医学講座

プロからのコメント

 昨日の院長日記、
 頑張っている人からのエール
 らずべりーさんからコメントをいただきました。
 プロレスの番組があると言われた時、『何時頃あるんですか?何チャンネルであるんですか?』という会話があればなって思いました。
 首から下が動かない方は、テレビのチャンネルを押せないのだからその時間にチャンネルを変えに行くのは自分だと思わないといけなかったと思いますね。ナースコールも恐らく手で押すタイプの物ではなく何らか工夫されて顔の一部を使って押されていたのかなっと推測しました。
 忙しい看護師さんを見てなるべく迷惑をかけたくないとの思いの方もいらっしゃるかもしれません。
 『気を研ぎ澄ます、気を配る』というのは、簡単なようで難しい事なのかもしれません。 特に身体が不自由な方、病状や意識がいまいちで巡視を増やして患者様のサインを見て、聞いたりしながら、組みとらないといけない。
 首から下が動かない方の場合、褥瘡に注意が必要です。新たに作らないようにしないといけないです。
 体の向きの変更や除圧、浴衣などシワ大丈夫かなとか水分摂取や位置、排泄の有無、ナースコールの位置など他に不自由は無いか確認して退出したいところですね。
 新聞に掲載された看護師さんは最後に気づいてらっしゃっています。忙しいと心のゆとりが無くなる事は誰にでもあります。
 忙しいのはあっても、ほんの少しのスペースと気配りと心がけで違うように感じました。
      ■         ■
 私は看護学の専門家ではありません。
 頚部損傷患者さんの看護学で、
 テレビのチャンネルについて、
 看護学校や看護学部の講義で教えるかどうか…?
 正直なところわかりません。
 医学部では、
 このようなとても大切なことは、
 残念ながら教えません。
      ■         ■
 医師国家試験にも出ませんし、
 看護師国家試験の問題にもないと思います。
 実際の現場で、
 先輩に教えられたり、
 患者さんに言われたりして、
 気付くのだと思います。
 私たち医療にたずさわる者は、
 常に患者さんの目線で
 ものを見る必要があります。
      ■         ■
 私が釧路労災病院形成外科で
 医長をしていた時のことです。
 新田一雄先生という大院長先生の
 足の手術を担当させていただきました。
 院長先生でも
 手術後には、
 ベッド上で…
 安静にしていただかなくてはなりませんでした。
      ■         ■
 朝、回診に伺うと…
 『いやぁ~』
 『ベッド上で安静というのが…』
 『こんなに大変だとは思わなかったよ』
 『部屋の電気を消そうと思っても…』
 『ドアのところにしかスイッチがない』
 『こんなことで看護婦さんも呼べないし…』
 『自分が入院するまで気付かなかった』
 と私に話してくださいました。
      ■         ■
 新田先生は私が尊敬する、
 大先生です。
 もう故人となられてしまいましたが、
 元北大第一外科助教授で、
 釧路労災病院を築かれた方です。
 そんな大先生でも、
 部屋の電気のスイッチに気付かなかったことを
 院長として恥ずかしいと話されていました。
      ■         ■
 医学生や看護学生さんには、
 教科書に書いていない…
 ちょっとした大切なことを、
 先輩や患者さんから、
 真摯(しんし)に学ぶ姿勢を、
 しっかりと身につけて欲しいと思います。
 残念なことですが、
 医師も看護師も
 国家試験をパスしただけでは、
 何もできないのです。
 毎日が勉強です。
 私も同じです。
 らずべりーさん、
 ありがとうございました♪

