美容外科)では、
 局所麻酔をしてから、
 針脱毛をするのが当たり前でした。
 エステでは麻酔ができません。
 私は、
 もう少しで
 レーザー脱毛が主流となること。
 エステよりも
 医療機関で脱毛すること。
 をお話ししました。
      ■         ■
 ちょうどその頃、
 東京の日本医学脱毛学会で、
 日本ではじめて、
 米国製脱毛用レーザーの展示がありました。
 参加した高名な美容外科の先生が、
 ズボンの裾をめくって、
 自分のすね毛にレーザーを当てていました。
 東京都渋谷区千駄ヶ谷の
 津田ホールであった学会でした。
 札幌スキンケアクリニックの、
 松本敏明先生が会長でした。
      ■         ■
 最初は、
 レーザーで脱毛ができる筈がない。
 しばらくたったら生えてくる。
 永久脱毛にはならない。
 などさまざまな意見が出ていました。
 そのレーザー脱毛の機器は、
 3,300万円もしました。
 サイノシュア社製で、
 日本ではJMEC(ジェイメック)という会社が代理店でした。
      ■         ■
 私は、札幌中央形成外科副院長に
 就職することが決まっていました。
 シミ取り用レーザーを
 購入しようとなさっていらした、
 武藤靖夫先生を説得して、
 私は札幌で2台目の、
 レーザー脱毛機を導入しました。
 このレーザー脱毛は、
 大ヒットしました。
 私は自分の腕と左下腿に照射し、
 レーザー脱毛の効果を確認していました。
      ■         ■
 現在、札幌美容形成外科では、
 ワキのレーザー脱毛が一回9,600円です。
 平成10年(1998年)に、
 札幌でレーザー脱毛をはじめた時は、
 一回の価格が今の10倍もしました。
 レーザーも進歩しました。
 現在の機器は冷却ガスがついているので、
 痛みもずっと少なくなっています。
 レーザー機器の本体価格も
 最初の半分以下になりました。
      ■         ■
 価格競争によって、
 レーザー脱毛の価格は安くなりました。
 札幌美容形成外科より安い価格のお店
 たくさんあります。
 ただ、レーザーを照射するのは看護師です。
 丁寧に照射するか?
 痛くないように照射するか?
 は看護師の腕にかかっています。
      ■         ■
 レーシック手術も、
 もっと価格が下がります。
 安全性も高くなると思います。
 お金儲けの道具として、
 レーシックを施術している医療機関では、
 手術を受けられないのが安全だと思います。
 レーザー機器には、
 メンテナンス費用もかかります。
 しっかりメンテナンスをしている医療機関は、
 それなりの料金を請求するはずです。

