医学講座

名人の一言

 十仁系日本美容外科学会(JSAS)は、
 形成外科系日本美容外科学会(JSAPS)とは、
 参加する医師の顔ぶれが違います。
 中国から、
 たくさんの女性医師が参加しています。
 目に余る行為もありますが、
 貪欲に技術と知識を学ぶ目線はすごいです。
      ■         ■
 韓国の先生は、
 米国形成外科学会誌(PRS)に掲載される論文を書くような、
 素晴らしい先生も参加されます。
 鼻の手術で有名な、
 シミアンクリニック
 心美眼の、
 鄭東學ジョン・ドンハク)先生
 (英語表記は、Dong-Hak Jung先生)も、
 毎年必ず出席されています。
      ■         ■
 十仁系日本美容外科学会(JSAS)に参加して感じることです。
 私は形成外科医で、
 美容外科医じゃないな。
 まだまだ修行が足りないな。
 よくこう感じます。
 美容外科医には、
 十仁スピリットが大事だと(私は)思います
      ■         ■
 美容外科スピリット
 2007年9月29日の院長日記です。
 美容外科は技術だけでは食べて行けません
 お客様のニーズに合わせた手術や治療を提供できるのが
 美容外科だと日高先生から教えていただきました。
 私はまだまだ修行が足りません。
 横柄な形成外科医のままです。
 自分の考えに合わない手術はお引き受けしていません。

      ■         ■
 名人の言葉は重いです
 たとえば、
 患者さんを自分の彼女だと思う
 2015年6月9日の院長日記です。
 私の生涯で一番記憶に残る特別講演、
 福田慶三先生の
 美容外科医の心得3段活用は、
 巨匠と呼ばれる、
 著名な先生へのインタビューでした。
 東京、大阪、岐阜へわざわざ行かれて、
 福田先生みずからインタビューされました。
      ■         ■
 ためになることが満載でした。
 一番印象に残ったのが、
 ノエル銀座クリニック院長の
 保志名勝先生のお言葉でした。
 保志名先生は、
 どんなことがあっても、
 患者さんを怒ったりしないそうです。
      ■         ■
 福田先生が、
 『どうして怒らないのですか?』と質問されました。
 保志名先生のお言葉は、
 『すべての患者さんを、自分の彼女だと思ったら、怒れないじゃないですか

 これをお聞きして、
 私はすごいと思いました。
 私は彼女でも奥さんでも怒ります
 人間性の問題かと思ったら違いました。
      ■         ■
 福田先生:
 『どうやって怒らないようになったのですか?』 
 保志名先生:
 『十仁で鍛えられました

 私:なるほど!と思いました。
 十仁スピリット
 2008年5月12日の院長日記です。
      ■         ■
 形成外科出身の(自称)美容外科医は、
 技術が売り物でも、
 なかなか…
 すべての患者さんを、
 ♡自分の彼女♡
だと、
 思えないことも多くあります。
 私は、
 すべての患者さんを、
 自分の家族だと、
 思っています。

 家族だから怒りもしますし、 
 できないものはできないと言います
      ■         ■
 持って生まれた性分だから、
 もう還暦も過ぎているから、
 こんなガンコな性格は直せないと思います。
 保志名先生のように素敵な美容外科医に、
 自分の彼女だと思って
 手術をしていただくのは、
 女性にとって幸せなこと
だと思いました。
      ■         ■
 十仁系日本美容外科学会(JSAS)に参加すると、
 こんな名人の一言を聞くことができます。
 学会の討論の間に、
 ノエル銀座クリニック院長の
 保志名勝先生が何気なく話された言葉の中に、
 美容外科医ならではの苦労と、
 たくさんの経験から生まれたノウハウがありました。
 ぜひ来年5月の第105回日本美容外科学会(JSAS)に参加してください。
 今年と同じ赤坂のANAインターコンチネンタル東京で開催されます。
 学会長は城本クリニックの森上和樹先生です。

