医療問題
米国の医療
私は米国に住んだこともありませんし、留学した経験もありません。
学会で知り合った先生や、米国で開業している先生から伺っただけです。
その程度の知識でも、米国の医療制度が良いとは決して思いません。
米国のようにだけは、なってほしくないと思います。
■ ■
米国で一番偉そうにしているのが、保険会社です。
医療の内容に、いちいち文句をつけて、お金を払いません。
私が学会で親しくなった医師は、‘実験的手術’だからと、
保険会社から治療費を支払ってもらえなかったとこぼしていました。
■ ■
その先生が、保険会社から治療費を支払ってもらえなかった手術は、
学会で最新の優れた手術と絶賛され、
PRSという米国形成外科学会誌にも掲載されました。
もう10年以上も前のことです。
■ ■
米国大統領選挙の争点の一つが、医療保険問題です。
平成20年1月30日の日記でご紹介した、
マイケル・ムーア監督のSickoを私は観ていませんが、
そこで問題となった、米国の状況がたくさんのブログで紹介されています。
米国、医療問題、保険と入力して検索すると、たくさんのサイトが出てきます。
■ ■
医療費の高騰。
たくさんの無保険者。
医療費が払えず自己破産。
利益至上主義に走る、保険会社、製薬業界。
こういった業界から、政治献金を受け取った議員による政策。
どれをとっても良いことは一つもありません。
■ ■
医療経営も大切です。
医療からムダをなくす努力も必要です。
限られた医療費で、効率的に医療を行うことも必要だと思います。
ただ、自分が本当に困った時に、
社会が何も手を差しのべられないような医療制度は困ります。
■ ■
四半世紀以上も医師をしていると、さまざまな方にめぐり合いました。
自分は健康で、病気なんかしないと思っている人でも
ある日突然、病気になってしまうことがあります。
医療保険というのは、
相互扶助(お互いに助け合う)という精神の下に成り立っています。
一部の人だけが恩恵を受ける、
一部の保険会社だけが、巨額の利益を上げるような制度は要りません。
医療問題
米国医療訴訟
弁護士の高橋智先生の日記、Sammy通信、2008年2月7日に米国の医療訴訟について書かれていました。
気になったので、原文の読売新聞の記事を検索してみました。
■ ■
2006年6月9日、読売新聞の記事です、YOMIURI ONLINEから引用しました。
賠償額200億円の弊害
最近ニューヨークの裁判所で衝撃的な判決が下されました。
赤ちゃんが脳性まひで生まれたのは
産科医が帝王切開をせずに自然分娩を強行した医療ミスのためとして、
200億円の賠償金を支払えという評決です。
■ ■
米国では、一般から選ばれた陪審員が賠償額も含めた評決を出すので、
原告側の弁護士は、脳性まひの幼児を出廷させ、
陪審員の気持ちをゆさぶりました。
その結果、このような巨額賠償となりました。
■ ■
米国は世界に冠たる訴訟大国で、弁護士は日本の50倍もいます。
医師は、そのための備えが大変です。
血管外科医である私は、毎年約700万円の損害賠償の保険費用を負担しています。
これが日本では、わずか6万円ですみます。
■ ■
米国の総医療費は、日本の7倍の200兆円にのぼります。
考えてみれば、医師の損害保険料や、常軌を逸した200億円の賠償金なども、
医療費から捻出(ねんしゅつ)されるわけですから、米国の医療費が高くなるはずです。
■ ■
訴訟社会の弊害はそれだけではありません。
米国の医師の多くは常に、
「裁判になったら」と言うことを念頭に置きながら診療をしています。
そのため、不要な帝王切開が横行しているのもひとつの例です。
■ ■
ニューヨーク市での帝王切開率は1970年代には全出産の5%でしたが、
2000年代には30%を超えました。
働く女性が多く、帝王切開だと予定が組める、
痛くないといったことも理由に挙げられますが、
訴訟の影響もあります。
■ ■
過去20年間に度々、自然分娩での脳性まひが訴訟になってきました。
帝王切開がこんなに増えても、ニューヨーク市での脳性まひの発症率がこの30年間全く変わっていませんから、
出産形態と脳性まひには因果関係はありません。
しかし、医師としては、訴えられる危険はできるだけ避けたいと考えます。
■ ■
訴訟は、紛争の解決方法として、もちろん有意義なものですが、
医療訴訟をめぐる米国の現状は行き過ぎです。
米国には、患者や家族が医療内容に疑問を持った時、専門家が調査をし、
問題があれば、行政処分を下す仕組みがあります。
ですから、民事訴訟は文字通り損害賠償を求めるために行います。
日本でも医療訴訟が増えてきましたが、単に損害賠償を求めるというのではなく、
「何があったか明らかにするため」に訴訟に臨むケースが多いと言われています。
日本にも米国のようにきちんと行政処分を下す仕組みがあれば、
事情は変わってくるのかもしれません。
■ ■
また、医療被害者がきちっと救済されるためにも、
医療者の過失の有無にかかわらず被害者が救済される無過失保障制度の確立や
医療過誤を専門とする裁判官の育成が急務です。
そうした日本なりの医療事故や医事紛争解決の手段を整え、
医療訴訟については、アメリカを反面教師としたいところです。
■ ■
プロフィール
大木隆生 おおき・たかお
アルバートアインシュタイン医大血管外科教授。
