医学講座

デブリードマン

 デブリードマン、
 通称デブリといいます。
 英語表記はdebridementですが、
 もともとは、フランス語が語源だそうです。
 外科学の講義で習う、
 最初の医学用語の一つです。
 簡単に言うと、
 皮膚や組織などが、
 死んでしまった時【壊死(えし)といいます】に、
 その死んでしまった部位を、
 外科的に切除することをいいます。
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 人間や動物の身体は、
 血液が循環して生きています。
 元気な組織は、
 キレイなピンク色をしています。
 ホッペがピンクだったり、
 爪の色がピンクだと、
 健康な証拠です。
 血流が悪くなって、
 組織が死んでしまうと、
 どす黒い色になります。
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 かなり前になりますが、
 脂肪吸引手術の後で、
 感染症のために…
 皮膚や皮下脂肪が壊死になってしまい、
 大きな後遺障害が残った方がいらっしゃいました。
 PRSという米国形成外科学会誌に、
 症例報告として掲載されています。
 2007年5月15日の院長日記でご紹介しています。
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 そちらの写真を見ていただくとわかりますが、
 組織が死んでしまった部位(下腹部~大腿)は、
 黒く変色しています。
 この黒くなった部位をそのままにしておくと、
 感染症が拡大して…
 最悪の場合は亡くなってしまいます。
 そのために、
 その‘死んだ’部分を切除する必要があります。
 深いヤケドの場合も同じです。
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 全身麻酔で手術をして、
 壊死(えし)になった部分を切除します。
 切除した部位はキズになり、
 血が出てきますので、
 その部分を覆う必要があります。
 そのために、
 他部位から皮膚移植をします。
 皮膚移植のことを植皮(しょくひ)といいます。
 私は数多くデブリードマンと植皮手術をしました。
 どんなに丁寧に手術をしても後遺障害が残ります。
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 山形大学の患者さんの場合は、
 手術後にコンパートメント症候群になり、
 下腿の組織が一部壊死になったか、
 壊死になりそうな状況だったと推測します。
 そのような場合は、
 手術で縫合したところを開放し
 (縫ったキズを開き)
 パンパンに腫れた下腿を、
 少しでも楽にしてあげるようにします。
 これがコンパートメント症候群に対する、
 デブリードマンと植皮です。
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 患者さんは、
 キレイに治してほしいので、
 形成外科の先生に手術をお願いしたと思います。
 形成外科の手術で、
 コンパートメント症候群になることは、
 極めてマレなケースです。
 コンパートメント症候群は、
 形成外科医よりも、
 整形外科医や救急医が、
 遭遇することが多い病態です。
 手術後に変色した下腿を発見した先生は、
 何とか救済しようと努めたはずです。

“デブリードマン”へのコメント

  1. さくらんぼ より:

    よく聞き取れず デブリードマンというのですね。やはり先生のおっしゃるように傷を開放したと言ってましたが、なんで 手術した所をまた切り開くのかわかりませんでした。よくわかりました。 写真は傍聴人には見せられなかったのですが筋肉が見えるとか 網目状のものが植皮した部分かとか 聞かれていました。通常植皮の皮はどのあたりから採りますか?顔と聞いたのは聞きまちがいかも知れませんが・・ デブリードマン手術を二回したと言っておられました。開放一回、 計4回だそうです。 脂肪吸引でもあんなに真っ黒になるなんて怖いですね。 患者さんの病名も聞きましたが なんで 最初発表した時美容外科的と報道されたのでしょうか? 美容外科の手術ではなかったです。こういう 他科再建手術の場合とかのはっきりした 病院の体制が 確立していなかった 結果であり 患者のために一生懸命がんばっておられる医師を責め立てたりしないで 病院の長の立場の方が 責任を取るのが 正しいと私は思いました。困って助けて欲しい患者さんがたくさん待っています。

  2. 函館の看護師 より:

    多分その状況下にあった先生はきっと発見して治療しようと努力したように思いますが、責任問題だとどこからどこという線引が難しいような…

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