医療問題

産科医不足の理由

 産科医になる医学生が減っています。産婦人科を専門とする医師も減っています。なぜでしょうか?
 福島県で、産婦人科医師が業務上過失致死で逮捕された事件がありました。
 下は2006年3月10日の読売新聞の記事です。
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 福島県大熊町の県立大野病院で2004年12月、帝王切開の手術中に同県内の女性(当時29歳)が出血性ショックで死亡した事故で、福島地検は2006年3月10日、手術を執刀した産婦人科医師の加藤克彦容疑者(28)を業務上過失致死と医師法(異状死体の届け出義務)違反の罪で福島地裁に起訴した。
 起訴状によると、加藤容疑者は、事前の検査で胎盤が子宮に癒着し、大量出血する可能性を認識していたにもかかわらず、本来行うべき子宮摘出などを行わず、胎盤を無理にはがして大量出血を引き起こしたとされる。さらに、医師法で定められた24時間以内の警察への届け出をしなかったとされる。
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 一般の方は、1年以上前のことですから、忘れてしまっていると思います。‘あぁ、そんなこともあったねぇ~’程度でしょう。
 この事件は医療関係者には、インパクトのある事件でした。福島地検がどのように判断して逮捕・起訴に踏み切ったかは不明ですが、これで産婦人科になるのをやめた医学生も多いと思います。
 日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会は連名で「本件は癒着胎盤という治療の難度が最も高い事例。全国的な産婦人科医不足という現在の医療体制の問題点に深く根ざしており、医師個人の責任を追及するにはそぐわない」との声明を発表しました。
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 一部のマスコミも産科医の‘医療ミス’を強調した報道をしました。
 私を含めた医療関係者の見方は違います。亡くなった妊婦さんは気の毒ですが、癒着胎盤という難手術を一人で執刀しなければならなかった、医療体制に問題があると思いました。
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 米国では法曹人口の増加から、医療訴訟が当たり前のように行われています。
 日本でも新しい司法試験制度により、今後、弁護士が急増する可能性があります。
 言葉は悪いですが、弁護士さんにとって医療訴訟は、高額の賠償判決さえ勝ち取れば、高額の成功報酬を手にできる‘おいしい仕事’になる可能性が十分にあります。
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 一般の方は、お産は‘安全’で‘リスク’も少ないと考えていらっしゃると思います。
 平成19年2月5日の日記にも書きましたが、お産は決して安全でリスクがないものではありません。美容外科の手術より、よほどリスクがあります。
 どんなに腕のよい弁護士さんを雇って、高額の賠償金をもらっても、自分や子供の命にはかえられません。
 ふだんから、健康管理に気をつけて、丈夫な子供を産める体力をつけておくこと。
 信頼できるかかりつけ医を見つけて、妊娠したらしっかり診てもらうこと。
 医学生が産婦人科医になりたいと思うように、産婦人科医の待遇を改善する医療政策が重要だと思います。

