医学講座
形成外科の進歩④【再建手術】
元キャンディーズの、
田中好子さんが55歳で亡くなりました。
私たちおじさん世代には、
アイドルだった女優さんです。
乳癌だったと報道されています。
再発を繰り返し、
病気と闘っていらっしゃいました。
すてきな女優さんで、
すてきな女性でした。
ご冥福をお祈りしています。
■ ■
形成外科は、
癌の再建手術をします。
乳癌の手術後に、
おっぱいを再建する手術もあります。
乳癌のように、
形を再建する手術もあれば、
癌を取ってしまった欠損を
埋めるための再建手術もあります。
■ ■
私自身が一番多く再建したのは、
口の中や、
咽頭(いんとう)と呼ばれる、
のどの奥の癌です。
癌を切除して、
穴が開いたままでは、
生活ができません。
穴をふさぐ手術が必要になります。
■ ■
この再建手術が、
30年の間にとても進歩しました。
私が学生の頃は、
胸や腕の皮膚を、
血管をつけたまま移動する手術でした。
DP(ディーピー)皮弁などという名前で、
おそらく今の医学生は、
見たことがない人もいると思います。
■ ■
再建手術が進歩したのは、
マイクロサージャリーという技術で、
細かい血管を縫うことができるようになったからです。
指を切断した時に、
再接着といって、
指をつなぐのにも使う技術です。
私も、
30台半ばから、
40台後半で大学を追い出されるまでは、
この再建手術をしていました。
■ ■
形成外科の進歩①~③の、
レーザーや毛の治療は、
薬や医療機器の発達で達成されました。
この再建手術は、
もともとあった顕微鏡を使う技術を、
形成外科に応用したものです。
遊離皮弁(ゆうりひべん)と呼ばれます。
以前にもご紹介しましたが、
この技術を世界ではじめて成功させたのが、
波利井清紀先生です。
■ ■
波利井(はりい)先生は、
東大を退官後に、
杏林大学で形成外科教授をなさっていらっしゃいます。
今も、
日本形成外科学会の重鎮です。
日本が生んだ世界の技術です。
これからも、
日本はこの分野で世界をリードできると思います。
医学講座
形成外科の進歩③【脱毛治療】
4月下旬というのに…
札幌では寒い日が続いています。
昨日に引き続いて、
形成外科の進歩について書きます。
毛が少なくて悩む人がいれば、
多くて悩んでいる人もいます。
男性にも多毛で悩む人がいます。
世の中うまくいかないものです。
■ ■
私が形成外科医になった30年前、
形成外科で脱毛を専門にしている先生は、
お一人しか覚えていません。
浜松の小林敏男先生です。
古い日本医学脱毛協会HPで
紹介されています。
当時の脱毛は、
針を使って電気で毛根を焼いていました。
■ ■
針に電気を通して焼くのです。
この時に皮膚も焼けてしまい、
脱毛後に赤くなったり、
色素沈着になったりするのが難点でした。
小林先生は、
針をコーティングして、
針先だけに通電する工夫をしていらっしゃいました。
■ ■
学会で、
針のコーティングを先から何㎜からにするとか、
どうしたらコーティングが剥がれない?
というご発表を聞いたことがありました。
一本いっぽん毛穴に針を刺して、
フットペダルを踏んで、
通電するという治療でした。
■ ■
今のレーザー脱毛と比べると、
とても時間がかかっていました。
熟練した看護師さんが施術しても、
通電する時には痛みがありました。
料金も高く、
両脇を脱毛すると、
数十万円もかかっていました。
■ ■
この脱毛を夢のように変えたのが、
平成9年(1997年)に、
輸入された医療用脱毛レーザーです。
株式会社ジェイメックの創業者で、
初代社長の森下純一さんと、
現社長の西村浩之さんが、
三井物産と米国から輸入されました。
■ ■
(平成9年)1997年2月2日に、
東京都渋谷区千駄ヶ谷の津田ホールで
札幌スキンケアクリニックの松本敏明先生が
日本医学脱毛学会を開催されました。
この時に、
米国製のレーザー脱毛機をはじめて見ました。
私の左腕と、
左すねに照射しました。
今でも毛が生えていません。
■ ■
当時のレーザー脱毛器はとても高価でした。
一ドル130円以上だったと記憶しています。
日本に輸入すると、
一台3,000万円以上しました。
札幌で一番早く導入されたのが、
皮膚科の山家英子先生でした。
私と武藤靖夫先生が、
札幌で2番目でした。
■ ■
今では、
レーザー脱毛があたりまえですが、
当時は、形成外科の偉い先生から…
レーザーで毛が抜けるわけがない!