1987年、慈恵医大卒。
モンテフィオレ医療センター血管外科・血管内治療科部長、
東京慈恵会医科大学外科学講座 統括責任者・教授。
(以上、読売新聞HPより引用)
■ ■
私が、札幌医大の学生だった30年前から、米国の医療訴訟と保険料の高さが問題になっていました。
札幌医大では、医学英語という授業科目がありました。
英語担当だった、清水正教授が、米国Newsweek誌から、興味ある記事を引用してくださり、
それをタイプしたプリントが教材でした。
清水教授は、英語の発音がキレイで、とても真面目な先生でした。
今にして思えば、大変な苦労をなさって、教材を作っていただいたと、
清水先生に深く感謝する次第です。
■ ■
その医学英語のテキストで問題となっていたのが、医療過誤保険の高額なことと、
訴訟が多いので、産科医を目指す医学生がいないという社会問題でした。
30年も前から、米国で問題になっていたことが、日本でも現実に問題になっています。
■ ■
弁護士の高橋智先生が日記で書かれていたことも、確かに理解できます。
ただ、日本で、医療訴訟が多くなり、
賠償額が高額になれば、医療過誤保険を引き受ける会社がなくなります。
自動車賠償責任保険のような制度を設ければ別ですが、
医師個人や医師会に任せられている現在の制度では無理です。
■ ■
ちょっとでもリスクがある‘医療’は誰も引き受けなくなります。
リスクが高い診療科目を選択する医学生や若手医師はいなくなります。
しなくてもよい、帝王切開が増えます。
医療費も間違いなく高騰します。
■ ■
医療は車の運転と同じで、条件が悪い道路を走ると
必ず事故に遭う危険性が伴います。
悪路で、視界が悪い山道でも、必要に迫られて走る必要はあります。
どんなに慎重に運転しても、
がけ崩れや橋の崩落にあってはたまりません。
そういう‘医療’もあります。
■ ■
少子高齢化社会になって、医療費はますます増えるばかりです。
将来の医療を担う若い先生が、
自信をもって医療ができるシステム作りが急務です。
弁護士さんが増えて、医療訴訟が多くなる可能性は理解できます。
ただ、医療には避けられない危険性が潜んでいることを理解していただき
訴訟を避けるために、不必要な帝王切開が増えるような事態だけは避けてほしいものです。
医療問題
産院選び
全国医師協同組合の機関紙、JMC News107号に掲載されていました。
“お産難民50万人”。
まるで「受験戦争」と
生理が一週間遅れたら。
第1、
第2、
第3、
と調べて、
産院の席取り競争している妊婦さんも…
情報の乏しい初産婦は『負け組』に…
■ ■
生理が一週間遅れた程度で、受診して予約しないと、
人気が高い産院は、予約で埋まってしまうということでしょうか?
札幌市内では、まだお産ができる産院がたくさんあります。
ここまで、席取り競争をしなくてもよさそうですが、
よい産院を選ぶのは、美容外科以上に難しそうです。
■ ■
家内は、昭和58年に私が勤務していた、函館中央病院で上の子を産み。
昭和60年に天使病院で下の子を産みました。
函館中央病院は、道南の総合病院で、NICUもある立派な病院です。
はじめての子を取り上げてくださったのは、当時の産婦人科医長だった、松浦敏章先生です。
現在は、函館マタニティクリニックを開業なさっていらっしゃいます。
穏やかで、優しい先生です。
■ ■
私は、同じ病院だったので、お産の時に呼んでいただき、分娩室で生まれるところを見ていました。
カメラを持って行き、生まれた瞬間からシャッターを切っていました。
助産婦さんから、「さすが形成の先生!」と言われてしまいました。
私は、内臓のことはわかりませんので、
まず、体表面に異常がないことを確かめました。
顔面に異常はない。
指は5本ある、などなど…
五体満足で生まれて安心しました。
■ ■
下の子は、私が北大形成外科でチーフレジデントをしていた時に生まれました。
子どもには、申し訳なかったのですが、出産には立ち会えませんでした。
それどころか、北大病院で患者様がお亡くなりになり、
病理解剖をさせていただいていた時に生まれたのが長男です。
電話で、長男が生まれたことは聞いていました。
■ ■
私が、天使病院へ行けたのは、消灯時間がとっくに過ぎてからでした。
準夜勤務の看護婦さんに、
今日、生まれた子供の父ですと言って、詰所を訪ねました。
もう、夜も遅かったので、
当然、子どもには会えないだろうと思っていました。
不憫(フビン)に思ってくれたのでしょう、
優しい看護婦さんが、
新生児室のベビーコットで眠っていた長男を、
ガラスのところまで連れてきてくれました。
■ ■
すやすやと眠っていた、長男を一目見て、
安心して、私は自宅へ帰りました。
自宅では、家内の母親が、関西から来てくれていて
上の子の面倒をみてくれていました。
■ ■
私が、自分の子供を産んでもらうのに選んだのは、2人とも総合病院でした。
一人目は、自分が勤務していた病院だったので、当然といえば当然。
二人目は、札幌市内でも評判が高かった、天使病院を選びました。
天使病院には、歴史があり、産婦人科も、小児科も、麻酔科もありました。
■ ■
北大病院や、当時私が住んでいた、北区新琴似からも
比較的近いという、交通の便もありました。
もう自分の子供が生まれることはありませんが、
孫が生まれるとしたら、どこを選ぶでしょうか?
