医学講座
顔面骨骨折⑤
顔面骨骨折の治療法も…
30年の間に大きく変わりました。
整形外科で骨折を治療する時は、
さまざまな金具を使います。
整形外科学会へ行くと…
世界中の業者さんが展示しています。
整形外科で使う金具を…
ずっと小さくしたのが、
形成外科の金具です。
■ ■
私が医師になった頃は、
ステンレスのワイヤーで…
顔の骨折を固定していました。
1㎜以下の…
細い針金状のワイヤーを…
骨にドリルで穴を開けて…
その穴にワイヤーを通して…
骨を固定していました。
■ ■
簡単なようですが…
穴をあけるのも大変でした。
ちょっとでも周囲組織に触れると…
ドリルの刃が…
組織を巻き込んでしまいます。
助手が組織を押さえる役目です。
助手が下手だと叱られました。
ドリルは圧縮空気や、
電気で回していました。
ドリルの刃も1㎜以下でした。
■ ■
ワイヤーの操作も…
慣れないと…
すぐに切れてしまいました。
絡(から)まることもありました。
大学では習わないことばかりで…
針金細工の職人さんの方が…
よほど上手にできるかなぁ~
と思ったものでした。
■ ■
今から20年前くらいになると…
ワイヤーから、
プレートに代わりました。
最初は…
ステンレスのプレートとスクリュー(ねじ)でした。
それが…
チタン製に変わりました。
ワイヤーと違い…
穴を通す必要はなくなりましたが、
ねじが‘ばか’になることがありました。
■ ■
プレートとスクリューはドイツ製でした。
初期の製品には…
ねじの頭が折れてしまう不具合がありました。
このプレートとスクリューが高価でした。
小さなねじが一個5千円程度、
プレートが数万円もしました。
一度の手術で何枚か使ったので…
手術代より材料費が高くなりました。
■ ■
今は吸収性のプレートやスクリューもあります。
若い形成外科の先生には、
ワイヤー固定なんて…
知らない人もいると思います。
顔面骨骨折の手術で得た知識は、
顎の骨を切る手術に役立ちます。
美容外科で、
骨切手術が得意な先生も、
入門編は…
顔面骨骨折の手術だった方も多いと思います。
医学講座
顔面骨骨折④
私が医師になった30年前には、
交通事故による顔面骨骨折が、
かなりありました。
シートベルトも2点式で
(飛行機の座席ベルトのよう…)
古い車の後部座席にはついていませんでした。
タクシーに乗って…
ベルトをすることもありませんでした。
■ ■
自動車のフロントガラスも…
部分強化ガラスという、
壊れると…
粉々になるガラスでした。
交通事故になると…
その細かなガラス片で…
顔中キズだらけになりました。
エアバッグなんて…
もちろんありませんでした。
■ ■
30年の間に…
シートベルトは3点式となり、
急ブレーキを踏んだだけで、
自動的に巻き取られる
急ブレーキ連動シートベルト
なんてのもあります。
シートベルトは顔や命を守ってくれます。
■ ■
フロントガラスも、
2枚のガラスの間に
透明のビニール膜をはさんで…
強度を高めた…
合わせガラスになりました。
そのため…
事故に遭っても…
ガラス片によって
細かいキズがたくさんできたり、
失明がすることが減りました。
■ ■
30年前には、
形成外科医の数も少なかったので…
卒後6年目で…
地方病院のトップになりました。
私が一番顔面骨骨折の手術をしたのは…
釧路労災病院形成外科でした。
当時は土曜日も外来がありました。
唯一の休日は日曜日でしたが、
日曜日にも回診の当番がありました。
■ ■
病院の横に宿舎がありました。
救急車が来ると…
ピーポーピーポーの音が聞こえました。
明日は、
長い定期の手術があるので…
呼ばれないといいなぁ~
と思うときに限って…
病院から呼ばれました。
■ ■
顔の骨がグチャグチャになっていて、
骨だけではなくて…
涙小管(るいしょうかん)や
鼻涙管(びるいかん)という…
涙を流す管(くだ)が切れていることもありました。
骨の手術よりも、
この涙の管(くだ)の手術が大変でした。
グチャグチャのキズの中から、
管の端を見つけて縫うのが大変でした。
■ ■
1㎜もないような細い管に…
シリコンのチューブを通して、
その端を顕微鏡で縫いました。
この処置をしないと…
涙が流れないので…
ちょっとした風が当たっても、
すぐに涙で視界がぼやけます。
朝まで緊急手術で…
そのまま次の日の手術が…
午前9時開始なんてこともありました。
■ ■
形成外科専門医になるには、
必ず経験が必要なのが顔面骨骨折です。
さくらんぼさんからのご質問です。
骨格を変えると…
声が変わりますか?
