医学講座

痛みの原因

 一昨日書いた、家内の顎関節症は、
 歯医者さんを受診して私の診断通りでした。
 スプリントという樹脂製の薄い装置をつけて、
 痛みは軽減しているようです。
 アゴの病気なのに…
 本人が訴えたのは…
 『耳が痛い』
 もう少しで、耳鼻科へ行くところだったと
 少しは感謝してくれたようです。
      ■         ■
 日常診療で困るのが、
 痛みの原因です。
 すぐにわかるものから、
 今回のようにわかりにくいものまで、
 痛みの原因は実にさまざまです。
 経験を積んでも、
 わからないことも…
 間違うことも…
 あります。
      ■         ■
 赤く腫れているとか、
 打撲のアトがあるとか、
 骨折しているなどの、
 他覚的所見(たかくてきしょけん)
 要するに他人が見て、
 はっきりわかる症状がある時は簡単です。
 本人の自覚症状だけが、
 唯一の所見である時が難しいのです。
      ■         ■
 私は形成外科医ですので、
 首から上の痛みは、
 まだ少しは理解できます。
 お腹が痛いなどは不得意です。
 家内のアゴの病気は、
 顎関節(がくかんせつ)に痛みを生じました。
 その関節は耳のすぐ前にあるので、
 耳が痛いと思ったのです。
      ■         ■
 アゴの骨には、
 筋肉がついています。
 その筋肉が、
 側頭骨という、
 頭の骨につながっています。
 だから、
 左アゴの関節の病気で、
 左の頭が痛くなるのです。
 アゴの骨から、
 頭までつながっているの???
 と家内は驚いていました。
      ■         ■
 眼瞼下垂症(がんけんかすいしょう)という、
 瞼(まぶた)が下がる病気で、
 肩がこったり、
 偏頭痛がするのも、
 瞼を上げるために、
 前頭筋という筋肉を使うためです。
 全員ではありませんが、
 かなりの確率で、
 眼瞼下垂症手術で
 肩こりや頭痛が…
 治ったという方がいらっしゃいます。
      ■         ■
 痛みの原因や程度は、
 病気や
 人によって
 さまざまな形で出ます。
 はっきりとした、
 診断をつけられないこともあります。
 痛みのことを、
 一番研究しているのは、
 おそらく麻酔科だと思います。
 ペインクリニックという、
 痛みの外来もあります。
 どうしてもとれない慢性の痛みは、
 ペインクリニックもよいと思います。

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院長の休日

あいさつが教えてくれたこと

 平成20年9月13日、朝日新聞朝刊の投稿記事です。
 男のひといき
 あいさつが教えてくれたこと
 マンションの管理人の仕事を始めて、
 はや6ヵ月が過ぎた。
 この間、
 住民の方から、
 朝は
 「おはようございます」
 「行ってきます。
 お願いします」
 と会釈して声をかけてもらった。
      ■         ■
 おかけで、
 「今日も1日、
 元気で仕事をしよう!」
 とすがすがしい気持ちになれた。
 夕方、仕事を終えてからも、
 「お疲れさまでした」
 「いつもきれいにしてもらって
 ありがとうございます」
 と、
 住民たちが笑顔を見せてくれる。
 「明日もがんばろう」
 との思いを強くしながら帰路につく。
      ■         ■
 こんな環境だから、
 子どもたちもよく声をかけてくれる。
 朝は
 「行ってきます。バイバイ」
 と手を振って元気よく出かけていく。
 なかには帰ってくるなり、
 管理室で仕事をしている私に
 「おじちゃん、窓を開けて」
 と大きな声で催促し、
 「ただいま」
 とあいさつしてくれる子どももいる。
      ■         ■
 ある朝、出勤すると、
 マンションの前で車の事故が
 起きていた。
 玄関や道路には
 車のガラスの破片が散乱しており、
 清掃担当者と2人で
 汗だくになりながら、
 3時間かけて
 なんとかきれいにした。
      ■         ■
 その午後、
 3歳の男の子が
 「おじちゃん、
 ガラスを取ってくれて
 ありがとう」
 と会釈してくれた。
 この一言がうれしく、
 急に疲れが取れた。
 「人を人として尊重し、声をかける」。
 その大切さをいま、
 住民や子どもたちから学んでいる。
 (広島県呉市
 井手本 猛
 マンション管理人 63歳)
 m-hitoiki@asahi.com
 (以上、朝日新聞より引用)