■ ■
20年前と現在では、医療体制も変わりました。
自分が開業医になって、開業医ならではのよさもわかりました。
家内は、天使病院に検診でかかった時など、
待ち時間が長くて大変だったと言っていました。
■ ■
帯広厚生病院や札幌医大病院に私が勤務していた時は、
私の外来は、2時間待ちは、ザラにありました。
それでも、私が外来を終わって、昼食を食べるのは
早い日で、14:00。
遅い日は、16:00にもなっていました。
家内には、
いい病院だから、人気があって、待ち時間も長いのさ。
仕方がないよ。と言っていました。
■ ■
総合病院の産婦人科は確かに安心といえば安心です。
何かあっても、小児科、麻酔科の先生がついています。
その代わり、待ち時間が長い、予約が取りにくいなどの‘デメリット’もあります。
マタニティクリニックの中には、フルコースのディナーがついた産院もあります。
札幌で一番早くに、このフルコースディナーを始めたのが、
札幌マタニティ・ウイメンズホスピタルです。
■ ■
そちらのHPによると、さまざまな妊婦さん向けのサービスがあります。
総合病院では、絶対にできそうもないサービスもあります。
自分が開業して思うことは、総合病院が必ずしもベストではない?ということです。
ワキガの手術ではありませんが、
私が現在行っているような‘医療’は、総合病院では絶対にできません。
■ ■
土日も診療。
夕方も診療。
待合室は、個室風に仕切ってある。
他の患者様となるべく会わないようにする。
札幌駅から歩いて5分以内。
総合病院ではまず不可能です。
■ ■
特別な合併症のないお産でしたら、マタニティ専門の病院がよいと思います。
検診は、札幌駅のJRタワーで受けて、
お産は北大前の本院というのも、魅力的です。
産科医や助産師さんの数、
お産の数も総合病院より多いのには驚きます。
もし、孫ができたら、マタニティ専門の病院にお願いしようと思います。
(残念ながら、孫はできそうにありませんが…)
医学講座
毛の悩み、ハゲ頭の気持ち
昨日の‘天声人語’で、朝日新聞社の筆者は、
『人間は外見ではない』
『頭の毛が薄くても、中味が良ければ問題ない』
『毛があるか、ないかなんて、大したことではない』
『気にしなさんな』
と言っているように、私には思えました。
■ ■
もう少し、書かせていただくと、
『たかが、頭の毛ごときに…』
『何年も…』
『数百万円も…』
『その出費と手間をいとわぬ』
『客層があることに驚く』
と言いたかったのだと思います。
■ ■
これは、毛で悩んでいる人へ、
思いやりのかけらもない、ひどい言葉です。
この日記を朝日新聞社の筆者が読むことはないと思いますが…
できれば、天声人語で訂正してほしいと思います。
見た目の問題は、本人よりも、
周囲から『問題提起される』ことが多いように思います。
■ ■
小学校などの授業参観があります。
ふだんは、お父さんが大好きだった、女の子が、
友人から…
『○○ちゃん、今日来てたの、おじいちゃん?』
『○○ちゃんのお父さん、お仕事が忙しくて来れなかったの?』
この、子どもの何気ない一言で、
それまで、大好きだった…
お父さんが嫌いになってしまう…
■ ■
場合によっては、学校へ行くのがイヤになってしまう…
友だちから、いじめの対象になってしまう…
朝日新聞の筆者さん。
あなたは、これでも、‘数百万円もかける客層’が信じられませんか?
■ ■
植毛を受けて、抜糸にいらっしゃる方は、
実に真面目で誠実な方が多いと思います。
何年も真剣に悩んで、いろいろ検索して、横浜まで手術を受けに行かれます。
手術のために、倹約して、手術費用を貯める方もいらっしゃいます。
中には、
『先生、いゃぁ、オレ、今川先生ところへ行くまで…』
『なんぼ使ったかわからねぇ。』
と正直に話してくださる方もいらっしゃいます。
■ ■
医師や歯科医師ですら、胡散臭い(ウサンクサイ)クリニックに騙されるのです。
『発毛には個人差があります、施術で生えない方もいらっしゃいます』
『人工毛は異物ですから、頭皮にダメージを与えます』
なんてことは、言わないのです。
同意書や約款の隅に、見えないような字で小さく書いてあるだけです。
ふつうの人は、TVで有名タレントが宣伝していると、コロッと騙されるのです。
■ ■
植毛手術は簡単ではありません。
今川先生のHPにもあまり書いていませんが…
実は、先生と同じ位重要なのが、
毛を植えてくれる看護師さんです。
一本一本に細かく丁寧に株分けしてくれる、テクニシャンです。
この植毛チームが総力をあげて、何千本も植えるのです。
髪に悩む人はたくさんいます。
マスコミでも、少し本格的に取り上げてほしい問題です。
医学講座
頭髪の悩み
平成20年2月11日、朝日新聞の天声人語です。
17世紀のフランス国王、ルイ13世は心労ゆえに薄毛となり、22歳でカツラをつけた。
