院長の休日

3回目の旭岳登山

平成20年7月3日(木)に
また旭岳に登山してきました。
今回で3回目です。
前回と同じように、
姿見の池までは
旭岳ロープウェイで上りました。
      ■         ■
11:45分発のロープウェイに乗車。
約10分ほどで着きます。
ロープウェイの中では、
ビデオで旭岳の自然について解説してくれます。
日本で最初の国立公園だそうです。
      ■         ■
登山で一番気になるのが天候です。
下から山頂が見えていても、
突然、雲に隠れてしまうこともあります。
今回は、快晴ではありませんでしたが、
最初から最後まで視界は良好でした。
      ■         ■
ロープウェイが到着すると、
自然保護監視員の方から説明があります。
遊歩道のマナーや
歩き方の注意事項などを説明してくださいます。
自然が大好きなお兄さんたちが
優しく丁寧に説明してくださいます。
      ■         ■
11:55に入山記録に署名して出発しました。
姿見の池まで、
整備された遊歩道を歩きます。
姿見の池まででしたら、
スニーカーでも大丈夫です。
(ヒールの靴は無理です)
      ■         ■
今年は雨が少ないせいか、
山頂までの道は歩きにくかったです。
昨年購入した靴が活躍しました。
すれ違う方たちと、
『こんにちは』
と挨拶を交わしながら上ります。
      ■         ■
街ですれ違っても、
挨拶はしないのに、
山道では挨拶をします。
知らない人同士でも、
友だちになったような感覚で、
挨拶をするのは気持ちの良いものです。
      ■         ■
今年は足元が悪かったために、
1時間50分で山頂に着きました。
3回目にしてはじめて、
山頂から360度の大パノラマが見えました。
登山は辛いですが、
山頂に着いた時の達成感が、
また山に登ろうという気にさせるのだと思います。
      ■         ■
帰りに姿見の池付近の
お花畑を見てきました。
お花だけを楽しむのでしたら、
山頂まで上る必要はありません。
小さくてかわいいお花がたくさん咲いていました。


旭岳山頂
後方に見えるのが
姿見の池です


チングルマ


ツガザクラ

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医学講座

ヤケドとシミの関係

 日本熱傷学会の話題ではありません。
 ヤケドとシミのお話しです。
 役に立つ、ヤケド講座です。
 昨年も書いたことがあります。
 おさらいです。
      ■         ■
 天ぷら油がはねて、
 ヤケドをすることがあります。
 そこから、
 シミになったという方が
 たくさんいらっしゃいます。
      ■         ■
 これは、
 ‘炎症後色素沈着’というシミです。
 天ぷら油のヤケドは、
 Ⅰ度か浅いⅡ度熱傷です。
 上手に治療すると、皮膚は治ります。
 ところが治った皮膚は赤くなっています。
 皮膚が赤い間に、紫外線に当てると、
 そこに色素沈着(シミ)ができます。
 手術後のキズも同じです。
      ■         ■
 このシミを防ぐためには、
 紫外線が当たらないようにします。
 一番確実なのは、
 ガーゼの間に
 銀紙(アルミホイルやチョコの包装紙)
 を挟んで、
 これをテープで固定することです。
 遮光(しゃこう)と呼びます。
      ■         ■
 レーザーで
 高いお金を払ってシミを治したのに…
 かえって悪くなったと
 怒っている方がいらっしゃいます。
 大部分は、
 しっかり遮光をしなかったために、
 紫外線が当たってできた
 ‘炎症後色素沈着’です。
      ■         ■
 キレイに治すには…
 赤みがある間は
 光に当てないようにします。
 札幌美容形成外科では
 カバーマークという化粧品をお薦めしています。
 もともと子供のアザを隠すために
 開発された商品です。
 私が医師になった25年前からありました。
      ■         ■
 デパートで売っているカバーマークとは違います。
 特定の美容室やクリニックでしか売っていません。
 市販の日焼け止めより抜群に効果があります。
 SPFという紫外線防御指数の値は50です。
      ■         ■
 このカバーマークがよいのは、
 塗った色がついている間は
 効果があることです。
 他の日焼け止めクリームは、
 汗をかいて落ちてしまったり、
 ハンカチで汗を拭いて落ちてしまっても、
 落ちたこと自体がわかりません。
 カバーマークは、
 ゴルフなどの時でもばっちりです。

