医学講座
金の糸とMRI検査
昨日の院長日記、
CTやMRIでわかる整形に、
次のご質問を相談フォームからいただきました。
院長日記読ませて頂きました。
MRIやレントゲンですが、私は顔に金の糸が入っていますが大丈夫でしょうか?
先生に伝えてから撮影してもらったほうがいいのでしょうか?
お忙しい中すみません。よろしくお願いします。
同じような不安をお持ちの方も多いと思いますので、
今日の院長日記で取り上げます。
■ ■
日本美容医療協会ホームページに記載があります。
1.レントゲン写真、CTやMRIといった画像診断を受けられる方は、必ず医師と放射線技師に申告をして下さい。
2.埋入部のレントゲン写真、CTやMRIの写真には、金の糸が写ってしまうことがあります(写真参照)。但し、金の糸自体が画像診断の障害になることは稀のようです。
3.MRIは核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance, NMR)現象を利用して生体内の内部情報を画像化する方法で、撮影時には強力な磁気を発生します。従って特にMRIの撮影時には必ず申告をして下さい。体内に金属が埋入されている場合は、金属が移動したり熱を発生することもあり、時には撮影を拒否される場合も考えられます。これにより、悪性腫瘍の早期発見のチャンスを逃す可能性があります。
…というのが日本美容医療協会の見解です。
■ ■
私の結論は大丈夫です。
本間説です。エビデンスはありません。
本間説の根拠です。
金は代表的な「反磁性体」(磁石にならない金属)と言われています。
金の糸は細く、
どこに何本入れたかわかりませんが、
通常のMRI検査は大丈夫です。
もし不安でしたら、
【金+MRI】で検索なさるとわかります。
CTやレントゲン検査も受けられます。
■ ■
日本美容医療協会HPに書いてあるように、
放射線科の先生に聞いても、
脳神経外科の先生に聞いても、
金の糸?
何ですかそれ?
顔に入れた?
はぁ?
…ってな感じになると思います。
■ ■
僕じゃわからないから、
形成外科に行って聞いてください。
…と言われて形成外科に行ったとしても、
○○市民病院形成外科部長の先生ですら、
金の糸?何ですか?
何ミリくらいの糸を、
何本入れたんですか?
…と聞かれるくらいだと思います。
ふつうの形成外科医は金の糸を見たことがありません。
■ ■
私自身も、
学会の展示会場で見ただけです。
自分で患者さんに入れたことはありません。
形成外科で使う金は、
顔面神経麻痺の患者さんに、
ゴールドプレートという、
金の延べ板の極小版を、
まぶたに入れる手術で使うくらいです。
私も35年で一度しか見たことがありません。
■ ■
私は金の糸をすすめているのではありません。
金の糸が不安で検査を受けずに悪性腫瘍の発見が遅れるより、
しっかりとした先生に診てもらうことをすすめます。
もし美容整形で入れた材料で不安になったら、
放射線診断を専門としているクリニックのHPを見たり、
歯科で使う材料について、
ネットで検索してみることをおすすめします。
【金の糸+MRI検査】でヒットした結果が不安だったら、
【金歯+MRI検査】なら他の情報も必ずヒットします。
MRIは磁力を使った検査なので、
心臓ペースメーカーを装着した方などは受けられません。
医学講座
CTやMRIでわかる整形
昨日の院長日記に次のコメントをいただきました。
はじめまして。
記事と関係なく恐縮です。
もう25年も前になりますが札幌の今はない日美整形で埋没法で二重にしました。
2〜3年で両方一重に戻ってしまい、それはもういいのですが、今になり頭のCTやMRI、MRAを受ける事になりました。
検査結果の説明を受けましたが残っているであろう糸について主治医には特に何も言われなかったのですが、糸は画像に写り込んでくるものでしょうか?