廷臣たちがそれに倣い、カツラはやがて上流階級の正装として各国に広まったという。
時は移れど、世に「自分を変えたい」願望は尽きない。
■ ■
光頭の書き手による『ハゲの哲学』(金子勝昭、朝日文庫)はこうクギを刺す。
「ハゲを隠しているという意識につきまとわれているかぎり、
変貌(へんぼう)できない」。
ましてや、隠せぬままに変わり損ねた落胆は大きかろう。
■ ■
育毛ケアで効果が薄かった大阪の男性(58)が大手業者を訴え、
430万円を返してもらう和解が成立したそうだ。
業者は「必ず生えるとは言っていない」と反論したが、
原告の強い不満に折れた。
■ ■
「前後」の写真を見る限り、憤りは当然だ。
毎週の頭皮ケアや補助食品に、男性は約680万円と4年の時を費やした。
生える保証のない育毛にこれほどお金がかかり、
その出費と手間をいとわぬ客層があることに驚く。
■ ■
あるべき物が無いのを恥じる心に、業者は手を差し伸べる。
毛が戻って前向きに変われるのならいいが、
見てくれや世間体に追われる人生はもったいない。
■ ■
頭髪の気になり具合は
「自分の人生をどの程度自分のものにできたかを測るものさし」
(金子氏)でもある。
■ ■
脱毛への備えを説いた
『ハゲてたまるか』(下川裕治、朝日新聞社)で、
精神科医が語る。
「人は交通事故を笑えないが、バナナの皮で転べば笑う。
大したことではないからだ。
精神的にハゲを克服するポイントです」。
そう、大したことはない。
(以上、朝日新聞から引用)
■ ■
私は、声を大にして言いたい。
頭髪の悩みを、
『大したことはない!』
と片付けるのは、
悩んでいる人を知らないだけです。
■ ■
おそらく、天声人語の筆者も、頭髪はフサフサなのでしょう。
私は今のところ、頭髪に関する悩みはありません。
ただ、同業者の医師や歯科医師でも
頭髪で悩んでいる人をたくさん知っています。
■ ■
新聞社は、正しい頭髪の知識を、
医学記事として掲載する程度の配慮があってもいいと思います。
医師や歯科医師ですら、
頭皮に有害な人工毛移植を受けている‘先生’がいます。
■ ■
この人工毛植毛も、有名タレントが宣伝しています。
最近は、その全国展開しているクリニックでも、
自分の毛を移植する自毛植毛の‘手術’をしているようです。
有名大学形成外科の‘先生’が顧問になっています。
■ ■
頭髪ビジネスは、
カツラメーカー、
毛生え薬メーカー、
サプリメントメーカー、
問題となったリーブ21のようなメーカーなど、
さまざまな業種が絡んでいます。
美容外科分野でも、頭髪ビジネスが盛んになってきています。
■ ■
私が推薦した、横浜の今川賢一郎先生は、
数少ない、信頼できる‘植毛医’です。
何回も、今川先生に手術を受けている人がたくさんいるクリニックです。
頭髪の悩みは、
『大きな、悩みです!』
女性も含めて、頭髪で悩んでいる人はたくさんいます。
■ ■
適切な治療を受けると、頭髪の悩みはかなり改善できます。
憎むべきは、頭髪の悩みにつけ込んで、
効果もないのに、高額の料金を請求するところです。
異物である、人工毛を頭皮にたくさん打ち込んで、
頭皮をボコボコにしている‘クリニック’です。
悩んでいる方は、今川先生にご相談することをおすすめします。
院長の休日
朝食
私は、ごはん党です。
毎朝、朝食をしっかり食べます。
研修医時代から、昼食時間は不定で、昼抜きになることもありました。
朝食をしっかり食べて仕事に出ないと、低血糖で具合が悪くなります。
■ ■
朝食は、ごはんに、納豆または長いもが多いです。
ごはんと味噌汁が定番です。
たまに、サラダがつくこともあります。
漬物も好きです。
野菜の浅漬けなんかが好きです。
■ ■
味は薄味が好きです。
味付けについては、関西出身の家内と‘喧嘩’したことはありません。
関西人と結婚してよかったと思っています。
たまに、実家に帰ると、味が濃いと思います。
■ ■
日曜日と休日は、パン食にしています。
特に理由はありません。
家内は、もともと、朝食はパンだったようですが、
私と結婚してから、ごはんに合わせてくれたようです。
■ ■
新婚の頃に、家内の友人が遊びに来てくれました。
『あら、和ちゃん(家内のことです)!』
『朝ごはんは、いつもパンやったのに…』
と驚いていました。
その時に、はじめて、あぁ、朝はパンだったんだ???と知りました。
■ ■
朝から手術の時は、やはりごはんでないと調子が悪いので、
本間家では、朝は‘ごはん’にしてもらっていました。
メニューは、ほぼ30年近く変わりません。
それでも、飽きないのは不思議なものです。
■ ■
日曜日と休日は、コーヒーとパンにサラダです。
以前は、西区琴似に住んでいたので、
ダイエー琴似店1Fにできた‘どんぐり’というパン屋さんの、
パンを楽しみにしていました。
