院長の休日

死刑制度に対する考え

 私が‘愛読’している、弁護士の高橋智先生の、
 2008年4月16日のSammy通信に、死刑制度について記載されていました。
 高橋先生や日弁連の基本的な考えは、
 死刑制度は廃止すべきだと読み取れました。
 先生の文中に
 死刑に頼らず、
  犯罪の防止に市民が参加して検討をする時期に来ているのではないだろうか?
 厳罰化しても、
  犯罪は減らないと言うことを
  刑事裁判官の最前線にいる弁護士ほど痛感している。
      ■         ■
 また、
 再犯率を下げるかは刑事政策
  (刑務所が教育プログラムを持つこと、犯罪の予防政策等)や、
 家庭問題の対処にかかってきている。
 とも記載されていました。
 私は、平凡なごく普通の一般人です。
 以前の日記にも書きましたが、
 オウム真理教の教祖のような人が、
 この世の中に存在する限りは、
 死刑制度は必要だと私は思います。
      ■         ■
 私が札幌医大で法医学を習った時のことです。
 法医学の教授は、東京都監察医務院で経験を積まれた、
 八十島信之助先生でした。
 八十島先生は、慶応大学医学部のご出身。
 講義は明快で、とても楽しく勉強になりました。
 私は法医学が好きでした。
 講義中に、八十島先生が言われた言葉を覚えています。
 ‘医学は人間の生命を助ける学問です。’
 ‘日本には死刑制度があるため、
  法医学は間違った判断をすると、人を死に至らせることがあります。’
 八十島先生が、死刑制度について、
 われわれ学生に、講義中に述べられた記憶はありません。
      ■         ■
 死刑囚といえど、死刑を執行された後で、
 死亡を確認するのは医師の仕事です。
 これをするのが矯正医官です。
 札幌刑務所では、死刑を執行するため、
 札幌刑務所の矯正医官になると、
 死刑囚の死亡確認という仕事があると聞いたことがあります。
      ■         ■
 医療従事者として、死刑囚の死亡確認はつらい…と聞いたこともあります。
 確かに、裁判官といえども誤審をすることも考えられます。
 私は、死刑廃止運動をなさる方が叫ばれているように、
 死刑を存続しても犯罪率が減らないから、
 死刑を廃止すべきだという理論には賛成できません。
      ■         ■
 死刑囚には、『死をもって罪を償う(ツグナウ)』というより、
 死刑囚によって殺された犯罪被害者の家族の怨念(オンネン)があります。
 『こんな殺され方をされたのだから、犯人には極刑を望みます。』
 という家族や社会の恨みがあります。
 犯人も『どうせ死刑だから早く死刑にしてくれ』という人もいます。
      ■         ■
 どんな平和な国にも犯罪者はいます。
 いつの時代にも、犯罪や戦争がありました。
 残念ですが、どんなに優れた人が担当しても、
 ‘刑務所の教育プログラム’で、
 死刑囚が簡単に矯正できるとは思えません。
 この世に生きている限り、
 必ず再犯の恐れがある罪人はいます。
      ■         ■
 私は、自分にも人にも厳しい人間です。
 悪意を持って何人も殺したような犯罪者は、
 やはり死刑にすべきだと思います。
 そうしないと、再犯の可能性がある人はいなくならないし、 
 無念の死を遂げた、
 被害者も被害者の家族も一生浮かばれません。
 裁判官や検察官、弁護士さんには、
 誤審をしないように、しっかり調べていただき、
 後悔のない裁判をすればよいと思います。
 私の考えは間違っているでしょうか? 

