医学講座

顎関節症(がくかんせつしょう)

 昨日、家内が耳が痛いので
 診て欲しいといいます。
 左耳に何かできていない?
 数日前から痛いの
 頭の方(耳の上の側頭部という部位)
 も痛くなる…
      ■         ■
 仕方がないなぁ~
 といいながら、耳を診察します。
 何ともないよ。
 外耳道炎とか起きていない?
 大丈夫だよ。
 でも痛いのよねぇ~
 と一瞬、私を疑っています。
 私は、耳を少し引っぱって…
 これで口を開けてみて。
 ここ痛くない?
 私が触ったのは、
 耳の前の顎関節(がくかんせつ)です。
      ■         ■
 アゴの関節は耳の前にあります。
 口を開けたり閉めたりすると
 耳の前が
 コロコロこりこりと動きます。
 下顎骨という下あごの骨が、
 耳の前にある顎関節で動きます。
 顎関節症はこのアゴの関節の病気です。
      ■         ■
 家内の顎関節症は、
 もうかれこれ30年近くになります。
 もともとは健康でした。
 結婚が決まってから、
 当時住んでいた、
 兵庫県西宮市で、
 歯の治療を受けました。
 結婚前に悪いところは治しておこうという、
 ごくふつうの考えで歯科医院を受診しました。
      ■         ■
 そこの歯医者さんを選んだのは、
 自宅から近く、
 通勤途中でも診察を受けられる…
 ただそれだけの理由でした。
 30年前は、
 ネットもなく、
 歯科医院の数も多くはありませんでした。
 もちろん、評判も知りません。
      ■         ■
 そこの、年輩の歯医者さんは、
 奥歯の虫歯は抜きましょう。
 と右下の奥から2番目の歯、
 専門的には7番(ななばん)と言います。
 を抜歯することを提案しました。
 家内は特に疑問も抱かず、
 抜歯することになりました。
 ここが、運命の分かれ道でした。
      ■         ■
 歯を抜いたところは、
 歯医者さんが補綴(ほてつ)処置をしました。
 その入れた歯の高さが
 少しだけ高かったようです。
 結婚後しばらくしてから、
 つまり治療後数年してから、
 治療したのとは反対側の
 左下の奥歯が痛くなりました。
      ■         ■
 知り合いの歯医者さんに、
 左奥歯を丁寧に診ていただきました。
 しっかり治療されているし、
 痛くなるような病巣(びょうそう)はありません。
 大学病院にもかかりましたが、
 左奥歯の痛みの原因はわかりませんでした。
 函館に転勤してからも、
 歯が痛くなりました。
      ■         ■
 私は、幼馴染(おさななじみ)の
 マーちゃんのことを思い出しました。
 マーちゃんこと、
 小山正美(おやままさみ)先生は、
 東北大学歯学部をご卒業されました。
 立派な歯科医になられて、
 函館市で開業されていました。
 小山先生を受診すると、
 先生は、
 奥さんの左奥歯の痛みは、
 昔受けた、右奥歯の抜歯が原因と
 はじめて診断をつけてくださいました。
      ■         ■
 大学病院の先生がわからなかった
 歯の痛みの原因を見つけてくれたのは、
 函館で開業されていた、
 小山正美先生(現在は厚沢部町で開業)
 でした。
 西宮市で抜歯を受けてから、
 実に10年近く経っていました。
 それから、
 家内の顎関節症の治療がはじまりました。
      ■         ■
 最近は落ち着いていたので、
 本人も忘れていたようです。
 私の‘診断’が正しいかどうかは、
 今日、歯医者さんでわかると思います。
 歯医者さんを選ぶのも大変です。
 耳が痛くても、
 アゴが原因のこともあります。
 みなさま、
 簡単に抜歯は受けないでください。
 虫歯をつくらないようにするのが
 一番の健康法です。