私は、だいたい食パン(北海道では角食(カクショク)と呼びます)ですが、
各種の調理パンや菓子パンも美味しいです。
■ ■
今は、職場の近くに引っ越してしまったので、
たまにしか、‘どんぐり’のパンが食べられないのが残念です。
サラダは、ダイエー琴似店の、ポテトサラダが好きです。
私は、ポテトサラダが好きなので、
いろいろなポテトサラダを買っています。
■ ■
クリニックの近くには、大きなデパートがあります。
デパ地下の有名惣菜店やホテルブランドのポテトサラダより、
ダイエー琴似店のポテトサラダが好きです。
他のダイエーで買ったことがないのでわかりませんが、
私の口には合っています。
日曜日と休日は、
パンとコーヒーにポテトサラダが私の朝食です。
これで、とても幸せです。
ホテルの3,000円以上もする朝食より、美味しいと思っています。
医療問題
毛が生えなかった
平成20年2月5日、朝日新聞夕刊の記事です。
「必ず毛が生える」
勧誘信じたのに
発毛効果薄く和解
大阪地裁
リーブ21、430万円支払い
■ ■
「必ず毛が生える」との勧誘を信じ、
育毛ケアを4年間受けたのに効果がなかったとして、
大阪府内の男性会社員(58)が
業界最大手「毛髪クリニック リーブ21」(大阪市)に対し、
施術代や慰謝料など860万円の損害賠償を求めた訴訟が
大阪地裁(平林慶一裁判官)で和解した。
同社が施術代の約9割にあたる
430万円の解決金を支払うことで合意した。
■ ■
訴状によると、男性は2001年4月、
同社に「頭頂部が薄くなって久しい」と相談。
担当者から
「大丈夫。必ず生えてきます」
「発毛には3年かかる」
などと言われて契約した。
■ ■
高周波治療器などによる頭皮への「発毛促進サービス」を2005年5月まで
週1回2時間のペースで受け、施術代約490万円を支払った。
サプリメントなどの補助食品も190万円分買った。
■ ■
しかし、実際には細い毛が少し生えただけで、
男性は「頭頂部は光ったまま。効果はほとんどなかった」と主張。
「必ず生える」と勧誘したことは、
消費者契約法が契約を取り消せる理由に定める
「断定的判断の提供」にあたると訴えた。
■ ■
同社は訴訟で
「必ず生えるとは言っていない。
発毛に個人差があることは事前に伝えていた」
と反論したが、
地裁の和解勧告に従って昨年9月に和解を受け入れた。
■ ■
同社の広報担当者は
「発毛効果はあったと考えているが、
サービスが長期に及んだことや、
ご本人の強い不満を考慮した」
と話している。
■ ■
上:発毛サービスが始まった直後
2001年6月
下:発毛サービス開始から4年
2005年5月
原告側提供
(以上、朝日新聞より引用)
■ ■
TVで有名タレントが宣伝していると、効果があると信じてしまいます。
ところが、発毛は現在の最先端医学でも難しいのです。
私はリーブ21のことは、詳しく知りません。
ただ、リーブ21へ行っても生えなかったので、植毛を受けた方は知っています。
■ ■
その方は、横浜のヨコ美クリニックで植毛手術を受け、当院で抜糸を行いました。
数年前の日本形成外科学会で、今川賢一郎先生の発表をお聴きしました。
今までに見た、どの植毛手術よりキレイでした。
知人の手術をお願いしたのがご縁で、当院で抜糸をしております。
2回、3回と手術を受けている方もたくさんいるクリニックです。
こちらの掲示板には、参考になる書き込みが多数あります。
■ ■
植毛手術まで…とお考えの方には、
平成20年1月3日の日記でご紹介した、ロゲインフォームがおすすめです。
この薬の薬理作用は、皮膚血流の増加と言われています。
どのタイプの薄毛にも効くとは限りませんが、リアップより高濃度で、個人輸入しても安価です。
安い市販薬(cheapotc.com)というサイトが安心です。
私はここがいいと思いますが、すべて英語です。
個人輸入代行のサイトもあります。
ご自分の責任で、個人輸入するのは問題ないと思います。
ただ、循環器系の持病がある方はお止めになるか、主治医にご相談の上、お使いください。
■ ■
タバコは皮膚血流を阻害(ソガイ)します。
一番気になる、額(ヒタイ)から頭頂部の皮膚は、
耳の前から出る、
浅側頭動脈(センソクトウドウミャク)という血管で栄養されます。
■ ■
耳の前を触ると、ドクドクという血管が触れます。
これが、浅側頭動脈、通称STA(エス・ティー・エー)です。
この血管の触れが悪い方は、頭皮の血流障害が懸念されます。
ロゲインやリアップの成分である、ミノキシジルは、
頭皮の血行をよくする作用があります。
■ ■
せっかく、薬を塗っても、タバコを吸うと効果が出なくなります。
米国のロゲインのサイトでは、
『使う?それとも、禿げる?』というコピーを使っています。
タバコは
『吸う?それとも、禿げる?』です。
髪の毛フサフサになりたい人は、禁煙しましょう!