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医学講座

美容外科医の生きがい

 何度か書いたことがあります。
 他科の先生には経験できない、生きがいは、
 美容外科で手術を受けられて…
 実に生き生きとなさっていらっしゃる、
 お客様から元気をいただくことです。
      ■         ■
 医学が発達して、どんな病気でも治せそうに思いますが…
 実際には、‘治せない病気’がたくさんあります。
 医師としてむなしさを感じることが、たくさんあります。
 病気が治らない患者さんを励ましていて、
 こちらが逆に落ち込むこともあります。
      ■         ■
 世の中には、80歳を過ぎても…
 どう見ても、60歳程度にしか見えない方がいらっしゃいます。
 若く見える全員が、美容外科でお直しをなさっているのではありません。
 その方の人生観やひととなりが、お顔や容姿に出ます。
 例外なく、明るく前向きな方が多いのです。
      ■         ■
 病院は病気の人を治すところです。
 健康な方は、人間ドックや健康診断で受診なさる程度です。
 日本の医療制度崩壊のために、
 どこの病院にも‘元気’がありません。
 経営が破綻して、倒産する病院があるくらいです。
 地方自治体には、病院が大きな‘お荷物’になっています。
      ■         ■
 美容外科は健康な方が相手の‘医療’です。
 ‘医業’か‘サービス業’かは、微妙なところもあります。
 ただ、‘治療’を担当させていただいて…
 こちらが元気をいただくことが、たくさんあります。
 これが、他の診療科と決定的に違うところです。
      ■         ■
 女性も男性も化粧品を使います。
 お化粧品という、‘商品’のおかげで…
 キレイになれます。
 もう少し踏み込んで、
 医学の力を借りると…
 化粧品ではどうしても取れなかった、シミが取れることもあります。
      ■         ■
 エステでは、絶対に得られない効果が得られることもあります。
 私は神の手も持っていませんし、
 医学も万能でもありません。
 ただ、ちょっとでもキレイになるお手伝いができて…
 喜んでいただけると、
 私も職員もとても幸せな気分になれます。
 これが美容外科をやっていてよかったと思える瞬間です。

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医学講座

ニキビの芯

 2007年8月20日の日記にも書きました。
 ニキビが赤く腫れ上がって、ずっと治らないことがあります。
 私自身も、高校生の頃に左のホッペにできました。
 痛いのをガマンして指で押し出そうとしましたが、
 何度試みてもうまく出ません。
 そのうち、血が出て赤くなります。
 ほんとうに憎たらしくなった記憶があります。
      ■         ■
 このような難治性のニキビには‘芯’があります。
 多くは毛根と毛根のそばにある、皮脂腺が炎症を起こしています。
 毛根には、上皮細胞という細胞があります。
 この細胞から、白い垢(アカ)のような物質が出ます。
 これと皮脂がうまく排出されずたまると芯になります。
 炎症を起こして‘肉芽(ニクゲ)’という状態になっていることもあります。
 指でつぶしても、痛いだけで出ません。
      ■         ■
 皮膚科では、面皰圧出子(メンポウアシュツシ)という、
 小さな穴が開いた器具で圧迫して押し出すのが一般的です。
 ただ、赤く硬くなってしまったニキビの芯はこれで取れないことがあります。
 この厄介な芯を取るのに有用なのが、手術用顕微鏡です。
 先の細い特殊なピンセットで取ります。
 マイクロ摂子(セッシ)といいます。
 毛の根っこまで、実によく見えます。
 先日、別の手術でいらした方のアゴに、
 この難治性ニキビがありました。
 時間があったので、ニキビをちょっと治してあげました。
 手術用顕微鏡で見ながら、中の芯を取りました。
 一ヵ月以上も治らなかったニキビが治りました。
      ■         ■
 手術以上に、ニキビが治ったことで感謝されました。
 ニキビの治療は専門ではありませんが、
 芯を取るのは顕微鏡を使うと上手にできます。
 忙しい時間帯や曜日にはできませんが、
 時間がある時には、お引き受けしています。
 毎日、ニキビと格闘している人は意外と多いものです。
 毛が原因となっている場合もあります。
      ■         ■
 抗生物質をずっと飲みつづけても快くなりません。
 原因となっている毛を処理するとか、
 ホルモンバランスを改善すると治ることがあります。
 私ができるのは、芯をとることと
 毛を無くすること位ですが、
 ニキビで悩んでいる方の役に立てることもあります。
      ■         ■
 残念なことに、毛を焼くレーザーフェイシャルは、
 保険外診療になります。
 ニキビで悩む高校生には少し費用が高いのが難点です。
 ニキビの芯をとる処置は、保険診療でできます。
 こちらは、医療機関が赤字になるほど料金が安いのが難点です。
 どこの皮膚科でも、あまり宣伝していないのは…
 ニキビの患者さんが殺到して、赤字になったら困るからでしょうか?
 赤くて硬く治らないニキビは芯を取ると快くなります。
 自分では取れなません。
 皮膚科や形成外科などの、保険医療機関でご相談ください。