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医学講座

日本美容外科学会(JSAS)へのお誘い

 2日間の第104回日本美容外科学会(JSAS)が終わりました。
 学会長の聖心美容クリニック統括院長、
 鎌倉達郎先生に感謝しています。
 ライブサージェリーもあり、
 活発な討論もあり、
 いい学会だったと思います。
 最終的な参加者は817人だったと、
 鎌倉会長が最後の挨拶でお話しされました。
      ■         ■
 何度も書いているように
 日本には、
 同姓同名の、
 日本美容外科学会が2つあります
 2つの学会を一つにしようという動きがありましたが
 残念なことに無くなってしまいました。
      ■         ■
 2006年12月1日の院長日記に書いた私の文章です。
 私はもともと形成外科医でしたから最初に形成外科系の日本美容外科学会(JSAPSに入会いたしました。偉い形成外科医の中には十仁系日本美容外科学会を毛嫌いする先生がいらっしゃいます。私もずっと十仁系学会には入ってはいけないと思っていました。
 平成14年8月に中央クリニック札幌院の院長にさせていただきました。この時に十仁系日本美容外科学会に入会しました。形成外科系にはチェーン店の美容外科医になってはいけないという暗黙のルールのようなものがありました。私のように大学の形成外科講師からチェーン店の店長になった例はマレでした。
 はじめて十仁系学会に入り、上海で行われた国際学会で発表しました。この時に十仁病院院長の梅澤文彦先生が私のところへいらしてくださり「先生ようこそこの学会にいらしてくださいました」とおっしゃってくださいました。少し肩身の狭い思いで参加した私はVIPの梅澤先生から歓迎されてとても嬉しく思いました。上海の学会では韓国や台湾、中国の先生と親しくなりました。日本に帰ってから韓国の鄭東學ジョン・ドンハク)先生(英語表記は、Dong-Hak Jung先生)から韓国へ講演に来てくださいとメールをいただきました
 形成外科系の日本美容外科学会は十仁系学会の会員が発表しようとしてもなかなか歓迎してくれない風潮があります。確かに学術的には形成外科系の方が優れた先生もいらっしゃいますが、十仁系学会も積極的にライブサージェリーという手術の実況中継を取り入れて活発に活動しています。米国や韓国など海外でも形成外科系と非形成外科系学会の仲が悪いところが多いようです。日本では逆に2つの日本美容外科学会を仲良く1つにしたいと考えている先生がいらっしゃいます。私もいつの日か2つの学会が1つになればよいのに・・・と考えています。

      ■         ■
 私は毎年2つの日本美容外科学会に参加しています。
 私のように形成外科出身で、
 2つの日本美容外科学会に参加する医師が増えています。
 こちらの学会(JSAS)には、
 もともと十仁病院で、
 美容外科をずっとなさった先生がいらっしゃいます。
 ためになる内容があります。
 開業医の本音が聞けます
      ■         ■
 日本形成外科学会とは違った雰囲気です。
 確かに、
 海外からの参加者で、
 お行儀のよくない先生がいます。
 撮影禁止なのに、
 iPhoneで動画まで撮る人もいます。
 文化の違いだと感じます。
 それでも参加すると勉強になります。
 ぜひ形成外科の先生にも参加していただきたいです。

