医学講座
痛みの原因
一昨日書いた、家内の顎関節症は、
歯医者さんを受診して私の診断通りでした。
スプリントという樹脂製の薄い装置をつけて、
痛みは軽減しているようです。
アゴの病気なのに…
本人が訴えたのは…
『耳が痛い』
もう少しで、耳鼻科へ行くところだったと
少しは感謝してくれたようです。
■ ■
日常診療で困るのが、
痛みの原因です。
すぐにわかるものから、
今回のようにわかりにくいものまで、
痛みの原因は実にさまざまです。
経験を積んでも、
わからないことも…
間違うことも…
あります。
■ ■
赤く腫れているとか、
打撲のアトがあるとか、
骨折しているなどの、
他覚的所見(たかくてきしょけん)
要するに他人が見て、
はっきりわかる症状がある時は簡単です。
本人の自覚症状だけが、
唯一の所見である時が難しいのです。
■ ■
私は形成外科医ですので、
首から上の痛みは、
まだ少しは理解できます。
お腹が痛いなどは不得意です。
家内のアゴの病気は、
顎関節(がくかんせつ)に痛みを生じました。
その関節は耳のすぐ前にあるので、
耳が痛いと思ったのです。
■ ■
アゴの骨には、
筋肉がついています。
その筋肉が、
側頭骨という、
頭の骨につながっています。
だから、
左アゴの関節の病気で、
左の頭が痛くなるのです。
アゴの骨から、
頭までつながっているの???
と家内は驚いていました。
■ ■
眼瞼下垂症(がんけんかすいしょう)という、
瞼(まぶた)が下がる病気で、
肩がこったり、
偏頭痛がするのも、
瞼を上げるために、
前頭筋という筋肉を使うためです。
全員ではありませんが、
かなりの確率で、
眼瞼下垂症手術で
肩こりや頭痛が…
治ったという方がいらっしゃいます。
■ ■
痛みの原因や程度は、
病気や
人によって
さまざまな形で出ます。
はっきりとした、
診断をつけられないこともあります。
痛みのことを、
一番研究しているのは、
おそらく麻酔科だと思います。
ペインクリニックという、
痛みの外来もあります。
どうしてもとれない慢性の痛みは、
ペインクリニックもよいと思います。
院長の休日
あいさつが教えてくれたこと
平成20年9月13日、朝日新聞朝刊の投稿記事です。
男のひといき
あいさつが教えてくれたこと
マンションの管理人の仕事を始めて、
はや6ヵ月が過ぎた。
この間、
住民の方から、
朝は
「おはようございます」
「行ってきます。
お願いします」
と会釈して声をかけてもらった。
■ ■
おかけで、
「今日も1日、
元気で仕事をしよう!」
とすがすがしい気持ちになれた。
夕方、仕事を終えてからも、
「お疲れさまでした」
「いつもきれいにしてもらって
ありがとうございます」
と、
住民たちが笑顔を見せてくれる。
「明日もがんばろう」
との思いを強くしながら帰路につく。
■ ■
こんな環境だから、
子どもたちもよく声をかけてくれる。
朝は
「行ってきます。バイバイ」
と手を振って元気よく出かけていく。
なかには帰ってくるなり、
管理室で仕事をしている私に
「おじちゃん、窓を開けて」
と大きな声で催促し、
「ただいま」
とあいさつしてくれる子どももいる。
■ ■
ある朝、出勤すると、
マンションの前で車の事故が
起きていた。
玄関や道路には
車のガラスの破片が散乱しており、
清掃担当者と2人で
汗だくになりながら、
3時間かけて
なんとかきれいにした。
■ ■
その午後、
3歳の男の子が
「おじちゃん、
ガラスを取ってくれて
ありがとう」
と会釈してくれた。
この一言がうれしく、
急に疲れが取れた。
「人を人として尊重し、声をかける」。
その大切さをいま、
住民や子どもたちから学んでいる。
(広島県呉市
井手本 猛
マンション管理人 63歳)
m-hitoiki@asahi.com
(以上、朝日新聞より引用)
■ ■
毎週土曜日だけ、
朝日新聞の『ひととき』が
男性版の
『男のひといき』
になります。
私が楽しみにしている投稿欄です。
■ ■
『ありがとう』
『ありがとうございます』
『どうもありがとう』
『ありがとうございました』
は、
いい言葉です。
私もニトリ講座をお聴きして、
似鳥昭雄社長が…
『ありがとう』と
社員によく言うと教えていただいてから、
心がけるようになりました。
■ ■
手術中にも、
『ありがとうございます』
と言うようになりました。
手術がうまく進行するように思います。
大学病院や総合病院の
中央手術室では…
残念ですが、
あまり一般的ではないと思います。
緊張する手術が多いので、
最後くらいしか、
『ありがとうございました』
を言う余裕がないのかもしれません。
■ ■
私が、似鳥社長の真似ができていないのは、
家内に『ありがとう』を
言っていないことでしょうか?