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医学講座

ためしてガッテン

 平成20年4月2日(水)にNHKで20:00から放送された、
 ためしてガッテンを見て、形成外科を受診なさる方が増えています。
 名古屋で開催された、第51回日本形成外科学会でも話題になっていました。
 TVに出演されたのは、信州大学医学部形成外科の松尾清教授です。
 ためしてガッテンのタイトルは、
 医学で解明!顔若返り
 一見、美容外科の内容か?と思わせるタイトルでしたが、
 番組で紹介されたのは、眼瞼下垂症でした。
      ■         ■
 信州大学形成外科は、日本の形成外科でも、
 もっとも眼瞼下垂症に力を入れている施設の一つです。
 松尾教授は、神経生理学的に眼瞼下垂症を分析。
 形成外科医があまり得意ではない、
 筋電図などを使って、
 眼瞼下垂症と種々の症状の関連を分析しています。
      ■         ■
 眼瞼下垂症で肩こりや頭痛になるのは、
 札幌美容形成外科のHPでも解説しています。
 松尾教授は、さらに原因不明の体調不良。
 不眠、うつ病まで引き起こすと解説されていました。
 今回の学会でも、眼瞼のセッションは、
 信州大学が圧倒的多数の演題を出されていました。
      ■         ■
 眼瞼下垂症を上手に治せるのは形成外科です。
 ただ、形成外科医でも100%満足していただける結果を出すのは…
 残念ながら、とても難しいのが、眼瞼下垂症手術です。
 自分の顔が変わるのは絶対にイヤという人がいます。
 目が変わると、印象がガラリと変わります。
 開いているかどうかわからないような目を、
 少し開くようにしただけで印象が変わります。
      ■         ■
 一般的に眼瞼下垂症手術をすると、目は二重になります。
 二重になんかなっては絶対にイヤ!
 という方にはできない手術です。
 手術が心配でしんぱいで…
 という人にもおすすめできません。
 ある先生が学会で発言されていました。
 モノがよく見えるようになったのだけれど…
 家族に『ヘンだ!』と言われて‘うつ’になったとか…。
      ■         ■
 100人中、99人が見て、
 ごく自然な二重だったしても…
 元の目とは違います。
 誰かに『ヘン!』と言われて、気になると…
 もう気になって気になって…
 という人にはできない手術です。
 とにかく本人が気にいらなければ、手術は‘成功’とはいえません。
 手術直後は腫れています。
 醜いアヒルの子です。
 美しい白鳥になるには時間がかかります。
 ですから、どんなに上手な先生がしても、
 難しいのが眼瞼下垂症手術なのです。
      ■         ■
 松尾教授の業績によって、
 ‘眼瞼下垂症は形成外科で治す’という認識が生まれました。
 一人の形成外科医としてとても嬉しいことです。
 美容整形ではなく、目の機能を改善する手術です。
 慢性的な肩こりや頭痛が改善されて…
 結果として、見た目の改善も得られるのはよいことだと私は思います。
 ただ、自分の顔が変わるのはイヤとか
 美容整形を受けたと誤解されるのはイヤという方は
 手術を受けるべきではないと思います。
 価値観は人それぞれです。
 まぶたが下がって重ければ、
 テープで吊り上げて新聞を読む方法もあります。