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医学講座

第104回日本美容外科学会(JSAS)東京②

 第104回日本美容外科学会(JSAS)の報告です。
 日本人だけではなく、
 韓国、
 台湾、
 中国、
 ベトナム、
 米国、
 欧州、
 たくさんの先生がいらっしゃいました。
      ■         ■
 同時通訳も入っています。
 でも、
 やはり英語の発表は、
 英語で聴いて、
 英語で質問するに限ります。
 同時通訳の女性はベテランですが、
 なかなか(医学の)細かいことまではわかりません。
      ■         ■
 学会に参加するたびに、
 英語ができなかった私を、
 英語好きにしてくださった、
 NHKラジオの、
 杉田敏先生に感謝しています
 毎日、杉田先生の声をお聞きして、
 耳が退化しないように訓練しています
 これが61歳でも英語で質問できるコツです。
      ■         ■
 昨日は、
 米国のSteven. R. Cohen先生の発表をお聞きしました。
 私がbFGFのことを質問しました
 これはとてもPoliticalな問題を含むと言われました。
 Cohen先生ご自身は、
 脂肪注入はするけれど、
 bFGFはお使いにはならないそうです。
      ■         ■
 会場の先生にも質問しました。
 ヴェリテクリニックの福田慶三先生は、
 bFGFの濃度が問題。
 福田先生は、
 bFGFを使わないと発言されました。
 確かに効果があることは認めます。
 ただ膨らみ過ぎた時にどう対処するか?
 ここが問題です。
      ■         ■
 夜は懇親会がありました。
 私が尊敬する、
 美容外科の師、
 高須克弥先生とお会いできました。
 高須先生はお元気です。
 またいつか、
 高須先生が2つの日本美容外科学会を、
 一つにまとめてくださる日を期待しています。
20160518

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医学講座

第104回日本美容外科学会(JSAS)東京①

 第104回日本美容外科学会(JSAS)に参加するため、
 昨夜、東京に来ました。
 部屋に入ってしばらくすると、
 突然iPhoneから緊急地震速報のけたたましい音がしました。
 ホテルの緊急全館放送が流れました。
 このホテルは安全ですと話す男性の声が、
 とても緊張していました。
      ■         ■
 EVも一時停止しましたが、
 約10分くらいで復旧しました。
 4月に福岡であった日本形成外科学会でも、
 熊本地震がありました
 学会でホテルに泊まることも多いです。
 大地震に備えて、
 非常階段を確認することにします。
 毎日階段で鍛えているので
 階段で非難することには自信があります
      ■         ■
 今日と明日の日本美容外科学会は、
 十仁系と呼ばれる美容外科学会です。
 日本には、
 同姓同名の、
 日本美容外科学会が2つあります
 2つの学会を一つにしようという動きがありましたが
 残念なことに無くなってしまいました。
      ■         ■
 今年の学会は、
 聖心美容クリニック統括院長の、
 鎌倉達郎先生が会長です。
 会場は、
 赤坂のANAインターコンチネンタル東京です。
 2日間で最新の情報を仕入れて帰ります。
 韓国の先生や日本の先生と情報交換をしました。
 同時通訳レシーバー無しで英語の発表を聞けて
 英語で質問できるのはいいです。
 若い先生にNHKのビジネス英語をすすめます

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医学講座

メール相談への礼儀

 私は自他共に認める、
 ばかが10個くらいつく、
 くそ真面目な人間です
 曲がったことは大嫌いです。
 人をだますのも大嫌いです。
 自分もだまされたことがあります
 
      ■         ■
 この院長日記をはじめてから、
 今年10月で丸10年になります。
 よく続けたものだと、
 自分でも感心しています。
 HPを作ってくださった、
 愛知県豊橋市の
 ウェブデザインオフィスクロスロード
 須崎克之さんのおかげです。
 感謝しています
      ■         ■
 メール相談へのお願い
 2015年7月30日の院長日記です。
 最低限必要なのは、
 いつ、
 どこで、
 どんな治療を受けたか?
 お名前もフルネームで、
 住所も電話番号もしっかり記載してください。

 そうしないと正確に回答できません。
      ■         ■
 メールの送信は、
 相談フォームからその都度送信してください
 そうすると、
 自動返信メールが届きますし、
 セキュリティーがしっかりしたメールになります。
 もし心配なことがあれば、
 治療を受けたクリニックに、
 何という薬を、
 どれだけ注射したか聞いてください。
      ■         ■
 法律で定められたカルテの保存期間は5年間です。
 どんなクリニックでも、
 法律で、
 治療内容を記載する義務があります。
 自分がどんな治療を受けたのか?
 何という薬を注射してもらったのか?
 正確に知っておくことが大切です。
 ネットの情報にはうそもたくさんあります
 注意してください。

      ■         ■
 困るのが、
 次のようなメールです。
【お名前】:はなこ
【性別】:女性
【年齢】:22
【ご住所】:〒 0600001 北海道札幌市
【電話番号】:060-000-0000
【メールアドレス】:hanakokomattemasu@gamail.com
【ご相談項目】:眼瞼下垂
【ご相談内容】:自分の目が眼瞼下垂と他の病院で言われました。その病院では保険適応にならないと言われました。保険適応になるかどうか写真で見てもらえますか?