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院長の休日

頑張っている人からのエール

 平成21年10月26日(月)朝日新聞朝刊、
 ひとときへの投稿です。
 頑張っている人からのエール
 出産して約3年。子どもの世話の繰り返しに耐えられず、約2ヵ月前に、看護師の仕事に復帰した。
 久しぶりの仕事は、かなり疲れた。さらに、帰宅後には、家事や育児もある。ついつい「やはり無理か」と弱気にもなった。
 そんな時、職腸で、ある病室へ入ると、「いつも頑張っているね」と患者さんに声をかけられた。思うように仕事がはかどらず、慌ただしく動き回る姿がそう見えたのだろうか。
 私は「いえ、まだまだです」と答えた。
 その患者さんは、毎日、テレビを見て過ごしている。「今夜は、何か面白い番組がありますか」と尋ねてみた。すると「プロレスがあるんだよ」とうれしそうに話してくれた。「楽しみですね」と応じて部屋を出た。
 翌日、同じ病室へ行ったので、明るく「プロレスどうでしたか?」と聞いた。患者さんは「見なかったよ。だって、自分でチャンネル変えられないもの。ずっとニュース見ちやった」とごく普通に言った。
 言葉に詰まった。彼は首から下が動かない。不覚にも涙が出そうになった。これまで、どんなに我慢を強いられてきたことか。
 毎日、頑張っているのは彼の方だった。
 私も、もっともっとお役に立てるように、頑張っていきたいと思った。
 (東京都東大和市 内山清美 看護師 39歳)
      ■         ■
 私もよく患者さんから元気をいただきます。
 形成外科医をしていた頃は、
 首から下が動かない方を
 担当させていただいたこともありました。
 何もできない新米医師でも、
 毎日、私の回診を待っていてくださいました。
      ■         ■
 ある日、突然の事故で
 首から下が動かなくなることがあります。
 若い方でも年配の方でも、
 今まで自然にできていたことが…
 突然できなくなることがあります。
 本人も家族もパニックになります。
 動かない部位に、
 褥瘡(じょくそう)という
 キズができることもあります。
      ■         ■
 私たち形成外科医は、
 この褥瘡の治療を担当しました。
 何度も褥瘡の再発を繰り返すこともあります。
 排尿や排便も、
 思うようにできなくなります。
 看護師さんや、
 リハビリの先生と協力して、
 治療に当たりました。
      ■         ■
 中には自暴自棄になって、
 俺なんて生きていても仕方がない…
 なんて言っていらした方も
 いらっしゃいました。
 自分だったら…
 どうだろうか?
 おそらく自分でも、
 自暴自棄になるかも…?
 と思いました。
      ■         ■
 少しずつ、
 自分でできることを見つけて、
 毎日リハビリに励む患者さんは、
 私たちに元気をくださいます。
 小さなことでも、
 少しでも何かできるように…
 がんばっている人
 は美しく見えました。
 そんな時代を想い出しました。

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医学講座

脂肪吸引の失敗

 他院で脂肪吸引に失敗しました。
 脂肪注入はいつから受けられますか?
 というご質問をいくつかいただきました。
 日本全国の
 いろいろなところから…
 切羽詰ったメールが届きます。
 お悩みは切実で、
 助けてくださいという
 悲鳴が聞こえてきます。
      ■         ■
 脂肪吸引にはさまざまなトラブルがあります。
 2007年5月15の日記に書いた、
 脂肪吸引のトラブルという日記をご覧ください。
 この女性は、
 脂肪吸引による感染症でした。
 危うく命を落とすところでした。
 美容外科医の間では、
 脂肪吸引よって亡くなった患者さんが、
 日本でも何人もいるのは、
 周知の事実です。
      ■         ■
 簡単に細くなれる…
 と思って手術を受けると、
 とんでもない結果になることがあります。
 脂肪吸引で失敗したから、
 凹んだところへ脂肪注入をすれば…
 元に戻せると考えるのは誤りです。
 脂肪吸引を受けた部位には、
 皮膚の下や…
 脂肪層に…
 瘢痕(はんこん)という…
 線維性の組織ができています。
      ■         ■
 この瘢痕(はんこん)が、
 ガッチリとしたクモの巣のように、
 皮膚の下にできています。
 そのために…
 凹んだところへ脂肪注入をしても、
 元のようには膨らみません。
 自動車をぶつけた時に、
 凹んだところを、
 裏側からたたき出しても、
 キレイに膨らまないのと同じです。
      ■         ■
 凹んだところを治す治療法としては、
 まず、瘢痕(はんこん)を柔らかくすることです。
 瘢痕(はんこん)は、
 時間とともに少しずつ柔らかくなりますが、
 早く柔らかくする薬があります。
 硬いところを、
 指で優しくマッサージするのも、
 柔らかくするよい方法の一つです。
 私でしたら、
 最低でも6ヶ月は柔らかくする治療をします。
      ■         ■
 瘢痕(はんこん)が柔らかくなったところで、
 どのような治療をするか…?
 とても難しいところです。
 一般的なことですが…
 脂肪注入をしても…
 元通りには膨らみません。
 頭を悩ませるところです。
 2009年9月の日本美容外科学会でも、
 知り合いの先生が、
 お腹全面に凹凸ができた患者さんの治療法を、
 いろいろな先生に聞いていらっしゃいました。
      ■         ■
 他院の修正を数多く手がけた先生でも、
 う~ん…困った!
 という状況でした。
 大量に脂肪吸引を受けて、
 失敗した患者さんの治療は、
 形成外科専門医でも、
 神の手の美容外科医でも、
 大変難しいものです。
 私がおすすめする、
 脂肪吸引が上手な先生は、
 こちらの先生です。
 脂肪吸引は信頼できる、
 上手な先生に受けてください。