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医学講座

第34回日本熱傷学会②

 日本熱傷学会の続きです。
 われわれ形成外科医や救急医にとって、
 ヤケドをキレイに治すのは至難のワザです。
 昨年の熱傷学会の報告でも書きましたが、
 ヤケドのことについて
 もう一度、おさらいをします。
      ■         ■
 ステーキを注文すると焼き加減を聞かれます。
 ・レア、
 ・ミディアムレア、
 ・ミディアム、
 ・ウエルダン。
 ヤケド
 ・Ⅰ度、
 ・浅達性Ⅱ度、
 ・深達性Ⅱ度、
 ・Ⅲ度、
 と分類されます。
 日焼けしてピリピリ痛いのがⅠ度、
 水胞ができるのがⅡ度、
 皮膚が全部焼けてしまったのがⅢ度です。

      ■         ■
 問題なのはⅡ度のヤケドです。
 キズ痕が残るか残らないかは、
 いかにヤケドの処置を、
 上手にするかどうかで決まります。
 Ⅱ度のヤケドには水疱ができます。
 この水ぶくれは、破らずに処置をします。
 そうすると、
 中から新しい皮膚ができてきます。
      ■         ■
 昨年の日本熱傷学会で
 フィブラストスプレーという薬が、
 ヤケドをキレイに治すという発表がありました。
 遺伝子組み換えのバイオ技術で作った製品です。
 この薬を、子供のヤケドに使ったところ、
 普通なら絶対に痕が残るヤケドなのに
 キレイに早く治ったのです。
 すごいことです。
      ■         ■
 今年もたくさんの施設から、
 このbFGF(ベーシック・エフジーエフ)という薬が
 子供のヤケドに効くという報告がありました。
 広島県の皮膚科の先生は、
 詳しくまとめて報告されていました。
 大学の先生からも評価されていました。
      ■         ■
 問題なのは、
 熱傷学会で早くキレイに治ることがわかっても、
 保険診療でこの薬をヤケドに使うことができません。
 厚生労働省が認可していないからです。
 もっと悪いことに、
 薬の説明書にはヤケドにも子供にも使わないようにと
 記載されています。
 とても残念なことです。
      ■         ■
 一本一万円以上もする薬ですが、
 それだけの価値があります。
 厚生労働省に働きかけて、
 早く正式に認可していただきたいと思います。
 製薬メーカーにも頑張っていただきたいです。

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医学講座

第34回日本熱傷学会①

 平成20年6月28日(土)と29日(日)に
 名古屋で第34回日本熱傷学会が開催されました。
 私が医師になった、
 昭和55年(1980年)に、
 札幌で第6回日本熱傷学会が開催されました。
 28年間の進歩というのは、
 素晴らしいものです。
      ■         ■
 今回の学会では、
 聖マリアンナ医科大学形成外科の
 熊谷憲夫教授の招待講演がありました。
 ‘皮膚再生医療による創傷治療’
 というタイトルでした。
 熊谷先生は、
 日本における培養表皮移植のスペシャリストです。
 今回の講演でも、
 培養表皮移植の素晴らしさを見せていただきました。
      ■         ■
 熊谷先生の講演をお聞きして、
 正直なところ、
 培養表皮移植を見直しました。
 オブラートのように薄い培養表皮で、
 よく治せるものだ…
 というのが、
 私の感想です。
      ■         ■
 何度も書いていますが、
 ふつうの人は、
 培養表皮移植をすると、
 どんなにひどいヤケドでも、
 元のツルツルのお肌に戻せる…
 と‘誤解’されます。
 実際に、焼けただれてしまった皮膚を、
 元に戻せるのではありません。
      ■         ■
 今回の熊谷教授の講演をお聞きして、
 先人の培養表皮に対する思い。
 培養表皮移植の歴史。
 現在の培養表皮移植の状況が、
 とてもよくわかりました。
 まだまだ私たち開業医が、
 手軽に利用できる状況ではありませんが、
 熊谷教授の聖マリアンナ医大形成外科でしたら、
 世界一の治療が受けられます。
      ■         ■
 私たち形成外科医が、
 一番頭を悩ますのが、
 ヤケドのキズ痕です。
 若い女性に、
 広範囲にヤケドの痕が残っている。
 なんとかキレイにしてあげたいと思っても、 
 なかなか、
 元のツルツルのお肌にはできません。
      ■         ■
 もちろん培養表皮を使っても、
 完全に元通りにはできません。
 熊谷教授がスライドで見せてくださった症例は、
 今まで私たちが考えていたより、
 ずっとキレイになっていました。
 費用も時間もかかりますが、
 聖マリアンナ医大形成外科へ行けば、
 かなり改善できると思います。
      ■         ■
 神様がおつくりになった皮膚には、
 表皮だけではなく、
 真皮も、
 毛も
 汗腺も
 神経も
 皮脂腺などの付属器もあります。
 培養できるのは、
 今のところはこの一番上の
 表皮だけです。
      ■         ■
 将来、
 表皮以外の皮膚成分も培養できるようなれば、
 ヤケドやキズの治療は変わると思います。
 火災や事故で
 大ヤケドをした人の命を救うのが皮膚です。
 救命のためには、
 培養表皮だけではなく、
 スキンバンクに保存された、
 屍体皮膚も必要なのが現状です。