      ■         ■
 メールでいくら相談してもらっても、
 実際に診察をしてみないとわかりません。
 北海道以外からの相談メールも多数届きます。
 どこの病院で手術を受けたのか?
 今までに何回手術を受けたのか?
 詳しくわからなければ正確な回答はできません。
 せめて姓名くらいは入力するのが、
 最低限の礼儀だと私は思います。
      ■         ■
 奥さんと喧嘩しながら返信することもあります
 『メールの返事書いているから静かにして!』
 『考えているから黙っていて!』
 家内も負けじと反論します。
 『あなたは四六時中仕事をしている。』
 『家庭の団欒(だんらん)というのがない。』
 『じゃぁ、あんた代わりに書いてょ!』
      ■         ■
 私は働き者の頑固おやじです。
 メールのご返事も…
 ためてしまうと書けなくなるので、
 時間がある時に…
 すぐに、ご返事をするようにしています。
 返事に困るメールもいただきます。
 できる限り、
 親切にご返事を書くようにしています。
 最低限の礼儀はわきまえて送信してください。
 そのほうがいっぱい返信を書いてもらえます
20150303-1

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医学講座

ケナコルトの注射2016

 毎日、私のつたない院長日記を読んでいただきありがとうございます。
 少しでも役立つこと
 ネットで検索しても出ていないこと。
 どれを信じたらいいかわからなくて
 いろいろ調べて、
 とうとう私の院長日記にたどり着いた方
 少しでも役立つ
 有益な情報
 …を提供するように努力しています。
      ■         ■
 今までに受けた相談の中で、 
 困るのが、
 bFGF注射による後遺障害です。
 第37回日本美容外科学会(東京)④
 2014年9月5日の院長日記です。
 自分の血から採った血小板を注射して、
 シワを取ったり若返りをする治療です。
 b-FGFが入ったフィブラストスプレーを混ぜると、
 劇的な効果が出ます
      ■         ■
 このフィブラストスプレーを混ぜることについて、
 積極的に治療をすすめる先生と、
 私のように超慎重で、
 今のところ絶対にしないという医師がいます
 良い結果だけを見ると、
 実にすごいと思います。
 問題なのは、
 注射後に予想以上に膨らんでしまったり、
 『しこり』が残る方がいることです。
      ■         ■
 膨らんでしまった方を、
 【簡単】に治す方法がありません。
 これが慎重派が使わない理由です
 b-FGFを入れるか入れないか?
 入れたものを使うのだったら、
 患者さんにはどう説明して、
 副作用にはどう対処するのか?
 学会として結論が出ることを期待しています
 残念なことですが、
 2016年5月現在、日本美容外科学会としての結論は出ていません
      ■         ■
 この後遺障害に対して、 
 ケナコルトという薬を注射してほしい
 注射しようと思う
 …そんな相談を受けることがあります。
 申し訳ありませんが、
 札幌美容形成外科では実施していません。
 理由は次の通りです。
 注射薬による失明
 2015年10月21日の院長日記です。
      ■         ■
 2015年10月21日
 私が不思議に思うのが、
 レディエッセ(Radiesse)という注射で
 鼻を高くしようと思った女性が、
 失明までしているのに、
 マスコミが一向に報道しないことです。
 ふつうの日本国民は、
 鼻を高くする注射で失明したなんて、
 信じられないと思います。
      ■         ■
 美容形成外科のHPで、
 レディエッセ(Radiesse)という注射で失明した人がでたので、
 この注射の取り扱いを止めました