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院長の休日

院長日記三周年

 2006年10月22日にはじめた院長日記が、
 三周年を過ぎました。
 この3年間でいろいろなことがありました。
 クリニックを医療法人にしました。
 個人経営と医療法人で、
 診療内容そのものは変わりません。
 医療法人になると…
 もし私に万一のことがあっても、
 診療の継続がやりやすくなります。
      ■         ■
 ビルの改築計画がありました。
 正直なところ…
 とても困っていました。
 クリニックの移転は大事業です。
 移転補償費をいただいても、
 莫大な税金がかかることもわかりました。
 ところが…
 昨年秋からの不景気で、
 改築計画がストップしました。
 何が幸いするかわかりません。
 弁護士の高橋智先生には、
 大変お世話になりました。
      ■         ■
 最初の院長日記には、
 私の形成外科に対する想いが書いてあります。
 2007年12月18日までは、
 PC版と携帯版が別々でした。
 新しいフォームになってから、
 入力がしやすくなり、
 アクセス数も増えました。
 HPを作ってくださった、
 オフィスクロスロードの須崎克之様
 感謝しています。
      ■         ■
 現在、この院長日記は、
 美容の杜
 アメブロにもUPしています。
 アメブロは、
 まだまだヒット数が少ないのですが、
 新しい読者の方が増えています。
 正直なところ…
 毎日の更新は辛いものがあります。
 すらすら書けないこともあります。
 少しでも私の形成外科に対する考えや、
 医療についての考えを残せれば…
 と思いながら毎日書いています。
 今日もつたない日記を読んでいただき
 ありがとうございました。


2009年10月25日
院長日記はクリニックで
毎朝書いています

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医学講座

大きな病院での手術

 私が開業する前に勤務したのは、
 500床以上もある、
 大きな病院でした。
 大学病院や
 厚生労働省が認可した、
 臨床研修指定病院です。
      ■         ■
 これらの大きな病院でも、
 昨日の副耳(ふくじ)の手術はします。
 ただ、私自身が、
 副耳の手術をすることは、
 まずありませんでした。
 臨床研修指定病院ということは…
 若いお医者さんを
 育てる病院です。
      ■         ■
 副耳の手術を担当するのは、
 形成外科を始めて、
 1~2年目の先生でした。
 大きな病院で、
 すべての手術を、
 主任部長である、
 私がすることは不可能でした。
 私も若い時には、
 上の先生についていただいて手術をしました。
      ■         ■
 大事な子どもを手術してもらうのに、
 まだ専門医も持っていないような…
 新米の先生にさせるなんて…
 と思われる方もいらっしゃると思います。
 どうぞご安心ください。
 新人に手術をさせる時には、
 最初から最後まで、
 上の医師がついて指導をして
 チェックをしています。
      ■         ■
 多少…手術時間がかかることはありますが、
 仕上がりに問題があることはありません。
 指導医クラスがついていますので、
 逆に安心です。
 病棟でお世話をしてくれるのは、
 新人の若い先生です。
 自分で手術を担当する患者さんは、
 しっかり診てくれる筈です。
      ■         ■
 どんなに医学が発展しても、
 新人医師に手術を教える教育は、
 自動車学校で運転を教えるようなものです。
 手取り足取り教えなければ…
 手術は上達しません。
 私も先輩に教わって手術を覚えました。
 私が副耳の手術をしたのは、
 もう10年以上前です。
 指導医がしっかりしている病院は、
 若い先生に手術をしていただいても安心です

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医学講座

副耳(ふくじ)