医療問題
サミット救急医療2008
平成20年2月7日、朝日新聞朝刊の記事です。
首脳の急病テロに備え
救急医療、隠密大作戦
厚労省・道が対策
医師・看護師ら200人待機
協力病院公表せず
■ ■
首脳が病気で倒れだり、テロがあったりした時にどう対応するか。
7月の北海道洞爺湖サミットに向け、厚生労働省や道が救急医療態勢づくりを進めている。
警備上の都合から内容は一切公表されていないが、
2000年の九州・沖縄サミットを参考に、
全国から医師や看護師らを200人規模で洞爺湖周辺に集める方針だ。
■ ■
ただ、会場の地理的条件やテロ対策など、
8年前との変化に対応する必要もある。
「史上最大の作戦」(関係者)が、
より進化することになりそうだ。(若松聡)
■ ■
1月下旬の夕方、札幌市内である会合が開かれた。
内容はおろか、開催の事実も「話せない」(道職員)という集まり。
厚労省と道が主催し、サミットでの救急医療態勢について協議する研究会だった。
昨年10月に第1回が開かれ、この時が5~6回目だった。
■ ■
サミットの場で首脳らに万一のことがあっては世界的一大事になる。
それだけに不特定多数の人に情報を漏らすわけにはいかない-。
それが秘密保持の理由だ。
■ ■
だが、関係者によると、
サミット本番では基本的には沖縄での態勢を踏まえるという。
沖縄では、首脳会合の会場から数㌔離れた県立病院を「拠点基幹病院」とし、
医師や看護師ら5人1組による計18の専門医療チームが24時間態勢で待機した。
■ ■
会場から1㌔未満の施設には「救急医療合同対策本部」を設け、
ICU(集中治療室)ベッドを持つバスを2台配備。
9人の医師による
「首脳対応チ-ム」は
それぞれ、小型酸素ボンベやポータブル心電計などを持った。
これらに携わった約200人は全国から集められた。
■ ■
今回も200人規模で全国の医師や看護師らを集め、
洞爺湖周辺や、高度な医療を施せる
札幌市の病院にも待機してもらう方向という。
■ ■
だだ、沖縄の時点とは事情が異なる面も多い。
沖縄の会場は平地だっだが、
洞爺湖の会場「ザ・ウィンザーホテル洞爺」は湖畔の山頂にある。
周辺も山々に囲まれている。
2001年の米国での9・11テロを経て、
生物・化学兵器テロヘの対策も講じなければならない。
■ ■
また、サミット開催時に各国首脳は
主に「ウィンザー」で過ごすが、
最終日には後志支庁留寿都村の国際メディアセンターで記者会見すると言われる。
そのため、同村にも医師らを待機させる必要が出てくる。
■ ■
こうした理由から厚労省は、
複数の拠点基幹病院を決めるとともに、
関係自治体や周辺の医療機関を救急協力病院に指定する。
■ ■
前者の一つには札幌医大病院が選ばれ、
後者もすでに内定しているというが、具体名は公表しない方針だ。
沖縄で組織された救急態勢は、関係者から「史上最大の作戦」と呼ばれた。
洞爺湖では、それが進化することになる。
■ ■
沖縄サミットの医療チームの一員を務め、
今回の研究会にも属する札幌医大の浅井康文・救急・集中治療部長は
「どんな不測の事態にも対応できる態勢をつくらないといけない」
と話している。
(以上、朝日新聞より引用)
■ ■
国と北海道は万全の医療体制を準備しているようです。
ICU設備を整えた、バスを準備して、最先端の医療が行えるのでしょうか?
所詮(ショセン)バスはバスです。
病院の機能すべてをバス2台で代行できるものではありません。
■ ■
国が公表しなくても、洞爺湖周辺の医療機関は限られています。
一番近いのが、総合病院伊達赤十字病院(ダテ日赤)です。
昭和15年8月28日、創立。
許可病床数:374床。(一般314床、精神60床、透析38床)
脳神経外科はありませんが、麻酔科も循環器内科もあります。
CT、MRI、血管造影撮影装置もあります。
■ ■
一番、頼りになりそうだったのが、
日鋼記念病院でした。
ここには、優秀な救命救急センターがありました。
札幌医大の浅井教授の医局から医師が派遣されていました。
残念ですが、現在の日鋼記念病院では、
‘サミットの救急指定病院’にはなれないと思います。
■ ■
札幌市内で唯一、高度救命救急センターの指定を受けているのが、
浅井教授がいらっしゃる、札幌医科大学附属病院です。
ここには、ヘリポートもあります。
人的にも設備的にも、問題がない施設です。
■ ■
札幌市内で、他にヘリポートを備えた施設は、
市立札幌病院と手稲渓仁会(テイネケイジンカイ)病院です。
手稲渓仁会病院は、親会社がサミット会場の「ザ・ウィンザーホテル洞爺」と同じSECOMです。
あの警備保障のSECOMが親会社です。
こう書くと、文句を言われそうですが、間違いないと思います。
■ ■
私の考えでは、
伊達日赤、
札幌医大、
市立札幌病院、
手稲渓仁会病院
がサミット救急協力病院の候補です。
■ ■
浅井教授から聞いたのではありません。
私の推測です。
ただ、これで万全ではありません。
霧が出て、ヘリが飛べなければ、終わりです。
医療は、バス2台があれば、万全であるほど甘くはありません。
■ ■
最先端の治療を行うには、高度な診断機器。
手術室などの治療設備。
有能なスタッフ。
多数のパラメディカル。
これらがすべて揃って、はじめて最先端の医療が行えます。
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サミットで外国の首脳が急病になって…
日本の医療体制を見直す機運が高まってくれれば…
と、とても不謹慎なことを考えてしまいます。
北海道の医療、日本の医療は崩壊寸前です。