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医療問題

妊婦の搬送拒否札幌でも

 平成19年9月4日北海道新聞朝刊の記事です。
 妊婦の搬送 札幌でも受け入れ拒否 昨年5件、最多で11回
 奈良県の妊婦が医療機関から相次いで受け入れを拒否され、救急搬送中に死産した事件に関連し、札幌市内でも、2006年だけで救急搬送中の妊婦の受け入れ拒否が5件起きていたことが3日分かった。受け入れを11回拒否された妊婦もおり、札幌市消防局は「同様の事件は悪条件が重なれば道内でも起こりうる」と危機感を強めている。
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 札幌市消防局救急課によると、受け入れ拒否に遭ったのは、腹痛や不正出血を訴え、札幌市内で119番通報した5人。全員に産婦人科の受診歴が無く、かかりつけ医がいなかった。
 出動した救急隊員が、複数の病院に電話で連絡を取って搬送先を探したが、隊員が「かかりつけ医がいない」などと状況を伝えると、「医師が不在」「患者を処置中」などの理由で相次いで受け入れを拒まれたという。
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 拒否された回数は、少ない妊婦で5回。最も多く受け入れを拒否された十代の妊婦は、受け入れを11回断られた後、救急救命センターのある札幌市中心部の総合病院に搬送された。この妊婦は、119番通報から搬送先が見つかるまでの所要時間が90分と、札幌市内で119番通報から病院に到着するまでの平均所要時間の3倍を超えた。
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 札幌で受け入れ拒否が起きた原因について関係者は、産婦人科医の減少で救急患者を受け入れる病院が減ったことと並び、かかりつけ医の不在も影響したとみている。
 市立札幌病院の晴山仁志産婦人科部長は「産婦人科の受診歴がないと、妊娠第何週なのか、早産など異常がないかなど、すべてが不明。出産に伴うリスクが高く、受け入れをためらう医療機関が出る」と説明する。
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 札幌の5人には、搬送中の死産などの事故は起きていない。同市消防局救急課は「患者を待たせないよう、指令情報センターと救急隊全体で情報を共有するなど改善を進めているが、課題は残る。奈良のような事件は、いつ起きてもおかしくない」と指摘。「万一に備えるためにも、妊婦さんは必ず産婦人科にかかってほしい」と話している。
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 奈良県では先月29日、救急搬送された38歳の妊婦が、同県や大阪府など計9病院から「医師が処置中」などの理由で受け入れを断られ、最後に運び込まれた病院で死産が確認された。この女性は産婦人科医の受診歴が無かった。
 (平成19年9月4日北海道新聞朝刊より引用)
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 やはり札幌でも起こっていました。北海道で一番大きな都市、札幌には北大医学部と札幌医科大学の2つの医育機関があります。人口当たりの医師数も、北海道内の他都市と比較して圧倒的に多いのです。
 市立札幌病院の晴山仁志先生は、国立札幌病院から、北海道大学医学部助教授を経て、市立札幌病院に就任なさったベテラン中のベテランの先生です。
      ■         ■
 『産婦人科の受診歴がない妊婦さん』は、晴山先生がおっしゃるように、高リスクの方が多いのでしょう。
 経済的理由で受診していない方もいらっしゃいます。以前、産婦人科の先生から、伺ったお話しです。突然、臨月の妊婦さんが飛び込んできて、あっという間に分娩して、あっという間に赤ちゃんを置いていなくなっていた。
 母子手帳もなく、名前も偽名で、住所もでたらめだった。医療費の請求もできなかった。という実話を聞いたことがあります。
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 確かに、望まれない妊娠や出産は実際にあります。通常は、妊娠に気づいてから出産まで、半年以上の月日があります。
 妊娠・出産は、種の保存にとって大切な自然界のできごとです。産婦人科にかかっていない妊婦さんのすべてが、望まれない妊娠とは申しません。ただ、自分の体を守るのは自分しかいないのです。
 私は、性感染症にかかっても、ケロッとしている若い女性が心配でたまりません。性の快楽だけを求めている人は、いつか手痛い目に遭うと思います。

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社会福祉法人

 大阪の社会福祉法人「枚方療育園」前理事長から厚生労働省役人が高級車やお金を受け取った問題の続きです。
 社会福祉法人って、いったい何なんでしょうか?
 社会福祉法第22条よって定められた、『社会福祉事業を行うことを目的として、この法律の定めるところにより設立された法人』というのが法律の条文です。
 厚生労働省の役人に、キャデラックやセルシオを無償で提供するための法人ではありません。
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 そもそも、社会福祉法人は誰にでも簡単に設立できる法人ではありません。法人の設立には、許認可が必要です。社会福祉法人は‘もうけてはいけない’ことになっています。
 病院にも、社会福祉法人が経営しているところがあります。
 以前の天使病院は社会福祉法人聖母会が経営していましたが経営が困難になりました。
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 北海道で大きなものは、社会福祉法人北海道社会事業協会が経営する、いわゆる協会病院があります。
 協会病院は小樽、函館、余市、岩内、富良野、帯広、洞爺にあります。
 他には社会福祉法人函館厚生院が経営する函館中央病院、函館五稜郭病院。社会福祉法人札幌慈啓会が経営する慈啓会病院。社会福祉法人恩賜財団済生会が経営する北海道済生会小樽病院など有名な病院がたくさんあります。
      ■         ■
 近年、社会福祉事業のうち医療系は、厚労省の医療費削減政策を受けて経営が困難になってきています。
 天使病院だけではなく、社会福祉法人函館共愛会が経営していた、函館共愛会病院は経営が悪化し、平成3年に再建合理化が提案されました。
 社会福祉事業といえども、赤字では倒産してしまいます。経営者はいかに行政の大物と仲良くして、許認可をスムーズにしてもらい、補助金を引き出すかに苦心します。
 2002年度から2004年度にかけて、国から約10億4000万円の補助金が疑惑の社会福祉法人に出されています。
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 社会福祉法人は税制面でも優遇を受けています。
 それでも、まっとうに病院経営をしていると苦しいのが今の医療行政です。
 国民が憲法で保証された‘健康で文化的な生活’を営むために使われるべきなのが補助金です。
 私は補助金がキャデラックやセルシオに化けたような気がしてなりません。