骨格を変えても…
声は変わりません。
声の手術をしているのは、
元京都大学形成外科教授の
一色(いっしき)先生です。
日本では数少ない声の形成外科です。
医学講座
顔面骨骨折③
ボクシングの選手や、
アイスホッケーの選手には、
鼻が曲がったり…
鼻が変形した方が…
いらっしゃいます。
私はボクシング選手の、
手術をしたことはありませんが…
釧路労災病院形成外科に勤務していた頃…
よくアイスホッケーの選手を診ました。
■ ■
私:『鼻の骨が折れてますね』
私:『入院して手術になります』
私:『最低一週間はかかります』
選手:『困ります』
選手:『入院なんて絶対できません』
選手:『シーズンが終わるまで休み無しです』
私:『鼻が曲がって固まっちゃいますよ』
選手:『鼻なんてどうなっても構いません』
私:『鼻がつまることもありますよ』
選手:『あきらめます』
■ ■
スポーツ選手にとって…
シーズン中に休むことは、
選手を辞めろ!
と言われるようなもの…
と言った人もいました。
たかが鼻の骨ごときで…
休んでなんかいられない…
という人が結構いました。
応急処置程度では、
曲がったままのこともあります。
■ ■
固まってしまった鼻骨骨折を、
陳旧性(ちんきゅうせい)鼻骨骨折といいます。
鼻骨の薄い部分は、
足の爪より少し厚い程度です。
固まった鼻骨を
手術で治すのは大変です。
鼻の穴から切開をいれて、
鼻骨を剥離(はくり)します。
■ ■
骨が曲がってくっついているので…
数ミリの薄いノミを…
鼻の穴の切開線から入れて…
ノミでこんこんとたたいて…
再骨折させます。
CTなどの写真を見ながら…
左手の指でノミの先端と、
折れた鼻骨を触りながら…
助手にハンマーでこんこんしてもらいます。
■ ■
鼻の骨は意外と小さく、
こんこんしてもらうのも大変です。
こうして、
元のバラバラの状態にして、
鼻の内側から持ち上げて、
鼻をまっすぐにして…
鼻の中にガーゼを詰め込みます
どんな美人でも…
鼻はぱんぱんに腫れます。
■ ■
この陳旧性鼻骨骨折の手術は…
かなり悲惨な手術です。
術後は…
絶対に誰にも会いたくない状態です。
こんなに苦労して手術を受けても…
骨折をしてすぐに手術を受けた時より…
まっすぐにならないことがあります。
鼻骨骨折の手術は、
受傷から一週間以内に受けてください。
医学講座
顔面骨骨折②
横綱・朝青龍(29歳:高砂部屋)が、
初場所6日目後の平成22年1月15日夜、
行きつけの東京・六本木のクラブで泥酔。
週刊新潮によれば、
暴行を受けたのはクラブの責任者Aさんで、
鼻骨骨折など全治1ヶ月の重傷。
とネットに書かれていました。
■ ■
昨日の日記にも書いたように…
朝青龍でなくても…
鼻の骨は簡単に折れます。
全治1ヶ月の重傷というのも…
どの程度なのか…?