誰か、偉い人が病気になって…
政治家が本気で考えないと、
取り返しがつかないことになります。
実際に北海道に住んでいる住民が困っているのです。
外国の首脳だけ特別扱いは困ります。
未分類
新聞記事の引用
毎日、日記を更新するのは、しんどい作業です。
早く書き終わる日でも、最低一時間はかかります。
日記を書くようになってから、新聞をよく読むようになりました。
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昨日引用した、北海道新聞の山崎先生の記事は、読んでいて涙が出てきました。
記事を書いてくれた、佐藤千歳さんという記者さんに感謝します。
以前、佐藤さんから取材を受けたことがありました。
お若いのに、情熱的な記者さんでした。
失礼な話しですが、先輩の男性記者より、意欲を感じました。
■ ■
私が、新聞記事を引用して、日記に掲載するのは、
一人でも多くの方に、
私が記事から得た‘感動’や‘憤り(イキドオリ)’をお伝えしたいからです。
平成19年10月5日にも書きましたが、今の若い人は新聞を読みません。
息子も、クリニックの職員も同じです。
■ ■
以前の日記では、新聞社のHPにリンクを張り、記事そのものは引用しませんでした。
ところが、新聞社のHPでは、一定期間が過ぎると、記事が読めなくなることに気づきました。
ネットで検索できる記事もありますが、紙面にしか載らない記事もあります。
魅力的な記事は、紙面にしか載らない記事に多いような気がします。
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私は、もっと若い人に新聞を読んで欲しいと思います。
日本だけの現象ではないそうですが、
米国でも、新聞社は危機感を持っているそうです。
最近のNHKビジネス英語会話で話題に取り上げられていましたが、
米国では郵便ポストが街角から消えています。
インターネットの普及で、電子メールが郵便を‘駆逐’してしまいました。
■ ■
ネットや携帯で記事を読むのと、新聞は違います。
新聞社はすべての記事をネットに載せてしまうと、読者がいなくなります。
新聞社がネットで記事を公開しているのは、
自社の新聞を購読してほしいからです。
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以前、記者の方と数ヵ月にわたりお付き合いしたことがあります。
新聞記者は
(他社を)抜け。
書け。
寝るな。
と教育されるそうです。
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特ダネを探し、自社だけ、一面のトップ記事にする。
これが、新聞記者の‘使命’だそうです。
私は、新聞を読むのが好きです。
今日の北海道新聞にも、佐藤千歳さんの署名入り記事が出ていました。
中国へ単身赴任した、銀行員のお父さんについてです。
■ ■
毎日、新聞を制作してくれる新聞社の方。
早朝から、配達してくれる新聞販売店の方に感謝しています。
一人でも多くの方に
新聞を読む習慣が残って欲しいと願っています。
医学講座
山崎浩一先生を偲ぶ
平成20年2月6日、北海道新聞朝刊の記事です。
がんと闘った専門医・山崎さんがのこした言葉
1%の希望 信じよう
患者、最後まで支え続ける
■ ■
北大大学院医学研究科で中皮腫や肺がんを専門としてきた医師(46)が1月12日、自ら専門とする中皮腫で他界した。
治療者と患者、二つの立場を経験した医師がのこした言葉は「1%の希望」。
死に直面して発せられた希望という言葉は、のこされた人に何を伝えようとしたのか。(佐藤千歳)
■ ■
呼吸器内科学分野(第一内科)准教授、山崎浩一さん。
2006年6月、職場の健康診断で肺に影が見つかる。
すぐ精密検査。悪性胸膜中皮腫と診断された。
当時44歳。肺の悪性腫瘍の専門家として活躍していた。
検査結果を知ったのも、米国の学会から札幌に戻った日のこと。
「こんなに元気なのに。信じられない」。
息切れしないか、階段を一段おきに駆け上がってみた。
「いつもと変わりないんだよ」-。妻の望美さん(44)に語りかけた。
■ ■
6月末、左肺胸膜全摘出の手術を受ける。
経過は順調だったが、9月、骨転移を含む全身性の転移が見つかった。
衝撃はより大きかった。
「転移して、抗がん剤が効く確率は30%。効かなければ余命三ヵ月だ」。
望美さんに説明した。
◆命燃やし診察
「責任感が強く、他人に厳しく、自分に最も厳しい人」。
十年の間、一緒に仕事をしてきた第一内科の大泉聡史助教(41)は言う。
仕事を離れれば、スポーツ好きの親しみやすい先輩だった。
■ ■
北大の学生時代、山崎さんはテニス同好会にいた。
ダブルスを組む友人が、強豪との対戦前、「勝つのは無理だ」と山崎さんに言ったことがある。
「勝つ可能性が1%なら、練習で5%にできる。
そこでうまく作戦を立てれば、10%にできる。
10%なら、10回試合をやれば一回は勝てるってことなんだぜ。
その一回が本番の試合かもしれないじゃないか」
■ ■
真剣に怒る山崎さんの表情を、友人は忘れられない。
二人は勝った。
友人の思い出は、山崎さんの闘病の姿勢と重なる。
「30%も可能性がある。良い面を見ていこう」。
そう言って始めた再発後の抗がん剤治療は、効果を現した。
■ ■
このころ、病棟と外来の仕事はやめていた。
だが、症状が落ち着くと、他の病院にかかる患者が専門家の意見を求めるセカンドオピニオン外来で、肺がんや中皮腫を担当し始めた。
「患者さんより山崎君の方がつらそうに見えました。