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医学講座

日本形成外科学会(名古屋)④

 学会では特別講演というのがあります。
 形成外科学だけではなく、他分野の専門家を招いて、
 私たちにいろいろなことを教えてくださいます。
 今回、鳥居教授が招かれたのは、
 京都大学霊長類研究所の松沢哲郎所長(教授)です。
      ■         ■
 京都大学といっても、霊長類研究所があるのは、
 愛知県犬山市です。
 霊長類研究所のことは、おぼろげに知っていましたが、
 どんなところで何を研究しているかは知りませんでした。
 松沢先生はチンパンジーに字や言葉を教えました。
 ビデオで、チンパンジーの子供が、
 一瞬にして数字を覚え、
 見事に1→2→3→4→5→6→7→8→9と
 指で順番に押すのを見ました。
      ■         ■
 更に驚いたことに…
 京都大学の大学院生より、
 チンパンジーの子供の方が、
 一瞬、TVモニターに写る数字を覚える能力が、
 (これを直視像記憶と言うそうです)
 優れていることがわかりました。
 私もビデオを見ていましたが、
 チンパンジーの子供に負けました。
 こちらの中京テレビHPでご覧になれます。
      ■         ■
 松沢教授が育てて、
 数字や文字、色を教えたのは、
 アフリカ生まれのメスのチンパンジー、アイ。
 AIと書いて、アイです。
 アイプロジェクトと名付けられた、
 アイの教育は、単なる研究とは思えませんでした。
 自分の子供のように、
 アイを愛している松沢先生がいました。
 アイが産んだ子供が、アユムという男の子です。
 京大大学院生より‘成績’がよかったのは、
 息子のアユムでした。
      ■         ■
 松沢先生の講演で、
 人間とチンパンジーのDNAは1.23%しか違わないこと。
 サルにはシッポがあるが、
 人間とチンパンジーにはないこと。
 サルとチンパンジーは違うこと。
 人間もチンパンジーも同じ類人猿であること。
 を知りました。
      ■         ■
 チンパンジーの育児は、
 母親が手本を示し。
 子供が自発的にマネをし。
 子供に寛容であること。
 人間の育児は、
 教える。
 手を添える。
 認める。
 うなづき、ほほえみ、見守るのが人間。
      ■         ■
 チンパンジーは5歳まで母乳を与えます。
 母乳を与えている間は、生理が来ません。
 ですから、
 チンパンジーには、
 年子も2~3歳離れた兄弟姉妹もいません。
 5年間は母親がしっかり子育てをします。
 アイの息子のアユムも、
 しっかりと母親のアイにつかまっていました。
      ■         ■
 松沢先生の講演で、
 約500万年前まで、
 人間とチンパンジーは、同じひとつの生き物だった。
 チンパンジーの姿を通して、
 この500万年を遡って(サカノボッテ)、
 私たちはどんな進化の過程をたどって?
 現在あるような
 姿・形・心・行動・ふるまいになったのかを
 研究なさっていることがわかりました。
      ■         ■
 チンパンジーに対する限りない愛情と、
 西アフリカのギニアで
 チンパンジーが絶滅の危機に瀕していること。
 京都大学の大学院生が、
 現地で寝泊りして研究を続けていることを知りました。
 本当に、世の中にはすごい人がいると思いました。
 私もいつか、アフリカでチンパンジーと暮らしてみたいと思いました。
 素晴らしい講演をしてくださった松沢教授と
 講演を企画してくださった鳥居会長に感謝いたします。