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エスティマありがとう

 平成4年8月に購入し、
 16年間走ってくれた、
 エスティマが
 ついに廃車になりました。
 維持費もかかるし…
 燃費も悪いので…
 ガソリンの値上がりとともに、
 廃車を考えていました。
      ■         ■
 走行距離は11万㎞。
 まだまだ走れるし、
 車検も来年まであったのですが、
 ついにダウンしました。
 故障らしい故障もせずに、
 交換したのは、
 タイヤとバッテリー程度でした。
      ■         ■
 この車は、
 私が市立札幌病院に勤務していた時に、
 ローンで購入しました。
 私が38歳の時です。
 子供たちは、まだ小学生でした。
 二年に一度くらいの割で、
 家内の両親が来てくれたり…
 私たちが関西に遊びに行っていました。
      ■         ■
 エスティマを購入する前年に、
 お正月に
 一家4人で関西の家内の実家へ行きました。
 義父は、
 お正月に私たちが訪ねたことを、
 とても喜んでくれました。
 当時は、伊丹空港しかありませんでした。
 私たちが空港に着くと、
 義父が、
 ピカピカのエスティマを
 借りて準備してくれていました。
      ■         ■
 私たち一家4人と…
 家内の両親が乗っても、
 ゆったりとしていました。
 そのエスティマに乗って、
 お正月に、
 関西サイクルスポーツセンターとか
 震災に遭った神戸に行きました。
 札幌に帰ってきてからも、
 いつかはエスティマに乗りたいと
 思っていました。
      ■         ■
 家を建てて、
 住宅ローンの支払いが苦しく、
 びっくりドンキーへ行って、
 390円のレギュラーバーグディッシュ
 を一ヵ月に一度食べられればよい時代でした。
 エスティマを購入する余裕は
 とてもありませんでした。
 ある日、知人が中古のエスティマを
 購入したと聞き、
 以前、カローラを買った販売店へ行きました。
      ■         ■
 顔なじみのセールスさんがいました。
 本間さん、お久しぶり、どうしたの?
 エスティマの中古、ありませんか?
 中古はあまり出ていないし、
 人気があるので中古も高いですよ。
 新車はいかがですか?

 お金がないから、新車なんて買えませんよ。
 市立病院にお勤めだったら、
 福利厚生会からお金が借りられますよ。
 金利も安いし、大丈夫ですよ。

      ■         ■
 私は、腕のよいセールスさんの言葉と…
 エスティマが欲しいという誘惑に負けて、
 『おじいちゃんたちが来たら、
 みんなでどこかへ行けるから!』
 と渋る家内を説得して、
 ローンで購入したのがエスティマでした。
 燃費が悪かったので、
 購入したものの、
 あまり遠出はできず…
 おじいちゃんも、
 購入した翌年に心筋梗塞で亡くなってしまい、
 結局、一度も乗せてあげられませんでした。
      ■         ■
 でも、帯広へ転勤してからは大活躍。
 くねくねとした日勝峠の冬道も、
 横滑りもせずに楽勝でした。
 他の車が横転しても、
 エスティマはスイスイでした。
 その思い出深いエスティマが、
 とうとう廃車になり、
 今日、トレーラーで運ばれました。
 私は、現行のエスティマより、
 この優しい顔をした
 初代エスティマが好きでした。
 ありがとう!エスティマ!
 あなたは故障もせずに
 よく走ってくれました!