それでも『患者さんに説明したい』と。
やり続けたい仕事だったのでしょう」。
第一内科の西村正治教授は言う。
■ ■
第一内科の山谷敦子副看護師長(42)は、
「患者さんの性格や職業、家族まで考えて治療方針を決める先生だった」。
自らもがん患者となり、患者の立場を思いやる言葉は確実に増えた。
◆確率との戦い
昨年9月26日。
医局講演会で、山崎さんが講師を務めた。
後輩の医師に、息切れを押さえながら、語りかけた。
「がん患者に向き合う医師は、病気の進行について悲観的な見通しを言うのは絶対にやめてほしい。
患者さんに希望を与えよう。
そのためには、がん患者を治した経験をたくさん持ってほしい」
患者として得た経験を医療現場に伝えようと、懸命だった。
■ ■
現代のがん治療は、確率との戦いでもある。
抗がん剤が効く確率、放射線治療が効く確率、五年生存率、余命-。
それぞれの選択肢の持つ確率が、治療方針を決める鍵となる。
悪性中皮腫は進行が早い。
「骨転移があれば、過去の症例から、多くの医者は『もうだめだ』と思ってしまう。
転移しても五年、十年と生きる人がいるが、可能性はかなり低い」 (西村教授)
■ ■
治療の効果が出る確率が低ければ、積極治療を中止し、
苦痛を取り除くことに重点を置くターミナルケアに移行する選択肢がある。
「もういいですよ」。
そう言って穏やかな末期を望む患者もいる。
緩和ケア病棟やホスピスが増えた現在、尊重されるべき選択肢だ。
ただ―。わずかな可能性にかける患者がいる。
山崎さんはその一人だった。
■ ■
主治医の大泉さんや、北大放射線科の白土博樹教授と相談しながら、
抗がん剤や放射線の治療を続けた。
病室にパソコンを持ち込み、仕事もやめなかった。
「サッカーの試合なら、残り一分、0対4の状況でも、がんばる患者さんがいる。
その気持ちを、最後のホイッスルが鳴るまで支えるのが医師の役目だと。
私たちが普段忘れがちなことを、山崎先生に教わった」。
白土教授は言う。
■ ■
そして、昨年12月。山崎さんはホイッスルが間近いことを覚悟する。
「エンドステージだ」。
望美さんに言った。
専門医として、自らの病状を冷静に見極めていた。
まるで、学会の手配をするように、自分の葬儀の用意を始めた。
◆最後の元旦に
2008年、元旦。
外泊した自宅のソファで、
山崎さんはノートパソコンをひざに抱き、
葬儀で朗読してもらう「病状報告」を少しずつ打ち始める。
■ ■
「本日はお忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございました…」
翌日は、テレビ中継の箱根駅伝を、じっと見ていた。
山崎さんは、スポーツが好きなわけを、望美さんに話している。
「スポーツは、何があるか分からないよね。
終わりの方に大逆転のドラマがあるかもしれない。それが楽しいんだ」
12日早朝、山崎さんは北大病院で永眠した。
◆「心構え」託す
18日、がん治療の医師や看護師を集めた研究会で、
白土教授が「病状報告」にあった山崎さんの言葉を紹介した。
今日は治らなくても、明日はよい治療法が見つかるかもしれない。
1%の希望があれば、闘病意欲のある患者さんには、
その1%にかけてがんばろうと言うべきだ-。
■ ■
命の終わりを見つめながら、
前を向いて生きること、
その闘いを支える医療関係者の心構え。
山崎さんのメッセージは、静かに波紋を広げている。
■ ■
中皮腫
胸膜や腹膜などの表面を覆う中皮細胞から発生する悪性腫瘍(しゅよう)のこと。
アスベストが関与していることが多く、
吸い込んでから30-50年後に発症するが、
吸引歴のない人が発症することもある。
胸腹中皮腫の場合、
胸水による呼吸困難や痛みを伴い、病気の進行は早い。
手術、放射線治療、抗がん剤治療が現在の標準的治療法。
■ ■
山崎さん自らが書いた「症状報告」
私は胸膜中皮腫という、アスベストの吸入歴のない比較的若い男性には非常にまれな病気になり、46歳という働き盛りの年齢で人生を終えることになりました。
私の専門は肺がん、胸膜中皮腫などの呼吸器腫瘍(しゅよう)の診断、治療であり、たくさんの胸膜中皮腫の患者さんを診てきました。
そのような私が自分の病状の経過がどうであったか、
自分が専門であった致死的疾患に罹患(りかん)したとき、病気にどう対応したかを、
本日お集まりのみなさまに正確にお伝えするのも一つの義務ではないかと考え、簡単な文章にまとめました。(中略)
私は、1年半以上の闘病の生活のほとんどを、まだ治る可能性があると信じて、自らの治療を勉強し、選択してきました。
この考え方は患者さんにとって非常に重要ではないかと思っています。
肺がんや胸膜中皮腫の患者さんの多くは、
最初の時点で医師から「もうあなたの病気は治りません」と宣告されていると思います。
しかし、1%でも0.5%でも治る可能性があると思えるかどうかは、治療を前向きに受けられるかどうかにつながる非常に重要な点であると私は思います。
最近では、現実的に5年も10年も長生きしている進行肺がんや胸膜中皮腫の患者さんが増えてきており、
そのような例をとって患者さんたちを励ましてあげることが重要ではないかと、治療する側と治療を受けた側の両方を経験した一人として強くそう思います。
(葬儀で大泉医師が朗読)
■ ■
山崎先生のご冥福をお祈り申し上げます。合掌。
北大第一内科HPにも、山崎先生のページがあります。
生前の山崎浩一さん。「熱い人だった」と周囲は口をそろえる
仏壇には、愛用の聴診器と腕時計の横に、
出身の札南高の甲子園出場を記念するボールが供えられた。
(北海道新聞より引用)