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医学講座

日本形成外科学会(名古屋)③

 今日、名古屋から札幌へ帰って来ました。
 新千歳空港に着いて、飛行機のドアが開き、
 一歩外(ボーディングブリッジですが…)へ出ると、
 そこは北国でした。
 外気温が名古屋と比べると低く、桜はまだ…と思いました。
      ■         ■
 今回の日本形成外科学会で私が見た発表の中から、
 一般の方に役立つ情報をお伝えします。
 札幌スキンケアクリニックの、
 松本敏明先生がご発表なさった、
 刺青のレーザー治療
 ―その限界と問題点―
 削皮術併用法の効果と諸問題
 です。
      ■         ■
 松本敏明先生は、北大形成外科の先輩です。
 私の札幌医大の先輩でもあります。
 私が北大へ行こうかどうか迷っていた時に、
 自宅に電話をくださった先輩です。
 松本先生はレーザー一筋30年。
 日本のレーザー治療のパイオニアであり、
 先駆者のお一人です。
      ■         ■
 レーザー機器に対する、一般の方の大きな誤解があります。
①高価なレーザーで治療すれば、跡形もなくシミが消える。
②レーザーを当てると、消しゴムで消したように…
 一瞬で、シミも刺青も消える。
③レーザーを照射した後には、何もアトが残らない。
④レーザーは手術と違って痛くも何ともない。
⑤レーザーで治療すると、通院の必要がない。
      ■         ■
 ①~⑤はすべて×です。
 誤りです。
 レーザーは特定の波長を持った光です。
 その光を調節することによって、
 毛、シミ、刺青、血管腫、アザなど
 その原因となっている色だけに反応させます。
 たとえば、レーザー脱毛は、黒い毛に反応させます。
 毛をヤケドさせて、毛根まで焼いてしまいます。
 そうすると、毛が生えてこなくなるという仕組みです。
      ■         ■
 シミにも毛にも黒い色素があります。
 黒い毛に反応させて、白い皮膚には反応しない光をつくると、
 毛だけヤケドします。
 ただ、毛が焼ける時に、
 周りの皮膚も少しだけダメージを受けます。
 ですから、毛があった部位が赤くポツポツとなります。
 レーザーフェイシャルですと、
 上口唇(ウワクチビル)や前額部(おでこ)が赤くなります。
 毛が濃くて太い人が余計赤くなります。
 (それだけよく効いている証拠です)
      ■         ■
 レーザー機器は米国で開発され、日本に輸入されました。
 はじめて、米国で治療した症例写真を見た時に驚きました。
 刺青がキレイに消えていました。
 レーザー屋さんの説明では、
 刺青がキレイに取れますと言われました。
 ところが、米国人と日本人は肌の色が違います。
 キレイに取れていたのは、白人でした。
      ■         ■
 同じレーザーを使っても、日本人の刺青は厄介です。
 レーザーだけでキレイに取れる刺青は、
 墨汁だけで浅く入れた刺青です。
 それでも、レーザーをかけた部位は、
 赤くⅡ度のヤケド状態になります。
 ヤケドを上手に治さないと、アトが残ります。
 龍の絵や、般若(ハンニャ)の絵の刺青。
 花の絵や人の名前。
 これらはたとえ墨汁だけで彫られていても、
 レーザーを当てて色が取れても、
 薄く絵の形や人の名前が読み取れることがあります。
      ■         ■
 松本敏明先生が30年のご経験から得られた結論は、
 レーザーだけでは刺青は消せませんということです。
 特に難しいのが、カラフルな多色刷り状態の刺青です。
 松本先生のクリニックにある、
 10台以上のレーザーを組み合わせても、
 レーザーだけでは取れない刺青があります。
 これを、ライフワークのように学会で何度も啓蒙していらっしゃいます。
 学会で発表しても、一銭の儲けにもなりません。
 若い先生や後輩に伝えたいから発表なさっているのです。
       ■         ■
 私は、刺青の相談があると、
 ほぼ100%松本敏明先生にご紹介しています。
 個性が強い先生ですから、時には声が大きいこともあります。
 ただ、レーザー治療にかける情熱は誰にも負けません。
 おそらく日本で一番熱心に、
 若者の刺青治療をなさっていらっしゃいます。
 松本敏明先生の札幌スキンケアクリニックは、
 札幌市北区北9条西3丁目高野ビル3階。
 電話:011-728-4103(ヨイレーザー)です。

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医学講座

日本形成外科学会(名古屋)②

 今日の名古屋は雨でした。
 満開だった桜も雨で散っていました。
 今日の学会では、ポスター展示を見ました。
 私が一番熱心に学会発表をしたのは、
 30歳台の時でした。
      ■         ■
 4月に開催される学会に発表を申し込むのは、
 前年の11月頃です。
 春の学会が終わったと思ったら、
 次の学会に発表する‘ネタ’を考えなくてはなりません。
 今は、気楽な開業医ですから、
 学会に参加して、発表を聴くだけで十分です。
      ■         ■
 勤務医の頃は、病院が学会の認定施設になっていました。
 認定施設になるためには、
 学会発表を積極的にしている、という条件が付きます。
 認定施設は、年に一度、学会に報告書を提出します。
 どんな手術を何件くらいしました、
 とか、
 患者さんの数はこのくらいでした、とかです。
 昔は、手術件数さえあれば認定施設になれました。
      ■         ■
 ところが、ある時から論文を書いたり、
 学会発表をしていないと、
 認定施設を取り消されることになりました。
 そうなると、私の下にいる研修医が困ります。
 どんなに大きな病院で研修していても、
 日本形成外科学会認定施設でないと、
 形成外科専門医を取得できません。
      ■         ■
 ですから熱心に学会発表をしていました。
 学会に演題(発表する題のこと)を申し込むと、
 学会から、発表してもOKです。
 とか、
 あなたの発表は残念ですが受理できませんという、
 ‘返事’がきます。
 日本の学会でしたら、‘ダメ’と却下されることは、
 まずありません。
 私自身ですと、一度だけダメと言われたことがあります。
      ■         ■
 いい加減な発表をされると困るので、
 ‘こんな研究をして、こんな結果が出たので発表します’
 という抄録(ショウロク)という書類を出して審査されます。
 発表区分も、
 シンポジウム、
 パネルディスカッション、
 一般演題、
 ポスター展示、
 と分かれます。
      ■         ■
 せっかく発表するのだから、
 みんなの前で、発表したい!
 という人もいます。
 ポスター展示は、一般演題から外れた人が、
 仕方がなく出すというイメージを持つ人もいます。
 私も一時そう思ったこともありました。
 ただ、今から思うとポスター展示で発表した内容を、
 そのまま外国雑誌に英文で投稿して、
 一発で受理されたこともありました。
      ■         ■
 ポスター展示のよいところは、
 熱心な先生にたくさん見ていただけるという点です。
 口頭発表は、一度に3~4の会場で同時進行で行われます。
 もし自分が聞きたい発表が同じ時間にあると聞けません。
 その点、ポスターでしたらたくさんの先生に見ていただけます。
 また、ポスター展示は、字数制限がありません。
 論文形式で作成することもできます。
 図表はそのまま使えるので、
 論文にしやすいという利点もあります。
      ■         ■
 口頭発表もポスター展示も、
 内容を見ると、その先生のレベルがわかります。
 もしある程度の知識がある、一般の方が見ると、
 (‘オエッ!’というような写真もたくさんありますが…)
 発表している先生が、真面目かどうかもわかります。
 残念ながら、日本形成外科学会は非公開です。
 一般向けの市民公開講座はあります。
 来年は、4月22日(水)~24日(金)まで、
 パシフィコ横浜で開催されます。
 一般の方に形成外科をもっと知っていただきたいです。