文面だけではわかりません。
そもそも‘全治’の定義が
あいまいなのです。
■ ■
朝青龍が本気で殴れば、
鼻骨骨折では済まず…
先日目のくぼみ③
に書いた程度の骨折になることもあります。
それほど顔の骨は弱いものです。
泥酔した横綱の手や腕が、
ちょっと当たっても…
骨折になることがあります。
■ ■
鼻骨骨折は、
ちょっとヒビが入った程度から、
鼻がぐんにゃり曲がるまで、
実に程度の開きがあります。
鼻骨の後ろには、
篩骨(しこつ)という、
篩(ふるい)のように…
あみあみになった骨があります。
■ ■
そのあみあみの骨の間から、
臭いが通り…
あみあみの上にある、
嗅神経(きゅうしんけい)が…
臭いを感じる仕組みになっています。
鼻篩骨骨折(びしこつこっせつ)という…
重症の鼻骨骨折になると…
嗅覚(きゅうかく)という…
臭(にお)いに障害が出ることもあります。
■ ■
鼻骨骨折になったら、
まず形成外科を受診してください。
正確な診断は、
3D-CT(すりーでぃー・しーてぃー)です。
骨折の程度によって、
手術する
手術しない
が決まります。
軽度のヒビでしたら
手術をしないこともあります。
■ ■
それでも腫れが取れるまでは…
数週間もかかることがあります。
‘全治’というのが…
腫れや内出血が取れて、
完全に元に戻るまでなのか…?
鼻血が止まって…
ある程度の腫れがあっても、
外出できる程度なのか…
CTで見て、
骨折線が消えるまでなのか…?
それによって期間は大きく変わります。
‘全治’に正確な定義はありません。
医学講座
顔面骨骨折①
顔の骨の骨折は形成外科です。
顔面骨骨折(がんめんこつこっせつ)といいます。
顔の骨の骨折で、
一番多いのが鼻です。
鼻の骨を鼻骨(びこつ)といいます。
■ ■
鼻の先端部分は軟骨です。
触るとやわらかいです。
鼻骨は目と目の間、
鼻の付け根の部分、
眼鏡が当たる部分だけです。
殴られたりぶつけただけで、
鼻の骨が折れます。
■ ■
鼻の骨が折れると、
ほぼ100%鼻血が出ます。
鼻血が出ても…
骨は折れていないこともあります。
骨が折れると音がします。
骨折のために腫れます。
直後から鼻が曲がって見えます。
■ ■
ボクシング、
ラグビー、
アイスホッケー、
野球、
いろいろなスポーツで…
鼻をぶつけて折れることがあります。
診断はX線写真や、
CTで行います。
■ ■
皮膚も切れていて
鼻骨が露出したような…
特別な場合を除いて、
鼻骨骨折の手術は…
メスを使わないで治します。
鼻の中に特殊な器械を入れて…
折れた骨を…
鼻の中から持ち上げます。
■ ■
鼻骨骨折の手術は、
骨折してから一週間以内が勝負です。
長く放置すると…
曲がったまま固まってしまいます。
固まってしまうと…
鼻の中から持ち上げても…
戻らなくなります。
■ ■
鼻の中へガーゼを入れて、
鼻の外には…
薄いギプスや
薄いプラスチックの板、
薄いアルミの板などを当てて、
折れた骨をサンドイッチにして…
一週間固定します。
■ ■
両方の鼻が詰まった状態…
つまり…
一週間も鼻をつまんだままの状態です。
ちょっと両鼻をつまんで…
唾をのみ込んでみてください。
耳が痛くなって苦しいです。
この状態が続きます。
■ ■
手術より、
鼻の詰め物
(北海道の一部ではツッペといいます)
が苦しかったとよく言われました。
どんなに美しいお嬢様でも、
鼻骨骨折の術後は悲惨です。
お見舞いには…
お願いだから来ないで!