先日、知人の先生が、
新しいクリニックをオープンされました。
そこのお祝いに家内と伺った時に、
そちらの奥様も、
‘夫(医師)が私(奥さん)にありがとう’と言わないと…
私の家内が
‘うちもそうょ’と
私が一人、
小さくなって聞いていました。
こころの中では、
感謝しれいるんだけどなぁ…
なかなか言えないのが
奥さんへの感謝の言葉です。
医学講座
顎関節症(がくかんせつしょう)
昨日、家内が耳が痛いので
診て欲しいといいます。
左耳に何かできていない?
数日前から痛いの
頭の方(耳の上の側頭部という部位)
も痛くなる…
■ ■
仕方がないなぁ~
といいながら、耳を診察します。
何ともないよ。
外耳道炎とか起きていない?
大丈夫だよ。
でも痛いのよねぇ~
と一瞬、私を疑っています。
私は、耳を少し引っぱって…
これで口を開けてみて。
ここ痛くない?
私が触ったのは、
耳の前の顎関節(がくかんせつ)です。
■ ■
アゴの関節は耳の前にあります。
口を開けたり閉めたりすると
耳の前が
コロコロこりこりと動きます。
下顎骨という下あごの骨が、
耳の前にある顎関節で動きます。
顎関節症はこのアゴの関節の病気です。
■ ■
家内の顎関節症は、
もうかれこれ30年近くになります。
もともとは健康でした。
結婚が決まってから、
当時住んでいた、
兵庫県西宮市で、
歯の治療を受けました。
結婚前に悪いところは治しておこうという、
ごくふつうの考えで歯科医院を受診しました。
■ ■
そこの歯医者さんを選んだのは、
自宅から近く、
通勤途中でも診察を受けられる…
ただそれだけの理由でした。
30年前は、
ネットもなく、
歯科医院の数も多くはありませんでした。
もちろん、評判も知りません。
■ ■
そこの、年輩の歯医者さんは、
奥歯の虫歯は抜きましょう。
と右下の奥から2番目の歯、
専門的には7番(ななばん)と言います。
を抜歯することを提案しました。
家内は特に疑問も抱かず、
抜歯することになりました。
ここが、運命の分かれ道でした。
■ ■
歯を抜いたところは、
歯医者さんが補綴(ほてつ)処置をしました。
その入れた歯の高さが
少しだけ高かったようです。
結婚後しばらくしてから、
つまり治療後数年してから、
治療したのとは反対側の
左下の奥歯が痛くなりました。
■ ■
知り合いの歯医者さんに、
左奥歯を丁寧に診ていただきました。
しっかり治療されているし、
痛くなるような病巣(びょうそう)はありません。
大学病院にもかかりましたが、
左奥歯の痛みの原因はわかりませんでした。
函館に転勤してからも、
歯が痛くなりました。
■ ■
私は、幼馴染(おさななじみ)の
マーちゃんのことを思い出しました。
マーちゃんこと、
小山正美(おやままさみ)先生は、
東北大学歯学部をご卒業されました。
立派な歯科医になられて、
函館市で開業されていました。
小山先生を受診すると、
先生は、
奥さんの左奥歯の痛みは、
昔受けた、右奥歯の抜歯が原因と
はじめて診断をつけてくださいました。
■ ■
大学病院の先生がわからなかった
歯の痛みの原因を見つけてくれたのは、
函館で開業されていた、
小山正美先生(現在は厚沢部町で開業)
でした。
西宮市で抜歯を受けてから、
実に10年近く経っていました。
それから、
家内の顎関節症の治療がはじまりました。