二重にした事は誰一人知らぬ事なのでばれたくない気持ちが強く悩んでおります。
主治医にさえ知られたくない気持ちがあります。
今後も頭部検査の機会はありますので今のうちにカミングアウトした方がよいかと途方にくれております。
■ ■
同じようなお悩みの方もいらっしゃると思います。
CTやMRIなど、
画像診断が進歩しました。
細い血管までよく見えるようになりました。
昔は不可能だった、
心臓の冠動脈まで、
わかるようになりました。
■ ■
CTやMRIを検査して、
誰が読影どくえいするかにもよりますが、
埋没法の糸を見つけることは、
将来でも、
まずないと(私は)思います。
心配無用です。
頭部の画像診断で、
埋没法の糸が見つかったというのは、
2015年8月の時点では聞いたことがありません。
■ ■
市立札幌病院のように大きな病院ですと、
画像診断科という専門の部署があります。
CTやMRIなど、
画像診断を専門とする先生たちです。
腎臓の検査をしていて、
肝臓に異常を見つけてくださることもあります。
画像診断のスペシャリストです。
■ ■
脳神経外科などの病院ですと、
CTやMRIは、
脳神経外科の先生が一人で見ることもあります。
脳や神経・血管に関連したところを、
詳しく精密に見ます。
動脈瘤などが何個も見つかることもあります。
■ ■
自分が専門としている部位は、
局所解剖もよくわかっているので、
詳しく丁寧に見ます。
形成外科医ですと、
眼窩底骨折などを詳しく見ます。
手術でよく見ている部位なので、
ここに骨折があるとあそこも折れていることが多い
…というようなこともよくわかります。
■ ■
そもそも埋没法の糸は25年も経つと、
手術で見つけようとしても見つからないこともあります。
主訴である、
頭痛と関係がありそうなところは見ますが、
埋没法の糸までは見ません。
頭部CTでまぶたまでは、
ふつうは詳しく見ません。
■ ■
逆にCTやMRIでわかる整形もあります。
豊胸に使ったシリコンバッグ。
脂肪注入をしてしこりになった腫瘤など、
乳線腫瘍の検査では詳しく見ます。
シリコンバッグでしたら、
健康診断の単純X線写真でもわかります。
白い丸い影になって写ります。
ちょうど下着に入れるパットのようです。
■ ■
鼻や顎のシリコンプロテーゼもわかります。
整形ではありませんが、
歯科のインプラントや差し歯もわかります。
インプラントを入れている人は、
MRI検査の前に相談なさるといいです。
微妙なのが、
ヒアルロン酸などです。
軟部腫瘍の検査でCTやMRIを撮った場合に、
たくさん入っているとわかる可能性もあります。
■ ■
私は整形は悪いことではない、
整形をして何が悪い、
私は整形でごはんを食べています、
…という医師です。
たとえ医学的な知識があっても、
言うべきか言わないべきか、
迷うことがあると思います。
そんな時は信頼ができる先生に相談してください。
院長の休日
やなせたかしさんの本
今年の夏休みは富良野へ行きましたが、
あいにく天気は小雨でした。
今まで気になりながら…
行ったことがなかった、
アンパンマンショップふらの店に行きました。
全国のアンパンマンショップの中で、
東京と富良野だけが、
やなせたかしさん直営のお店です。
■ ■
恥ずかしながら…
私はやなせたかしさんのことをよく知りませんでした。
アンパンマンの作者であることや、
手のひらを太陽にの作詞をしたことなどを、
ぼんやりと知っていた程度です。
富良野の山奥に、
素敵なアンパンマンショップがありました。
どうして富良野に、
しかも北の国からの舞台となった
麓郷ろくごうなのかわかりませんでした。
■ ■
雨だったこともあり、
アンパンマンショップ2階にある、
ギャラリーでやなせさんの絵をゆっくり見ました。
私にはフランスの印象派より、
アンパンマンの世界が合っていました。
やなせたかしさんの本もたくさんありました。
いいことがたくさん書いてありました。
■ ■
私が気に入ったのは、
93歳・現役漫画家。病気だらけをいっそ楽しむ50の長寿法という本です。
字が大きくて読みやすいですし、
人生はおもしろがらなければ損など、
楽しい生き方がたくさん書いてあります。
もうすぐ61歳になるから、
元気が出ないなぁ~
…と思っていた私には衝撃的でぴったりの本でした。
■ ■