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医学講座

日本形成外科学会(名古屋)①

 第51回日本形成外科学会に出席するため、名古屋へ来ています。
 名古屋はあたたかで、ちょうど桜が満開か、散りはじめているところです。
 学会会場は、名古屋国際会議場。
 広くて立派な学会場です。
 学会会長は名古屋大学形成外科の鳥居修平教授です。
 鳥居先生は、東京警察病院で形成外科のトレーニングを積んだ先生です。
 マイクロサージャリーの専門家で、再建外科の権威です。
 札幌にも何度もいらしていただいています。
 優しくて穏やかな先生です。
      ■         ■
 今日は朝から、‘アンチエイジングにおける形成外科の役割’
 というパネルディスカッションからはじまりました。
 招待講演は、中国、西安のGuo Shuzhong教授でした。
 熊に襲われて、顔の右半分がなくなってしまい、
 目も開けず、口も閉じられず。
 鼻も完全になくなってしまった、30歳台の男性です。
 交通事故で亡くなった人から、
 顔の右半分を骨をつけて移植した症例でした。
      ■         ■
 心臓や腎臓移植と違い、顔の移植は大変です。
 元の人の顔が、そのままくっついてしまいます。
 フランスで成功例がありますが、
 顔の骨までくっつけて移植したのは、
 世界ではじめてだと、
 東京大学形成外科の光嶋教授がコメントなさっていました。
 中国の医療水準もかなりの技術です。
 日本の形成外科医が、賞賛していました。
      ■         ■
 講演中に、中国でも、顔の移植は技術的にも倫理的にも、
 問題があると話されていました。
 拒絶反応を防止するために、免疫抑制剤という、
 高価な薬を飲み続けなければなりません。
 また、交通事故で亡くなったとはいえ、
 屍体から、顔をとられてしまう、患者家族の心情にも配慮が必要です。
 手術結果は素晴らしいものでしたが、
 今後どのように発展するのか?将来はわかりません。
      ■         ■
 私自身でしたら、脳死になれば、
 顔でも取って移植していただいて構いません。
 ただ、シワも白髪も増えているので、
 若い人には移植できないかも…???です。
 もちろん女性に移植することも無理です。
 髭が生えてしまいます。
      ■         ■
 お昼には、お弁当付のランチョンセミナーがありました。
 名古屋のはせがわクリニックの長谷川隆先生が、
 レーザーフェイシャルについてご発表されました。
 GentleLASEという札幌美容形成外科にもある機種です。
 長谷川先生は北大医学部をご卒業後、北大形成外科に入局。
 私もご一緒に仕事をさせていただきました。
 15年前に、名古屋大学形成外科へ移られ、名古屋大学形成外科講師。
 社会保険中京病院形成外科部長を歴任され、2004年に開業されました。
      ■         ■
 北大に在籍中は、私と同じ札幌市西区山の手に住んでいらっしゃいました。
 子供同士が同じ山の手小学校に通学していたこともあり、
 私が親しくさせていただいている先生です。
 長谷川先生のご発表の要旨は、
 レーザーフェイシャルは患者さんの評判がよく、
 レーザーでいらしていただいた方は、
 クチコミで、お友達をご紹介してくださるとのことでした。
      ■         ■
 数年ぶりに合った友人から、
 ‘お肌がとてもキレイになったので、どこのエステに行ったか教えて!’
 と言われた。
 など、黙っていてもお客さんが増えると話されていました。
 レーザーフェイシャルで、
 シミが消えるのではありませんが、薄くなります。
 うぶ毛がなくなり、顔剃りが不要になります。
 肌のはりが出ます。
 よく効く基礎化粧品だと考えください。
 など、
 説明の仕方まで教えてくださいました。
      ■         ■
 これから開業を考えていらっしゃる先生、
 どのレーザー機器にしようかと迷っている先生には、
 とても参考になるご発表でした。
 夜は、長谷川先生が準備してくださった、
 名古屋コーチンのお店で、
 北大形成外科の同門会がありました。
 久しぶりに北大形成外科の仲間とも会え、
 情報交換ができて有意義な時間でした。