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医療問題

レーシック手術のトラブル

 平成21年2月26日、朝日新聞朝刊の記事です。
 レーシック手術の患者
 角膜炎に集団感染 銀座の眼科
 東京都中央区は2月25日、同区銀座6丁目の銀座眼科(溝口朝雄院長)で、視力回復のためのレーシック手術を受けた患者67人が感染性角膜炎などを発症、2人が入院していると発表した。区保健所は手術器具の滅菌処理が不十分だったことをはじめ、同眼科の衛生管理全体に問題があった疑いがあるとみて調べている。
      ■         ■
 区保健所によると、67人は銀座眼科で昨年9月から今年1月にかけてレーシック手術を受けた後、発症した。同眼科ではこの時期に計639人が手術を受けたという。
      ■         ■
 入院中の2人のうち1人は回復しているものの、もう1人の症状の程度は詳しく分かっていない。同保健所は銀座眼科に対し、当分の間、レーシックを含めすべての診療を休止するよう指導した。
      ■         ■
 区保健所に対する銀座眼科の説明では、同眼科はレーシック手術の際に角膜を削る「マイクロケラトーム」などの手術器具の消毒に、高温高圧の滅菌装置「オートクレーブ」を使っているが、この機械のサーモスタットに不具合があり、滅菌に必要な温度に十分に達していなかった、という。
       ■         ■
 また、手術時に医師の手袋着用が徹底されていなかったり、消毒薬の使用が十分でなかったりした疑いもある。区保健所は銀座眼科の衛生管理全般に問題があったとみて調査している。
      ■         ■
 銀座眼科はホームページで「検査当日の手術も可能」「平日のほうがお得です」などと宣伝していた。「安全で最高なレーシックを安価で皆様に」「機械や手術内容は(他と比べて)変わることはなく、むしろ最高のもの」ともうたっていた。
      ■         ■
 区保健所に今月上旬、千葉県内の病院から銀座眼科で手術を受けた人が感染性角膜炎で通院していると連絡があって発覚した。立ち入り調査は18日から23日にかけて計3回行われた。
      ■         ■
 角膜感染症に詳しい道玄坂糸井眼科医院(東京都渋谷区)の糸井素純院長によると、レーシック手術は急速に広がり、値段も安くなっている一方、手術前の説明や手術後の管理がおろそかになっているケースもあるという。手術は刃物のような器具で角膜を傷つけるため、傷口から細菌などが入り込んで感染症が起こりうる。そのため、手術後は一定期間の経過観察が必要になる。
      ■         ■
 糸井さんは「医療現場も玉石混交で、術後の合併症の可能性や術後管理の重要性が十分に説明されていないケースも少なくない」と指摘する。
      ■         ■
 厚生労働省は25日、すべての医療機関に衛生管理の徹底を指導するよう全国の都道府県に通知した。同省によると、レーシック手術を巡る大きなトラブルや院内感染事例は報告されていない。ただ、同省指導課は「レーシック手術は急速に増えているとみられるが、保険診療外の自由診療で行われていて実態を把握できない部分がある。同様の事例が起きている可能性はある」としている。

レーシック手術

(以上、朝日新聞より引用)
      ■         ■
 私が何度も指摘していた、
 低価格レーシックによる、
 健康被害が報告されました。
 2008年8月4日に書いた
 レーシック詐欺です。
 医療は安売りの床屋や美容室とは違います。
 目というのは大切な大切な器官です。
 もし、レーシックで失明でもしたら大変です。
 髪の毛は、
 虎刈りなっても、また生えますが、
 視力を失うと取り返しがつきません。
 レーシック手術は慎重に受けてください。
      ■         ■
 私の声が届かなかったのが
 とても残念です。
 医療機器の進歩によって、
 従来は不可能だったことが…
 可能になってきています。
 レーシックもその一つです。
 眼科専門医でなくても、
 器械とちょっとした技術があれば、
 近視矯正の手術はできるようです。
      ■         ■
 美容外科の二重まぶた埋没法も同じです。
 でも…
 何か起きた時に
 適切に対処できるか?
 トラブルに対処できる先生か?
 ここが運命の分かれ道です
 医療にはトラブルや事故がつきものです。
 私が手術をしても…
 100%同じように手術はできません。
 患者さんがお一人お一人違うからです。
      ■         ■
 私はレーシックの相談を受けた時に、
 信頼できる
 複数の眼科医が
 推薦してくれるなら
 手術を受けてください。
 と申し上げています。
 銀座眼科の先生は、
 TVに出て謝罪していました。
      ■         ■
 高圧蒸気滅菌器(オートクレーブ)という
 滅菌する器械のトラブルが原因と報告していました。
 札幌美容形成外科には、
 予備も含めて3台の高圧蒸気滅菌器があります。
 滅菌されると、
 インジケーターの色が変わります。
 私は、
 オートクレーブの問題だけではないと思います。
      ■         ■
 高価なレーザー機器はふつう一台だけです。
 その一台のレーザー機器で
 流れ作業的に手術をします。
 レーザー機器本体と、
 滅菌して交換する部品との接続部などが
 汚染されていたのでは?
 と疑ってしまいます。
 そもそも滅菌して使用する部品(刃)は
 患者さんの数に足りるだけ準備されていたのでしょうか?
      ■         ■
 いい加減な美容外科では、
 手術に使う器具を、
 しっかり滅菌しないで使いまわししたり、
 コラーゲンや
 ヒアルロン酸など、
 本来は患者ごとに準備すべき製品を、
 使いまわしすると
 耳にしたことがあります。
      ■         ■
 内装は豪華でキレイにしても、
 手術に必要な
 医療機器や
 滅菌設備など、
 目に見えないところで
 手抜きをするクリニックはあります。
 安かろう悪かろうで、
 健康被害が出てからでは遅すぎます。
 クリニックは慎重に選んでください。
 (高くて悪い最悪のところもあります)