 赤ちゃんの耳の前に、
 小さな突起がついていることがあります。
 これを副耳(ふくじ)といいます。
 日本形成外科学会
 日本小児外科学会
 のHPにも記載があります。
 左右両側にある人、
 片側だけの人、
 ホッペにもある人、
 大きさもさまざまです。
      ■         ■
 原因ははっきりしません。
 お母さんのお腹の中で、
 赤ちゃんの耳ができる時に、
 何らかの異常でできた突起です。
 お母さんに責任はありません
 日本小児外科学会HPによれば、
 出生1000人中15人程度にみられ、
 形成外科医にとっては、
 珍しい疾患ではありません。
      ■         ■
 珍しい病気ではないといわれても…
 待望の赤ちゃんに、
 余計なものがついているとショックです。
 地下鉄やJRなど、
 公共交通機関で、
 他人の耳を見てください。
 気にしなければ見つけられませんが、
 よ~く見ると…
 一日に一人は必ず見つけられます。
      ■         ■
 小さくて気づかないこともありますが、
 私でしたら見つけられます。
 それほど頻度が多いものです。
 珍しくないと言われても…
 親としては気になります。
 できることなら早く取ってあげたいです。
 でも…手術は心配ですね。
      ■         ■
 昔は、
 お産婆さんが、
 赤ちゃんの副耳を、
 糸でしばって取ったという話しを
 聞いたことがあります。
 実際に小さい時に…
 しばって取ったのに、
 根っこが残ったという方を
 手術したこともあります。
      ■         ■
 日本形成外科学会HPにも、
 日本小児外科学会HPにも、
 このしばって取る
 結紮法(けっさつほう)
 が書かれています。
 私は形成外科医としては、
 この結紮法はおすすめできません。
 副耳には軟骨が入っていることが多く、
 軟骨はしばっても取れないからです。
      ■         ■
 形成外科医としては、
 きちんと麻酔をして、
 切り取る方法をおすすめします。
 問題は手術時期です。
 日本形成外科学会HPには、
 手術時期は
 全身麻酔を行う場合は
 麻酔の安全性が高まる1歳前後以降が良いでしょう。
 また耳珠などの軽度の変形などがある場合には
 同時に修正することもできます。
      ■         ■
 確かに私もこのように説明していた時期がありました。
 ところが、
 赤ちゃんは1歳を過ぎると活動的になります。
 可愛いですが、
 ちょっと目を離すと危ないことになります。
 お母さんからの免疫もなくなるので、
 病気をしたり、熱を出すようになります。
 育児休業も原則的には1歳までです。
 じいちゃん先生の私としては、
 自分の孫だったら、
 一歳前に手術をします。
      ■         ■
 赤ちゃんが…
 おっぱい飲んでねんねして…
 くれている時期に、
 副耳の手術をします。
 唇裂の手術は生後3ヶ月、
 体重6㎏で手術をします。
 この時期に手術をして、
 麻酔で問題となった患者さんはいませんでした。
 これより早い時期に、
 手術をすることはありませんが、
 小さいうちに手術をすると…
 キズはキレイに治ります。
      ■         ■
 副耳のような小さなものに、
 全身麻酔で手術なんてとんでもない!
 と言われる先生もいらっしゃると思います。
 手術をするしない、
 手術を局所麻酔でするか?
 全身麻酔でするか?
 リスクの問題もあります。
      ■         ■
 幼稚園に入園して、
 他の子に指摘されると…
 子どもは覚えています。
 私は何もわからないうちに
 治してあげたいと思います。
 申し訳ございませんが、
 札幌美容形成外科では、
 小児の全身麻酔は行っておりません。
 副耳の手術は札幌市内の病院をご紹介しています。