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医学講座

教員定数と解剖実習

 医学部の各講座には、教授、准教授、講師という‘教員’がいます。
 それぞれの講座ごとに、教員定数が決まっています。
 教員の他に、研究補助員という女性秘書がつく場合もあります。
 各医科大学や大学医学部では、総定員が決まっています。
 よほどのことがない限り、教員定数は増えません。
 新参者の形成外科は、どこの大学でも教員定数が少なく、
 何年医局に在籍しても、非常勤職員のままというところもあります。
      ■         ■
 新しい講座ができると、その分だけどこかにシワ寄せがいきます。
 近年は、分子生物学などの進歩で、
 医学部で教える内容が急速に増えています。
 最先端の、世界的に評価される研究をして、
 有名な外国雑誌に論文が掲載されるのが、
 大学教員として、最高の栄誉であり、
 昇進への第一歩です。
 英文論文をたくさん書く。
 研究費をたくさんGETする。
 こんな‘先生’が‘すごい’と評価されます。
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 医学を学ぶ上で大切な解剖学は、
 どちらかというと地道な学問です。
 最先端医学を取り入れているところもありますが、
 学生実習の指導は、いくら熱心にしても、
 ‘業績’として評価されない傾向にあります。
 高校や予備校の教員は、
 学生からの評価が自分の‘評価’や‘業績’となります。
 残念なことに、医学部の教員は、
 いくら学生実習を熱心に指導しても、あまり‘評価’されません。
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 解剖学実習は、医学部の実習の中で、
 人体にはじめてメスを入れる実習です。
 質・量ともに、医学部の中でももっとも大変な実習です。
 一度に100人近い学生が、同時に実習をはじめます。
 この実習を指導する教員数は、
 平均的な医学部や医科大学で多くても5人程度です。
 この少人数で、実習を指導するのは容易ではありません。
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 実習は約半日近くかかります。
 実習の最初から最後まで付きっ切りで指導するのは大変です。
 学生は、マニュアル片手に、慣れない手つきで、
 おそるおそる脂肪を除去して、
 神経や血管を剖出(ボウシュツ)して行きます。
 私が札幌医大に教員として在籍していた時に、
 たまたま学生実習に入る機会がありました。
 ちょっとだけ、手伝って解剖をしてみました。
 学生が驚異のまなざしで私の手を見ていました。
 ‘先生すごい!’
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 手術以外で学生から褒められるとは思ってもみませんでした。
 思えば、私も学生時代は、
 おそるおそる解剖をしていました。 
 私も学生時代には解剖で神経や血管を切ってしまった経験があります。
 神経や血管を切らないで、キレイに出すのが解剖の極意です。
 外科医は、メスの扱いも、手術器具の扱いもプロです。
 私にとってはごく当たり前のことでしたが、
 マニュアル片手の学生が見たら、‘神の手’に見えたのでしょう。
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 一般の方が聞いたら不思議に思うかも知れませんが、
 大学医学部では、外科医が解剖を教えることはありません。
 私は臨床医をしながら、解剖学教室で研究をしました。
 それは、自分が手術で感じていた疑問を解明したかったからです。
 これは私の率直な感想ですが、
 私のような臨床にたずさわる外科医が、
 学生の解剖学実習の指導を手伝えれば、
 医学生の勉学意欲が違ってくるのに…と思います。
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 多くの大学医学部では、熱心な解剖学の教員が、
 少ない人数で解剖実習を教えています。
 残念ながら、どこの大学医学部にも、
 外科医が解剖実習の指導に出向くようなシステムがありません。
 私たち外科医も、最初から手術ができたのでもありません。
 先輩に教えていただき、苦労して手術を覚えました。
 札幌医大の村上教授は、臨床医を解剖に招いてくれました。
 私は機会があれば、もう一度解剖学教室へ出向き、
 学生さんと一緒に解剖実習をしたいと思います。
 30年近く臨床医をしていても、まだまだ未知の世界があります。
 人体とはそれほど奥深いものです。