■ ■
最近は落ち着いていたので、
本人も忘れていたようです。
私の‘診断’が正しいかどうかは、
今日、歯医者さんでわかると思います。
歯医者さんを選ぶのも大変です。
耳が痛くても、
アゴが原因のこともあります。
みなさま、
簡単に抜歯は受けないでください。
虫歯をつくらないようにするのが
一番の健康法です。
未分類
エスティマありがとう
平成4年8月に購入し、
16年間走ってくれた、
エスティマが
ついに廃車になりました。
維持費もかかるし…
燃費も悪いので…
ガソリンの値上がりとともに、
廃車を考えていました。
■ ■
走行距離は11万㎞。
まだまだ走れるし、
車検も来年まであったのですが、
ついにダウンしました。
故障らしい故障もせずに、
交換したのは、
タイヤとバッテリー程度でした。
■ ■
この車は、
私が市立札幌病院に勤務していた時に、
ローンで購入しました。
私が38歳の時です。
子供たちは、まだ小学生でした。
二年に一度くらいの割で、
家内の両親が来てくれたり…
私たちが関西に遊びに行っていました。
■ ■
エスティマを購入する前年に、
お正月に
一家4人で関西の家内の実家へ行きました。
義父は、
お正月に私たちが訪ねたことを、
とても喜んでくれました。
当時は、伊丹空港しかありませんでした。
私たちが空港に着くと、
義父が、
ピカピカのエスティマを
借りて準備してくれていました。
■ ■
私たち一家4人と…
家内の両親が乗っても、
ゆったりとしていました。
そのエスティマに乗って、
お正月に、
関西サイクルスポーツセンターとか
震災に遭った神戸に行きました。
札幌に帰ってきてからも、
いつかはエスティマに乗りたいと
思っていました。
■ ■
家を建てて、
住宅ローンの支払いが苦しく、
びっくりドンキーへ行って、
390円のレギュラーバーグディッシュ
を一ヵ月に一度食べられればよい時代でした。
エスティマを購入する余裕は
とてもありませんでした。
ある日、知人が中古のエスティマを
購入したと聞き、
以前、カローラを買った販売店へ行きました。
■ ■
顔なじみのセールスさんがいました。
本間さん、お久しぶり、どうしたの?
エスティマの中古、ありませんか?
中古はあまり出ていないし、
人気があるので中古も高いですよ。
新車はいかがですか?
お金がないから、新車なんて買えませんよ。
市立病院にお勤めだったら、
福利厚生会からお金が借りられますよ。
金利も安いし、大丈夫ですよ。
■ ■
私は、腕のよいセールスさんの言葉と…
エスティマが欲しいという誘惑に負けて、
『おじいちゃんたちが来たら、
みんなでどこかへ行けるから!』
と渋る家内を説得して、
ローンで購入したのがエスティマでした。
燃費が悪かったので、
購入したものの、
あまり遠出はできず…
おじいちゃんも、
購入した翌年に心筋梗塞で亡くなってしまい、
結局、一度も乗せてあげられませんでした。
■ ■
でも、帯広へ転勤してからは大活躍。
くねくねとした日勝峠の冬道も、
横滑りもせずに楽勝でした。
他の車が横転しても、
エスティマはスイスイでした。
その思い出深いエスティマが、
とうとう廃車になり、
今日、トレーラーで運ばれました。
私は、現行のエスティマより、
この優しい顔をした
初代エスティマが好きでした。
ありがとう!エスティマ!