      ■         ■
 毎週土曜日だけ、
 朝日新聞の『ひととき』が
 男性版の
 『男のひといき』
 になります。
 私が楽しみにしている投稿欄です。
      ■         ■
 『ありがとう』
 『ありがとうございます』
 『どうもありがとう』
 『ありがとうございました』
 は、
 いい言葉です。
 私もニトリ講座をお聴きして、
 似鳥昭雄社長が…
 『ありがとう』と
 社員によく言うと教えていただいてから、
 心がけるようになりました。
      ■         ■
 手術中にも、
 『ありがとうございます』
 と言うようになりました。
 手術がうまく進行するように思います。
 大学病院や総合病院の
 中央手術室では…
 残念ですが、
 あまり一般的ではないと思います。
 緊張する手術が多いので、
 最後くらいしか、
 『ありがとうございました』
 を言う余裕がないのかもしれません。
      ■         ■
 私が、似鳥社長の真似ができていないのは、
 家内に『ありがとう』を
 言っていないことでしょうか?
 先日、知人の先生が、
 新しいクリニックをオープンされました。
 そこのお祝いに家内と伺った時に、
 そちらの奥様も、
 ‘夫(医師)が私(奥さん)にありがとう’と言わないと…
 私の家内が
 ‘うちもそうょ’と
 私が一人、
 小さくなって聞いていました。
 こころの中では、
 感謝しれいるんだけどなぁ…
 なかなか言えないのが
 奥さんへの感謝の言葉です。

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医学講座

顎関節症(がくかんせつしょう)

 昨日、家内が耳が痛いので
 診て欲しいといいます。
 左耳に何かできていない?
 数日前から痛いの
 頭の方(耳の上の側頭部という部位)
 も痛くなる…
      ■         ■
 仕方がないなぁ~
 といいながら、耳を診察します。
 何ともないよ。
 外耳道炎とか起きていない?
 大丈夫だよ。
 でも痛いのよねぇ~
 と一瞬、私を疑っています。
 私は、耳を少し引っぱって…
 これで口を開けてみて。
 ここ痛くない?
 私が触ったのは、
 耳の前の顎関節(がくかんせつ)です。
      ■         ■
 アゴの関節は耳の前にあります。
 口を開けたり閉めたりすると
 耳の前が
 コロコロこりこりと動きます。
 下顎骨という下あごの骨が、
 耳の前にある顎関節で動きます。
 顎関節症はこのアゴの関節の病気です。
      ■         ■
 家内の顎関節症は、
 もうかれこれ30年近くになります。
 もともとは健康でした。
 結婚が決まってから、
 当時住んでいた、
 兵庫県西宮市で、
 歯の治療を受けました。
 結婚前に悪いところは治しておこうという、
 ごくふつうの考えで歯科医院を受診しました。
      ■         ■
 そこの歯医者さんを選んだのは、
 自宅から近く、
 通勤途中でも診察を受けられる…
 ただそれだけの理由でした。
 30年前は、
 ネットもなく、
 歯科医院の数も多くはありませんでした。
 もちろん、評判も知りません。
      ■         ■
 そこの、年輩の歯医者さんは、
 奥歯の虫歯は抜きましょう。
 と右下の奥から2番目の歯、
 専門的には7番(ななばん)と言います。
 を抜歯することを提案しました。
 家内は特に疑問も抱かず、
 抜歯することになりました。
 ここが、運命の分かれ道でした。
      ■         ■
 歯を抜いたところは、
 歯医者さんが補綴(ほてつ)処置をしました。
 その入れた歯の高さが
 少しだけ高かったようです。
 結婚後しばらくしてから、
 つまり治療後数年してから、
 治療したのとは反対側の
 左下の奥歯が痛くなりました。
      ■         ■
 知り合いの歯医者さんに、
 左奥歯を丁寧に診ていただきました。
 しっかり治療されているし、
 痛くなるような病巣(びょうそう)はありません。
 大学病院にもかかりましたが、
 左奥歯の痛みの原因はわかりませんでした。
 函館に転勤してからも、
 歯が痛くなりました。
      ■         ■
 私は、幼馴染(おさななじみ)の
 マーちゃんのことを思い出しました。
 マーちゃんこと、
 小山正美(おやままさみ)先生は、
 東北大学歯学部をご卒業されました。
 立派な歯科医になられて、
 函館市で開業されていました。
 小山先生を受診すると、
 先生は、
 奥さんの左奥歯の痛みは、
 昔受けた、右奥歯の抜歯が原因と
 はじめて診断をつけてくださいました。
      ■         ■
 大学病院の先生がわからなかった
 歯の痛みの原因を見つけてくれたのは、
 函館で開業されていた、
 小山正美先生(現在は厚沢部町で開業)
 でした。
 西宮市で抜歯を受けてから、
 実に10年近く経っていました。
 それから、
 家内の顎関節症の治療がはじまりました。
      ■         ■
 最近は落ち着いていたので、
 本人も忘れていたようです。
 私の‘診断’が正しいかどうかは、
 今日、歯医者さんでわかると思います。
 歯医者さんを選ぶのも大変です。
 耳が痛くても、
 アゴが原因のこともあります。
 みなさま、
 簡単に抜歯は受けないでください。
 虫歯をつくらないようにするのが
 一番の健康法です。