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厚労省九州厚生局長

 2007年9月2日の朝日新聞の記事です。
 「前厚生局長と妻同士いとこだから」 前理事長が説明
  厚生労働省九州厚生局の松嶋賢(まさる)・前局長(59)が補助金交付先である大阪府内の社会福祉法人「枚方療育園」前理事長から金品を受け取った問題で、山西悦郎・前理事長(80)が1日、朝日新聞の取材に応じた。前局長の自宅改築費として1500万円を提供したことについて「妻同士がいとこだから貸した」と説明。一連の提供について「何も頼んだことはなく悪いことはしていない」と述べ、前局長の行為は職務対象者からの金品受け取りを禁じた国家公務員倫理法違反にはあたらないとの認識を示した。
      ■         ■
 前局長は31日の厚労省による事情聴取で、03年に埼玉県の自宅を改修した際、前理事長から1500万円を妻名義で借りたままになっていることや、中古高級車の無償提供、娘が埼玉県内の同法人運営の施設に就職していることなどを認めた。
 自宅改修費について、前理事長は取材に「(前局長は)退職金が出たら1500万円を返すと言っていた。借用書はとったが、どこにあるかわからない」と説明。前理事長が病院経営を始める際、前局長の妻の父が金融機関からの融資保証人になったことを資金提供の理由に挙げ、「(前局長が)厚労省に勤めているから貸したのではない」と述べた。
      ■         ■
 前局長の娘の就職については「(就職先を)みんなが心配していた。両親は僕に勤めさせてくれと言わないから、僕が(娘に)勤めなさいと言った」とし、特別な計らいではないと強調した。
      ■         ■
 00年と05年にいずれも内妻名義で前局長に無償譲渡したトヨタ・セルシオ2台については、譲渡自体を知らなかったとしている。97年に譲渡した米国製キャデラックは「人からもらったものを渡した」という。
 前理事長は今後、厚労省から事情聴取の要請があった場合、「それでも結構」と、応じる姿勢を見せた。
 (2007年9月2日朝日新聞より引用)
      ■         ■
 妻のいとこだからと、1,500万円もの大金を貸すことがありますか?
 親兄弟でも、住宅資金を融通する時は、契約書を交わし借金を返済しないと贈与税がかかります。
 キャデラックやセルシオを無償で譲渡するなんて考えられますか?そもそも、どういう人がキャデラックを理事長にくれたのですか?
 これは完全に贈収賄事件です。厚労省の許認可に『妻同士がいとこだから』手心を加えたか、うまく認可が取れる極意を伝授したのです。
 社会福祉法人理事長が欲しい厚生労働省の情報を伝えたからセルシオをくれたのです。
      ■         ■
 厚労省が出す方針一つで、病院や社会福祉施設の経営は大きく変わります。
 今後の診療報酬や介護報酬の改定方針がわかるだけでも、経営者にとってはセルシオやキャデラック以上の価値があります。
 いくら厚労省の局長といえども、キャデラックやセルシオに乗っていれば目立ちます。どうしてチェックできなかったのでしょうか?
 末端の医療機関や、社会福祉施設で毎日ウンコまみれになって介護をしている現場職員のことを考えてください!
 社会福祉とか介護とかキレイな言葉を並べたって、現実に一番大変なのは下の世話です。
 前局長や前理事長を厳罰に処して欲しいと願っています。社会福祉法人に交付した補助金を返して欲しいです。