本のはじめにです。
1919年(大正8年)2月6日、高知県生まれ、AB型。
僕は、今年93歳になりました。
65歳まで仕事をしたら引退し、カミさんに見守られながら、ささやかな人生の最期を迎える。
そんなふうに考えていたのですが、人生というのは想定通りにはいかないものです。
漫画家としてなかなかヒット作が出なかったのが、「まもなく60歳」というころになって、なんとアンパンマンが大ヒット。65歳のころは仕事に追われ、引退どころではありませんでした。
そして、74歳のとき、ひとつ年上だったカミさんが、ガンで亡くなり、先に逝ってしまったのです。
93歳、現役漫画家。
こんなふうになるとは思っていませんでした。想定外です。
みなさんは「いつまでもお若いですね」とおっしやってくださいますが、実際は病気だらけ。本人としては4分の3は死んでいる感じです。
77歳の喜寿のころまでは元気で、「やなせさんは万年青年だね」と人からおだてられては、いい気分になり、自分がいくつかなんてすっかり忘れていました。
ところが、その後はまるで坂道を転げ落ちるように病気、また、病気。まさに“病気の総合商社”“十病人”です。
まあ、アンパンマンのなかにバイキンマンを登場させているくらいなので、ばい菌と闘うのはしかたがない。それでも生きながらえてこられたのは、運もよかったのですよ。
僕が白内障を患い、左目がかすんで見えなくなったのは、日本でちょうど人工水晶体を入れる手術ができるようになった時期でした。当時はまだ3つの病院でしか、その手術ができなかった。
また、心臓の冠動脈が細くなって詰まってしまったときには、そけい部の静脈からカテーテルを入れて血管を拡張し、ステント(金属製の管)を挿入するという手術をしたのですが、この技術が導入されたのも、僕の手術の前年から。ギリギリセーフでその手術の恩恵を受け、局所麻酔で手術は2時間。5日後には退院しました。
こんなふうに、なんとなくいいタイミングで病気になっている。だから、僕が生きているうちに、万能細胞を使った医療が一般化しないかと楽しみにしているのですが。
さて、それはどうでしょう。
93歳、病気だらけの“十病人”。
でも、からだけ病気になっても、心は病人気分になっていません。
病気になったらなったで、そこに楽しみを見つけ、おもしろがっているからかもしれません。
最近、「やなせさんの長寿法を教えてください」とよく聞かれるようになりました。
「秘訣といわれても、長寿になろうと思ってなったわけではないから、そんなものはない。もう4分の3は死んでいるんだ」と言うのですが、
生活のあれこれを話すと、「それはおもしろい」「これは参考になる」とみなさんおっしやるので、本にまとめることになりました。
僕が目指しているのは、ダンディならぬ“ダン爺”。
僕の“ダン爺生活”が、少しでもみなさんの参考になれば、長生きの甲斐もあるというものです。
やなせたかし
定価本体1,400円+税
発売日2012/9/27
ISBN9784093882675
AMAZONでも買えます。
二重・眼瞼下垂
片目だけ眼瞼下垂症が再発?
私の夏休みも今日で終わりです。
6日間はあっという間でした。
60歳を過ぎても、
働けることに感謝しています。
休みの間もメールの返信や、
院長日記を続けています。
電話もつながるようにしています。
■ ■
休み中に困るのが、
数年前にそちらで眼瞼下垂の手術を受けたんですが、
再発したので再手術を検討しています。
今は本州に住んでいます、、、
…というような電話です。
一応『休み中だから…』
…とお断りしたものの、
気になるのでクリニックに来て記録を見ます。
■ ■
残念なことですが、
休み中に電話をくださるような方に限って、
手術後に2回しか通院していないとか、
次回は○月に来てくださいね。
…と言っても、
来院していない方が多いです。
予約していた日に連絡もなく、
キャンセルされる患者さんもいます。
■ ■
どこの病院でもあることです。
2時間も3時間もかけて、
苦労して手術をしたのに、
とても残念に思います。
そんな方もいらっしゃれば、
5年前に手術をしていただきました。
その節はありがとうございました。
…と嬉しくなるようなメールもいただきます。
■ ■
メールの方は、
1年くらい前から、
片方の目だけ調子が悪くなってきて、
眼瞼下垂が再発したのでは?