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エスティマありがとう

 平成4年8月に購入し、
 16年間走ってくれた、
 エスティマが
 ついに廃車になりました。
 維持費もかかるし…
 燃費も悪いので…
 ガソリンの値上がりとともに、
 廃車を考えていました。
      ■         ■
 走行距離は11万㎞。
 まだまだ走れるし、
 車検も来年まであったのですが、
 ついにダウンしました。
 故障らしい故障もせずに、
 交換したのは、
 タイヤとバッテリー程度でした。
      ■         ■
 この車は、
 私が市立札幌病院に勤務していた時に、
 ローンで購入しました。
 私が38歳の時です。
 子供たちは、まだ小学生でした。
 二年に一度くらいの割で、
 家内の両親が来てくれたり…
 私たちが関西に遊びに行っていました。
      ■         ■
 エスティマを購入する前年に、
 お正月に
 一家4人で関西の家内の実家へ行きました。
 義父は、
 お正月に私たちが訪ねたことを、
 とても喜んでくれました。
 当時は、伊丹空港しかありませんでした。
 私たちが空港に着くと、
 義父が、
 ピカピカのエスティマを
 借りて準備してくれていました。
      ■         ■
 私たち一家4人と…
 家内の両親が乗っても、
 ゆったりとしていました。
 そのエスティマに乗って、
 お正月に、
 関西サイクルスポーツセンターとか
 震災に遭った神戸に行きました。
 札幌に帰ってきてからも、
 いつかはエスティマに乗りたいと
 思っていました。
      ■         ■
 家を建てて、
 住宅ローンの支払いが苦しく、
 びっくりドンキーへ行って、
 390円のレギュラーバーグディッシュ
 を一ヵ月に一度食べられればよい時代でした。
 エスティマを購入する余裕は
 とてもありませんでした。
 ある日、知人が中古のエスティマを
 購入したと聞き、
 以前、カローラを買った販売店へ行きました。
      ■         ■
 顔なじみのセールスさんがいました。
 本間さん、お久しぶり、どうしたの?
 エスティマの中古、ありませんか?
 中古はあまり出ていないし、
 人気があるので中古も高いですよ。
 新車はいかがですか?

 お金がないから、新車なんて買えませんよ。
 市立病院にお勤めだったら、
 福利厚生会からお金が借りられますよ。
 金利も安いし、大丈夫ですよ。

      ■         ■
 私は、腕のよいセールスさんの言葉と…
 エスティマが欲しいという誘惑に負けて、
 『おじいちゃんたちが来たら、
 みんなでどこかへ行けるから!』
 と渋る家内を説得して、
 ローンで購入したのがエスティマでした。
 燃費が悪かったので、
 購入したものの、
 あまり遠出はできず…
 おじいちゃんも、
 購入した翌年に心筋梗塞で亡くなってしまい、
 結局、一度も乗せてあげられませんでした。
      ■         ■
 でも、帯広へ転勤してからは大活躍。
 くねくねとした日勝峠の冬道も、
 横滑りもせずに楽勝でした。
 他の車が横転しても、
 エスティマはスイスイでした。
 その思い出深いエスティマが、
 とうとう廃車になり、
 今日、トレーラーで運ばれました。
 私は、現行のエスティマより、
 この優しい顔をした
 初代エスティマが好きでした。
 ありがとう!エスティマ!
 あなたは故障もせずに
 よく走ってくれました!