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医療問題

山形大学の事件⑥

 美容形成外科、
 美容外科、
 美容整形、
 このうち厚生労働省が認めた、
 正式な標榜科目名はどれでしょうか?
 医師免許を持っていても間違う人がいます。
      ■         ■
 正解は美容外科です。
 いちばん一般的な美容整形は、
 認められていません。
 でも、
 ‘整形する’
 という日本語を聞くと、
 整形外科で骨の手術をするのではなく、
 美容外科で
 二重の手術や鼻を高くするする手術を連想します。
      ■         ■
 形成外科は、
 よく誤解されます。
 最近では、
 さすがに、
 形成外科医です、
 といって
 整形外科医と間違える人は
 少なくなりました。
 でも、形成外科と美容外科は混同されます。
      ■         ■
 いちばん多い誤解は、
 山形大学医学部が間違った誤解です。
 つまり、
 事故などでできたキズを
 キレイに治す手術は、
 ‘美容外科的手術’であるという誤解です。
 これは、
 私の先輩にあたる形成外科医が
 長い年月をかけて保険適応にしてきた、
 ‘形成外科戦いの歴史’です。
      ■         ■
 生まれつき、
 耳がない子どもさんがいます。
 今は、保険適応になっていますが、
 昔は耳をつくる手術が
 保険適応になりませんでした。
 昭和50年の毎日新聞社会欄に
 「ボク、左耳がほしい。健保なぜきかないの?」
 という記事が出ました。
 耳がない病気の子どもさんが、
 当時の田中厚生大臣に手紙を書きました。
      ■         ■
 その翌日に、
 「左耳、手術できるよ」と、
 田中厚生大臣が健康保険の適応を認め、
 それが毎日新聞の記事になっています。
 このことを書かれたのは 
 日本形成外科学会で、
 長い間、社会保険委員をなさった、
 東京厚生年金病院の故中村純次先生でした。
 中村先生が、
 1982年に
 日本形成外科学会25周年記念誌に書かれました。
      ■         ■
 キレイなるために
 鼻を高くする、
 おっぱいを大きくする、
 これはもちろん美容外科の手術です。
 保険はききません。
 不慮の事故や
 熱傷で
 キズができてつっぱっている、
 そのキズを少しでもよくしたい。
 これは形成外科の手術です。
 形成外科では保険診療で手術をしています。
      ■         ■
 日本形成外科学会HPには、
 次のように書かれています。
 生まれつきの病気や
 変形の治療、
 外傷や熱傷(ヤケド)の治療、
 ガン切除後の再建手術などは
 健康保険の対象になります

      ■         ■
 山形大学医学部に入院された患者様は
 私の推測では、
 健康保険の適応手術だったと思います。
 それを
 「美容的外科手術」
 などと報道発表すること自体が、
 形成外科を理解していない証拠なのです。
      ■         ■
 同じような事故を防ぐためには、
 山形大学医学部に形成外科をつくり、
 形成外科の診療体制を確立することです。
 それが患者様への償いになります。
 私は、
 今でも患者様の脚にはキズが残り、
 少しでも、
 それを改善したいと
 願っていらっしゃると思います。