…と心配していました。
私が手術をさせていただいても、
再発することがあるのが、
眼瞼下垂症という病気です。
■ ■
眼瞼下垂の再発①
眼瞼下垂の再発②
眼瞼下垂の再発③
眼瞼下垂の再発④
眼瞼下垂の再発⑤
眼瞼下垂の再発⑥
…という2012年1月10日から15日までの院長日記に詳しく書いてあります。
■ ■
眼瞼下垂症が再発しやすい人は、
①目をこするクセのある人
②アレルギーで目がかゆくなる人
③コンタクトを使い続ける人
④加齢によってまた皮膚が伸びることもあります
…です。
■ ■
眼瞼挙筋という筋肉は、
ぎょうざの皮のように薄い組織です。
筋肉というと、
ケンタッキーのようなお肉を想像しますが、
まぶたのように薄い組織に、
ケンタッキーのお肉は入りません。
薄い組織ですから、
こすったり、
ハードコンタクトでまた穴が開くことがあります。
■ ■
今日の表題のように、
片目だけ眼瞼下垂症が再発?
…と思っている人でも、
実際に診てみると、
両側が下がっていることもあります。
札幌美容形成外科で眼瞼下垂症の再手術になる方は、
ほぼ100%と言っていいくらい、
両側の再手術になっています。
■ ■
下がっていると思った方を治して、
正常に開くようになると、
ヘリングの法則という生理作用で、
反対側が下がることもあります。
目は自分で開いたり閉じたりできますが、
まばたきのように、
瞬間的な反射で閉じる働きもあります。
左右対称で丸い目を作るのは、
ほんとうに難しいと思います。
ハードコンタクトは まぶたの負担になります
二重・眼瞼下垂
埋没法の糸はどうなるか?
日本で、
埋没法で二重にするのは、
高校卒業直後の18歳が多いです。
高校を卒業したら、
お化粧もできるし、
学校も変わるので気付かれないからです。
美容外科の繁忙期は3月です。
■ ■
埋没法に向いている目の方でしたら、
幸せな人生を送ることができます。
無事に素敵な伴侶を見つけて、
♡ご結婚♡
♡ご出産♡
ぱちぱち、
♡おめでとうございます♡
…という幸せな方もたくさんいらっしゃいます。
■ ■
私は整形は悪いことではないという考えです。
ご結婚の前に、
私、埋没法で二重にしたんです
…なんて言う必要はありません。
ぼく、包茎手術を受けたんです
その時にカウンセラーにすすめられて、
大きくする手術も受けたんですけど、
あまり大きくなりませんでした
…なんて言わないのといっしょです。
■ ■
クリニックをよく選ばないと、
お金ばかり取られることもあります。
いいクリニックで、
いい先生に受けた埋没法でも、
15年も20年も経つと、
微妙にラインが変わってきます。
埋没法の糸はどうなっているのか?
…と不安になる人もいます。
よくメール相談をいただきます。
■ ■
10年前の埋没法
15年以上前の埋没法
…の院長日記を読んでください。
埋没法に使う糸は、
大部分はナイロン糸です。
ナイロン糸が販売される前に、
釣り糸を使っていた時代もありました。
私の回答は
昔の糸は大丈夫です。
■ ■
私が形成外科医になった35年前から、
手術に使っていたのがナイロン糸です。
目以外に、
唇裂の手術でも使っていましたし、
腫瘍切除後の手術でも、
外傷でも使っていました。
大部分の方は無症状です。
異物反応が少ない丈夫な糸です。
■ ■
埋没法で問題になるのは、
瞼板法で、
瞼板という組織に直接縫合するからです。
なんちゃって美容外科医がすると、
角膜に傷がつくこともあります。
目に症状がある時は眼科で診てもらってください。
目に異常がなければ大丈夫です。
糸が劣化していることはありますが、
身体に影響はありません。
■ ■
ナイロン糸は20年も経つと変化します。
丈夫な糸ですが、
もろくなっていることもあります。
色のついた糸でも透明になっています。
瞼板法で縫った糸でも、
瞼板には糸がなくて、
眼輪筋という筋肉の中にある人もよくいます。
そんな方は無症状です。
糸そのものが確認できないこともあります。
■ ■
問題がある糸は抜糸しなくてはなりません。
この抜糸が厄介です。
どんなに探してもないこともあります。
埋没糸の抜糸はもうかりません。
日本で真面目に埋没糸を抜糸しているのは、
横須賀のアロマ美容外科の鈴木敏夫先生です。
埋没法の糸で苦労している方へおすすめします。
おそらく日本一埋没糸の抜糸件数が多い先生です。
院長の休日
私の夏休み2015
昨年から私も6日間の夏休みをいただいています。
美容外科の先生だから、
夏休みは豪華に海外旅行?
