医学講座

耳あかの遺伝学

 平成20年2月19日(火)、北海道新聞夕刊の記事です。
 耳あかの遺伝学
 病気や薬の利き方にも差
 北海道医療大
 個体差健康科学研究所長
 新川詔夫(ニイカワ ノリオ)さん
      ■         ■
 耳あかのタイプの違いから、
 薬の利き方や遠い過去の民族同士のつながりまで推測できるのだという。
 「人類遺伝学」の第一線で研究を続けてきた
 北海道医療大学の新川詔夫特任教授に、
 耳あかと遺伝子の不思議な関係を語ってもらった。(古家昌伸)
      ■         ■
 「あなたの耳あかは湿っていますか。乾いていますか」。
 こんな問いを何度となく繰り返してきた。
 日常生活ではとるに足らない耳あかが、
 遺伝学では有用な情報をもたらしてくれる。
      ■         ■
 耳あかに湿型と乾型の2タイプあり、
 それが遺伝することは知られていた。
 タイプの違いがどの遺伝子によって生じるかを、
 長崎大在職当時の2006年、同僚の研究者とともに明らかにした。
      ■         ■
 タイプを決める遺伝子を調べ始めた契機は、
 ある遺伝性疾患に関する研究で
 「この症状の人は耳あかがベトベトしている」
 という患者の家族の言葉を伝え聞いたこと。
 「耳あかのタイプ決定遺伝子が疾患と連鎖している(密接な関係がある)と直感した」。
 協力を得て家系図を調べると、やはり予想通りだった。
      ■         ■
 異なる情報を特つ遺伝子が染色体上で近接していると、
 一緒に子孫に伝わることが多い。
 この特徴をヒントに、耳あかのタイプは、
 23本あるヒト染色体のうち16番目の染色体上に存在する
 「ABCC11」と呼ばれる遺伝子が決めていることを突き止めた。
      ■         ■
 「人類の祖先の耳あかは湿型で、遺伝的には湿型が優性。
 ところがこの遺伝子の538番目の塩基(グアニン、G)が
 他の種類(アデニン、A)に偶然変わったことで、
 乾型の耳あかを持つ人が生まれてきた」。
 両親から受け継いだ遺伝子がGとG、
 またはGとAだと耳あかは湿型に、
 AとAだと乾型になる。
      ■         ■
 耳あかは汗と同様にアポクリン腺が作り出すので、
 そのタイプは汗や体臭にも影響する。
 また、分子レベルで見ればABCC11遺伝子自体は
 細胞に入った物質を外に排出する機能を持っており
 薬の利き方や副作用の個人差を生む。
 この点に注目するのが個体差健康科学という学問だ。
      ■         ■
 多くの民族を調べた結果、
 こうした異なる遺伝子タイプの構成比が
 民族や集団で異なることも分かった。
 アフリカや欧州はほぽ100%湿型(一般型、祖先型遺伝子)だが、
 日本をはじめ東北アジアの集団は8割以上が乾型(東アジア型遺伝子)だ。
      ■         ■
 この割合を世界地図に示すと、
 「バイカル湖あたりで遺伝子タイプが変わったらしい」
 ことまで推測できる。
 並行して、
 理科系教育に力を入れる
 文科省のスーパー・サイエンス・ハイスクール指定高校の協力を全国的に得て、
 国内の耳あかタイプ地図作りも進めてきた。
      ■         ■
 「日本でも地域によりタイプの比率が異なり、
 民族や集団の動きとの関係をうかがわせる。
 将来、高校生が作った耳あかタイプの地図が、
 日本史の教科書に裁ったら面白い」と話す。
      ■         ■
 新川詔夫(にいかわ・のりお)
 1942年、小樽生まれ。
 北大医学部卒。
 北大病院小児科に勤務後、
 スイス・ジュネーブ州立大を経て北大医学部助手。
 先天異常症を中心に研究し、
 1984年から長崎大医学部教授。
 2007年6月に定年退職し、現職。
 日本人類遺伝学会前理事長。
      ■         ■


 湿型といってもぬれているわけではなく、
 松脂やハチミツ状のもの。
 意外に誤解も多い
 と話す新川教授


 耳あかタイプの世界地図。
 各地の円グラフは黒が湿型、
 白が乾型の比率を表す
 (以上、北海道新聞より引用)