絶対にまた生えると言われました。
その後、
レーザー脱毛機も進歩しました。
札幌美容形成外科で使っているのは、
冷却ガスが出るタイプのGentle Lase(キャンデラ社製)
という機種です。
■ ■
レーザー脱毛は驚くほど普及しました。
同じ機械を使っても、
照射方法によって効果が微妙に違います。
エステでも、
光脱毛やレーザー脱毛をしているところがあります。
厚生労働省は、
エステで毛乳頭を破壊する治療を禁止しています。
脱毛治療は、
信頼できる医療機関で受けてください。
医学講座
形成外科の進歩②【薄毛治療】
30年の間に形成外科は進歩しました。
昨日は胃潰瘍の薬について書きました。
形成外科が関係する薬で、
私が一番進歩したと思うのは、
毛生え薬です。
昔から…
毛生え薬を発明したら、
ノーベル賞と言われていました。
■ ■
一般の方に関係があり、
多くの人が悩んでいるのが薄毛です。
男性だけではなく、
女性でも、
たくさんの人が薄毛に悩んでいます。
薄毛治療の指針という院長日記を、
2010年4月14日に書いています。
日本皮膚科学会が提唱した指針です。
■ ■
プロペシアという商品名で、
フィナステリドという成分のお薬があります。
その他に、
ミノキシジルという成分のお薬があります。
プロペシアは内服薬。
ミノキシジルは外用薬です。
海外ではミノキシジルの内服もあります。
■ ■
プロペシアは男性用の薬で、
閉経後の女性が内服しても、
効果がなかったと、
プロペシアと女性薄毛という、
2010年4月12日の院長日記で紹介しました。
今年の日本形成外科学会では、
効果が認められた女性もいると聞きました。
女性の薄毛治療は、
これからもっと進歩しそうです。
■ ■
形成外科の技術で進歩した、
薄毛治療は、
何と言っても自毛植毛です。
高度な専門的な技術です。
素晴らしい結果が出ています。
美容外科のお医者さんが、
自毛植毛を受けています。
30年前には、
考えられなかった効果です。
■ ■
私がおすすめするのは、
何度もご紹介している、
横浜の今川賢一郎先生です。
美容外科医、
御用達の植毛医が、
ヨコビクリニックです。
私が知っているだけで、
何人もの偉い先生が手術を受けています。
■ ■
残念なことですが、
薄毛治療では、
おすすめできないところもたくさんあります。
TVで有名な女性が宣伝しているところは、
お金ばかりかかって、
とても推奨できません。
正しい知識を得て、
ふさふさになっていただきたいです。
医学講座
形成外科の進歩①【あざのレーザー治療】
私が形成外科医になって30年です。
この間に、
医学は進歩しました。
30年前は、
胃潰瘍で手術がありました。
今は、
薬が進歩したので、
薬局で胃潰瘍の薬が買えます。
胃潰瘍の手術は激減しました。
■ ■
形成外科も進歩しました。
昔は、
太田母斑という顔のあざを手術していました。
手術して、
皮膚移植をしても、
移植した皮膚にあざが再発しました。
手術痕も目立ちました。
■ ■
今は、
太田母斑に手術をすることは、
まずありません。
レーザー治療が、
健康保険で受けられます。
一度で消えるのではありませんが、
30年前と比べると…
画期的に進歩しました。
■ ■
レーザー機器のように、
機械が進歩したので、
治療法が変わることがあります。
機器があれば、
誰でも治療できるわけではありません。
病気のことをよく理解して、
正しく使う必要があります。
レーザーの専門医もあります。
■ ■
札幌美容形成外科では、
あざのレーザー治療は行っていません。
ご希望があれば、
専門医をご紹介しています。
形成外科の進歩について、
何回か書きたいと思います。
医学講座
学会出席の意義
形成外科専門医としての資格は、
毎年、学会に出席して、
勉強を続けなければ維持できません。
現在の形成外科専門医制度では、
学会出席や論文執筆により、
点数が得られます。
毎年、一定の点数を得ていないと、
専門医の更新ができません。
■ ■
私は、
日本形成外科学会と
日本熱傷学会の専門医です。
両方の専門医とも、
学会出席による点数がなければ、
専門医資格を失います。
どの学会も似たような制度です。
■ ■
私が認定医(昔は認定医といっていました)を取ったころは、
点数制度はありませんでした。
のどかな時代でした。
医師免許を取得してからも、
点数をゲットするために、
学会へ出るのは
何となくさびしい気もします。
■ ■
医師も年代によって、
学会出席の意義が違ってきます。
若い頃は、
学会を聴いていても…
わからないことだらけです。
あの先生は、
何を言っているのだろう…?