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医療問題

医療体制の整備

 奈良県の妊婦さんが救急車の中で死産した問題は他人事ではありません。北海道でも十分に起こりえます。
 札幌でもお産で有名だった天使病院が、産婦人科医の退職で、お産ができなくなる可能性があります。
 理事長が退任勧告を受けるなど、昔では考えられなかったことが起こっています。
      ■         ■
 投資の世界だけではなく、医療業界でも高リスク低リターンは嫌われます。
 他の病院で手に負えない、難産が予想される妊婦さんは、治療する側も心身ともに疲れます。
 徹夜で治療をして、やっと一息ついたと思ったら、また急患では、産科医も身が持ちません。
      ■         ■
 病院経営の悪化から、勤務医の給与は下がっています。
 看護師や助産師は給与を低くすると辞めてしまうので、ある程度の給与を保証しなくてはなりません。
 一番手っ取り早く下げられるのが、医師の報酬です。最近、勤務医の友人から給料が上がったという話しを聞いたことがありません。
 また下がったよ、嫁さんに『あんた辞めて開業したら…?』って言われてるよ。と悲鳴が聞こえます。
      ■         ■
 私の給与が一番高かったのは、美容外科の雇われ院長をしていた時でした。
 何回か書いていますが、医師向けの転職情報サイトも求人情報誌もあります。
 実際はそんなに高くありませんが、‘高級優遇’という甘い誘惑の言葉で医師の転職を誘っています。
 高リスク低リターンの勤務医から、低リスク高リターン?の美容外科医になりたいと転職する先生がいらっしゃいます。
      ■         ■
 確かに、一部のチェーン店美容外科では5,000万円以上の年俸を出しているところもありました。
 大手美容外科の医師給与は、完全出来高払い制です。‘売り上げ’が悪いと収入も極端に悪くなります。
 大手美容外科新規採用医師が、一年後も残っている率は10%以下とも言われています。‘現実’は厳しすぎて残れないのです。
      ■         ■
 少子化対策の一つとして、産科の医師を増やそうと国が本気で考えているのなら、産科医の待遇を改善することです。
 給与につながる診療報酬を改定して、徹夜で働いてもそれに見合っただけの報酬を与えることです。
 きたない話に聞こえますが、給与が高くなれば、自然と産科医を目指す医学生が増えます。
 産科医になりたい医師が増えれば、過酷な勤務も改善されます。
 一人の優秀な産科医を育てるのに、最低10年はかかります。医学部6年+臨床研修2年+産科医として10年=18年です。こんなに長くかかるのが医師の養成です。
 医療体制を整備するなら、医師の待遇を良くしなければよい人材は集まりません。
 昔から医師の中で一番短命なのが、産科医だと言われています。それだけ激務なのです。