…と想像される方はいらっしゃいますか?
FBで見ると、
家族で海外旅行の先生も多いようです。
私は家族で北海道の温泉です。
それも一泊だけです。
■ ■
夏の北海道ほど、
快適なところはありません。
昨日の北海道新聞には、
ニセコひらふに長期滞在型コンドミニアムが多数建設され、
暑い東京から、
月単位でいらっしゃる富裕層が増えていると報道されていました。
景気が悪い北海道にとって、
ありがたいことです。
■ ■
北海道の釧路は、
夏でもエアコンが不要なくらい涼しい都市です。
釧路市では、
冷涼な気候を生かして、
長期滞在型をしてくださる方を歓迎しています。
新しい形のビジネスモデルと紹介されています。
とにかく夏の北海道は快適です。
■ ■
私が好きなのは、
富良野から大雪山にかけてです。
もうラベンダーは終わっていますが、
山と花が好きなので今年も富良野です。
残念なことに、
今年は天気が悪く小雨でした。
それでも大満足でした。
医学講座
ヒアルロン酸注入への工夫2015
美容目的の治療で、
鼻が壊死になったり、
失明してしまうと大変です。
航空機事故と同じで、
事故は絶対に起こしていけないし、
同じような事故の再発防止が大切です。
残念なことですが、
航空機事故に比べて
医療事故の再発防止策は不十分です。
■ ■
2015年10月から日本医療安全調査機構による、
医療事故調査制度がはじまります。
美容医療に関しては、
おそらく原因解明が不十分で、
同じような事故が起こる可能性があります。
事故は隠されて、
被害者も公開されることを望みません。
私、美容整形で鼻が壊死になった
…なんて誰も他の人に知られたくありません。
■ ■
私がいろいろな学会によく参加するのは、
長年の付き合いで、
いろいろな先生から、
たくさんの情報を収集する目的があります。
企業秘密はなかなか教えてもらえませんし、
事故の情報もわかりません。
学会でちょっとした立ち話しから、
とても有意義な情報を得ることもあります。
■ ■
ヒアルロン酸を注射して、
もし副作用で失明でも起こしたら、
私のような個人経営のクリニックは倒産です。
自分自身が立ち直れなくなります。
ですから、
札幌美容形成外科では、
少しでも副作用を少なくするために、
さまざまな企業努力をしています。
■ ■
メーカーが推薦する方法が、
必ずしも100%安全とは限りません。
一つでも多くの副作用例を見て、
どうしてこんなことになったのだろう?
どうやったら防げるのだろう?