あなたは故障もせずに
よく走ってくれました!
16年乗ったエスティマ
廃車になりました
医学講座
膀胱炎の予防法
平成20年9月10日、北海道新聞朝刊の記事です。
ちょっと聞けない
泌尿器科の話⑰
膀胱炎の予防策
前から後ろにふいて
古屋聖児
膀胱炎の予防法があれば
多くの女性にとり朗報ですが、
残念ながら
「これだ!」
という絶対的な方法はありません。
■ ■
一般的に疲労や体の冷え、
排尿の我慢などに注意すると
よいと言われています。
米国のある泌尿器科医が勧める予防法は
①排尿をあまり我慢しないで、
だいたい3時間ごとの排尿を心がける
②排便後は肛門周辺を丁寧に前から後ろにふき、
同じトイレットペーパーを2度ふきしない。
■ ■
膀胱炎の原因菌となる大腸菌などは
肛門の周辺に常在しています。
そこから腟に移動して繁殖、
次に尿道を逆行して膀胱に侵入し、
膀胱炎を起こすのです。
ですから排便後はトイレットペーパーで
前から後ろの方向にふき、
肛門周辺の細菌を
腟の方向に移動させないことが
膀胱炎の予防になるというわけです。
■ ■
ところで、
18世紀までヨーロッパの女性は
ノー・パンティーで、
排尿後に紙でふく習慣はありませんでした。
ところが19世紀になり、
女性がパンティーをはくようになってから、
排尿後ぬれたままでは
パンティーが汚れるので、
紙でふくようになったのです。
■ ■
さて排尿後のトイレットペーパーのふき方には
前から後ろの方向に
ふくのがよいと言われています。
「前から後ろへ」
という方向は
尿道口、腟口、肛門の
位置関係を知っていれば
理解できますね。
(北見医師会長)
(以上、北海道新聞より引用)
■ ■
古屋先生の文章はわかりやすく、
前立腺のお話しなどは、
医師の私にも参考になりました。
この「前から後ろへ…」
の方向のことは、
医学生の時にも習いました。
そもそも、
おしっこはふつうは無菌です。
血液を漉過したものですから…
■ ■
腟の中には、
デーデルライン桿菌という乳酸菌がいます。
これらの乳酸菌が乳酸をつくるので、
膣内のpH(ペーハー)は酸性に保たれています。
健康な女性は、
この乳酸菌によって病原性細菌から
腟を守っています。
これを膣の自浄作用とか
生体バリヤーと言います。
簡単に言うと…
ヤクルトを飲んで
お腹を健康にしているのと同じことです。
■ ■
一方、腸の中には、
大腸菌などが住んでいます。
大腸菌にも、
病原性が強いものと、
悪さをしないものがいます。
うんこが汚いと言われるのは、
おしっこが血液を漉過(ろか)したものなのに、
うんこは食べ物のカスだからです。
お尻を拭いた後は、
手をよく洗わないと、
どんなにペーパーを重ねて使っても…
手にバイ菌がつきます。
■ ■
女性は解剖学的に、
肛門と尿道口が近いので、
大腸菌が尿道から入りやすいのです。
しかも男性より尿道が短いので、
尿道から入った菌が
膀胱に届きやすいのです。
ですから…
おしっこの後のペーパーは
前から後ろへ拭くとよいのです。
ご理解いただけましたでしょうか?