16年乗ったエスティマ


廃車になりました

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医学講座

膀胱炎の予防法

 平成20年9月10日、北海道新聞朝刊の記事です。
 ちょっと聞けない
 泌尿器科の話⑰
 膀胱炎の予防策
 前から後ろにふいて
 古屋聖児
 膀胱炎の予防法があれば
 多くの女性にとり朗報ですが、
 残念ながら
 「これだ!」
 という絶対的な方法はありません。
      ■         ■
 一般的に疲労や体の冷え、
 排尿の我慢などに注意すると
 よいと言われています。
 米国のある泌尿器科医が勧める予防法は
①排尿をあまり我慢しないで、
 だいたい3時間ごとの排尿を心がける
②排便後は肛門周辺を丁寧に前から後ろにふき、
 同じトイレットペーパーを2度ふきしない。
      ■         ■
 膀胱炎の原因菌となる大腸菌などは
 肛門の周辺に常在しています。
 そこから腟に移動して繁殖、
 次に尿道を逆行して膀胱に侵入し、
 膀胱炎を起こすのです。
 ですから排便後はトイレットペーパーで
 前から後ろの方向にふき、
 肛門周辺の細菌を
 腟の方向に移動させないことが
 膀胱炎の予防になるというわけです。
      ■         ■
 ところで、
 18世紀までヨーロッパの女性は
 ノー・パンティーで、
 排尿後に紙でふく習慣はありませんでした。
 ところが19世紀になり、
 女性がパンティーをはくようになってから、
 排尿後ぬれたままでは
 パンティーが汚れるので、
 紙でふくようになったのです。
      ■         ■
 さて排尿後のトイレットペーパーのふき方には
 前から後ろの方向に
 ふくのがよいと言われています。
 「前から後ろへ」
 という方向は
 尿道口、腟口、肛門の
 位置関係を知っていれば
 理解できますね。
 (北見医師会長)
 (以上、北海道新聞より引用)

      ■         ■
 古屋先生の文章はわかりやすく、
 前立腺のお話しなどは、
 医師の私にも参考になりました。
 この「前から後ろへ…」
 の方向のことは、
 医学生の時にも習いました。
 そもそも、
 おしっこはふつうは無菌です。
 血液を漉過したものですから…
      ■         ■
 腟の中には、
 デーデルライン桿菌という乳酸菌がいます。
 これらの乳酸菌が乳酸をつくるので、
 膣内のpH(ペーハー)は酸性に保たれています。
 健康な女性は、
 この乳酸菌によって病原性細菌から
 腟を守っています。
 これを膣の自浄作用とか
 生体バリヤーと言います。
 簡単に言うと…
 ヤクルトを飲んで
 お腹を健康にしているのと同じことです。
      ■         ■
 一方、腸の中には、
 大腸菌などが住んでいます。
 大腸菌にも、
 病原性が強いものと、
 悪さをしないものがいます。
 うんこが汚いと言われるのは、
 おしっこが血液を漉過(ろか)したものなのに、
 うんこは食べ物のカスだからです。
 お尻を拭いた後は、
 手をよく洗わないと、
 どんなにペーパーを重ねて使っても…
 手にバイ菌がつきます。
      ■         ■
 女性は解剖学的に、
 肛門と尿道口が近いので、
 大腸菌が尿道から入りやすいのです。
 しかも男性より尿道が短いので、
 尿道から入った菌が
 膀胱に届きやすいのです。
 ですから…
 おしっこの後のペーパーは
 前から後ろへ拭くとよいのです。
 ご理解いただけましたでしょうか?

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院長の休日

54歳になりました

 昨日、9月8日は、
 私の54歳の誕生日でした。
 バースデーカードや
 プレゼントをいただきました。
 本当にありがとうございました。
 さくらんぼさんからは、
 元気がない私に、
 生のブドウ糖をいただきました。
      ■         ■
 今まで食べたこともないような、
 最高のブドウでした。
 さくらんぼさんには、
 毎日コメントをいただき、
 本当に感謝しています。
 北里大学名誉教授の
 塩谷信幸先生が
 朝、ブログにコメントがないと…
 ガッカリすると書かれていました。
      ■         ■
 毎日、コメントをくださる
 さくらんぼさんに感謝しています。
 日記をはじめて、
 10月22日で2年になります。
 毎日書くのは…
 正直なところ、
 つらい日もあります。
 でも、この日記を通じて、
 さくらんぼさんとも知り合えました。
 偏屈なオヤジである、
 私という人間を理解していただくのに、
 HPの記載以上に、
 役に立っていると思います。
      ■         ■
 弁護士の高橋智先生の、
 サミーズダイアリーでも
 私の日記を取り上げていただきました。
 私たちの年代になると、
 自分がした仕事で、
 他人に喜んでいただけるというのが、
 一番の生きがいになります。
 何歳まで手術ができるか…?
 わかりませんが、
 毎日、仕事があることに感謝して…
 これからも精一杯、頑張ります。
 みなさま、ありがとうございます。