16年乗ったエスティマ


廃車になりました

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医学講座

膀胱炎の予防法

 平成20年9月10日、北海道新聞朝刊の記事です。
 ちょっと聞けない
 泌尿器科の話⑰
 膀胱炎の予防策
 前から後ろにふいて
 古屋聖児
 膀胱炎の予防法があれば
 多くの女性にとり朗報ですが、
 残念ながら
 「これだ!」
 という絶対的な方法はありません。
      ■         ■
 一般的に疲労や体の冷え、
 排尿の我慢などに注意すると
 よいと言われています。
 米国のある泌尿器科医が勧める予防法は
①排尿をあまり我慢しないで、
 だいたい3時間ごとの排尿を心がける
②排便後は肛門周辺を丁寧に前から後ろにふき、
 同じトイレットペーパーを2度ふきしない。
      ■         ■
 膀胱炎の原因菌となる大腸菌などは
 肛門の周辺に常在しています。
 そこから腟に移動して繁殖、
 次に尿道を逆行して膀胱に侵入し、
 膀胱炎を起こすのです。
 ですから排便後はトイレットペーパーで
 前から後ろの方向にふき、
 肛門周辺の細菌を
 腟の方向に移動させないことが
 膀胱炎の予防になるというわけです。
      ■         ■
 ところで、
 18世紀までヨーロッパの女性は
 ノー・パンティーで、
 排尿後に紙でふく習慣はありませんでした。
 ところが19世紀になり、
 女性がパンティーをはくようになってから、
 排尿後ぬれたままでは
 パンティーが汚れるので、
 紙でふくようになったのです。
      ■         ■
 さて排尿後のトイレットペーパーのふき方には
 前から後ろの方向に
 ふくのがよいと言われています。
 「前から後ろへ」
 という方向は
 尿道口、腟口、肛門の
 位置関係を知っていれば
 理解できますね。
 (北見医師会長)
 (以上、北海道新聞より引用)

      ■         ■
 古屋先生の文章はわかりやすく、
 前立腺のお話しなどは、
 医師の私にも参考になりました。
 この「前から後ろへ…」
 の方向のことは、
 医学生の時にも習いました。
 そもそも、
 おしっこはふつうは無菌です。
 血液を漉過したものですから…
      ■         ■
 腟の中には、
 デーデルライン桿菌という乳酸菌がいます。
 これらの乳酸菌が乳酸をつくるので、
 膣内のpH(ペーハー)は酸性に保たれています。
 健康な女性は、
 この乳酸菌によって病原性細菌から
 腟を守っています。
 これを膣の自浄作用とか
 生体バリヤーと言います。
 簡単に言うと…
 ヤクルトを飲んで
 お腹を健康にしているのと同じことです。
      ■         ■
 一方、腸の中には、
 大腸菌などが住んでいます。
 大腸菌にも、
 病原性が強いものと、
 悪さをしないものがいます。
 うんこが汚いと言われるのは、
 おしっこが血液を漉過(ろか)したものなのに、
 うんこは食べ物のカスだからです。
 お尻を拭いた後は、
 手をよく洗わないと、
 どんなにペーパーを重ねて使っても…
 手にバイ菌がつきます。
      ■         ■
 女性は解剖学的に、
 肛門と尿道口が近いので、
 大腸菌が尿道から入りやすいのです。
 しかも男性より尿道が短いので、
 尿道から入った菌が
 膀胱に届きやすいのです。
 ですから…
 おしっこの後のペーパーは
 前から後ろへ拭くとよいのです。
 ご理解いただけましたでしょうか?