院長の休日
54歳になりました
昨日、9月8日は、
私の54歳の誕生日でした。
バースデーカードや
プレゼントをいただきました。
本当にありがとうございました。
さくらんぼさんからは、
元気がない私に、
生のブドウ糖をいただきました。
■ ■
今まで食べたこともないような、
最高のブドウでした。
さくらんぼさんには、
毎日コメントをいただき、
本当に感謝しています。
北里大学名誉教授の
塩谷信幸先生が
朝、ブログにコメントがないと…
ガッカリすると書かれていました。
■ ■
毎日、コメントをくださる
さくらんぼさんに感謝しています。
日記をはじめて、
10月22日で2年になります。
毎日書くのは…
正直なところ、
つらい日もあります。
でも、この日記を通じて、
さくらんぼさんとも知り合えました。
偏屈なオヤジである、
私という人間を理解していただくのに、
HPの記載以上に、
役に立っていると思います。
■ ■
弁護士の高橋智先生の、
サミーズダイアリーでも
私の日記を取り上げていただきました。
私たちの年代になると、
自分がした仕事で、
他人に喜んでいただけるというのが、
一番の生きがいになります。
何歳まで手術ができるか…?
わかりませんが、
毎日、仕事があることに感謝して…
これからも精一杯、頑張ります。
みなさま、ありがとうございます。
2008年9月8日
医療問題
医学教育と運転教習
優しくて、腕がよい、
お医者さんを
育てるのは大変です。
どんな職業でも
同じだと思いますが、
人にものを教えたり…
教えられたり…
というのは難しいことです。
■ ■
一般の方は、
医学部を卒業して、
医師国家試験に合格すると、
即、医師免許がもらえて、
簡単な診察、
簡単な処置、
簡単な手術、
などはできる……?
と思われるかもしれません。
■ ■
残念なことに、
そもそも‘簡単な’
診察・処置・手術なんてのが存在しません。
採血や注射など、
看護師免許でも、
認められていることもできないのが、
医師免許取得直後の新人医師です。
医学部6年間の教育で、
採血の実習はないか、
あっても1~2回です。
注射は免許がないとできないので、
医師も看護師も、
免許取得後に‘練習’します。
■ ■
自動車でいうと、
医師免許取得は、
仮免許で、
ようやく運転ができるようになったところ。
教官席に座って、
教習生と運命をともにして、
いつも非常ブレーキを踏めるように…
踏ん張っているのが、
指導医です。
■ ■
医学の難しいところは、
仮免許運転中のプレートをつけた、
自動車学校の教習車両ではなく、
営業中の
立派なリムジン?
と思わせるような、
有名な大病院で、
路上教習を教えなくてはならないことです。
■ ■
高いお金を払って、
立派なリムジンに乗っている、
つもりのお客様。
実際の運転が、
ベテランの運転手(指導医)ではなく、
新人の見習い運転手(研修医)
だと知ったら…
即、他のタクシーに乗り換えるか、
怒って、料金の返金を求めます。
それができないのが、
臨床研修指定病院です。
■ ■
名門の大病院ほど、
臨床研修を希望する研修医が集まります。
その病院で、
リスクがある…
手術や検査を受けるとします。
‘あなたの検査は、新人の研修医が行います’
‘当院では、十分な初期研修を行っています’
‘万一、不測の事態が起こっても、ベテランの指導医が対処します’
‘研修医がこの検査を担当するのは、3回目です’
‘2回の検査では、問題はありませんでした’
‘ただ、指導医が15分で終わる検査に、1時間を要しました’
‘以上の説明を受け、検査に同意します’
なんて同意書に署名・捺印ができますか?