2008年9月8日

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医療問題

医学教育と運転教習

 優しくて、腕がよい、
 お医者さんを
 育てるのは大変です。
 どんな職業でも
 同じだと思いますが、
 人にものを教えたり…
 教えられたり…
 というのは難しいことです。
      ■         ■
 一般の方は、
 医学部を卒業して、
 医師国家試験に合格すると、
 即、医師免許がもらえて、
 簡単な診察、
 簡単な処置、
 簡単な手術、
 などはできる……?
 と思われるかもしれません。
      ■         ■
 残念なことに、
 そもそも‘簡単な’
 診察・処置・手術なんてのが存在しません。
 採血や注射など、
 看護師免許でも、
 認められていることもできないのが、
 医師免許取得直後の新人医師です。
 医学部6年間の教育で、
 採血の実習はないか、
 あっても1~2回です。
 注射は免許がないとできないので、
 医師も看護師も、
 免許取得後に‘練習’します。
      ■         ■
 自動車でいうと、
 医師免許取得は、
 仮免許で、
 ようやく運転ができるようになったところ。
 教官席に座って、
 教習生と運命をともにして、
 いつも非常ブレーキを踏めるように…
 踏ん張っているのが、
 指導医です。
      ■         ■
 医学の難しいところは、
 仮免許運転中のプレートをつけた、
 自動車学校の教習車両ではなく、
 営業中の
 立派なリムジン?
 と思わせるような、
 有名な大病院で、
 路上教習を教えなくてはならないことです。
      ■         ■
 高いお金を払って、
 立派なリムジンに乗っている、
 つもりのお客様。
 実際の運転が、
 ベテランの運転手(指導医)ではなく、
 新人の見習い運転手(研修医)
 だと知ったら…
 即、他のタクシーに乗り換えるか、
 怒って、料金の返金を求めます。
 それができないのが、
 臨床研修指定病院です。
      ■         ■
 名門の大病院ほど、
 臨床研修を希望する研修医が集まります。
 その病院で、
 リスクがある…
 手術や検査を受けるとします。
 ‘あなたの検査は、新人の研修医が行います’
 ‘当院では、十分な初期研修を行っています’
 ‘万一、不測の事態が起こっても、ベテランの指導医が対処します’
 ‘研修医がこの検査を担当するのは、3回目です’
 ‘2回の検査では、問題はありませんでした’
 ‘ただ、指導医が15分で終わる検査に、1時間を要しました’
 ‘以上の説明を受け、検査に同意します’

 なんて同意書に署名・捺印ができますか?
      ■         ■
 実際には、上記のような同意書なしに、
 眠らされて…
 ぼぉ~っとしているうちに、
 検査や手術が終了します。
 練習台になる患者さんも大変ですが、
 詐欺のような…
 指導医を続けるのも疲れます。
 厚生労働大臣や
 厚生労働省のお役人に
 練習台になるボランティアをしていただくと、
 実態がよくわかると思います。