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院長の休日

54歳になりました

 昨日、9月8日は、
 私の54歳の誕生日でした。
 バースデーカードや
 プレゼントをいただきました。
 本当にありがとうございました。
 さくらんぼさんからは、
 元気がない私に、
 生のブドウ糖をいただきました。
      ■         ■
 今まで食べたこともないような、
 最高のブドウでした。
 さくらんぼさんには、
 毎日コメントをいただき、
 本当に感謝しています。
 北里大学名誉教授の
 塩谷信幸先生が
 朝、ブログにコメントがないと…
 ガッカリすると書かれていました。
      ■         ■
 毎日、コメントをくださる
 さくらんぼさんに感謝しています。
 日記をはじめて、
 10月22日で2年になります。
 毎日書くのは…
 正直なところ、
 つらい日もあります。
 でも、この日記を通じて、
 さくらんぼさんとも知り合えました。
 偏屈なオヤジである、
 私という人間を理解していただくのに、
 HPの記載以上に、
 役に立っていると思います。
      ■         ■
 弁護士の高橋智先生の、
 サミーズダイアリーでも
 私の日記を取り上げていただきました。
 私たちの年代になると、
 自分がした仕事で、
 他人に喜んでいただけるというのが、
 一番の生きがいになります。
 何歳まで手術ができるか…?
 わかりませんが、
 毎日、仕事があることに感謝して…
 これからも精一杯、頑張ります。
 みなさま、ありがとうございます。


2008年9月8日

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医療問題

医学教育と運転教習

 優しくて、腕がよい、
 お医者さんを
 育てるのは大変です。
 どんな職業でも
 同じだと思いますが、
 人にものを教えたり…
 教えられたり…
 というのは難しいことです。
      ■         ■
 一般の方は、
 医学部を卒業して、
 医師国家試験に合格すると、
 即、医師免許がもらえて、
 簡単な診察、
 簡単な処置、
 簡単な手術、
 などはできる……?
 と思われるかもしれません。
      ■         ■
 残念なことに、
 そもそも‘簡単な’
 診察・処置・手術なんてのが存在しません。
 採血や注射など、
 看護師免許でも、
 認められていることもできないのが、
 医師免許取得直後の新人医師です。
 医学部6年間の教育で、
 採血の実習はないか、
 あっても1~2回です。
 注射は免許がないとできないので、
 医師も看護師も、
 免許取得後に‘練習’します。
      ■         ■
 自動車でいうと、
 医師免許取得は、
 仮免許で、
 ようやく運転ができるようになったところ。
 教官席に座って、
 教習生と運命をともにして、
 いつも非常ブレーキを踏めるように…
 踏ん張っているのが、
 指導医です。
      ■         ■
 医学の難しいところは、
 仮免許運転中のプレートをつけた、
 自動車学校の教習車両ではなく、
 営業中の
 立派なリムジン?
 と思わせるような、
 有名な大病院で、
 路上教習を教えなくてはならないことです。
      ■         ■
 高いお金を払って、
 立派なリムジンに乗っている、
 つもりのお客様。
 実際の運転が、
 ベテランの運転手(指導医)ではなく、
 新人の見習い運転手(研修医)
 だと知ったら…
 即、他のタクシーに乗り換えるか、
 怒って、料金の返金を求めます。
 それができないのが、
 臨床研修指定病院です。
      ■         ■
 名門の大病院ほど、
 臨床研修を希望する研修医が集まります。
 その病院で、
 リスクがある…
 手術や検査を受けるとします。
 ‘あなたの検査は、新人の研修医が行います’
 ‘当院では、十分な初期研修を行っています’
 ‘万一、不測の事態が起こっても、ベテランの指導医が対処します’
 ‘研修医がこの検査を担当するのは、3回目です’
 ‘2回の検査では、問題はありませんでした’
 ‘ただ、指導医が15分で終わる検査に、1時間を要しました’
 ‘以上の説明を受け、検査に同意します’

 なんて同意書に署名・捺印ができますか?
      ■         ■
 実際には、上記のような同意書なしに、
 眠らされて…
 ぼぉ~っとしているうちに、
 検査や手術が終了します。
 練習台になる患者さんも大変ですが、
 詐欺のような…
 指導医を続けるのも疲れます。
 厚生労働大臣や
 厚生労働省のお役人に
 練習台になるボランティアをしていただくと、
 実態がよくわかると思います。