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医療問題

山形大学の事件⑤

 山形大学の医療事故は、
 山形大学医学部が
 形成外科のこと、
 手術を希望する患者さんのことを、
 軽視したために、
 起こるべくして起こったと考えます。
 山形大学医学部が
 いかに形成外科を理解していなかったか?
 ということは、
 発表された文書を見ても明らかです。
      ■         ■
 2007年1月の調査委員会発足の会見で、
 事故のことを附属病院長から
 「生命と関係ないいわゆる美容的外科手術」
 と発表されました。
 2007年12月19日に、
 【医療事故に係る手術名訂正について】
 山形大学医学部附属病院長山下英俊先生の名前で
 と訂正の公示が出ています。 
 「美容的外科手術」を
 「形成外科的再建術」
 と訂正させていただきます。
 という内容です。
      ■         ■
 何のことか?
 よくわからない方がいらっしゃると思います。
 大学当局は、
 「美容的外科手術」と
 「形成外科的再建術」
 の違いすら認識していなかったのです。
 本間先生、何?言ってんの?
 『美容形成外科』って言うくらいだから、
 美容も形成も同じでしょ? 
 という方がいらっしゃると思います。
      ■         ■
 そこが大きな違いなのです!
 「形成外科的再建術」であれば、
 保険適応で手術をすることができます。
 「美容的外科手術」であれば、
 大学病院といえども、
 絶対に保険適応にはできません。
 保険適応にならない、美容的外科手術を、
 保険請求していたとします。
 そうすると、不正請求になります。
      ■         ■
 不正請求をした病院は、
 保険医療機関の取消しになることもあります。
 社会保険事務局の調査が入って、
 山形大学医学部附属病院が、
 保険医療機関の取消し処分を受けると、
 さくらんぼさんも診療が受けられなくなります。
 これは、
 【重大な誤り】です。
 ちょっと、文言を誤りましたで、
 済むことではありません。
      ■         ■
 もし、山形大学医学部が
 形成外科専門医に相談をして、
 報道発表をしていれば、
 絶対に「美容的外科手術」とは書きません。
 山形大学医学部HPの記載です。
 【医療事故に係る手術名訂正について】
 山形大学医学部附属病院は、
 平成17年5月に本院で手術された患者様が
 術後経過不良となった件について、
 平成19年1月に調査委員会発足の会見をした際、
 現病及び診療科名等から患者様が特定されないよう
 「生命と関係ないいわゆる美容的外科手術」
 の表現を用いました。
      ■         ■
 平成19年3月の調査結果報告の会見をした際は、
 調査結果を踏まえ、
 手術名は
 「形成外科的再建術」
 と訂正し、
 診療科名と共に公表いたしました。
 この案件に関しては、
 「美容的外科手術」を
 「形成外科的再建術」と訂正させていただきます。
 平成19年12月19日      
 山形大学医学部附属病院長 山下英俊

      ■         ■
 もっともらしく発表していますが、
 読む人が読めば不正請求の疑いがあります。
 山形大学は荻野先生を処分して、
 安全対策を万全にしたと公表しています。
 ところが、実際には
 事故の後も、
 発表の後も、
 何も変わっていません。
 残念なことに、山形大学医学部には、
 形成外科的再建術を必要とする患者さんを
 これからどうしようという姿勢がありません。
 同じような形成外科患者さんの手術で、
 また事故が起こる可能性も考えられます。