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院長の休日

北大のイチョウ並木2009

 北海道は寒くなってきました。
 休診日に北大構内の紅葉を見てきました。
 毎年、行っているのが、
 イチョウ並木です。
 昨年
 一昨年の写真を出してみました。
 今年は、少し早いので…
 まだ緑があります。
 今月の下旬からが見ごろです。
      ■         ■
 私が北大病院で形成外科の修行をしていた頃…
 このイチョウ並木の下を…
 毎日歩いていました。
 当時は車通勤ができたので、
 駐車場に車を置いて、
 イチョウ並木の下を歩いて病院へ行きました。
 (カローラに乗っていました)
 当時は、
 イチョウがキレイとか言っている余裕は…
 正直なところありませんでした。
      ■         ■
 朝早くから…
 今日は○○先生の手術の助手!
 指示の出し忘れはなかったかな…?
 とか
 今日のカンファレンスの準備は大丈夫かなぁ…?
 とか
 教授回診なので、
 しっかり準備をしておこう!
 なんてことを考えながら…
 足早に歩いていました。
      ■         ■
 夜に帰るころは真っ暗なので、
 銀杏(ぎんなん)の実を踏まないように気をつけました。
 不幸にして…
 銀杏を踏んでしまうと、
 車の中が臭くなりました。
 イチョウの葉が落ちて、
 黄色いじゅうたんになったころに、
 毎年、初雪が降りました。
 30年後に…
 イチョウの並木を毎年見に来るとは…
 全く考えていませんでした。
      ■         ■
 昨日の北海道新聞の記事によると、
 ここには、
 もともとサクラとカエデが
 植えられていたそうです。
 1939年にイチョウに植え替えられました。
 なぜイチョウになったのか?
 北大には現存史料がなく、
 わからないそうです。
      ■         ■
 故・岩沢健蔵さん(元北大事務官)の
 「北大歴史散歩」(北大図書刊行会)によると、
 北大嘱託の測量士が、
 「害虫に弱いサクラより、イチョウにすべきだ」と提言したので
 この樹齢70年、
 70本のイチョウ並木ができたのだそうです。
 北13条通りにあります。
 札幌にいらしたら、
 是非訪れてください。


2009年10月21日
北大イチョウ並木
昨年より早いので緑があります

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医学講座

棺桶に足を入れる

 棺桶に足を入れるという言葉があります。
 棺桶に足を突っ込むと言うこともあります。
 地方によって言い方はさまざまです。
 はっきりとした語源はわかりません。
 あまり良い意味では使いませんね。
 私が昔、治療させていただいた、
 糖尿病性足病変の患者さんです。
      ■         ■
 先生、俺の片足、
 もう棺桶に入って…
 火葬場で火葬して…
 お墓に入っている…
 だから…
 残っているこっちの足は…
 何とか切らないでほしい…
 正直なところ…
 切断した下肢を火葬するとは…
 それまで、知りませんでした。
      ■         ■
 学校で習ったのに…
 居眠りしていて
 聞き逃したのか…?
 でも、
 医師国家試験にも出ませんでした。
 形成外科で扱うのは、
 せいぜい指や足趾(あしゆび)の切断です。
 切断した部位に、
 皮膚悪性腫瘍などがあるために、
 そのままホルマリン固定をして、
 病理検査室へお願いします。
      ■         ■
 病理検査室では、
 細胞を検査するために、
 切り取られた部位を、
 細かく切り分けて、
 それを標本にして、
 染色(せんしょく)という色をつけて…
 顕微鏡で検査をします。
 残った組織もある程度は保存しておき、
 一定期間が過ぎると…
 医療用廃棄物として処理されます。
      ■         ■
 足趾(あしゆび)程度の大きさでしたら、
 糖尿病による血管病変の程度などを調べるために、
 病理検査をします。
 この病理検査だけで、
 火葬まではしません。
 ところが…
 膝のレベルで切断となると、
 ご家族にお願いして、
 切断された下肢を、
 火葬していただくことになります。
      ■         ■
 幸いなことに…
 私が担当させていただいた、
 お墓に片足が入っている患者さんは、
 もう片方の足を残すことができました。
 糖尿病内科の先生と相談して、
 血糖のコントロールをしっかりしました。
 堀内先生のご講演をお聞きした時には、
 片足が切断されていると、
 残った足にも病変が見られて、
 両下肢の切断となるリスクが増えると
 伺ったように記憶しています。
      ■         ■
 糖尿病は怖い病気です。
 目が見えなくなったり…
 人工透析になったり…
 神経障害から勃起不全にもなります。
 食事と運動に気をつけて、
 発症したら…
 しっかりと治療を継続することが大切です。
 足病変の治療を研究している、
 日本フットケア学会という学会もあります。