…と毎日考えることが大切です。
厚生労働省が認可した製品だからといって、
実際に事故が起きたら医師の責任です。
交通事故と同じで、
毎日事故を起こさないように注意して注意して、
慎重に診療を行っています。
医学講座
安全なヒアルロン酸注入法2015
私の院長日記は、
同業の先生にも読んでいただいています。
ヒアルロン酸は、
正しい使い方をすると♡安全♡です。
厚生労働省が承認する時に、
使い方を監修するのは、
役所のお役人ではなく、
実際に臨床試験を担当した医師です。
■ ■
現在日本で承認を受けている美容外科向けヒアルロン酸製剤は、
2014年3月に承認を受けた
アラガン・ジャパン株式会社の
ジュビダームビスタと
2015年6月に承認を受けた、
ガルデルマ株式会社の
レスチレン リド
2社の製品です。
■ ■
ヒアルロン酸の性状によって、
ジュビダームシリーズが4種類
ジュビダームビスタ ウルトラ
ジュビダームビスタ ウルトラ XC
ジュビダームビスタ ウルトラ プラス
ジュビダームビスタ ウルトラ プラス XC
レスチレンシリーズが2種類
レスチレン パーレン リド
レスチレン リド
合計6種類が販売されています。
■ ■
どの製品も、
使用目的又は効果として、
本品は、真皮中間層から深層に注入し、
中等度から重度の顔面の皺(ほうれい線等)の
矯正及び整容を目的とする。
なお、口唇、眼瞼への使用及び隆鼻術等の
形状の変更を目的とした使用は本品の適応に含まれない。
つまり、
ほうれい線等で、
真皮中間層から深層に注入が安全と書いてあります。
■ ■
ヒアルロン酸によって起こる皮膚の壊死は、
誤って血管内に注入してしまったり、
血管の周囲に注入してしまって、
血液が流れなくなるからです。
ほうれい線の近くにも、
鼻翼(小鼻)に行く血管があります。
この血管の中に間違って入れると、
鼻翼(小鼻)が壊死になります。
一度壊死になると元に戻りません。
■ ■
厚生労働省が認可した、
ほうれい線治療を目的とした、
真皮中間層から深層に注入でも、
ちょっと間違うと危険です。
私たち形成外科医は、
顔の血管解剖を熟知しています。
どこに注射すると危険なのかよく知っています。
なんちゃって美容外科医は知りません。
■ ■
医師免許を取得するには、
解剖学を勉強して、
人体解剖も経験します。
ところが、
大部分の医学生は、
細かい顔面の血管解剖は知りません。
骨の穴の名前とか、
どの神経が通るとかは試験のヤマなので覚えます。
でも顔の血管は解剖学の先生でも、
太い血管しかよくわからないのが現実です。
■ ■
下の写真は韓国の鼻の名医、
Jung先生の症例です。
私なら、
どうしてこんなことになったのか、
原因はだいたい想像がつきます。
ふつうの人が知らないだけで、
日本でも似たような事故が起きています。
ちょっと美容整形でほうれい線をなおしてもらおうと思って、
こんな鼻になったら大変です。
クリニックや病院を選ばないと、
取り返しがつかないことになります。
厚生労働省が認可した部位でも危険なことがあります。
注入剤によって壊死になった鼻
医学講座
ヒアルロン酸による血管閉塞
2015年8月15日の院長日記、
ヒアルロン酸は100%安全か?に、
メーカーの添付文書にある、
血管内への誤注入又は局所的血管圧迫
壊死又は潰瘍かいよう
視覚障害、失明、脳梗塞
鼻形成術や他の整形手術を受けた患者が
リスクが高い
…ということをご紹介しました。
■ ■
大手美容外科のHPを見ても、
どこにもこんなことは書いてありません。
【謹告】
当院で鼻を高くする目的で、
注入治療を受けた患者さんが、
鼻が壊死になってしまいました。
そのため鼻の注入治療を今後は行いません。
…なんてことはHPにも載せません。
■ ■
残念なことですが、
現実には起きています。
注入治療なら、
手術じゃないから、
若い先生だって大丈夫じゃん、
安いほうがいいょ、、、
なんて考えてはいけません。
事故が起きてからでは遅いのです。
■ ■
牛コラーゲンを使った注入治療では、
今ほど壊死や失明が問題になってはいませんでした。
私の記憶が正しければ、
Zyplastザイプラストという、
吸収されにくいコラーゲンが開発され、
それを眉間に注射した時に、