      ■         ■

 新川教授は、北大43期(昭和42年卒)。
 私が北大形成外科で研修医をしていた頃は、
 北大小児科にいらっしゃいました。
 形成外科では、
 生まれつきの病気をもった子供さんがたくさん手術を受けます。
      ■         ■
 お母さんの不安や心配は、
 『この子に、異常があったのは、私のせい?』
 『どうして?、どうして?』
 『神様は、こんなむごいことをしたの?』
 『かわいい、赤ちゃんに…』
 『どうして?』
 『私の赤ちゃんだけ、手術を受けなければならないの?』
      ■         ■
 このように、赤ちゃんの手術をする前に、
 パニックになってしまった、
 お母さんを‘治療’してあげる必要があります。
 その時にお世話になったのが、新川先生でした。
 遺伝学的にみて、
 この子の異常はお母さんのせいでも
 お父さんのせいでもありません。
      ■         ■
 もし、次の子を授かったとします。
 その時に、
 同じ症状が発現する可能性は○○%です。
 などという、遺伝相談も新川先生にお願いしていました。
 穏やかで優しい先生です。
 遺伝性の病気で悩んでいる方は、
 新川先生にご相談なさることをおすすめします。
      ■         ■
 耳垢は、ワキガと関係があります。
 耳垢が湿っている方すべてが、
 ワキガ臭がするのではありません。
 アポクリン腺が分泌する物質を細菌が分解して
 臭い、ワキガ臭となります。
      ■         ■
 ワキガの方を診察すると、ほぼ100%耳垢が湿っています。
 湿っている程度も人それぞれです。
 ワキガ臭の程度も個人差があります。
 アジア圏では、乾いた人が多いので、気になるのです。
 ヨーロッパでは、湿った耳垢が‘標準’です。
 欧米の教科書には、ワキガという言葉が見当たりません。
 耳垢が湿っていて、臭いが気になる方は、
 診察にいらしてください。
 保険適応で手術が可能です。

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医療問題

薬の名前と医療事故

 昨日はJAL機の事故について記載しました。
 間違いやすい表現を使わないのが、
 事故防止の第一歩です。
 医療事故で多いものに、薬の取り違えがあります。
 薬の名前を間違えて投与してしまう。
 薬の名前を間違えて処方してしまう。
 などです。
      ■         ■
 医学部でも看護学部でも、薬についての講義があります。
 薬学部も、もちろんあります。
 ところが、大学や看護学校で教える名前は、
 病院や診療所で、実際に使う薬の名前ではありません。
 薬屋さんで売っている薬の名前も教えません。
 国家試験も同じです。
      ■         ■
 一般に薬屋さんで売っている薬。
 病院で使う薬。
 これらの名前は、すべて‘商品名’です。
 同じ中味の薬でも、
 売っている会社によって違います。
      ■         ■
 ガスターという胃潰瘍の薬があります。
 TVで宣伝していたので、有名になりました。
 大学で教えるのはガスターという名前ではありません。
 ファモチジンという、一般名を教えます。
 ガスターは、現在のアステラス製薬㈱、
 昔の山之内製薬㈱がつけた‘商品名’です。
 現在は、後発医薬品を含めて、
 たくさんのファモチジン製剤が市販されています。
      ■         ■
 ・ガモファー
 ・ガスイサン
 ・ガスセプト
 ・ガスドック
 ・ガスポート
 ・ケミガスチン
 ・ストマルコン
 ・ファモチジン
 ・プロゴーギュ
 これらのすべてが同じ中味の『ガスター』です。
      ■         ■
 中味が同じなのに、
 会社によって価格(薬価)が2倍以上違います。
 もちろん、一番高いのが、本家本元のガスターです。
 私たち医師は、自分が使う薬を覚えるだけです。
 薬剤師の先生は、すべては覚えられないにしても、
 医師の何倍も何百倍も、
 薬の名前を覚えなければなりません。
      ■         ■
 学校を卒業して免許証を手にした医師、薬剤師、看護師は、
 まず、これらの商品名を覚えることから始めます。
 医師は、ともかくとして、看護師は大変です。
 配属された病棟が、外科なら外科で一つの科だけなら、
 使う薬が限られるので、まだ覚える薬の名前も少なくて済みます。
 ところが、内科、耳鼻科、皮膚科、泌尿器科、放射線科など
 たくさんの科の患者さんが、一つの病棟にいることがあります。
 これを混合病棟といいます。
      ■         ■
 そうすると、そこの看護師さんは、
 すべての科の薬を覚える必要に迫られます。
 新卒で何もできないナースが、
 薬の名前や作用・副作用まで覚えるのは…
 まず、不可能といってもいいくらいです。
      ■         ■
 ナースだけではありません。
 医師も、最初は何も知りません。
 商品名を教えてくれるのは、
 先輩や教科書のこともありますが…
 先輩の医師は忙しいので、親切には教えてくれません。
 親切に薬の名前を教えてくれるのは、
 医薬品情報担当者と呼ばれる、
 製薬メーカーの営業担当者です。
      ■         ■
 営業担当は、
 先生に自社製品の名前を覚えてもらうのが仕事です。
 当然、親切丁寧に教えてくださいます。
 私も製薬メーカーの方には、
 数え切れないほどお世話になりました。
 薬剤師の資格を持った方もたくさんいらっしゃいます。
 自社製品以外のことも、たくさん教えていただきました。
      ■         ■
 薬の名前には、似たような名前がたくさんあります。
 サクシン(筋弛緩薬)とサクシゾン(ステロイド製剤)
 アマリール(糖尿病用薬)とアルマール(不整脈用剤)
 など、
 間違うと、とんでもないことになるのに
 似たような名前が、厚労省で認可されています。
      ■         ■
 人間はミスを犯すものです。
 医学部、薬学部、看護学部で
 実際に使う薬品名も教える。
 似たような名前で、
 間違いやすい名前の薬は認可しない。
 など…
 医療事故が起こらないように、
 対策を考えることが、国の仕事だと思います。
 残念なことに、このような対策は取られていません。