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医学講座

ワキガ手術と‘再発’

 他院でワキガ手術を受けたのに、
 臭いが取れない!
 手術前と変わっていない!
 と受診なさる方がいらっしゃいます。
 保険医療機関で手術を受けた方にも
 自由診療で受けた方にも
 治っていない!
 と言われる方がいらしゃいます。
      ■         ■
 かつて私が手術をさせていただいた方で、
 手術を受けたのに
 まだ臭いがする
 と再手術をした方がいらっしゃいました。
 2007年10月15日の日記、
 客室乗務員さんの手術
 に書いてあります。
 私が美容外科医になる前でした。
      ■         ■
 国際線の客室乗務員をなさっていらっしゃる
 美しい方でした。
 手術は順調に終わり、
 キズもキレイに治りました。
 手術後は長時間勤務も苦にならなくなり、
 快適にお仕事に復帰されました。
 数ヵ月後の診察の時に、
 『先生、臭いがするんです』
 と言われました。
 私は耳を疑いました。
      ■         ■
 手術後数ヵ月は、
 まったく気にならなかったそうです。
 ある日、長時間の勤務を終える頃に気づきました。
 以前とは比べものにならない位、
 汗は減り、
 臭いも通常は気になりません。
 その方は注意深くワキを観察されました。
 臭いが出ていたのは、
 おっぱいの横に近い、
 腋毛も生えていないところからでした。
      ■         ■
 形成外科や美容外科の教科書には、
 ワキガ手術をする範囲は、
 毛の生え際から1~2㎝と記載されています。
 標準的な範囲は、
 教科書には10×4㎝程度と書かれています。
 (腋臭症の治療、克誠堂出版、p64)。
 今、私が手術する範囲は、
 広い方だと10×18㎝にもなります。
 今までの最高は、12×20㎝でした。
      ■         ■
 臭いに対するこだわりは、
 総合病院の形成外科で手術を受ける方と、
 美容形成外科のクリニックでは違います。
 美容外科では、
 キレイに確実に治るというイメージがあります。
 経過を診察していて、
 臭いが残っていると、
 本人の次に気になるのは執刀医です。
 私は手術後に必ず臭いをチェックしています。
      ■         ■
 他院で手術を受けたのに、
 臭いがする
 と受診なさる方の中には、
 次の3通りがあります。
①明らかな汗腺の切除不足。
②手術する範囲が足りない。
③手術は完璧でワキガ臭もない。
 …なのに患者さんは臭いがすると訴える。
      ■         ■
 ①は吸引法で手術を受けた方に多い症状です。
 汗腺の切除が不足していて、
 ほぼ全範囲にアポクリン腺が残っています。
 手術直後から臭いがするはずです。 
 ②は客室乗務員さんの手術のように、
 おっぱいの近くや、
 切除範囲の周囲に、
 アポクリン腺が残っています。
 形成外科専門医が手術をした例もあります。
      ■         ■
 ③はアポクリン腺からのワキガの臭いはないのに、
 汗の臭いが残っている方です。
 もともとワキガではないか、
 ワキガと緊張性発汗が重なっている方にみられます。
 多汗症手術の難しさという日記に書いてあります。
 私が嗅いでも職員が嗅いでも、
 臭いがしないのに、
 臭いがすると訴える方もいらっしゃいます。
 HPに書いてあるように、
 汗腺がガンのように再発することはありません。