と言いたくなります。
■ ■
申し訳ございませんが、
札幌美容形成外科では…
鼻骨骨折の手術は行っておりません。
札幌市内でしたら、
市立札幌病院形成外科
時計台病院形成外科
斗南病院形成外科をおすすめします。
ケガをしないようにしましょう。
医学講座
目の上のくぼみ④
目のくぼみはふつうの人にも起こります。
札幌美容外科をくぼみで受診する方に…
圧倒的に多いのが眼瞼下垂症です。
・ハードコンタクトレンズを長期間使っている。
・アトピー性皮膚炎などで目をこする癖がある。
・生まれつき目を開ける筋肉が弱い。
など…
さまざまな原因で眼瞼下垂症になります。
■ ■
瞼の筋肉(眼瞼挙筋がんけんきょきん)だけでは、
十分に目が開かないので…
眉を上げて黒目を出そうとします。
そのためにおでこに力が入り…
額にシワができます。
見にくいので…
顎を上げてものを見ようとします。
■ ■
朝起きてから…
夜寝るまで…
この眉上げ運動を繰り返しています。
そうすると…
肩が凝って首が痛くなったり…
偏頭痛が出たりします。
最初は…
がんけんかすいしょうなんて…
知らない人が大部分です。
■ ■
眼瞼下垂症の方は…
映画館の前の席が苦手です。
首を上向きにして、
ず~っと見ていると…
肩こりがひどくなります。
夜間の車の運転も苦になります。
自分の‘病気’に…
気付いていない人がたくさんいます。
■ ■
眼科のお医者さんにかかっても…
わからないことがあるようです。
眼瞼下垂症の診断は、
形成外科医が得意です。
眼科を受診する必要はありません
眼科的な問題がある方は、
こちらから眼科をご紹介します。
札幌美容形成外科では、
道庁前眼科をご紹介しています。
■ ■
ちょっとした目のくぼみでも、
手術で快くなると、
生活が変わります。
気分も変わります。
生命保険に加入していると
手術給付金がいただける…
こともあります。
必要なのは健康保険症とちょっとした勇気です。
ご予約をお待ちしております♪
手術前です
手術後4ヶ月です
医学講座
目の上のくぼみ③
私は形成外科医として、
30年近く働いています。
今は、体力的に無理ですが…
昔は12時間以上もかかる手術をしていました。
交通事故や労災事故で…
顔の骨がバラバラになってしまうほど、
‘壊(こわ)れる’ことがあります。
シートベルトの普及で…
交通事故による顔のケガは激減しました。
■ ■
顔の骨は、
脳を守る頭蓋骨と違って…
薄い骨でできています。
特に目を入れる骨…
[眼窩(がんか)といいます]は薄く、
鼻の近くの骨は、
卵の殻程度の厚さしかありません。
顔の骨は、
比較的簡単に折れてしまいます。
■ ■
下の患者さんは、
私が経験した顔面骨骨折で、
一番重症だった方です。
眼科の先生から…
左目(向って右側)は、
失明すると言われました。
失明する可能性もあったため、
左目の骨は治しませんでした。
■ ■
レントゲン写真に骸骨(がいこつ)が写っています。
これを3D-CT(スリーディー・シーティー)といいます。
20年前に、
この3D(スリーディー)を撮れるのは、
限られた施設しかありませんでした。
北大の先生にも応援に来ていただきました。
朝からはじめた手術が終了したのが…
午後11を過ぎていました。
顔の骨がすべて壊れていました。
■ ■
一回目の手術が終わって、
失明すると言われていた…
左目の視力が回復しました。
斜視も残っていました。
眼球が陥没していて、
目の上もくぼんでいました。
壊れていた骨[眼窩(がんか)]をなおし、
軟骨移植をしました。
■ ■
神経が麻痺していて、
斜視になっていました。
20年前に、
札幌医大眼科を受診しました。
担当してくださったのは
大庭先生でした。
私は…
この時にはじめてボトックスというのを知りました。
■ ■
大庭先生はボトックスで、
斜視を治してくださいました。
患者さんは、
ようやく正常にものが見えるようになりました。
ボトックスだけで治ったのには…
大変驚きました。
大庭(おおば)先生は、
昨年、札幌大庭眼科を開業されました。
札幌市西区八軒にあります。
今でも大庭先生に感謝しています。
受傷直後です
一回目の手術後です
目のくぼみを治しました。
斜視は大庭先生に
ボトックスで治していただきました。
医学講座
目の上のくぼみ②
膠原病(こうげんびょう)とか、
自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)は、
内科の病気です。
皮膚に症状が出ることもあります。
皮膚は皮膚科で治療をします。
女性に多い病気で、
20歳台の…
人生で一番キレイな時期に、
発症することがあります。
■ ■
とてもまれな症状ですが、
顔の形が変わることがあります。
頬の脂肪が減ってしまったり…
瞼(まぶた)の脂肪が減ることがあります。
少しずつ症状が進行します。
一番の治療は、
内科で原疾患(もとの病気)を治すことです。
強い薬を使ったり…
入院して治療することもあります。
■ ■
患者さんはとても心配です。
病気そのものに対する不安。
自分の顔がどうなってしまうの…?