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医学講座

JAL機事故

 新千歳空港で、平成20年2月16日午前10時33分頃に、
 日本航空502便、定刻9:05発(ボーイング747、乗客・乗員446人)が
 管制官の許可なく滑走を始め、
 停止を命じられるトラブルがありました。
 滑走路上には関西国際空港から到着した
 日本航空2503便(MD90、乗客・乗員126人)がいたため、
 緊急停止しなければ、衝突の危険性があったという問題です。
      ■         ■
 事故当時は、風雪のため、視界が500m程度。
 滑走路は一本が閉鎖して除雪中。
 航空機の離発着も大幅に遅れていました。
 事故の原因は、
 日本航空の機長(58)、副操縦士(27)、副操縦士(32)が
 管制官の英語の指示を聞き間違えたと報道されています。
      ■         ■
 新聞各社は、日本航空が経営再建中であり、
 高騰している、燃料の節約のために、離陸を急いだ。
 機体に散布した防氷液の効果時間に気を取られて聞き間違えた。
 経営優先の企業体質が問題だ。
 と日本航空を非難した報道が目につきます。
      ■         ■
 その中で朝日新聞が、
 管制官が使った英語の、
 ‘Expect immediately takeoff.’(直ちに離陸するよう備えよ)
 を取り上げています。
 国交省監修のマニュアルにはない表現だが、
 混雑時などに国際的に使われているとのことです。
      ■         ■
 JALの機長さんは58歳です。
 おそらくベテランの機長さんだと思います。
 今までの、経験の中で、
 新千歳の管制官が使ったことがない表現だったのではないでしょうか?
      ■         ■
 大雪でダイヤが乱れた時は、
 乗客を一刻も早く目的地にお連れしたいというのが、
 機長さんのお気持ちだと思います。
 もし、最初の‘Expect’を聞き逃したら…
 ‘Immediately takeoff.’が管制官の指示になります。
      ■         ■
 航空無線の音質はわかりません。
 ただ、たまに機内で聞かせていただく、
 『操縦室からご案内いたします。』
 『当機はあと○○分で新千歳空港へ着陸予定です。』
 なんてアナウンスも、あまりいい音質ではありません。
 エンジン音でかなり聞きづらいこともあります。
      ■         ■
 そもそも、日本人の管制官が日本人の機長に指示を出すのに
 英語を使う必要があるのでしょうか?
 規定では、英語または母国語となっているそうです。
 英語で指示を出して、日本語で復唱すれば事故は防げるのでは?
 ある新聞によると、
 日本の空で交わされている英語は、
 Nativeの人が聞くに堪えないヒドイ英語だそうです。
      ■         ■
 医療事故も指示の聞き違えで起こることがあります。
 紛らわしい指示は出さない。
 間違いやすい指示は出さない。
 重要なことは復唱する。
 大切な薬や血液は複数で確認する。
      ■         ■
 航空業界は、安全に関する研究や実践が、
 一番発達していて、充実している業界のはずです。
 日本航空一社の問題とせずに、
 制度そのものを、国土交通省が考えるよい機会だと思います。
 私はいつもANAを利用していますが、
 JALさんにも頑張っていただきたいと思います。

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医療問題

研修医の病気

 医者と弁護士は安定した職業で、
 免許証や資格さえ手にすれば、何の不安もない?
 とお考えではありませんか?
      ■         ■
 これは大きな間違いで、医者も弁護士も開業すれば個人事業主。
 所得が高くて、楽で儲かるなんて… お考えなら、
 開業医も弁護士もおやめになるべきです。
 有給休暇もなければ、何の保障もありません。
 一年365日、休みなし。
 朝から深夜まで働いています。
 病気になって働けなくなれば、その日から収入は途絶えます。
      ■         ■
 弁護士さんについては、私は詳しくありません。
 高橋智先生のSammy’sダイアリーによると、
 イソ弁:居候弁護士。
 ノキ弁:軒先貸しの意味。事務所に所属しているが、内部では自立していて、給与ゼロで働く弁護士。
 (つまり、自分の分は自分で稼ぐということ)
 タク弁:弁護士事務所に就職できず、自宅で弁護士をはじめた弁護士。
 ソク弁:いきなり独立して弁護士になる弁護士。
 何れの弁護士さんも、給与ゼロで働く弁護士。
 有給休暇はおろか、病気になった時の保障も、
 健康保険も???どうなっているのでしょうか?
      ■         ■
 札幌市長の上田文雄さんが、ある時期に年金未加入だった?
 選挙の時に反対政党が言っていたような気がします。
 (間違っていたら、ごめんなさい)
 それだけ、弁護士も生活が大変な時期があり、
 決して、身分が安定しているのではないということです。
      ■         ■
 もし、イソ弁、ノキ弁、タク弁、ソク弁の弁護士さんが、
 病気になって働けなくなったとします。
 社会保険に加入していれば、
 傷病手当金という給付金がいただけます。
 ただ、そんな境遇でしたら、タク弁やソク弁にはなりませんね。
      ■         ■
 病気になったその日から、収入は途絶え、
 場合によっては高額の医療費を請求されます。
 これは研修医も同じです。
 私が北大病院の研修医だった頃は、非常勤職員でした。
 北海道大学からいただいた辞令には、
 『任期は一日とする』と書かれていました。
      ■         ■
 任期が一日ということは、
 翌年の3月30日まで、日々任期を更新し、
 3月31日には、北大病院の全研修医の任期が消滅。
 実際には働いていましたが、
 3月31日は、正規の文部教官の‘先生’以外は無給で働くということでした。
 しかも、私がいただいたお給料は、日給3,300円程度でした。
      ■         ■
 市立札幌病院に勤務してた時に、
 研修医の先生が病気になり入院しました。
 研修医の任期は、3月31日まででした。
 その先生は、まだ療養が必要な状態でしたが、
 任期切れで解雇でした。
      ■         ■
 身重の奥さんがいらっしゃいました。
 私は、当時の院長に直談判(ジカダンパン)して、
 何とか雇用を継続して欲しいと頼みました。
 日頃は、ニコニコして、
 「形成外科の先生には頑張ってもらっていて助かっています」
 なんて言っていた院長が助けてくれませんでした。
      ■         ■
 私も研修医も困り果てました。
 本当に、困りました。
 フリーターと同じ状況です。
 現在の臨床研修制度で、
 初期研修を受けている研修医でも同じことが言えると思います。
 社会保険がついているとは思いますが、何の保障もありません。
 医者も弁護士も不安定な職業です。
      ■         ■
 幸い、病気になった研修医は回復し、
 偉くなって活躍しています。
 私は何か困ったことがあると、その先生に相談します。
 自分が窮地に陥ったことがある人は、
 とても親身に相談にのってくれます。
 私はその先生を心から信頼してます。
 医者も弁護士も、困っている人を助ける職業です。
 自分が困ったことがあると、相手の気持ちがよくわかります。
 ただ、病気になるのだけは、
 間違いなく経験しないのがよいです