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奈良の死産

 平成19年8月31日朝日新聞の社説です。
 奈良の死産―救急網に穴が多すぎる
 一刻も早い手当てが必要な妊婦がいるのに、引き受けてくれる病院がなかなか見つからない。そんな悲劇がまたも繰り返された。
 奈良県の女性が深夜、やっと見つかった約40キロ先の病院に救急車で向かう途中、車内で死産したのだ。交通事故に遭う不運も重なった。結局、11の医療機関に断られ、最後に病院に着いたのは救急車が来てから約3時間後だった。
 奈良県では1年前にも、出産の途中で意識不明になった女性が、19の病院に転送を断られ、8日後に亡くなった。
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 なぜこんなことになったのか。奈良県は調査するというが、きちんと究明し、その教訓を今後に生かしてもらいたい。
 産科の救急患者で切迫している場合には、かかりつけの医師の診断に基づく要請で、受け入れ先を探す病院間の搬送システムがある。
 ところが、今回の女性は医師にかかっておらず、妊娠の状態もよくわからなかった。このため、駆けつけた救急隊員が限られた情報をもとに、直接受け入れ先を探さざるをえなかった。
      ■         ■
 旅先や帰省先で異変に見舞われることも少なくない。かかりつけの医師の協力を得られない場合でも、必要なら病院間の搬送システムに乗せる方法を考えておく必要がある。
 もう一つの問題は、病院内での医師と事務担当者、さらに病院と救急隊との間で意思疎通がうまくいっていないのではないか、ということだ。
 受け入れを打診された病院では、事務担当者が断ったところがある。そのなかには、医師はほかの患者の治療中だったので、「後にしてほしい」といったが、断ったつもりはなかったというケースもあった。電話を医師につないでいれば、受け入れることができたかもしれない、という病院もある。
 どのような場合ならば、救急患者を受け入れられるのか。日ごろから医師と事務担当者、救急隊の間で話し合いを重ねておかなければならない。
      ■         ■
 こうした事件が奈良で続くのは、人口当たりの産科医が少ないこともある。医師の負担は大きく、とりわけ夜間の救急態勢は手薄になりがちだ。
 しかし、東京や大阪などでも、いくつもの病院に断られたあげく、遠くまで搬送する例が珍しくない。産科医が減り、お産を扱う医療施設も減っている中で、母親と赤ちゃんの命を救える搬送システムを再構築しなければならない。
 一方で、救急医療そのものを立て直すことも考えた方がいい。お産や病気、けがを問わず、救急患者を24時間、必ずどこかの病院が引き受ける。そんな態勢を地域の医療機関と病院が連携して作り上げていきたい。
(平成19年8月31日、朝日新聞社説より引用)
      ■         ■
 朝日新聞が言うことはもっともです。産科医が少なくなっている理由、医学生が産科医になりたがらない理由をご存知ですか?
 『お父さんの仕事は当直』と子供に言われ、当直明けでも通常の業務をこなし、心身ともにクタクタになっていのが産科医です。
 こんな産科医を見ると、どんなに志(ココロザシ)が高い医学生でも産科医になりたくなくなります。
 産婦人科の先生は、9:00にはじまって17:00には帰れる(と考えられる…)、婦人科専門医や不妊治療専門医になります。美容外科に転向する先生もいます。
 高リスクで、業務上過失致死罪に問われる産科医には誰もなりません。
 医学生が産科医になりたいと思うようなシステムを作らないと日本は滅び(ホロビ)ます。

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医療問題

理事長解任?

 平成19年8月30日北海道新聞の記事です。
 理事長に退任勧告 天使病院理事7人
 「地域医療に混乱」
 妊娠後期から生後約一週間の周産期医療の拠点となっている札幌市東区の天使病院の産婦人科医全員が退職する問題で、同病院を経営する医療法人社団カレスアライアンス(室蘭、西村昭男理事長)の理事17人のうち七7人が西村理事長に「地域医療に重大な混乱を招いた」として退任を勧告していることが、29日分かった。
      ■         ■
 退任勧告は西村理事長が今年5月、天使病院を、西村氏が別に理事長を務める特定医療法人社団カレスサッポロ(札幌)に移管することを決めたことをめぐる混乱が理由。
 この決定について、同病院の産婦人科医6人全員が「移管先の経営内容が不透明で、リスクの高い周産期医療は続けられない」として、9月末までの退職をカレスアライアンスに通告した。
      ■         ■
 7人の理事は
①西村氏は利害関係の異なる二法人の理事長を兼ねているが、移管手続きについて説明が不十分
②移管が産婦人科医の退職を引き起こし、地域医療を混乱させた-などと指摘。
 理事会と社員総会の招集に必要な理事7人と社員1人の署名を提出し、理事会と臨時社員総会の開催を求めている。
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 カレスアライアンスの定款によると、西村氏が自ら退任しない場合、理事会に出席した理事の過半数の賛成があれば、理事長職を解任できる。西村氏は進退について「理事会で決めること」と話している。
 カレスアライアンスは西村氏が発足当初の1980年から理事長を務め、日鋼記念病院(室蘭)など道内の複数の医療機関や福祉施設を経営している。(2007年8月30日(木)北海道新聞朝刊より引用)
      ■         ■
 西村先生は8月12日の日記に書いたように、元北大第一外科助教授だった方です。
 元助教授だろうが、医療法人を開設した功労者だろうが、病院運営ができなくなると、理事長といえども辞めなさいと言われる時代です。昔は西村先生に盾突く(タテツク)など、医師の間では考えられなかったことです。
 医師というのは、自尊心が強く、扱いづらい職種の代表です。医師不足の中でも、特に産婦人科医は少ないので売り手市場です。医師同士の喧嘩がはじまると、なかなか厄介です。
 天使病院から、産婦人科の灯を消さないように、理事会で穏便にことが決まってくれることを願っています。