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医療問題

山形大学の事件④

 北海道には、
 北海道大学医学部、
 札幌医科大学、
 旭川医科大学の
 3つの医育機関があります。
 旭川医科大学には形成外科はありません。
 形成外科専門医もいません。
      ■         ■
 東北には、
 青森県→弘前大学医学部、
 岩手県→岩手医科大学、
 秋田県→秋田大学医学部、
 山形県→山形大学医学部、
 宮城県→東北大学医学部、
 福島県→福島県立医科大学
 の医学部があります。
 このうち、秋田大学医学部と
 山形大学医学部には形成外科がありません。
      ■         ■
 日本の医学部や医科大学には、
 形成外科専門医すらいないところがあります。
 何回か書いたことがありますが、
 もともと形成外科は、
 皮膚科や整形外科の一部から独立しました。
 北大に形成外科ができたのが、
 昭和53年でした。
 私の恩師である、
 大浦武彦先生が血の出るような努力をされて、
 北大に形成外科をつくられました。
      ■         ■
 北大に形成外科ができたのは、
 大浦先生の恩師である、
 北大皮膚科教授の三浦祐晶先生のおかげだと
 私は大浦先生から何度もお聞きしました。
 大学や大きな総合病院に新しい診療科をつくることは、
 大変なことだというのは、
 私自身が肌で感じてきたことです。
 北大では、皮膚科から別れて形成外科ができました。
 当時の詳しいことはわかりませんが、
 一般的には形成外科ができるということは、
 皮膚科の教官が減るということです。
      ■         ■
 私の推測では、
 三浦先生は皮膚科の教官数が減っても、
 形成外科という新しい科をつくって、
 手術が必要な患者さんを助けたいと思われたのです。
 三浦先生のような、
 よき理解者がいないと、
 形成外科のような新しい診療科はできません。
 もちろん、北海道大学医学部付属病院長や
 北海道大学総長の英断もあったと思います。
      ■         ■
 北大と同じ昭和50年代前半から、
 形成外科があった国立大学は、
 東大、
 京大、
 長崎大学
 だけだったように記憶しています。
 私は、30年近く形成外科を専門としてきました。
 私自身が、市立札幌病院で、
 平成元年から平成6年まで、
 皮膚科医師として形成外科の診療を、
 6年間も担当しました。
      ■         ■
 交通事故で顔の骨を骨折した患者さんが搬送されました。
 救急部へ行って、
 『手術が必要です』
 『手術は○○のように行います』と
 ご家族に説明しました。
 何も状況がわからないご家族から、
 『失礼ですが…、
 皮膚科の先生に顔の骨の手術ができるのですか?』
 というようなことを聞かれたことがありました。
      ■         ■
 山形にも、
 脚のキズをキレイに治したい。
 脚にある、アザをキレイに治したい。
 という患者さんが必ずいると思います。
 形成外科がないので、
 患者さんはどこを受診したらよいかわかりません。
 病院の受付で聞いてもわかりません。
 皮膚のキズだから皮膚科?
 なんて感じで皮膚科をすすめられたことも
 実際にありました。
      ■         ■
 もし、山形大学医学部に形成外科があれば、
 形成外科専門医が最初から診察し、
 入院・手術計画を立て、
 患者さんやご家族に説明していたと思います。
 そうすれば、形成外科の中で
 手術法についてカンファレンスがあり、
 術後も形成外科専門医がチェックできたはずです。
 患者さんがご不幸だったのは、
 しっかりとした形成外科の診療体制がなかったことです。
 形成外科専門医として本当に申し訳なく思います。