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医療問題

生活保護

 滝川市で、2億円もの通院費を支給していたことが問題となっています。
 どうして、寝台付きタクシーが必要だったのか?
 札幌まで通院する必要があったのか?
 主治医は、何故?どのような意見書を書いたのか?
 医療側から見ても、疑問や謎が多い問題です。
      ■         ■
 私が忘れられない患者さんがいらっしゃいます。
 市立札幌病院の時に手術を担当させていただいた、
 男性(60歳台)の患者さんでした。
 身体中に、神経性の腫瘍ができる病気でした。
 背中にできた、腫瘍の一個が悪性化しました。
 腫瘍は、新生児の頭部程度の大きさになっていました。
      ■         ■
 整形外科の先生から、ご紹介を受けた記憶があります。
 高齢のお母さん(80歳台)がいらっしゃいましたが、
 独身で一人暮らしでした。
 真面目に働いていた方でしたが、
 正職員ではなく、日雇い従業員でした。
 社会保険はなく、医療費は国民健康保険でした。
      ■         ■
 当時、社会保険本人は1割負担で済みましたが、
 国民健康保険の方は、3割負担でした。
 病気で入院した、その日から、お給料はゼロ。
 病院の入院費は、
 手術をしたり、検査をしたりしましたので、
 自己負担分が、一ヵ月に数十万円にもなりました。
      ■         ■
 腫瘍は手術で取り除きましたが、
 残念なことに、手術前に他臓器に転移が見つかっていました。
 手術部位はキレイに治りました。
 転移巣は、抗癌剤による化学療法を行いました。
      ■         ■
 手術よりも、化学療法が辛いようでした。
 吐き気が出て、食事も進みませんでした。
 それでも、じっと耐えて治療に専念していました。
 私から見ても、ガンの専門医から見ても、
 余命は長くて数ヵ月といったところでした。
      ■         ■
 その男性は、自分と高齢のお母さんのために、
 毎月少しずつ貯金をしていました。
 貯金の額は、数十万円でした。
 高額の治療費のため、貯金が底をついてきました。
 私と病棟婦長は、医療相談室に相談しました。
      ■         ■
 札幌市区役所の保護課に相談しました。
 市立病院からの相談だからといって、
 区役所で特別に取り扱ってくれることはありません。
 区の担当者は、事務的に仕事を処理する方でした。
 問題となったのが、預貯金でした。
      ■         ■
 区役所の保護課が言うには、
 その預貯金を解約してお金をもらい、
 一文無しにならないと生活保護の給付はできない。
 そのお金は、
 高齢のお母さんと自分のためにコツコツと貯めたお金でした。
      ■         ■
 結局、その方はお亡くなりになりました。
 生活保護は受給しませんでした。
 病院を死亡退院する時には、全財産がなくなっていました。
 私は、お花を持って、その方の葬儀に伺いました。
 質素な暮らしぶりがわかる、小さなアパートの一室でした。
 友人の方たちが、小さな祭壇を準備してくださり、
 高齢のお母さんが、
 とても悲しそうに、小さくちいさく見えました。
      ■         ■
 自分には何の責任がなくても、
 人はある日突然病気になることがあります。
 そのように、
 自分ではどうにもならないくらい困った時に、
 助け合うのが、医療保険や社会の役割だと思います。
 日本国憲法25条1項には、
 「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」
 とあります。
 健康で文化的な最低限度の生活を、
 国民に保障できない国はダメです。