■ ■
実際には、上記のような同意書なしに、
眠らされて…
ぼぉ~っとしているうちに、
検査や手術が終了します。
練習台になる患者さんも大変ですが、
詐欺のような…
指導医を続けるのも疲れます。
厚生労働大臣や
厚生労働省のお役人に
練習台になるボランティアをしていただくと、
実態がよくわかると思います。
医療問題
医学部定員増
平成20年9月7日、朝日新聞朝刊、
声の欄への投稿記事です。
医学部定員増
余裕ない現場
勤務医 安達智江 (千葉県柏市46)
医師不足解消のため、
厚生労働省の検討会が
医学部定員の大幅増を提言したのに対し、
国立大学医学部長会議が
教員や経費増を求める
批判的な内容の要望書を出したという
(8月28日朝刊)。
■ ■
当然である。
医師を教育養成するのは
研究・臨床の現場で働く現役医師だ。
教員が増えなければ、
大学での基礎系講義には、
学生が詰め込まれ、
教員の目が届かなくなる。
■ ■
臨床系の実習は大学病院で受ける。
だが、新医師臨床研修制度の導入で
医局の新人医師が激減し、
人手不足で市中の病院から
医師を引き揚げているような
大学病院の医師たちに、
増加した医学生を
教育する余裕などあるだろうか。
■ ■
卒業後に教育を受ける研修病院の
勤務医も減少している。
新しい臨床研修制度自体、
新人医師の教育に
うまく機能しているかどうかの
評価もされていないのに、
定員増で
この制度にさらに負荷をかけることになれば、
現場の混乱が増幅するだけである。
■ ■
いまの状態での定員の大幅増は
現場の医師をさらに疲弊させ、
十分な教育を受けていない
若手医師を誕生させるだけだろう。
現状では、
定員増は微増にとどめるべきだ。
医師の粗製乱造となれば、
将来に禍根を残す。
(以上、朝日新聞より引用)
■ ■
私もこの投稿者の先生に、
まったく同感です。
医学教育の現場の‘先生’
臨床研修指定病院の
指導医の‘先生’は
くたクタに疲れています。
学生や新人医師の教育は、
本当に疲れるものです。
自分ひとりで処置や手術をすれば…
30分で済むものを…
新人医師に指導をしながらすると、
倍以上の時間がかかります。
■ ■
その上、新人医師に何かをさせて、
失敗されると…
指導医の責任が問われます。
誰だって、
新人医師の…
練習台にはなりたくありません。
でも、‘練習台’になっていただく…
患者さんがいないと、
新人医師は上達しないのです。
臨床研修指定病院になって、
指導医になったからといって、
医師の待遇が良くなることはありません。
■ ■
医療という危険を伴う仕事を、
研修医に教えるのは疲れます。
もし、研修医が手術で失敗しても、
それを回復できて、
何もなかったかのように
手術を終える知識と技術がなければ、
研修医に手術を教えることはできません。
教官パイロットが、
訓練生に飛行を教える時、
もし機体が傾いても、
それを元に戻す技量が必要なのと同じです。
■ ■
飛行機はお客さんを乗せないで、
空(から)で飛ばして訓練ができますが、
手術とか検査は、
お客さんがいないと‘訓練’ができません。
厚生労働省が考える方針には、
どう考えても賛成できません。
質の悪い、
速成栽培の、
お医者さんを、
粗製乱造して、
将来困るのは国民です。
医療問題
不正行為の代償
私たち医師は、
医学部へ入学するために、
中学校→高校→(予備校)
と
他人が遊んでいる間も、
必死に勉強して合格できました。
医学部へ入学してからも、
解剖学・生化学・生理学と
それはそれは…
気が遠くなるような量の勉強をします。
ほぼ丸暗記です。
■ ■
医学部も上の学年になると…
お医者さんらしい勉強が増えます。
そこそこ楽しいうちに…
あっという間に6年間が過ぎます。
厳しい卒業試験があり、
これまた難関の医師国家試験があります。
ようやく卒業できた…!!!
医師免許証をいただいた…!!!