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医療問題

山形大学の事件③

 ここからの記載は、一般的な術後経過です。
 私は山形大学と何の関係もなく、
 手術に入ったわけでもありません。
 ひとりの形成外科専門医の推測です。
 山形大学の先生は、
 下腿のキズを丁寧に縫合したと思います。
 手術終了時には何の問題もなく、
 無事に終了してよかったよかった!
 と手術を終わりました。
      ■         ■
 手術のトラブルは手術後に起こります。
 術後出血、
 術後感染、
 術後の肺合併症、
 など
 手術の後の管理が大切です。
 外科医は、
 研修医時代に先輩からイヤというほど叱られて
 術後管理を覚えます。
      ■         ■
 手術が終わると、
 患者さんは入院していた皮膚科病棟へ帰りました。
 ご家族が心配してお待ちになっています。
 ふつうの一般的な大学病院でしたら、
 患者さんの術後管理は入院している病棟、
 すなわち皮膚科病棟で行います。
 問題はそこからです。
      ■         ■
 病棟へ戻ってから、
 手術後の腫れが出てきます。
 手術直後は問題がなくても、
 手術後の腫れ(医学用語で腫脹(しゅちょう)といいます)
 によって、血流障害が出ることがあります。
 病棟では、担当の看護師が
 術後の観察をします。
      ■         ■
 麻酔が切れて、
 腫れが強くなってくると、
 患者さんは痛みを訴えます。
 術後の一過性の痛みか?
 合併症による痛みか?
 の判断が重要になります。
 持続硬膜外麻酔という麻酔が効いていると、
 痛みを訴えないことがあります。
 その時は、足先の血流を見て判断します。
      ■         ■
 ベテランの看護師が夜勤をしていると、
 すぐに判断ができて、医師へ報告されます。
 報告先は、皮膚科の当直医です。
 皮膚科の当直医は患者さんを診察して、
 異常が認められれば、主治医へ報告します。
 主治医は、診察をして、
 自分で対応ができなければ、
 手術を手伝ってくれた形成外科専門医へ報告します。
 これが、大学病院のごく一般的な流れです。
      ■         ■
 病棟での責任者は、
 ①主治医
 ②病棟医長(ふつうは皮膚科の准教授か講師)
 ③皮膚科診療科長(皮膚科教授)
 ④附属病院病院長
 となるのが一般的です。
 実際に毎日回診して、キズを診るのが、
 研修医+指導医(皮膚科)
 何か問題が生じたら…
 整形外科の形成外科専門医に連絡!
 というのが、
 日本における平均的な医学部附属病院です。
      ■         ■
 白い巨搭でおなじみの教授回診。
 浪速大学医学部第一外科では、
 外科の財前教授が回診をしていました。
 内科の里見助教授は、外科の回診には来ません。
 山形大学の患者様は、
 皮膚科に入院されていたので、
 ふつうの医学部附属病院であれば、
 診療科長である皮膚科教授が責任者です。
 皮膚科病棟の教授回診は皮膚科教授がします。
 教授が不在の時は、准教授がします。
      ■         ■
 医療事故の報告も同じです。
 このような、事故があった際には、
 まず担当した診療科の皮膚科医師から
 診療科長の皮膚科教授に報告が上がり、
 そこから病院長へと報告が上がるのが
 一般的なルールです。
      ■         ■
 山形大学の患者様の主治医は
 皮膚科医師であり、
 手術に際して、
 皮膚科から整形外科に組織的な要請はなく、
 整形外科の所属である形成外科専門医に
 直接執刀をお願いしたことで、
 結果的に、整形外科内でのカンファレンスがおこなわれず、
 整形外科長(荻野教授)に状況が伝えられないまま
 医療事故になりました。
      ■         ■
 私は、
 患者様が、
 もし整形外科病棟へ入院されていたら…
 この事故は防げたと考えます。
 整形外科の病棟では、
 術後に下肢の状態をチェックするのは…
 日常茶飯事。
 どんな新人のナースでも、
 患者さんの訴えを見逃すはずはありません。
      ■         ■
 荻野教授の指揮監督下であれば、
 必ず教授回診で善処されたと思います。
 この事故は、
 荻野教授の守備範囲以外の部署で起こりました。
 ですから、
 処置が後手後手になったのだと推測します。
 私は荻野教授の手術を知っています。
 とても丁寧でキレイな手術をなさる先生です。
 問題なのは山形大学医学部の診療体制なのです。
 その理由を次に書きます。

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医療問題

山形大学の事件②

 報道発表によると、
 20代の女性患者さんの医療事故の原因は
 コンパートメント症候群です。
 コンパートメント症候群?って何?
 ネットで検索すると、いろいろな説明がでてきます。
 どの説明を読んでも、あまりピンときません。
      ■         ■
 話しをわかりやすくするために、
 ブーツを例にとってお話しします。
 女性が冬に履くブーツ。
 いろいろなデザインがあります。
 たいていのブーツに、ファスナーがついています。
 体重が増えて、脚(下腿)が太くなったとします。
 昨年は履けたブーツがきつくて入りません。
 ショックです。
      ■         ■
 気に入っていたブーツで、
 あまり痛んでもいないので、
 無理やりファスナーを引っ張り上げて…
 ブーツが裂けそうになるくらい…
 無理矢理ブーツを履きます。
 ようやく入りました。
 パンパンになったまま、朝お出かけします。
      ■         ■
 最初はなんとかガマンできていても、
 そのうち痛みで耐えられなくなってきます。
 でもファスナーを緩めると、
 ブーツが脱げてしまい歩けません。
 仕事中に靴屋さんに行くこともできません。
 痛みをガマンして歩いていると、
 そのうち感覚が麻痺してしまいます。
      ■         ■
 仕事で外回りをしている。
 通勤に長時間かかる。
 きついブーツを長時間履いて、
 歩いていると、脚がパンパンになってきます。
 感覚が麻痺しても歩いていると、
 脚がしびれて、最後には血流が止まってしまいます。
 これがコンパートメント症候群の原理です。
      ■         ■
 つまり、脚をしめつけて血流が悪くなる病態です。
 ブーツで…
 そこまでガマンする人はいないでしょうが、
 真冬の寒い時期などにガマンしていると
 足先の感覚がなくなってしまうのと同じです。
 痛みを感じているうちは大丈夫ですが、
 きついブーツを履いたまま、
 酔って泥酔してしまったりすると…
 大変なことになります。
 脚が壊死(えし)してしまいます。
      ■         ■
 日本救急医学会HPの説明です。()内は私の捕捉です。 
 (下腿のように)複数の筋肉がある部位では,
 いくつかの筋ごとに,
 骨,筋膜,筋間中隔などで
 囲まれた区画に分かれて存在する。
 その区画のことをコンパートメントという。
      ■         ■
 骨折や打撲などの外傷が原因で
 筋肉組織などの腫脹(しゅちょう)がおこり,
 その区画内圧が上昇すると,
 その中にある筋肉,血管,神経などが圧迫され,
 循環不全のため壊死や神経麻痺をおこすことがある。
 これをコンパートメント症候群という。
 とくに多くの筋が存在する
 前腕,
 下腿や
 大腿部で起きやすい。
      ■         ■
 骨折や打撲だけではなく
 ランニングやジャンプなどの
 激しい運動によってもおこりうる。
 強い疼痛が特徴であり,
 他に
 腫脹(しゅちょう),
 知覚障害,
 強い圧痛などがみられる。
 処置が遅れれば筋肉壊死や神経麻痺をおこす。
 筋区画内圧が40mmHg以上であれば,
 筋膜切開(減張切開)が必要となる。