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医療問題

米国の医療

 私は米国に住んだこともありませんし、留学した経験もありません。
 学会で知り合った先生や、米国で開業している先生から伺っただけです。
 その程度の知識でも、米国の医療制度が良いとは決して思いません。
 米国のようにだけは、なってほしくないと思います。
      ■         ■
 米国で一番偉そうにしているのが、保険会社です。
 医療の内容に、いちいち文句をつけて、お金を払いません。
 私が学会で親しくなった医師は、‘実験的手術’だからと、
 保険会社から治療費を支払ってもらえなかったとこぼしていました。
      ■         ■
 その先生が、保険会社から治療費を支払ってもらえなかった手術は、
 学会で最新の優れた手術と絶賛され、
 PRSという米国形成外科学会誌にも掲載されました。
 もう10年以上も前のことです。
      ■         ■
 米国大統領選挙の争点の一つが、医療保険問題です。
 平成20年1月30日の日記でご紹介した、
 マイケル・ムーア監督のSickoを私は観ていませんが、
 そこで問題となった、米国の状況がたくさんのブログで紹介されています。
 米国、医療問題、保険と入力して検索すると、たくさんのサイトが出てきます。
      ■         ■
 医療費の高騰。
 たくさんの無保険者。
 医療費が払えず自己破産。
 利益至上主義に走る、保険会社、製薬業界。
 こういった業界から、政治献金を受け取った議員による政策。
 どれをとっても良いことは一つもありません。
      ■         ■
 医療経営も大切です。
 医療からムダをなくす努力も必要です。
 限られた医療費で、効率的に医療を行うことも必要だと思います。
 ただ、自分が本当に困った時に、
 社会が何も手を差しのべられないような医療制度は困ります。
      ■         ■
 四半世紀以上も医師をしていると、さまざまな方にめぐり合いました。
 自分は健康で、病気なんかしないと思っている人でも
 ある日突然、病気になってしまうことがあります。
 医療保険というのは、
 相互扶助(お互いに助け合う)という精神の下に成り立っています。
 一部の人だけが恩恵を受ける、
 一部の保険会社だけが、巨額の利益を上げるような制度は要りません。

 