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お詫び

 平成19年8月23日から相談フォーム、予約フォームを変更いたしました。日本ベリサイン株式会社(VeriSign)から認証をいただいて、https://s-bi.comではじまるURLを利用しています。
 こちらで使用したプログラムにバグがあり、相談内容が一部しか伝わりませんでした。
 メールでご相談いただいた方には、大変ご迷惑をおかけいたしました。謹んで、お詫び申し上げます。
 相談内容のところに改行を入れると、改行以降が送信されないバグです。
 申し訳ございませんが、バグが改善されるまで相談内容に改行を入れないでください。
 現在、大至急プログラムの変更をしております。もし、メールで伝わらない場合は、お手数でもお電話でご相談ください。
      ■         ■
  VeriSign Securedとは偽サイトでないことの証明です。企業(組織)の実在性の認証をVeriSignがしましたよ、という証明です。ブラウザーで見ると、右下に鍵のマークが出ます。最近は、新生銀行の偽サイトを作って、そこへ誘導して暗証番号、パスワードを盗む事件もありました。
 https://~ではじまるURLは、ベリサインのSSLサーバ証明書を使用して、個人情報を保護しています。 httpsで始まるアドレス上ではすべての情報がSSLで暗号化されてから送受信されます。
      ■         ■
 札幌美容形成外科が利用しているサーバーは、セキュリティの国際規格である「ISO/IEC 27001:2005」に対応しています。サーバーで送信・受信メールのウイルスチェックを行っています
 開院以来、メールから個人情報が漏洩(ロウエイ)することはありませんでしたし、個人情報の保護には十分に注意しています。
 カルテはSECOMの監視カメラで24時間監視し、セキュリティも万全にしています。
      ■         ■
 美容外科では泥棒にお金をとられるよりも、個人情報を盗まれる方が怖く、信用にかかわる大問題です。
 万一のために、個人情報保護保険にも加入しています。
 今回のフォーム修正も、情報保護とニセHPへ誘導を防ぐ目的で行いました。
 何回か動作確認をして、フォームを修正しましたが、こちらで入力した文字数が少なかったためにチェックができませんでした。
 ご迷惑をおかけして申し訳ございません。
      ■         ■
 インターネット時代になり、医師といえどもネットに詳しくないと生きて行けません。
 私は日記を書く程度はできますが、HPやネットの詳しいことはわからないので、専門家にお願いしています。
 これからはカルテも電子カルテになり、情報はすべて電子媒体で保存されます。
 情報管理がますます重要になる時代だと痛感しています。ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。