 …と書いているのは、
 札幌美容形成外科の他にはあまり見ません
 まして、
 謹告
 当院で鼻を高くする目的で、
 注入治療を受けた患者さんが、
 皮膚が壊死になってしまいました。
 失明してしまいました
 そのため鼻の注入治療を今後は行いません。

 …というような文言はどこにもありません。
      ■         ■
 事故を起こした美容外科では、
 性懲りもなくなんちゃっての先生が、
 他の注入剤で鼻を高くしましょう
 …というようなブログまで書いています。
 失明というのは、
 重大な医療事故なのに、
 厚生労働省も、
 国民生活センターも、
 消費者庁も、
 注意喚起をしていません。
 残念なことです。
      ■         ■
 経験を積んだ医師は、
 注射剤によって失明することを知っています。
 形成外科でケロイド治療によく使う、
 ケナコルトAという注射薬があります。
 皮内用関節腔内用
 水懸注50mg/5ml
 トリアムシノロンアセトニド水性懸濁注射液

 …という薬です。
 形成外科医なら誰でも知っています。
      ■         ■
 この薬の
 重大な副作用
 10)失明、視力障害 
 頭頸部(頭皮、鼻内等)への注射により、網膜動脈閉塞が生じ、失明、視力障害があらわれたとの報告があるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。

 これが書いてあることを知っている形成外科医は、
 意外と少ないと思います。
 実際に、
 眉の近くに注射をして失明したという例があります。
      ■         ■
 ネットで検索すると、
 耳鼻科の先生が書かれた文章があります
 愛媛県西条市大町520-8の
 篠原内科外科耳鼻科
のHPです。
 ここに、
 医事問題委員の方のコメントです。
 「ケナコルトに関して医事問題委員会からの注意喚起が出されていますので、ご報告しておきます。
 ケナコルトの下鼻甲介粘膜注射で失明による事例が、
 九州で1件、近畿で数件あり、危険性の高い治療法と報告さています。
 患者さんの安全を考えるなら、決して行うべき治療法でないとの見解になっています。

 …と書かれています。
      ■         ■
 形成外科でケロイドに注射するのは問題がないと私は考えます。
 ただ、
 目の近くにケナコルトを注射する時には、
 この網膜動脈閉塞が生じ失明に気をつける必要があります。
 レディエッセ注射による失明も、
 このケナコルトによる、
 網膜動脈閉塞が生じ失明と同じ仕組みです。
 台湾の事故がネットに掲載されてから、
 私は注意して使用していました。
 札幌美容形成外科では失明事故はありません。 
      ■         ■
 bFGFの後遺障害を治すのは難しいです。
 私のところにもbFGF注射後の相談が来ます。
 申し訳ありませんが、
 注射してもらったクリニックに相談してください。
 当院では治療できません

 …と回答しています。
 責任を持って治せないからです
 bFGFを使った治療を受けたい人や
 後遺障害で困っている人には、
 福岡の飯尾形成外科をおすすめします。
 信頼できる先生です