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医療問題

医学部定員増

 平成20年9月7日、朝日新聞朝刊、
 声の欄への投稿記事です。
 医学部定員増
 余裕ない現場
 勤務医 安達智江 (千葉県柏市46)
 医師不足解消のため、
 厚生労働省の検討会が
 医学部定員の大幅増を提言したのに対し、
 国立大学医学部長会議が
 教員や経費増を求める
 批判的な内容の要望書を出したという
 (8月28日朝刊)。
      ■         ■
 当然である。
 医師を教育養成するのは
 研究・臨床の現場で働く現役医師だ。
 教員が増えなければ、
 大学での基礎系講義には、
 学生が詰め込まれ、
 教員の目が届かなくなる。
      ■         ■
 臨床系の実習は大学病院で受ける。
 だが、新医師臨床研修制度の導入で
 医局の新人医師が激減し、
 人手不足で市中の病院から
 医師を引き揚げているような
 大学病院の医師たちに、
 増加した医学生を
 教育する余裕などあるだろうか。
      ■         ■
 卒業後に教育を受ける研修病院の
 勤務医も減少している。
 新しい臨床研修制度自体、
 新人医師の教育に
 うまく機能しているかどうかの
 評価もされていないのに、
 定員増で
 この制度にさらに負荷をかけることになれば、
 現場の混乱が増幅するだけである。
      ■         ■
 いまの状態での定員の大幅増は
 現場の医師をさらに疲弊させ、
 十分な教育を受けていない
 若手医師を誕生させるだけだろう。
 現状では、
 定員増は微増にとどめるべきだ。
 医師の粗製乱造となれば、
 将来に禍根を残す。
 (以上、朝日新聞より引用)

      ■         ■
 私もこの投稿者の先生に、
 まったく同感です。
 医学教育の現場の‘先生’
 臨床研修指定病院の
 指導医の‘先生’は
 くたクタに疲れています。
 学生や新人医師の教育は、
 本当に疲れるものです。
 自分ひとりで処置や手術をすれば…
 30分で済むものを…
 新人医師に指導をしながらすると、
 倍以上の時間がかかります。
      ■         ■
 その上、新人医師に何かをさせて、
 失敗されると…
 指導医の責任が問われます。
 誰だって、
 新人医師の…
 練習台にはなりたくありません。
 でも、‘練習台’になっていただく…
 患者さんがいないと、
 新人医師は上達しないのです。
 臨床研修指定病院になって、
 指導医になったからといって、
 医師の待遇が良くなることはありません。
      ■         ■
 医療という危険を伴う仕事を、
 研修医に教えるのは疲れます。
 もし、研修医が手術で失敗しても、
 それを回復できて、
 何もなかったかのように
 手術を終える知識と技術がなければ、
 研修医に手術を教えることはできません。
 教官パイロットが、
 訓練生に飛行を教える時、
 もし機体が傾いても、
 それを元に戻す技量が必要なのと同じです。
      ■         ■
 飛行機はお客さんを乗せないで、
 空(から)で飛ばして訓練ができますが、
 手術とか検査は、
 お客さんがいないと‘訓練’ができません。
 厚生労働省が考える方針には、
 どう考えても賛成できません。
 質の悪い、
 速成栽培の、
 お医者さんを、 
 粗製乱造して、
 将来困るのは国民です。