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医療問題

医学部定員増

 平成20年9月7日、朝日新聞朝刊、
 声の欄への投稿記事です。
 医学部定員増
 余裕ない現場
 勤務医 安達智江 (千葉県柏市46)
 医師不足解消のため、
 厚生労働省の検討会が
 医学部定員の大幅増を提言したのに対し、
 国立大学医学部長会議が
 教員や経費増を求める
 批判的な内容の要望書を出したという
 (8月28日朝刊)。
      ■         ■
 当然である。
 医師を教育養成するのは
 研究・臨床の現場で働く現役医師だ。
 教員が増えなければ、
 大学での基礎系講義には、
 学生が詰め込まれ、
 教員の目が届かなくなる。
      ■         ■
 臨床系の実習は大学病院で受ける。
 だが、新医師臨床研修制度の導入で
 医局の新人医師が激減し、
 人手不足で市中の病院から
 医師を引き揚げているような
 大学病院の医師たちに、
 増加した医学生を
 教育する余裕などあるだろうか。
      ■         ■
 卒業後に教育を受ける研修病院の
 勤務医も減少している。
 新しい臨床研修制度自体、
 新人医師の教育に
 うまく機能しているかどうかの
 評価もされていないのに、
 定員増で
 この制度にさらに負荷をかけることになれば、
 現場の混乱が増幅するだけである。
      ■         ■
 いまの状態での定員の大幅増は
 現場の医師をさらに疲弊させ、
 十分な教育を受けていない
 若手医師を誕生させるだけだろう。
 現状では、
 定員増は微増にとどめるべきだ。
 医師の粗製乱造となれば、
 将来に禍根を残す。
 (以上、朝日新聞より引用)

      ■         ■
 私もこの投稿者の先生に、
 まったく同感です。
 医学教育の現場の‘先生’
 臨床研修指定病院の
 指導医の‘先生’は
 くたクタに疲れています。
 学生や新人医師の教育は、
 本当に疲れるものです。
 自分ひとりで処置や手術をすれば…
 30分で済むものを…
 新人医師に指導をしながらすると、
 倍以上の時間がかかります。
      ■         ■
 その上、新人医師に何かをさせて、
 失敗されると…
 指導医の責任が問われます。
 誰だって、
 新人医師の…
 練習台にはなりたくありません。
 でも、‘練習台’になっていただく…
 患者さんがいないと、
 新人医師は上達しないのです。
 臨床研修指定病院になって、
 指導医になったからといって、
 医師の待遇が良くなることはありません。
      ■         ■
 医療という危険を伴う仕事を、
 研修医に教えるのは疲れます。
 もし、研修医が手術で失敗しても、
 それを回復できて、
 何もなかったかのように
 手術を終える知識と技術がなければ、
 研修医に手術を教えることはできません。
 教官パイロットが、
 訓練生に飛行を教える時、
 もし機体が傾いても、
 それを元に戻す技量が必要なのと同じです。
      ■         ■
 飛行機はお客さんを乗せないで、
 空(から)で飛ばして訓練ができますが、
 手術とか検査は、
 お客さんがいないと‘訓練’ができません。
 厚生労働省が考える方針には、
 どう考えても賛成できません。
 質の悪い、
 速成栽培の、
 お医者さんを、 
 粗製乱造して、
 将来困るのは国民です。