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医学講座

ペースメーカー

 平成21年2月23日(月)朝日新聞朝刊
 声の欄への投稿です。
 車内の携帯にびくびく無用
 団体役員 日高進 (東京都町田市78)
 「携帯びくびく命がけ優先席」(7日)を読みました。
 日本心臓ペースメーカー友の会副会長の私としては、
 投稿の方の心理的な不安は理解しつつも
 「そこまで不安がる必要はありません」
 と一声かけたくなりました。
      ■         ■
 確かに、
 総務省は携帯電話とペースメーカー装着部位の距離を
 「22㌢程度以上はなすこと」という指針を示しています。
 この指針に基づいて、
 交通事業各社は
 「優先度付近では携帯電話の電源をお切り下さい」
 と表示し、
 アナウンスしています。
      ■         ■
 総務省の指針は、
 もちろん科学的な実験を踏まえたものですが、
 「22㌢」には万一の事故に備えての、
 厳重な危機管理意識が込められています。
 とくに古い機種の方は影響する恐れもあります。
 私も機器を装着しており、
 ペースメーカーの説明書も
 「22㌢以上離れること」とあります。
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 しかし、「最近の機種は携帯電話の影響は受けない」と言えます。
 これも科学的なデータに基づいています。
 ですから、過剰な心配は無用です。
 車内では、どうか、もっとリラックスしてください。
 ただし、このことは心臓のペースメーカーに限ったことで、
 優先席でのマナーが大切なことは言うまでもありません。
 (以上、朝日新聞より引用)
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 心臓ペースメーカーを装着した方にとって、
 携帯電話は不安だと思います。
 私たち外科医にとっても、
 心臓ペースメーカ装着者の方の手術は、
 電気メスという医療機器の使用で問題があります。
 心臓ペースメーカの埋込み手術や、
 ペースメーカ埋込み後のトラブルで、
 何度か循環器の先生から手術を依頼されました。
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 電気メスは、
 携帯電話以上にペースメーカーに影響を与えます。
 電気を使って血を止める(止血)のが
 電気メスです。
 体内に電流が流れます。
 最初に手術を依頼された時は、
 緊張して手術をしました。
 ペースメーカーのすぐ上の皮膚の処置です。
 電気がまともにペースメーカーへ届きます。
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 最初はメーカーの技術者と一緒に
 機器をつけて
 異常がないか確認しながら手術をしました。
 10年くらい前のペースメーカーでも、
 異常を生じたことはありませんでした。
 電気メスも影響を与えにくい、
 バイポーラーというモードを使用しました。
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 私は循環器の専門医ではありませんが、
 投稿者の
 日本心臓ペースメーカー友の会副会長様と同じように、
 ペースメーカーを装着していても、
 びくびくしなくても大丈夫だと思います。
 現実には、
 ペースメーカーを装着して、
 携帯電話を使用していらっしゃる方は、
 かなり多いと思います。
 ご不安な場合は、
 担当の先生とよくご相談になると、
 安心していられると思います。