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医療問題

不正行為の代償

 私たち医師は、
 医学部へ入学するために、
 中学校→高校→(予備校)
 と
 他人が遊んでいる間も、
 必死に勉強して合格できました。
 医学部へ入学してからも、
 解剖学・生化学・生理学と
 それはそれは…
 気が遠くなるような量の勉強をします。
 ほぼ丸暗記です。
      ■         ■
 医学部も上の学年になると…
 お医者さんらしい勉強が増えます。
 そこそこ楽しいうちに…
 あっという間に6年間が過ぎます。
 厳しい卒業試験があり、
 これまた難関の医師国家試験があります。
 ようやく卒業できた…!!!
 医師免許証をいただいた…!!!
 と喜んだのもつかの間…
 免許証を取得しただけでは、
 何もできません。
      ■         ■
 医師免許証を取得してから、
 臨床研修がはじまります。
 毎日苦労しながら、
 先輩から手取り足取り教えてもらって、
 看護師さんから、
 『何もできない!』
 『へたくそ!』
 と言われても、
 じっと耐えて、耐えて、
 少しずつ上達して、
 10年程度かかって、
 ようやく専門医となります。
      ■         ■
 専門医になる前には、
 専門医試験があります。
 学会発表や論文作成もしなくては、
 専門医になれません。
 これが、
 平均的な医師像です。
 10代、20代、30代と
 明らかに他人より勉強をしないと、
 医師にはなれません。
 私のように50代になっても、
 勉強を続けないと、
 最先端の医学は実践できません。
      ■         ■
 これだけ苦労して、
 せっかく開業して、
 ようやく自分のお城で…
 自分の好きな仕事ができるのに、
 不正をして医師免許証をダメにする…
 という感覚が私には理解できません。
 まして、60歳を超えたら、
 お金なんてどうでもいいから、
 元気で働けて、
 患者さんに喜んでいただけるだけで…
 十分すぎると…
 私は思います。
      ■         ■
 不正や脱税をすると…
 逮捕されて刑務所行きです。
 医師免許証も停止です。
 運転免許証だって、
 取り消されて再取得は大変です。
 医師免許証を取り消されて、
 もう一度取得するのは、
 まず、絶対に不可能です。
 ですから、私は不正はしません。

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院長の休日

私の疑問?

 昨日、耳鼻科の先生が不正をしたのが…
 どうも理解できないと書きました。
 医者になると…
 お金持ちになれる…
 というのは、
 遠い昔の話しです。
 労働や責任の重さから考えると
 決して割りの良い職業ではありません。
 医師優遇税制も死語です。
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 偏見があったらごめんなさい。
 お金持ちになりたいなら、
 投資家になるとか、
 投資家相手の職業とか、
 IT企業の社長さんとか、
 が…よいと思います。
 私たちのように、
 自分の手足を酷使して稼ぐ職業はダメです。
 手は2本、
 足も2本、
 しかないので、
 どう頑張っても限界があります。
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 高齢者が増えて、
 医療費が高騰すると、
 国が破産するので、
 医療費は毎年削減されます。
 これからも、
 夢のような話しはないと思います。
 医療機関の経営環境は、
 ますます悪くなります。
 一種の構造不況業種です。
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 私たちが、
 医師としての喜びを感じられるのは、
 他人から感謝された時です。
 ‘先生、ありがとうございました’
 と言っていただけるので、
 なんとか頑張っていられます。
 『オレは医者だから偉いんだ』
 なんて考えていたら…
 あっという間に倒産です。
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 私は大学病院をクビになって、
 失業しそうになって、
 一家四人が…
 明日からどうしよう…?
 と本当に困ったことがありました。
 今から6年前、
 平成14年(2002年)のことでした。
 その時に、
 中央クリニックの社長さんに
 拾っていただきました。
 ご恩は一生忘れないくらい感謝しています。
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 雇われ院長に採用していただいたので、
 一生懸命、働きました。
 まだ景気もよく、
 競争相手もあまりいなかったので、
 業績は上がりました。
 その結果、
 私は信じられないくらいの
 お給料をいただきました。
 その結果…
 私は信じられないくらいの
 税金を払うことになりました。
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 所得税は確定申告で
 3月に払います。
 その後に予定納税という、
 高額の税金がやってきます。
 つまり、
 一度、高額納税者になると、
 翌年も…
 高額の税金を払うことになります。
 納税の自転車操業です。
 まるで、税金を払うために…
 働かされているような感覚です。
 ごくふつうの勤務医をしていたので、
 これがイヤになりました。
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 よく医療法人○○○○と
 クリニックや病院を
 医療法人にするのは、
 個人経営から、
 法人にして、
 法人からお給料をいただくシステムです。
 医療法人には、
 さまざまな規制があります。
 儲かったからといって、
 簡単に経営者のお給料は増やせません。
 医療法人は、
 『医療を提供して社会に貢献する』
 という前提で認可されるからです。
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 私が疑問に思うのは、
 60歳も過ぎて…
 そんなにお金が必要でもない…
 ‘耳鼻科の先生’が、
 どうして自分の医師免許が危うくなるような、
 診断書を偽造しなくてはならなかったのか?
 という単純な疑問です。
 ‘先生’と同年代の、
 北大医学部35期の先生は、
 大多数が悠々自適、
 とても親切でお優しい先生ばかりです。

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