      ■         ■
 コンパートメント症候群は珍しい病態ではありません。
 整形外科医、
 救急医、
 外科医、
 形成外科医
 であれば、
 必ず知っているべき病態です。
      ■         ■
 救急医学会HPにあるように、
 処置が遅れれば後遺障害が残ります。
 逆に処置が早ければ
 後遺障害を残さずに治癒することもあります。
 きついブーツだって、
 早く脱げば脚はしびれませんし、
 後遺障害が残るようなことはありません。
 残念なのは、
 山形大学医学部付属病院で
 どうして早く処置ができなかったか?です。
 この理由は、別の日に書きます。

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医療問題

山形大学の事件①

 さくらんぼさんが、
 何回かコメントしてくださっている事件のことです。
 私が山形大学の事件を知ったのは、
 さくらんぼさんからの、一通の相談メールでした。
 最初に、
 手術を受けながら、後遺障害が残ってしまった患者様に、
 一人の形成外科医として、心からお詫びいたします。
 詳細は
 山形大学職員組合ホームページ
 荻野先生の裁判を支援する会として記載されています。
 この医療事故は形成外科に関係があります。
 新聞記事や職員組合HPによると次の通りです。
      ■         ■
 2005年5月一人の女性患者さんが、
 下肢の手術のために、
 山形大学病院の皮膚科に入院しました。
 主治医は皮膚科の先生です。
 手術を引き受けて、
 入院の指示をした皮膚科には、
 形成外科専門医はいませんでした。
 もちろん美容外科を専門とする医師もいません。
 経緯はわかりませんが、
 整形外科に所属する形成外科専門医が手術を執刀しました。
      ■         ■
 手術の結果が思わしくなく、
 結果的に手術前より状態が悪化したのだと私は思います。
 その事実については、一人の形成外科医師として、
 患者様に本当に申し訳なく思います。
 皮膚科に入院していた患者様は、
 2005年8月山形県外の病院に転院。
 2006年 9月患者側が、山形地裁に証拠保全の申し立て。
 2006年11月27日 山形地裁、証拠保全の決定。
 事件は山形地裁の証拠保全命令が出て、
 初めて明るみに出ました。
      ■         ■
 2007年6月山形大学医学部附属病院長は、
 荻野教授に対し科長解任および診療中止の処分。
 2007年11月山形大学教育研究評議会が
 荻野教授に対し7日の停職処分決定をしました。
 この事故で整形外科の荻野教授が処分されました。
 それは手術を執刀した形成外科専門医が
 整形外科の所属だったからです。
 荻野先生は診療も手術もできなくなりました。
      ■         ■
 その結果、さくらんぼさんが書かれていたように、
 ある日、大学病院へ行ったら、
 突然、荻野教授の名前がなくなっていた…
 という事態になったのです。
 皮膚科の担当医は2007年8月までに
 定年退職および転出。
 何の処分も受けなかったようです。
      ■         ■
 私は、
 もし山形大学に形成外科があって、
 形成外科の担当教官がいれば、
 この事故は防げたと思います。
 山形大学の診療体制が事故の原因です。
 荻野教授を処分しても、
 何の問題解決にもなりません。
 荻野先生を頼っている、
 たくさんの患者さんが心配しています。
 この事件に関して数回に分けて記載します。

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