■ ■
専門医試験を受ける頃は、
形成外科のことを必死に勉強しています。
おそらく、
一番、広く浅く知識がある頃です。
自分で研究をするようになると、
同じ研究者同士が仲良くなります。
ノーベル賞を取るのとは違って…
秘密にすることもないですし、
共通の苦労や悩みがあります。
■ ■
お互いに論文を引用したりして、
研究者としての仲間意識ができます。
私が親しくしていだいている先生は、
昔、研究をしていた頃に
知り合った先生が多いです。
教授として活躍している人も、
いらっしゃいます。
■ ■
私くらいの年代になると、
学会に出席する意味は、
ふだん疑問に思っていることを、
直接、他の先生に聞けることです。
今回の学会でも、
信州大学の松尾清先生に、
眼瞼痙攣の患者さんのことを
教えていただきました。
■ ■
世代によって学会出席の意義は違いますが、
いくつになっても新しいことに興味を持って、
勉強をつづけることが、
大切だと思います。
点数のためではなく、
形成外科が好きだから、
学会へ出ると楽しいです。
医学講座
第54回日本形成外科学会(徳島)⑦
今年の学会運営は、
ほんとうに大変だったと思います。
震災で招待講演のキャンセル。
懇親会の中止→返金。
会長の中西秀樹先生や、
事務局長の橋本一郎先生に、
心から感謝いたします。
■ ■
今年の学会で感じたことを書きます。
bFGF(ベーシック・エフ・ジー・エフ)という薬があります。
商品名をフィブラストスプレーといいます。
やけどや、
キズの治りを、
劇的に改善する薬です。
日本の科研製薬が販売しています。
■ ■
このフィブラストスプレーを、
若返りの治療に使う発表が増えています。
自分の血液から取り出した成分に、
bFGFを混ぜて使う治療や、
bFGFを薄めて使う治療です。
劇的に改善した例があります。
■ ■
子どものやけど治療に使うと、
今までの治療にない効果が得られます。
痕(あと)が残りそうなやけどでも、
キレイに治ることがあります。
やけどに使った発表や論文は、
たくさん出ています。
エビデンス(根拠)もあります。
■ ■
私も、子どものやけどに承認が下りたら、
是非使いたいと思います。
残念なことに、
このフィブラストスプレーは、
やけどに使うことは、
正式に認められていません。
厚生労働省の認可がないからです。
■ ■
まして、
美容目的に使うことは、
認められていません。
美容目的で、
皮膚に注射して使うことは、
厚生労働省はもちろん、
メーカーも認めていません。
添付文書にも書いてあります。
■ ■
私は、
この薬で、
もし万一副作用が出たら…
訴訟になったら…
大変なことになると懸念しています。
美容医療に使う薬は、
100%安全でなくてはいけません。
■ ■
確かに効果はあります。
将来、
bFGFが美容医療の主流になるかもしれません。
私は…
臆病者なので…
形成外科学会や、
美容外科学会で、
おおやけに論文として、
エビデンスが出るまでは使いません。
医学講座
第54回日本形成外科学会(徳島)⑥
私は毎年、日本形成外科学会や、
日本美容外科学会へ出席しています。
真面目に学会へ出ていると思います。
形成外科が好きで、
発表を聴くのも楽しいです。
知り合いの先生と会う楽しみもあります。
■ ■
学会へ出て思うことは、
私以上に…
形成外科が大好きで、
毎年、熱心に学会へいらっしゃる先生が、
たくさんいらっしゃることです。
長老級の先生は、
私の恩師である大浦武彦先生、
ブログを毎日更新していらっしゃる、
塩谷信幸先生。
■ ■
今も京都で開業していらっしゃる、
冨士森良輔先生。
冨士森先生は、
学会の最前列で、
いつもご意見番のように、
しっかりと発言されます。
先生の一言がとても勉強になります。
とてもお元気です。
■ ■
今日は、
元関東労災病院にいらした、
伊藤仁(いとうまさし)先生にもお会いしました。
よく通る大きな声で、
しっかり発言なさいます。
自分も歳をとったなぁ~
と弱気になることもありますが、
大先輩を見るとまだまだ働けそうです。
■ ■
学会で4日間も休んだので、