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医学講座

解剖学実習

 私が医学生だった30年前は、
 入学して3年目から医学部の専門科目の勉強が始まりました。
 解剖学、生理学、生化学です。
 医学部へ入学できたものの、
 解剖学実習は恐怖でした。
 札幌医大は単科の医科大学だったので、
 先輩たちがロッカー室で、黄色く変色した白衣を着て、
 解剖実習室へ入って行くのを大変そうだなぁと見ていました。
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 勇敢な同級生は、先輩が実習している部屋を覗いたりしていました。
 私にはとてもそんな勇気はなく、どうしよう?と思っていました。
 とうとう3年生の春がやってきました。
 北 杜夫(きた もりお)さんのドクトルマンボウシリーズか何かを読んで、
 解剖学実習の日はご飯を食べられないとか?
 手に臭いがしみついてとれないとかを心配していました。
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 解剖実習の日がやってきました。
 広い解剖実習室に、真新しい白衣を着て入りました。
 白衣の下は、汚れてもいいようにジャージを着ていました。
 実際にご遺体の脂肪がついたり、体液がついたりして汚れます。
 たしか、白い帽子もかぶっていたような気がします。
 解剖実習室では、ステンレスの解剖台の上にご遺体が載せられ、
 ビニールシートがかけられていました。
 遺体の乾燥を防ぐためです。
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 全員がそろったとこで、黙祷をささげて実習がはじまりました。
 シートをはがすと、木綿の薄い布が全身にかけられています。
 生きている人間とは違い、薄茶色に変色しています。
 体格のいい方、痩せた方、などさまざまです。
 私たちは、12人で一体を解剖させていただきました。
 2人一組がペアーになって、左右に分かれて
 頭部、体幹、下肢に分かれて解剖しました。
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 合計で3体のご遺体を解剖させていただきました。
 私は下肢→頭部→体幹の順番でした。
 男性→女性→男性でした。
 ですから、トータルで4人で一体を解剖したことになります。
 解剖は、実際に人体を切り刻んで、構造を覚える学問です。
 どんな正確な教科書よりも、実物が確かです。
 これ以上の教材はありません。
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 学生がどのような手順で解剖するかは、各大学に任されています。
 札幌医大では、当時は頭部、体幹、下肢に分けていましたが、
 現在では違うと思います。
 教える、教授の方針で解剖実習の仕方も異なってきます。
 ただ、覚える知識量は、どこの医科大学や医学部でも同じです。
 とにかく、頭のてっぺんからつま先まですべてです。
 人体という世界地図を覚えて、どこに何があるかを覚えるのです。
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 日本語以外に、ラテン語の学名、
 英語でも覚えます。
 今なら、絶対に覚えられない自信があります。
 若いから覚えられたのです。
 自分の専門領域以外の部位は、忘れてしまいますが、
 今でも教科書を見ると思い出せます。
 私たち外科医は、実際に生きている人を切っています。
 どこにどんな血管や神経があるか知らないと、
 間違って切ってしまい医療事故になります。
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 内科の先生や放射線診断学の先生は、
 解剖を知らないと、診断もできません。
 内視鏡で体の内部を見る時も、
 解剖学を知らなければ、組織をキズつけてしまいます。
 現在の医学教育では、解剖学の講義時間数や、
 解剖学実習の時間が少なくなっていると聞きます。
 おじさん先生の考えは、解剖こそ医学の真髄。
 解剖を軽視しないで欲しいと願っています。

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