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医療問題

米国医療訴訟

 弁護士の高橋智先生の日記、Sammy通信、2008年2月7日に米国の医療訴訟について書かれていました。
 気になったので、原文の読売新聞の記事を検索してみました。
      ■         ■
 2006年6月9日、読売新聞の記事です、YOMIURI ONLINEから引用しました。
 賠償額200億円の弊害
 最近ニューヨークの裁判所で衝撃的な判決が下されました。
 赤ちゃんが脳性まひで生まれたのは
 産科医が帝王切開をせずに自然分娩を強行した医療ミスのためとして、
 200億円の賠償金を支払えという評決です。
      ■         ■
 米国では、一般から選ばれた陪審員が賠償額も含めた評決を出すので、
 原告側の弁護士は、脳性まひの幼児を出廷させ、
 陪審員の気持ちをゆさぶりました。
 その結果、このような巨額賠償となりました。
      ■         ■
 米国は世界に冠たる訴訟大国で、弁護士は日本の50倍もいます。
 医師は、そのための備えが大変です。
 血管外科医である私は、毎年約700万円の損害賠償の保険費用を負担しています。
 これが日本では、わずか6万円ですみます。
      ■         ■
 米国の総医療費は、日本の7倍の200兆円にのぼります。
 考えてみれば、医師の損害保険料や、常軌を逸した200億円の賠償金なども、
 医療費から捻出(ねんしゅつ)されるわけですから、米国の医療費が高くなるはずです。
      ■         ■
 訴訟社会の弊害はそれだけではありません。
 米国の医師の多くは常に、
 「裁判になったら」と言うことを念頭に置きながら診療をしています。
 そのため、不要な帝王切開が横行しているのもひとつの例です。
      ■         ■
 ニューヨーク市での帝王切開率は1970年代には全出産の5%でしたが、
 2000年代には30%を超えました。
 働く女性が多く、帝王切開だと予定が組める、
 痛くないといったことも理由に挙げられますが、
 訴訟の影響もあります。
      ■         ■
 過去20年間に度々、自然分娩での脳性まひが訴訟になってきました。
 帝王切開がこんなに増えても、ニューヨーク市での脳性まひの発症率がこの30年間全く変わっていませんから、
 出産形態と脳性まひには因果関係はありません。
 しかし、医師としては、訴えられる危険はできるだけ避けたいと考えます。
      ■         ■
 訴訟は、紛争の解決方法として、もちろん有意義なものですが、
 医療訴訟をめぐる米国の現状は行き過ぎです。
 米国には、患者や家族が医療内容に疑問を持った時、専門家が調査をし、
 問題があれば、行政処分を下す仕組みがあります。
 ですから、民事訴訟は文字通り損害賠償を求めるために行います。
 日本でも医療訴訟が増えてきましたが、単に損害賠償を求めるというのではなく、
 「何があったか明らかにするため」に訴訟に臨むケースが多いと言われています。
 日本にも米国のようにきちんと行政処分を下す仕組みがあれば、
 事情は変わってくるのかもしれません。
      ■         ■
 また、医療被害者がきちっと救済されるためにも、
 医療者の過失の有無にかかわらず被害者が救済される無過失保障制度の確立や
 医療過誤を専門とする裁判官の育成が急務です。
 そうした日本なりの医療事故や医事紛争解決の手段を整え、
 医療訴訟については、アメリカを反面教師としたいところです。
      ■         ■
 プロフィール
 大木隆生 おおき・たかお
 アルバートアインシュタイン医大血管外科教授。
 1987年、慈恵医大卒。
 モンテフィオレ医療センター血管外科・血管内治療科部長、
 東京慈恵会医科大学外科学講座 統括責任者・教授。
 (以上、読売新聞HPより引用)
      ■         ■
 私が、札幌医大の学生だった30年前から、米国の医療訴訟と保険料の高さが問題になっていました。
 札幌医大では、医学英語という授業科目がありました。
 英語担当だった、清水正教授が、米国Newsweek誌から、興味ある記事を引用してくださり、
 それをタイプしたプリントが教材でした。
 清水教授は、英語の発音がキレイで、とても真面目な先生でした。
 今にして思えば、大変な苦労をなさって、教材を作っていただいたと、
 清水先生に深く感謝する次第です。
      ■         ■
 その医学英語のテキストで問題となっていたのが、医療過誤保険の高額なことと、
 訴訟が多いので、産科医を目指す医学生がいないという社会問題でした。
 30年も前から、米国で問題になっていたことが、日本でも現実に問題になっています。
      ■         ■
 弁護士の高橋智先生が日記で書かれていたことも、確かに理解できます。
 ただ、日本で、医療訴訟が多くなり、
 賠償額が高額になれば、医療過誤保険を引き受ける会社がなくなります。
 自動車賠償責任保険のような制度を設ければ別ですが、
 医師個人や医師会に任せられている現在の制度では無理です。
      ■         ■
 ちょっとでもリスクがある‘医療’は誰も引き受けなくなります。
 リスクが高い診療科目を選択する医学生や若手医師はいなくなります。
 しなくてもよい、帝王切開が増えます。
 医療費も間違いなく高騰します。
      ■         ■
 医療は車の運転と同じで、条件が悪い道路を走ると
 必ず事故に遭う危険性が伴います。
 悪路で、視界が悪い山道でも、必要に迫られて走る必要はあります。
 どんなに慎重に運転しても、
 がけ崩れや橋の崩落にあってはたまりません。
 そういう‘医療’もあります。
      ■         ■
 少子高齢化社会になって、医療費はますます増えるばかりです。
 将来の医療を担う若い先生が、
 自信をもって医療ができるシステム作りが急務です。
 弁護士さんが増えて、医療訴訟が多くなる可能性は理解できます。
 ただ、医療には避けられない危険性が潜んでいることを理解していただき
 訴訟を避けるために、不必要な帝王切開が増えるような事態だけは避けてほしいものです。