今日から仕事をしています。
来年の日本形成外科学会は、
東京であります。
それまでに復旧していて欲しいです。
医学講座
第54回日本形成外科学会(徳島)⑤
今年の日本形成外科学会で、
美容レクチャーという企画がありました。
美容外科を始めようとしてる形成外科医への助言
というタイトルで、
蘇春堂(そしゅんどう)の
新冨芳尚(しんとみよしひさ)先生が、
一時間の講演をしてくださいました。
■ ■
新冨先生は、
北大形成外科の先輩です。
私より12年上です。
手術が上手な先生です。
手術用顕微鏡を使って、
美容外科手術をはじめられた先生です。
■ ■
新冨先生の講演は、
中西会長をはじめとして、
日本全国の高名な形成外科医が、
熱心に聴いていました。
もちろん、
私たちおじさん医師も、
若い先生も熱心に聴いていました。
■ ■
とても内容が濃い、
充実した、
素晴らしい講義でした。
講演の要旨は、
いかに患者が求めたとしても、
その人に合わない目や、
合わない胸は作ってはいけない。
■ ■
手術をすれば、
血は出るし…
腫れるし…
切れば痛みも出る…
回復までの時間もかかる…
そういうことをしっかり患者さんに説明して、
手術をしなさい。
■ ■
新冨先生のお話しは、
形成外科から美容外科になられて…
長い間に得られた貴重な助言でした。
昔、北大形成外科で、
よく私たちに言われていたのを思い出しました。
新冨芳尚先生ありがとうございました。
医学講座
第54回日本形成外科学会(徳島)④
徳島から学会報告です。
今年の形成外科学会は、
第1会場から、
第6会場まで6つに別れています。
その他に、
ポスター展示と、
機器展示があります。
■ ■
一人で全部聞くことは、
到底できません。
私は、
美容外科や、
眼瞼、
乳房という、
日常診療に関係する発表を聞きます。
■ ■
形成外科学会でも、
美容外科の会場は満席で、
立ち見が出るほどです。
それだけ、
美容外科に興味がある先生が
多いということです。
■ ■
眼瞼(がんけん=まぶた)の発表は、
信州大学からたくさん出ていました。
松尾清先生をはじめとして、
信州大学形成外科には、
たくさんの瞼の研究者がいらっしゃいます。
眼瞼下垂と五十肩の関係についての
発表がありました。
■ ■
美容外科の発表を見ると、
形成外科出身の美容外科医でも、
先生によって大きく違います。
私のように、
超ナチュラル派から、
そこまでするの…?
…と感じる先生まで、
実にさまざまです。
■ ■
美容外科医同士で、
手術方針について、
激論になることもあります。
私たちは、
どの先生がどんな手術をするか、
だいたいわかります。
一般の方も、
美容外科医を選ぶ前に、
HPなどの症例写真で、
どんな先生がよく調べてください。
未分類
第54回日本形成外科学会(徳島)③
今日から学会です。
徳島は快晴で、桜が満開です。
コートも不要であたたかです。
東北の震災が、
四国ではうそのようです。
■ ■
今回の学会は、
震災の影響を受けています。
海外からの招待講演は大部分が中止。
今日のカリフォルニア大学、
サンタバーバラ校、
中村修二先生だけ、
特別講演にいらしてくださいました。
■ ■
中村先生は、
徳島大学工学部のご出身です。
青色LEDの研究で有名な先生です。
米国政府から、
日本への渡航を止められたのに、
中西会長の直訴でいらしてくださいました。
■ ■
中村教授のお話しでは、
米国のCNNなどでは、
日本全体が放射能に汚染されていて、
危険な国と報道されているそうです。
NHKの報道とは、
雲泥の差があるそうです。
■ ■
道理で、
外国人が東京から逃げ出すわけです。
東京のホテルは、
外国人がいなくなってしまい、
大変なことになっているそうです。
CNNの報道が正しいのか、
日本政府がうそをついているのか?
私は日本政府を疑います。
■ ■
学会の内容とは関係ないことですが、
今日、一番気になったことでした。
私は、
眼瞼下垂症を治していただいたので、
学会の前の席でも、
スクリーンを見るのが楽になりました。
発表内容については、
明日以降にお知らせいたします。