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医学講座

治せないキズ

 昨日は偉そうなことを書きましたが、
 キズを治すプロでも、
 治せないキズがあります。
 私たちが一番苦労するのが、
 血流がない部位のキズです。
 2009年6月20日に書いた、
 市立札幌病院形成外科の
 堀内勝己先生がご専門とする、
 糖尿病性足病変がその代表です。
      ■         ■
 糖尿病で足の血管が詰まって、
 その結果、できたキズは苦労します。
 足趾(あしゆび)の先にできた、
 ちょっとしたキズが治りません。
 しかも痛みがあります。
 形成外科医になって2年目の秋に、
 釧路労災病院に勤務しました。
 上の先生が…
 何度、手術をしても、
 足のキズが治りません。
      ■         ■
 今は神の手と呼ばれる、
 名医が手術をしました。
 何度手術をしても…
 小さな足のキズが治らないのです。
 血流をよくする薬を注射したり、
 キズがよく治る薬を塗りましたが、
 いくらがんばっても治りませんでした。
 血管が詰まっていて、
 血流がない状態だと、
 どんなに丁寧に縫っても治りません。
      ■         ■
 こういう場合は、
 血流がある部位で、
 下肢を切断することになります。
 小さなキズのために…
 膝のところから切断と言われても…
 簡単に受け入れられる筈がありません。
 なんとか治してください
 と懇願されることもあります。
      ■         ■
 中には、
 すでに反対側の足は切断されており、
 残っているのは、
 一本だけという場合もあります。
 どうにかして、
 残った足のキズを治したいと思っても、
 血管が詰まっているのが原因だと、
 治せないこともあります。
      ■         ■
 市立札幌病院形成外科の
 堀内先生は、
 この糖尿病性足病変の権威です。
 以前のご講演では…
 下腿の切断まで、
 形成外科でしてしまうと伺いました。
 他にも治療に難渋するキズはあります。
 簡単に治せそうな…
 小さなキズでも難しいことがあります。

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医学講座

形成外科医はキズを治すプロです

 偉そうなタイトルですが、
 形成外科医としての誇りです。
 治らないキズ…。
 キレイにしたいキズ。
 キズのことなら形成外科へ!
 自信を持って言える、
 キズを治すプロ
 が形成外科医です。
      ■         ■
 じゃあ…先生、
 私のこのキズも…
 まったくわからないように消せるの…?
 というご質問が来そうです。
 ちょっと待ってください…!
 キズを治すプロでも、
 キズ痕は消せません。
 限りなく目立たないように治すのが、
 形成外科医です。
      ■         ■
 キズが目立つか?目立たないか?は、
 同じ人でも、
 体の部位によって異なります。
 できたキズの状態にもよります。
 一般的なことですが、
 浅いキズは治りも早いし、
 キズ痕も目立ちにくくなります。
 皮膚が薄くて、
 血流がよく、
 皮膚に緊張がかからない部位は、
 キズが目立ちにくいと言われます。
      ■         ■
 キズを治すプロなんて言うと…
 縫い方が上手な、
 神の手を、
 想像なさる方も多いと思います。
 私の手は、
 残念ながら…
 ‘神の手’ではありません。
 よく練習した、訓練を積んだ‘手’ですが、
 生まれ持った特別な才能はありません。
 先輩に叱られて…
 患者さんといっしょに悩んで…
 苦労して覚えた‘手’です。
      ■         ■
 確かに上手な先生は、
 切り方も、
 血の止め方も、
 縫い方も、
 違います。
 この切って縫うまでが、
 キズを治すプロの条件だと、
 誤解されることがあります。
 もちろん下手くそだと、
 お話しになりません。
      ■         ■
 どんなに上手な先生が、
 神の手で縫ったキズでも、
 目立つことがあります。
 治らないこともあります。
 それは、
 キズを治すのに必要な、
 血流が障害された時、
 縫った後で、
 キズに緊張が加わった時などです。
      ■         ■
 抜糸したら…
 キズは治っていると思うのは誤りです。
 引っぱってもちぎれないくらい、
 キズがしっかりとくっつくのは、
 手術してから3~6ヶ月もかかります。
 その間は、
 キズが硬くなったり、
 つっぱったりすることもあります。
 そうしたキズも治すのがプロです。
      ■         ■
 縫うのが上手なだけが、
 プロではありません。
 しっかりと後療法(こうりょうほう)もするのがプロです。
 キズが治るメカニズムを理解して、
 キズが治りやすい環境を整えて、
 患者さんにそれを説明して、
 一緒にキズを治す協力をするのが、
 形成外科医です。
 残念なことですが…
 プロでも治せないキズもあります。

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