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医療問題

産院選び

 全国医師協同組合の機関紙、JMC News107号に掲載されていました。
 “お産難民50万人”。
 まるで「受験戦争」と
 生理が一週間遅れたら。
 第1、
 第2、
 第3、
 と調べて、
 産院の席取り競争している妊婦さんも…
 情報の乏しい初産婦は『負け組』に…
      ■         ■
 生理が一週間遅れた程度で、受診して予約しないと、
 人気が高い産院は、予約で埋まってしまうということでしょうか?
 札幌市内では、まだお産ができる産院がたくさんあります。
 ここまで、席取り競争をしなくてもよさそうですが、
 よい産院を選ぶのは、美容外科以上に難しそうです。
      ■         ■
 家内は、昭和58年に私が勤務していた、函館中央病院で上の子を産み。
 昭和60年に天使病院で下の子を産みました。
 函館中央病院は、道南の総合病院で、NICUもある立派な病院です。
 はじめての子を取り上げてくださったのは、当時の産婦人科医長だった、松浦敏章先生です。
 現在は、函館マタニティクリニックを開業なさっていらっしゃいます。
 穏やかで、優しい先生です。
      ■         ■
 私は、同じ病院だったので、お産の時に呼んでいただき、分娩室で生まれるところを見ていました。
 カメラを持って行き、生まれた瞬間からシャッターを切っていました。
 助産婦さんから、「さすが形成の先生!」と言われてしまいました。
 私は、内臓のことはわかりませんので、
 まず、体表面に異常がないことを確かめました。
 顔面に異常はない。
 指は5本ある、などなど…
 五体満足で生まれて安心しました。
      ■         ■
 下の子は、私が北大形成外科でチーフレジデントをしていた時に生まれました。
 子どもには、申し訳なかったのですが、出産には立ち会えませんでした。
 それどころか、北大病院で患者様がお亡くなりになり、
 病理解剖をさせていただいていた時に生まれたのが長男です。
 電話で、長男が生まれたことは聞いていました。
      ■         ■
 私が、天使病院へ行けたのは、消灯時間がとっくに過ぎてからでした。
 準夜勤務の看護婦さんに、
 今日、生まれた子供の父ですと言って、詰所を訪ねました。
 もう、夜も遅かったので、
 当然、子どもには会えないだろうと思っていました。
 不憫(フビン)に思ってくれたのでしょう、
 優しい看護婦さんが、
 新生児室のベビーコットで眠っていた長男を、
 ガラスのところまで連れてきてくれました。
      ■         ■
 すやすやと眠っていた、長男を一目見て、
 安心して、私は自宅へ帰りました。
 自宅では、家内の母親が、関西から来てくれていて
 上の子の面倒をみてくれていました。
      ■         ■
 私が、自分の子供を産んでもらうのに選んだのは、2人とも総合病院でした。
 一人目は、自分が勤務していた病院だったので、当然といえば当然。
 二人目は、札幌市内でも評判が高かった、天使病院を選びました。
 天使病院には、歴史があり、産婦人科も、小児科も、麻酔科もありました。
      ■         ■
 北大病院や、当時私が住んでいた、北区新琴似からも
 比較的近いという、交通の便もありました。
 もう自分の子供が生まれることはありませんが、
 孫が生まれるとしたら、どこを選ぶでしょうか?
      ■         ■
 20年前と現在では、医療体制も変わりました。
 自分が開業医になって、開業医ならではのよさもわかりました。
 家内は、天使病院に検診でかかった時など、
 待ち時間が長くて大変だったと言っていました。
      ■         ■
 帯広厚生病院や札幌医大病院に私が勤務していた時は、
 私の外来は、2時間待ちは、ザラにありました。
 それでも、私が外来を終わって、昼食を食べるのは
 早い日で、14:00。
 遅い日は、16:00にもなっていました。
 家内には、
 いい病院だから、人気があって、待ち時間も長いのさ。
 仕方がないよ。と言っていました。
      ■         ■
 総合病院の産婦人科は確かに安心といえば安心です。
 何かあっても、小児科、麻酔科の先生がついています。
 その代わり、待ち時間が長い、予約が取りにくいなどの‘デメリット’もあります。
 マタニティクリニックの中には、フルコースのディナーがついた産院もあります。
 札幌で一番早くに、このフルコースディナーを始めたのが、
 札幌マタニティ・ウイメンズホスピタルです。
      ■         ■
 そちらのHPによると、さまざまな妊婦さん向けのサービスがあります。
 総合病院では、絶対にできそうもないサービスもあります。
 自分が開業して思うことは、総合病院が必ずしもベストではない?ということです。
 ワキガの手術ではありませんが、
 私が現在行っているような‘医療’は、総合病院では絶対にできません。
      ■         ■
 土日も診療。
 夕方も診療。
 待合室は、個室風に仕切ってある。
 他の患者様となるべく会わないようにする。
 札幌駅から歩いて5分以内。
 総合病院ではまず不可能です。
      ■         ■
 特別な合併症のないお産でしたら、マタニティ専門の病院がよいと思います。
 検診は、札幌駅のJRタワーで受けて、
 お産は北大前の本院というのも、魅力的です。
 産科医や助産師さんの数、
 お産の数も総合病院より多いのには驚きます。
 もし、孫ができたら、マタニティ専門の病院にお願いしようと思います。
 (残念ながら、孫はできそうにありませんが…)
 

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医学講座

毛の悩み、ハゲ頭の気持ち

 昨日の‘天声人語’で、朝日新聞社の筆者は、
 『人間は外見ではない』
 『頭の毛が薄くても、中味が良ければ問題ない』
 『毛があるか、ないかなんて、大したことではない』
 『気にしなさんな』
 と言っているように、私には思えました。
      ■         ■
 もう少し、書かせていただくと、
 『たかが、頭の毛ごときに…』
 『何年も…』
 『数百万円も…』
 『その出費と手間をいとわぬ』
 『客層があることに驚く』
 と言いたかったのだと思います。
      ■         ■
 これは、毛で悩んでいる人へ、
 思いやりのかけらもない、ひどい言葉です。
 この日記を朝日新聞社の筆者が読むことはないと思いますが…
 できれば、天声人語で訂正してほしいと思います。
 見た目の問題は、本人よりも、
 周囲から『問題提起される』ことが多いように思います。
      ■         ■
 小学校などの授業参観があります。
 ふだんは、お父さんが大好きだった、女の子が、
 友人から…
 『○○ちゃん、今日来てたの、おじいちゃん?』
 『○○ちゃんのお父さん、お仕事が忙しくて来れなかったの?』
 この、子どもの何気ない一言で、
 それまで、大好きだった…
 お父さんが嫌いになってしまう…
      ■         ■
 場合によっては、学校へ行くのがイヤになってしまう…
 友だちから、いじめの対象になってしまう…
 朝日新聞の筆者さん。
 あなたは、これでも、‘数百万円もかける客層’が信じられませんか?
      ■         ■
 植毛を受けて、抜糸にいらっしゃる方は、
 実に真面目で誠実な方が多いと思います。
 何年も真剣に悩んで、いろいろ検索して、横浜まで手術を受けに行かれます。
 手術のために、倹約して、手術費用を貯める方もいらっしゃいます。
 中には、
 『先生、いゃぁ、オレ、今川先生ところへ行くまで…』
 『なんぼ使ったかわからねぇ。』
 と正直に話してくださる方もいらっしゃいます。
      ■         ■
 医師や歯科医師ですら、胡散臭い(ウサンクサイ)クリニックに騙されるのです。
 『発毛には個人差があります、施術で生えない方もいらっしゃいます』
 『人工毛は異物ですから、頭皮にダメージを与えます』
 なんてことは、言わないのです。
 同意書や約款の隅に、見えないような字で小さく書いてあるだけです。
 ふつうの人は、TVで有名タレントが宣伝していると、コロッと騙されるのです。
      ■         ■
 植毛手術は簡単ではありません。
 今川先生のHPにもあまり書いていませんが…
 実は、先生と同じ位重要なのが、
 毛を植えてくれる看護師さんです。
 一本一本に細かく丁寧に株分けしてくれる、テクニシャンです。
 この植毛チームが総力をあげて、何千本も植えるのです。
 髪に悩む人はたくさんいます。
 マスコミでも、少し本格的に取り上げてほしい問題です。