注射部位が壊死になったというのが、
注入剤による壊死や潰瘍形成の最初です。
■ ■
私の推測では、
コラーゲンの粘土や粒子が変わって、
それまでより、
血管に間違って入る率が上がったのだと思います。
それほど多い副作用ではありませんでしたが、
ヒアルロン酸製剤の普及により、
コラーゲンは市場から消えました。
■ ■
ヒアルロン酸は、
美容外科だけではなく、
眼科でも、
整形外科でも使われています。
ごくまれにアレルギー反応が出るという報告はありますが、
私自身では経験したことはありません。
ヒアルロン酸で、
血管閉塞が起きるようになったのは、
深い部位へ、
より多くのヒアルロン酸を注射するようになってからです。
■ ■
形成外科医は、
顔の血管や神経を、
いやというほど勉強します。
外傷患者さんでは、
血管を処理しなくては止血ができません。
神経損傷の患者さんは、
神経を探して縫合します。
悪性腫瘍の再建では、
血管を出して血管吻合もします。
■ ■
顔面の腫瘍を切除した後や、
鼻を再建する時などは、
皮弁ひべんという手術手技を使います。
皮弁が壊死になったら大変なので、
細い血管を損傷しないように注意して手術をします。
私たちはドップラー血流計というのも使いました。
顔面の血管走行を知らないで、
ただシワにだけヒアルロン酸を注射しようとすると、
とんでもないところが壊死になります。
何度も言いますが、
注入は簡単ではありません。
しっかりとした先生に治してもらってください。
医学講座
コラーゲンのアレルギー反応
私がコラーゲンの臨床試験を担当した30年前まで、
ヒトの体内に♡安全♡に注入できる材料はありませんでした。
大浦武彦先生が学会長なさった、
1986年の第29回日本形成外科学会(札幌)で、
大浦先生が自らコラーゲンの発表をされました。
狭い会場でしたが、
立ち見ができるほど多くの先生が集まりました。
■ ■
米国のベンチャー企業が、
牛のコラーゲンを製品化しました。
ザイダームZydermという商品名でした。
牛のコラーゲンから作ったので、
約3%の人にアレルギーが出ます。
皮内テストという、
ツベルクリン反応のように、
少量のコラーゲンを皮膚に注射するテストが必要でした。
■ ■
この皮内テストをして、
4週間様子をみて、
アレルギーがない人だけに注射をしました。
米国企業から送られた、
膨大な論文を読みました。
大部分がアレルギーに関する論文でした。
美容目的に使うコラーゲンで、
アレルギーが出たら大変です。
3%の人が合わないというのは結構な高リスクです。
■ ■
コラーゲンは、
それまで治療が難しかった、
眉間のしわや、
額のしわに効果的でした。
臨床試験の患者さんがいなかったので、
自分の母親にも注射しました。
眉間のしわがみごとに治りました。
当時私は30歳で、母親が58歳でした。
当院HPの眉間のしわは私の母親です。
■ ■
うちの奥さんは28歳でした。
まだ若くてきれいでした。
28歳の奥さんが、
私も目のしわを取りたいと言いました。
今だったら、
28歳の女性のしわは絶対に取りませんが、
コラーゲンの臨床試験に参加してくれる人もいないので、
うちの奥さんのしわも治療しようということになりました。
■ ■
マニュアル通りに、
左前腕にツ反のように皮内テストをしました。
残念なことに、
うちの奥さんは皮内反応が陽性でした。
コラーゲンを注射したところが、
蚊に刺されたように真っ赤になりました。
奥さんはがっかりしていました。
それ以上に困ったことが起こりました。
■ ■
蚊に刺された赤味は、
せいぜい数日で消えます。
ところが、
奥さんの腕の赤味は、
いつまで経っても消えませんでした。
コラーゲンは注射できないは、
腕には赤い発赤は残るは、
赤いところは痒いは、
【怒】奥さんの怒り【怒】は相当なものでした。
■ ■
結局、約半年くらいはうっすらと赤味が残りました。
それ以来、
私は皮内テストを、
上腕内側の目立たない部位にするようにしました。
もちろん研究会でも発表しました。
私は奥さんから、
赤味が消えるまで、
ず~っと文句を言われることになりました。
美容目的で使う製品は100%安全でなければ、
大変なことになると身をもって体験しました。
母親の眉間のしわです