という不安が、
病気の不安よりも…
強いことすらあります。
顔は女の命です。
はじめて、
内科の先生から相談を受けたのは、
市立札幌病院に勤務していた時でした。
■ ■
元市立札幌病院免疫血液内科部長で、
現在はこうの内科を
開業していらっしゃる、
河野通史(こうの_みちふみ)先生。
ご専門は、
膠原病
リウマチ
アレルギー免疫疾患
血液疾患など
私が最も信頼する内科医の一人です。
■ ■
河野先生は
日本内科学会(総合内科専門医・北海道地方会評議員)
日本リウマチ学会(専門医・評議員)
日本アレルギー学会(専門医)
日本血液学会(専門医・代議員)
日本臨床免疫学会(評議員)
日本臨床リウマチ学会(評議員)
北海道膠原病談話会世話人
という素晴らしいご経歴で、
現在も円山公園の近くでご活躍中です。
■ ■
河野先生から、
本間先生
内科的には落ち着いていて
病状も安定している患者さんが
目の上のくぼみを治したい
…っていうご希望なんだけれど…
形成外科で何とかできますか…?
とご相談を受けたのが20年前でした。
■ ■
形成外科では、
事故で残ったキズを治したり…
がんの手術後に変形した顔は、
何度も治していました。
内科的な病気で、
組織移植をしても…
また元に戻るのでは…?
という不安がありました。
■ ■
私は文献を調べたり、
北大形成外科の先輩に相談をして、
こうの先生にご紹介いただいた、
患者さんを手術しました。
手術してもまた悪くなるのでは…?
という不安があったので、
片目ずつ手術をしました。
症状が重かった…
左目から手術をした記憶があります。
■ ■
私の心配は杞憂(きゆう)でした。
手術した目はとても快くなり、
患者さんが…
早く反対の目もしたい!