と喜んだのもつかの間…
免許証を取得しただけでは、
何もできません。
■ ■
医師免許証を取得してから、
臨床研修がはじまります。
毎日苦労しながら、
先輩から手取り足取り教えてもらって、
看護師さんから、
『何もできない!』
『へたくそ!』
と言われても、
じっと耐えて、耐えて、
少しずつ上達して、
10年程度かかって、
ようやく専門医となります。
■ ■
専門医になる前には、
専門医試験があります。
学会発表や論文作成もしなくては、
専門医になれません。
これが、
平均的な医師像です。
10代、20代、30代と
明らかに他人より勉強をしないと、
医師にはなれません。
私のように50代になっても、
勉強を続けないと、
最先端の医学は実践できません。
■ ■
これだけ苦労して、
せっかく開業して、
ようやく自分のお城で…
自分の好きな仕事ができるのに、
不正をして医師免許証をダメにする…
という感覚が私には理解できません。
まして、60歳を超えたら、
お金なんてどうでもいいから、
元気で働けて、
患者さんに喜んでいただけるだけで…
十分すぎると…
私は思います。
■ ■
不正や脱税をすると…
逮捕されて刑務所行きです。
医師免許証も停止です。
運転免許証だって、
取り消されて再取得は大変です。
医師免許証を取り消されて、
もう一度取得するのは、
まず、絶対に不可能です。
ですから、私は不正はしません。
院長の休日
私の疑問?
昨日、耳鼻科の先生が不正をしたのが…
どうも理解できないと書きました。
医者になると…
お金持ちになれる…
というのは、
遠い昔の話しです。
労働や責任の重さから考えると
決して割りの良い職業ではありません。
医師優遇税制も死語です。
■ ■
偏見があったらごめんなさい。
お金持ちになりたいなら、
投資家になるとか、
投資家相手の職業とか、
IT企業の社長さんとか、
が…よいと思います。
私たちのように、
自分の手足を酷使して稼ぐ職業はダメです。
手は2本、
足も2本、
しかないので、
どう頑張っても限界があります。
■ ■
高齢者が増えて、
医療費が高騰すると、
国が破産するので、
医療費は毎年削減されます。
これからも、
夢のような話しはないと思います。
医療機関の経営環境は、
ますます悪くなります。
一種の構造不況業種です。
■ ■
私たちが、
医師としての喜びを感じられるのは、
他人から感謝された時です。
‘先生、ありがとうございました’
と言っていただけるので、
なんとか頑張っていられます。
『オレは医者だから偉いんだ』
なんて考えていたら…
あっという間に倒産です。
■ ■
私は大学病院をクビになって、
失業しそうになって、
一家四人が…
明日からどうしよう…?
と本当に困ったことがありました。
今から6年前、
平成14年(2002年)のことでした。
その時に、
中央クリニックの社長さんに
拾っていただきました。
ご恩は一生忘れないくらい感謝しています。
■ ■
雇われ院長に採用していただいたので、
一生懸命、働きました。
まだ景気もよく、
競争相手もあまりいなかったので、
業績は上がりました。
その結果、
私は信じられないくらいの
お給料をいただきました。
その結果…
私は信じられないくらいの
税金を払うことになりました。
■ ■
所得税は確定申告で
3月に払います。
その後に予定納税という、
高額の税金がやってきます。
つまり、
一度、高額納税者になると、
翌年も…
高額の税金を払うことになります。
納税の自転車操業です。
まるで、税金を払うために…
働かされているような感覚です。
ごくふつうの勤務医をしていたので、
これがイヤになりました。
■ ■
よく医療法人○○○○と
クリニックや病院を
医療法人にするのは、
個人経営から、
法人にして、
法人からお給料をいただくシステムです。
医療法人には、
さまざまな規制があります。
儲かったからといって、
簡単に経営者のお給料は増やせません。
医療法人は、
『医療を提供して社会に貢献する』
という前提で認可されるからです。
■ ■
私が疑問に思うのは、
60歳も過ぎて…
そんなにお金が必要でもない…
‘耳鼻科の先生’が、
どうして自分の医師免許が危うくなるような、
診断書を偽造しなくてはならなかったのか?
という単純な疑問です。
‘先生’と同年代の、
北大医学部35期の先生は、
大多数が悠々自適、
とても親切でお優しい先生ばかりです。