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医療問題

不正行為の代償

 私たち医師は、
 医学部へ入学するために、
 中学校→高校→(予備校)
 と
 他人が遊んでいる間も、
 必死に勉強して合格できました。
 医学部へ入学してからも、
 解剖学・生化学・生理学と
 それはそれは…
 気が遠くなるような量の勉強をします。
 ほぼ丸暗記です。
      ■         ■
 医学部も上の学年になると…
 お医者さんらしい勉強が増えます。
 そこそこ楽しいうちに…
 あっという間に6年間が過ぎます。
 厳しい卒業試験があり、
 これまた難関の医師国家試験があります。
 ようやく卒業できた…!!!
 医師免許証をいただいた…!!!
 と喜んだのもつかの間…
 免許証を取得しただけでは、
 何もできません。
      ■         ■
 医師免許証を取得してから、
 臨床研修がはじまります。
 毎日苦労しながら、
 先輩から手取り足取り教えてもらって、
 看護師さんから、
 『何もできない!』
 『へたくそ!』
 と言われても、
 じっと耐えて、耐えて、
 少しずつ上達して、
 10年程度かかって、
 ようやく専門医となります。
      ■         ■
 専門医になる前には、
 専門医試験があります。
 学会発表や論文作成もしなくては、
 専門医になれません。
 これが、
 平均的な医師像です。
 10代、20代、30代と
 明らかに他人より勉強をしないと、
 医師にはなれません。
 私のように50代になっても、
 勉強を続けないと、
 最先端の医学は実践できません。
      ■         ■
 これだけ苦労して、
 せっかく開業して、
 ようやく自分のお城で…
 自分の好きな仕事ができるのに、
 不正をして医師免許証をダメにする…
 という感覚が私には理解できません。
 まして、60歳を超えたら、
 お金なんてどうでもいいから、
 元気で働けて、
 患者さんに喜んでいただけるだけで…
 十分すぎると…
 私は思います。
      ■         ■
 不正や脱税をすると…
 逮捕されて刑務所行きです。
 医師免許証も停止です。
 運転免許証だって、
 取り消されて再取得は大変です。
 医師免許証を取り消されて、
 もう一度取得するのは、
 まず、絶対に不可能です。
 ですから、私は不正はしません。

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院長の休日

私の疑問?

 昨日、耳鼻科の先生が不正をしたのが…
 どうも理解できないと書きました。
 医者になると…
 お金持ちになれる…
 というのは、
 遠い昔の話しです。
 労働や責任の重さから考えると
 決して割りの良い職業ではありません。
 医師優遇税制も死語です。
      ■         ■
 偏見があったらごめんなさい。
 お金持ちになりたいなら、
 投資家になるとか、
 投資家相手の職業とか、
 IT企業の社長さんとか、
 が…よいと思います。
 私たちのように、
 自分の手足を酷使して稼ぐ職業はダメです。
 手は2本、
 足も2本、
 しかないので、
 どう頑張っても限界があります。
      ■         ■
 高齢者が増えて、
 医療費が高騰すると、
 国が破産するので、
 医療費は毎年削減されます。
 これからも、
 夢のような話しはないと思います。
 医療機関の経営環境は、
 ますます悪くなります。
 一種の構造不況業種です。
      ■         ■
 私たちが、
 医師としての喜びを感じられるのは、
 他人から感謝された時です。
 ‘先生、ありがとうございました’
 と言っていただけるので、
 なんとか頑張っていられます。
 『オレは医者だから偉いんだ』
 なんて考えていたら…
 あっという間に倒産です。
      ■         ■
 私は大学病院をクビになって、
 失業しそうになって、
 一家四人が…
 明日からどうしよう…?
 と本当に困ったことがありました。
 今から6年前、
 平成14年(2002年)のことでした。
 その時に、
 中央クリニックの社長さんに
 拾っていただきました。
 ご恩は一生忘れないくらい感謝しています。
      ■         ■
 雇われ院長に採用していただいたので、
 一生懸命、働きました。
 まだ景気もよく、
 競争相手もあまりいなかったので、
 業績は上がりました。
 その結果、
 私は信じられないくらいの
 お給料をいただきました。
 その結果…
 私は信じられないくらいの
 税金を払うことになりました。
      ■         ■
 所得税は確定申告で
 3月に払います。
 その後に予定納税という、
 高額の税金がやってきます。
 つまり、
 一度、高額納税者になると、
 翌年も…
 高額の税金を払うことになります。
 納税の自転車操業です。
 まるで、税金を払うために…
 働かされているような感覚です。
 ごくふつうの勤務医をしていたので、
 これがイヤになりました。
      ■         ■
 よく医療法人○○○○と
 クリニックや病院を
 医療法人にするのは、
 個人経営から、
 法人にして、
 法人からお給料をいただくシステムです。
 医療法人には、
 さまざまな規制があります。
 儲かったからといって、
 簡単に経営者のお給料は増やせません。
 医療法人は、
 『医療を提供して社会に貢献する』
 という前提で認可されるからです。
      ■         ■
 私が疑問に思うのは、
 60歳も過ぎて…
 そんなにお金が必要でもない…
 ‘耳鼻科の先生’が、
 どうして自分の医師免許が危うくなるような、
 診断書を偽造しなくてはならなかったのか?
 という単純な疑問です。
 ‘先生’と同年代の、
 北大医学部35期の先生は、
 大多数が悠々自適、
 とても親切でお優しい先生ばかりです。