と希望されるほどでした。
病気になって諦めていた目が治って…
お化粧もできるようになって…
患者さんの表情がとても明るくなりました。
■ ■
反対の目も手術をして、
その後、数年間経過観察をしました。
移植した組織は吸収されることもなく、
とても良好な経過でした。
内科的な治療がよかったこともありました。
内科の病気が治ったのではなく、
寛解(かんかい)という状態でした。
目のくぼみが治っただけで、
こんなに喜んでいただけるのだと…
今でもよく覚えています。
医学講座
目の上のくぼみ①
目の上の窪み(くぼみ)で…
悩む方は…
意外と多いものです。
目の上のくぼみで検索すると…
いろいろな美容外科のHPがヒットします。
目の上のくぼみを、
医学的には上眼瞼(じょうがんけん)陥凹(かんおう)
といいます。
■ ■
目の上といっても
正確には睫毛と眉毛の間です。
ここが窪む(くぼむ)原因には、
①瞼の脂肪が減ってしまう。
②瞼を上げる筋肉が衰える。
③眼窩(がんか)という目が入っている骨が壊れた。
などの原因があります。
■ ■
①の目の脂肪が減るのは、
子どもが熱を出してげっそりした時などです。
北海道では…
『目が引っ込んだ』と言います。
一重の子が二重になったりします。
エネルギー源として、
目の脂肪が消費されるためです。
私も小さい頃によくなりました。
■ ■
内科的な病気で、
脂肪が極端に減ってしまうこともあります。
体重が極端に減ってしまった時にも、
目がくぼむことがあります。
自己免疫疾患という病気で、
自分の脂肪を壊してしまうこともあります。
大きな病院の形成外科で
治療を担当したことがあります。
■ ■
②の瞼を上げる筋肉が衰えるのは、
眼瞼下垂症(がんけんかすいしょう)です。
眉が上がって…
額にシワができる…
黒目が半分くらい隠れている…
肩こりや、
偏頭痛がするなど、
眼瞼下垂症の症状があります。
■ ■
③の骨が壊れるのは、
大部分が事故による骨折です。
眼窩床骨折(がんかしょうこっせつ)といいます。
目の下の部分の骨の骨折を…
眼窩(がんか)ブローアウト骨折ともいいます。
目の内側(目頭側)の骨は、
卵の殻のように薄いので、
壊れることがあります。
ここの骨折を内壁(ないへき)骨折といいます。
■ ■
スポーツの時に…
他人の肘が目に当たり、
骨折してしまうこと。
ゴルフボールが目に当たって、
骨折してしまうこと。
冬道で転倒して骨折してしまうこともあります。
顔の骨の骨折は形成外科です。
さまざまな原因で…
目の上がくぼみます。
眼瞼下垂症による
目の上の
くぼみです
手術3年後です
昔の記憶
雪道の歩き方
今朝の北海道新聞に、
雪道での転倒事故についての記事がありました。
私は形成外科医として…
雪道で転倒して、
顔の骨を折った方の治療をしました。
一月は路面がツルツルになり
一年で一番危ない季節です。
■ ■
今から30年前。
家内が兵庫県西宮市から、
札幌へ来てはじめての冬でした。
冬の北海道へは何度も来ていましたが…
札幌で生活するのは…
はじめてでした。
北海道の人の歩き方
ちょっと違う…
…と歩き方に気付いたようでした。
■ ■
私は5歳の頃に…
ペルテスという…
大腿骨の病気になったため、
最初から歩き方が変です。
鉄人28号と言われたこともありました。
脚長差(あしの長さの違い)はありません。
おそらくコルセットという装具をつけて、
一年以上歩いたためです。
■ ■
北海道の人は、
滑らないように…
地面に足底をつけるように歩きます。
足の裏で、
地面をつかむ感覚で、
注意深く歩きます。
地面をこするように歩くという表現が、
適切かもしれません。
■ ■
脚を上げて、
かっこ良く歩くと、
思わぬところに氷の路面があって、
すってんころりんと転倒します。
転ばないように…
そろりそろりと歩くのがコツです。
小さい頃から、
何度も転んで痛い目に遭(あ)って、
雪道の歩き方を学びます。
■ ■
転倒事故が起こりやすいのは、
朝と夜です。
日中は不思議と少ないのです。
朝は早朝に冷え込んで、
路面がツルツルになります。
そのツルツル路面の上に、
粉雪が砂糖のように白くかかっていると…
氷の路面が見えないので危険です。
■ ■
夜は、
暗いので路面がよく見えません。
一番危険なのが交差点の横断歩道です。
交差点内は、
車道なのでロードヒーティングがありません。
交差点で車が発進するために、
スタッドレスタイヤが空転して、
路面をツルツルに磨きます。
そうすると…
雪がない歩道から車道に出た途端に…
すってんと転びます。
■ ■
北海道に住んでいる人でも、
転倒事故はあります。
滑りやすい道に気をつけて、
路面をよく見て歩くことです。
来月には、
札幌雪まつりもあります。
雪道は滑ります。
どうか気をつけて歩いてください。