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医学講座

頭髪の悩み

 平成20年2月11日、朝日新聞の天声人語です。
 17世紀のフランス国王、ルイ13世は心労ゆえに薄毛となり、22歳でカツラをつけた。
 廷臣たちがそれに倣い、カツラはやがて上流階級の正装として各国に広まったという。
 時は移れど、世に「自分を変えたい」願望は尽きない。
      ■         ■
 光頭の書き手による『ハゲの哲学』(金子勝昭、朝日文庫)はこうクギを刺す。
 「ハゲを隠しているという意識につきまとわれているかぎり、
 変貌(へんぼう)できない」。
 ましてや、隠せぬままに変わり損ねた落胆は大きかろう。
       ■         ■
 育毛ケアで効果が薄かった大阪の男性(58)が大手業者を訴え、
 430万円を返してもらう和解が成立したそうだ。
 業者は「必ず生えるとは言っていない」と反論したが、
 原告の強い不満に折れた。
      ■         ■
 「前後」の写真を見る限り、憤りは当然だ。
 毎週の頭皮ケアや補助食品に、男性は約680万円と4年の時を費やした。
 生える保証のない育毛にこれほどお金がかかり、
 その出費と手間をいとわぬ客層があることに驚く。
      ■         ■
 あるべき物が無いのを恥じる心に、業者は手を差し伸べる。
 毛が戻って前向きに変われるのならいいが、
 見てくれや世間体に追われる人生はもったいない。
      ■         ■
 頭髪の気になり具合は
 「自分の人生をどの程度自分のものにできたかを測るものさし」
 (金子氏)でもある。
      ■         ■
 脱毛への備えを説いた
 『ハゲてたまるか』(下川裕治、朝日新聞社)で、
 精神科医が語る。
 「人は交通事故を笑えないが、バナナの皮で転べば笑う。
 大したことではないからだ。
 精神的にハゲを克服するポイントです」。
 そう、大したことはない。
 (以上、朝日新聞から引用)
      ■         ■
 私は、声を大にして言いたい。
 頭髪の悩みを、
 『大したことはない!』
 と片付けるのは、
 悩んでいる人を知らないだけです。
      ■         ■
 おそらく、天声人語の筆者も、頭髪はフサフサなのでしょう。
 私は今のところ、頭髪に関する悩みはありません。
 ただ、同業者の医師や歯科医師でも
 頭髪で悩んでいる人をたくさん知っています。
      ■         ■
 新聞社は、正しい頭髪の知識を、
 医学記事として掲載する程度の配慮があってもいいと思います。
 医師や歯科医師ですら、
 頭皮に有害な人工毛移植を受けている‘先生’がいます。
      ■         ■
 この人工毛植毛も、有名タレントが宣伝しています。
 最近は、その全国展開しているクリニックでも、
 自分の毛を移植する自毛植毛の‘手術’をしているようです。
 有名大学形成外科の‘先生’が顧問になっています。
      ■         ■
 頭髪ビジネスは、
 カツラメーカー、
 毛生え薬メーカー、
 サプリメントメーカー、
 問題となったリーブ21のようなメーカーなど、
 さまざまな業種が絡んでいます。
 美容外科分野でも、頭髪ビジネスが盛んになってきています。
      ■         ■
 私が推薦した、横浜の今川賢一郎先生は、
 数少ない、信頼できる‘植毛医’です。
 何回も、今川先生に手術を受けている人がたくさんいるクリニックです。
 頭髪の悩みは、
 『大きな、悩みです!』
 女性も含めて、頭髪で悩んでいる人はたくさんいます。
      ■         ■
 適切な治療を受けると、頭髪の悩みはかなり改善できます。
 憎むべきは、頭髪の悩みにつけ込んで、
 効果もないのに、高額の料金を請求するところです。
 異物である、人工毛を頭皮にたくさん打ち込んで、
 頭皮をボコボコにしている‘クリニック’です。
 悩んでいる方は、今川先生にご相談することをおすすめします。 

 

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