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医療問題

ご高配(こうはい)により…

 さくらんぼさんからご質問をいただいた、
 ○○教授のご高配により…
 のご高配を調べてみました。
 Yahoo知恵袋には、
 特別に配慮して頂いて・・・ということです。
 「ご高配」・・他人が配慮してくれることの尊敬語です。
 と書かれていました。
 私も、その通りだと思います。
      ■         ■
 教授の人事権に書いたように、
 昔は(今も残っていますが…)、
 教授に絶大な人事権がありました。
 医療機関の経営者にとって、
 一番の難題は、
 優秀な医師をいかに確保するかです。
 確実なのは教授にお願いすることでした。
 今は、インターネット上に、
 医師の就職を斡旋(あっせん)するサイトが
 たくさんあります。
      ■         ■
 医師といえど…
 ふつうの人間です。
 ふつうの方が就職を探す時に考える、
 給与と待遇をまず見ます。
 他の職種とちょっと違うのは…
 自分にとって勉強になるか?
 自分の技術能力UPにつながるか?
 ということを考えるかも?
 というところでしょうか?
      ■         ■
 2007年2月3日に、
 腕を磨くという日記を書きました。
 医師はある意味‘職人’なので、
 有名シェフや棟梁(とうりょう)の下で働き
 技術を身につけ腕を磨く必要があります。
 つまり、
 多少、お給料が安くても…
 仕事が忙しくて休みがなくても…
 有名な病院で、
 有名な先生と働けば、
 自分の腕も上がるかなぁ…?
 という思いで就職先を選ぶ可能性があります。
      ■         ■
 大病院の部長クラスになると、
 病院長からの要請もあります。
 ○○医科大学は助教授を送ると言っている。
 今の○○先生は患者の評判もよろしくないし…
 診療収入も下がる一方です。
 医局としてなんとか考えていただけませんか?
 なんて会話が…
 昔はあった?と聞いたことがあります。
      ■         ■
 大切なジッツ(関連病院)を失いたくなければ、
 教授は人事異動を考えます。
 そこで…
 めぼしい先生に声をかけます。
 ○○先生、
 ○○市民病院の主任部長として、
 4月から行っていただけませんか?
 というような電話をかけることになります。
 教授も先生も忙しいので、
 電話が一般的だと言われていました。
      ■         ■
 こうして赴任なさった先生の挨拶状には、
 私こと、
 ○○大学医学部○○教授のご高配により
 平成21年4月1日付けで
 ○○市民病院主任部長として着任いたしました。
 と書かれるという次第です。
 今は、大学の教授から推薦ではなく、
 自分から応募して就職する先生もいらっしゃいます。
 美容外科医の世界では、
 ○○教授のご高配は、
 聞いたことがありません。

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院長の休日

デパート

 平成21年2月22日(日)北海道新聞朝刊
 生活欄_いずみ_への投稿です。
 デパート
 旭川の学生時代、
 長期休みには丸井さんで、
 普段は西武でアルバイトをしていた。
 単なるこづかい稼ぎだったが、
 初めて「働く大変さ、社会の厳しさ」を教えられた。
      ■         ■
 丸井さんでは、お辞儀から声の出し方まで、
 お客さまが「また来たい」
 と思ってくださるように、
 心をこめることを何度も言われた。
 的確な商品知識でお客さまをサッと誘導し、
 手際よく包装紙に包み、
 「ありがとうございました」
 とお辞儀する社員さん。
 きびきびとまぶしく、
 カッコよく見えた。
      ■         ■
 西武では、
 薄暗い店内で作業していると
 「お疲れさま、よろしくね」
 と必ず声をかけてくれた。
 どちらの店員さんも、
 いつも「お客さまのために」
 を口にしていた。
 買い手の
 「ありがとう」の一言のために
 頑張っている人がいることを知った。
      ■         ■
 そのどちらもが、
 存続の危機を迎えている。
 今や便利な郊外店や
 安いスーパーが増え、
 やりとりもなく
 ネツトで簡単に
 欲しいものが手に人る。
 でも、
 人とのつながりが
 商品を売る以上に大切なことを、
 どちらの百貨店の店員さんも
 よく知っていた。
      ■         ■
 旭川には、
 かつて閉園の危機と言われた動物園を、
 日本一に押し上げた
 知恵と熱意に満ちた人がいる。
 私たちの住んでいる街を、
 デパートの灯で、
 明るく照らしていてほしいと、
 心から願っている。
 週末は、
 デパートに行こうか。
 高い買い物はできないけれど。
 利根川 嘉子(45歳・主婦)
 =旭川市
 (以上、北海道新聞から引用)
      ■         ■
 日曜日の朝に、
 さわやかな文章にめぐり合いました。
 私たちが子どもの時代は、
 デパートへ行くのが楽しみでした。
 読者の声の欄へも、
 農作業が終わった秋に、
 札幌のデパートへ買い物へ行くのを、
 楽しみにしていらしたという、
 元農家の方の投稿もありました。
      ■         ■
 世の中は100年に一度の大不況です。
 政治にも期待できません。
 でも、
 閉園の危機と言われた
 旭山動物園を思い出しましょう!
 知恵を出して、
 自分たちにしかできない何かを、
 見つける努力をしましょう!
 そうすれば…
 必ず、将来が見えてくるはずです。
 旭川市の利根川
 すばらしい文章を
 ありがとうございました。

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