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非喫煙者を守る会創立30年

 昨夜(平成19年8月27日)、非喫煙者を守る会、創立30年記念祝賀会が開かれました。
 1977年6月8日創立。弁護士の黒木俊郎先生が札幌の司法記者クラブで、設立の発表をなさったのがはじまりでした。
 その記事が北海道新聞に掲載され、それを読んで、札幌医大の学生だった私が、おそるおそる黒木法律事務所へ行きました。私は当時22歳でした。
 学生にとって法律事務所の敷居は高く、どんなところかわからないので、こわごわと伺ったのを覚えています。
      ■         ■
 私が学生だった頃の、札幌医大の講堂は禁煙ではありませんでした。
 灰皿はロビーという教室横のスペースにしかありませんでしたが、タバコ好きの学生が教室の後方に灰皿を持ち込んで吸っていました。
 ジュースの空き缶やコーヒーのカップなど、何でも灰皿にして吸っていました。
 ‘大人’はタバコを吸うのが当たり前の時代でした…。
      ■         ■
 はじめて伺った黒木法律事務所は、南大通にありました。札幌医大から歩いて行きました。
 黒木先生の部屋に本がたくさんあったのを覚えています。受付には非喫煙者を守る会のカード、ステッカー、バッチなど、さまざまなGoodsがありました。
 私は早速入会し、学友や大学の教官も‘勧誘’に歩きました。
 教授室なんてところは、学生はめったに行かない場所でしたが、各科の教授室や医局に行きました。
 教授が愛煙家かどうかはわかりませんでしたので、そんなのは気にしないで行きました。
 当時の札幌医大附属病院の院長は愛煙家だったそうです。
      ■         ■
 意外とたくさんの先生が入会してくださいました。『ボクもタバコを吸わないから入りたかったんだ』と喜んで入会してくれる先生もいらっしゃいました。
 特に外国留学から帰国された先生は『アメリカではタバコを吸う医者は軽蔑されるよ』と教えてくださいました。
 私が尊敬していた、法医学の八十島信之助先生も入会してくださいました。5千円のカンパをいただいたのを、今でも覚えています。
      ■         ■
 学部2年と呼ばれる、4年生の時でした。この年には、公衆衛生学実習がありました。私たちのグループは、医師の喫煙率調査を行いました。
 グループの中には喫煙者の学生もいましたが、各医局や札幌厚生病院などにアンケートに伺った記憶があります。
 私はクラスの中で『教室でタバコを吸うのはやめよう!』と訴えていました。
 昨日の会で黒木先生が出された創立当時のスライドに、若き日の私が写っていました。会にいらしていた、北海道医師会理事の先生(元同級生)から、『本間君が写っている!』と教えていただきました。22歳の若い私を見つけて、青春時代の1コマを想い出しました。

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医学講座

フィブラストスプレー

 昨日、科研製薬㈱が発売したフィブラストスプレーを紹介しました。この薬は、従来の薬とはまったく違った作用機序でキズを治す薬です。
 ヒトも動物もケガをすると、創傷治癒というメカニズムが働き自分で自分のキズを治します。
 服が破れても、そのままにしておけば破れたところが広がるだけです。
 ヒトや動物は、皮膚が切れたり骨が折れたりしたところは、自然に治るようになっています。
      ■         ■
 従来のキズ薬は、キズが治りやすい環境を整える作用が大部分でした。軟膏を塗ると、炎症をおさえるので、痛みが和らぎます。新しくできた細胞が成長しやすいように、湿潤(シツジュン)環境を作ります。
 外科手術でキズを縫合するのも、キズとキズをくっつけてキズの血管や細胞がくっつきやすくするだけです。
 キズは自分の力で、少しずつくっついて治ります。
 キズは安静にしていた方が治りやすいので、神様は‘痛み’という信号を作って、なるべく動かさないようにさせています。痛いと動かしませんから…。
      ■         ■
 キズができると、体の中にある、マクロファージという救急車のような細胞がキズに集まってきます。
 マクロファージは、血液中にある細胞です。マクロファージがキズに到着すると、細胞増殖因子(サイボウゾウショクインシ)という消化剤のようなものをキズに放出します。
 この細胞増殖因子の代表がbFGF(ベーシック・エフジーエフ)というタンパク質です。
 細胞増殖因子をかけられたキズは、自分の力で線維芽細胞(センイガサイボウ)、血管内皮細胞(ケッカンナイヒサイボウ)、表皮細胞(ヒョウヒサイボウ)という細胞を増殖させてキズを治します。
      ■         ■
 フィブラストスプレーはバイオ技術で合成したbFGFです。これを投与すると、自分の力で出した以上の‘キズを治す力’を発揮できるのです。
 この事実をヤケド治療に応用して、日本全国のさまざまな施設から学会で報告が出ています。
 ヤケド治療では全国トップレベルの、東京女子医大形成外科のグループは、統計学的有意差をもって、フィブラストスプレーの有用性を発表していました。私が尊敬する先生たちの発表で間違いありません。
 この治療法は日本発の‘画期的な’治療法です。そのうち世界標準になると思います。
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 残念なことに、こんなに素晴らしい治療法なのに、科研製薬㈱も厚生労働省も、フィブラストスプレーをヤケドに使うことを認めていません。
 承認が取れるまでに、かなり時間がかかるかもしれません。
 大手新聞社は、このような新しい薬のことを報道して、早くヤケド治療に使えるよう世論を動かして欲しいものです。
 朝日新聞の記者さんに、この日記を読んで欲しいです。

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