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医療問題

聴覚障害不正問題

 昨日、出勤途中に札幌駅前を歩いていると
 駅前の北海道銀行の前に、
 たくさんの報道陣が集まっていました。
 夜、帰る時にもまだカメラを構えていました。
 報道関係の方も
 朝早くから夜遅くまでご苦労様です。
      ■         ■
 このビルで開業している、
 耳鼻科の先生が、
 耳が聞こえる人に…
 『聞こえない』
 という診断書を書いて、
 不正に身体障害者手帳を取得させた
 という疑いで、
 昨日、家宅捜索を受けました。
 テレビのニュースには、
 北海道警察の捜査員が、
 ダンボール箱に入れた書類を、
 夜遅くに運び出すところが映っていました。
      ■         ■
 札幌美容形成外科があるのが、
 札幌市中央区北3条西3丁目
 このビルがあるのが
 札幌市中央区北4条西3丁目
 です。
 こんなに近くなのに…
 私はこちらの先生とは面識もなく、
 不正の疑いがあるのが…
 ここの耳鼻科だとは、
 まったく知りませんでした。
      ■         ■
 耳鼻科医は73歳。
 北大医学部35期(昭和34年卒業)の先生です。
 私は、なぜ不正をしたのか…?
 不思議でたまりません。
 私が開業している札幌駅南口地区は、
 美容外科の激戦区です。
 札幌美容形成外科の他に、
 大手美容外科2軒。
 個人の形成外科が1軒あります。
      ■         ■
 物価が上がっているのに、
 美容外科の料金だけは下がっています。
 経営はなかなか大変です。
 それでも、
 私と従業員が食べてゆける収入はあります。
 札幌駅周辺にある、
 耳鼻科は
 問題となっている先生だけです。
 近くに競争相手はいません。
 どこの耳鼻科も混んでいます。
 どう考えても、
 不正なんかしなくても、
 十分に食べてゆけるはずです。
      ■         ■
 聴力検査というのは、
 ヘッドホンのような器械を両耳につけます。
 ピッピッピッピッ…
 という小さな音が聞こえてきます。
 音が聞こえてきたところで、
 手に持ったボタンを押して、
 聴力を測ります。
 2級の障害に相当する聴力ですと、
 両耳から騒音のような音がしても
 じっと耐えて…
 頭が割れそうになっても耐えて…
 じっとボタンを押すのを待ちます。
      ■         ■
 簡単な仕組みなので、
 誰かに一度、
 不正の仕方を教えてもらえば、
 やり方はすぐにわかります。
 聴力検査の時に、
 騒音をガマンさえすれば…
 2級になれるのです。
      ■         ■
 私が知っている耳鼻科の先生は、
 とても真面目で優しい人ばかりです。
 自分が小さい時から、
 アレルギー性鼻炎で悩んだので、
 耳鼻科医になって… 
 苦しんでいる人を治したいと、
 大学院で研究した先生もいました。
 今は開業されて繁盛しています。
 この事件の
 真相が解明される日を待っています。


ビルの前の報道陣


ビルの前の看板

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医療問題

釧路労災病院不正

 平成20年9月3日、北海道新聞朝刊の記事です。
 釧路労災病院
 室長が1600万円着服
 【釧路】釧路労災病院(釧路市、小柳知彦院長)の
 遠藤芳彦・地域医療連携室長(52)が、
 十年間にわたって診断書の作成費など
 約1600万円を着服していたことが9月2日、分かった。
 同病院は同日付で懲戒解雇処分にするとともに、
 釧路署に告発する方針を発表した。
      ■         ■
 同病院の調査では、
 室長は2001年から今年七月にかけて、
 特定疾患の医療受給者証の交付に
 必要な診断書の発行に際し、
 本来は患者が会計課に支払う
 一通3,150円の作成費を直接受け取り、
 病院に納めなかった。
 また、1998年から釧路管内釧路町が同院に支払った
 高額療養費の一部も着服していた。
      ■         ■
 今年5月、患者が室長への支払い方法を
 会計課に相談して発覚した。
 室長は旅行などに使ったと認め、全額弁済した。
 同病院は小柳院長ら
 関係者19人も減給などの処分とした。
 長期間、発覚しなかったことについて同病院は
 「診断書の発行と入金を照合するシステムがなかった」
 と陳謝した。
 (以上、北海道新聞より引用)

      ■         ■
 昨夜テレビを見ていたら、
 小柳先生が悲痛な表情で映っていました。
 先生は、元北大泌尿器科教授。
 北海道大学病院長も歴任された、
 優しくて優秀な泌尿器科医です。
 北大の定年後に、
 釧路労災病院院長に就任されました。
      ■         ■
 私は、釧路労災病院に勤務した、
 20年前に遠藤さんにお世話になりました。
 正直なところ、
 『えっ???…』
 『まさか?あの遠藤さんが…?』
 というのが私の実感です。
 医療相談室で、
 患者さんの困りごとに、
 親切に相談にのっていただいていました。
 『まさか?』
 『どうして?』
 という思いは今でも消えません。
      ■         ■
 私が勤務した当時の釧路労災病院は、
 初代院長の
 新田一雄(にったかずお)先生が築かれた
 全国一の黒字労災病院でした。
 ニッタビジョンというか…
 ニッタマインドというか…
 優秀な外科医であった、
 新田先生の手づくり病院という感じでした。
      ■         ■
 新田先生は、
 北大第一外科助教授から
 釧路労災病院長になられました。
 新田先生が着任した当時の、
 病院建設地は、
 釧路湿原のはずれにあり、
 雨が降ると、
 膝まで泥に埋まるような
 土地だったと聞いていました。
 そこに、職員が力を合わせて、
 立派な病院をつくりました。
      ■         ■
 私が勤務したのは、
 2年間程度ですが、
 たくさんの患者さんの手術をしました。
 札幌から離れていたので、
 簡単に北大に応援を頼めません。
 手術中に…
 『本当に困った!』
 ことが何度かありました。
 何度か困って…
 それを乗り越えて、
 腕を磨きました。
      ■         ■
 新田一雄(にったかずお)先生は、
 私が尊敬する院長のお一人です。
 残念なことに…
 新田先生はお亡くなりになりました。
 遠藤さんは、
 新田先生の時代に、
 釧路労災病院へ採用された方です。
 もし…
 新田先生がご存命だったら…
 『おい、遠藤!』
 『なんてことしたんだ、バカ野郎!』

 と怒られたことと思います。
 でも新田先生だったら…
 更生して出直す道をくださったと思います。
      ■         ■
 病院長というのも無力なものです。
 職員を信頼して仕事を任せなければ、
 病院は運営できません。
 私たち医師は、
 基本的に仲間や職員を信用しています。
 最初から疑っている院長などいません。
 最後に責任をとって謝罪するのが院長です。
 信頼関係が成り立たないところでは、
 医療はできません。
 そこが他の企業と違うところです。
 信頼を裏切った遠藤さんの責任は重いですが、
 是非更生して、
 また患者さんの役に立って欲しいと願っています。
 とても仕事ができる方でした。
 残念に思っています。

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