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医学講座

ある日突然_薬でショック⑤

 このシリーズの最終回です。
 局所麻酔薬のキシロカインで、
 これほど重篤な症状になった人を、
 はじめて知りました。
 あらためて、
 日常診療で注意しなくてはいけないと痛感しました。
 記事を書いてくださった、
 朝日新聞社の鍛治信太郎記者に感謝しています。
      ■         ■
 平成28年5月13日金曜日、朝日新聞朝刊の記事です。
 (患者を生きる:3051)ある日突然_薬でショック⑤情報編_アレルギーの特定検査を
 アレルギー反応は、体に入ってくる異物を攻撃して排除する免疫機能が過剰に働いて起きる。原因となるのは食物や花粉、ダニなどさまざまで、薬も含まれる。
 同志社女子大薬学部の杉浦伸一(すぎうらしんいち)教授は「どんな薬でも原因になりうる」と話す。
 日本アレルギー学会のウェブサイトによると、抗菌薬や消炎鎮痛薬、かぜ薬、抗けいれん薬、痛風治療薬はアレルギーを起こしやすく、また、重症になる恐れもあるので注意が必要という。高血圧や糖尿病の治療薬、造影剤、局所麻酔薬、抗がん剤などでも起きることは少なくない。症状で最もよくみられるのは皮膚症状で、じんましんや湿疹といった軽症から、体中がただれる重症まである。ほかの症状には呼吸器障害や肝障害、腎障害などもある。
 連載で紹介した兵庫県の女性(49)は局所麻酔薬で「アナフィラキシー」を起こした。これは即時型のアレルギー反応で、呼吸困難、発疹、吐き気、腹痛など全身に症状が現れる。特に、血圧の低下や意識障害を伴う場合は「アナフィラキシーショック」と呼ばれ、命にかかわる。
 学会のアナフィラキシーガイドラインによると、アナフィラキシーショックによる死亡の原因は、医薬品が最も多かった。次いで、ハチによる刺し傷、食物、血清と続く。血清は、毒ヘビにかまれた時などの治療に使われる。
 アナフィラキシーショックの治療では、血圧を上げたり、気管を広げたりする作用のあるアドレナリンを注射する。効果の持続時間が短いので、症状が続く場合はアドレナリンを追加する。酸素吸入や食塩水の点滴、抗アレルギー薬なども使う。
 ショックを起こさないようにするには、どうすればよいのか。埼玉医科大の土田哲也(つちだてつや)教授は「薬剤に対するアレルギーは一度なるとその体質は一生続くと考えた方がよい。対策はその薬を使わないようにすることに尽きる」と語る。
 アレルギーのある薬をカードに書いてふだんから健康保険証などと一緒に持ち、診療を受けるときに医師や薬剤師に必ず見せるようにする。そのためには、どの薬にアレルギーが疑われるのか検査で調べる必要がある。
 (鍛治信太郎)
20160514

アナフィラキシーの主な症状/アナフィラキシーショックによる死亡数
(以上、朝日新聞より引用)

      ■         ■
 上の表を見て驚いたのは、
 2001年~2013年までの、
 アナフィラキシーショックによる死亡数。
 医薬品323人、
 ハチ刺傷266人です。

 13年間で、
 ハチに刺されて266人も亡くなっていることを、
 恥ずかしながら知りませんでした。
      ■         ■
 なっちゅんさんからコメントをいただき、
 調べたらこちらのページがヒットしました
 蜂に刺されたときの症状と対策
 蜂に刺されたときの症状には、刺された場所のまわりにだけ現れる局所症状と、体中にでる全身症状とがあるので、症状をよく観察し、直ちに緊急処置を行うこと。
 軽い全身症状では、顔や体が酒を飲んだ時のように赤くなり、全身にかゆみが起こり、なんとなくだるい、苦しいといった症状があらわれます。
 中ぐらいの全身症状では、軽い全身症状に加えて、喉がつまったような感じがして胸苦しくなったり、口が渇き、口のなかがしびれたような感じがします。また、腹痛、下痢、吐き気を起こしたり、さらに頭痛、目まいがしたり、全身がむくんだりします。
 重症症状では、息をするのも苦しくなり、物を呑み込めなくなり、声がしわがれて、全身の力が抜け、その場にうずくまってしまいます。また、目が見えなくなったり耳が聞こえなくなったりして、意識がはっきりしなくなったりしますので、一刻を争って緊急処置をとらなければ、死亡してしまいます。
 林業・木材製造業労働災害防止協会資料から引用

      ■         ■
 刺す蜂の中で怖いのは、
 スズメバチアシナガバチで、
 夏から秋がピークで危険です。

 こんなことも知りませんでした。
 アナフィラキシーはこわいです。
 アレルギー体質の人は、
 くれぐれも注意してください。
 この連載を書いてくださった、
 朝日新聞社の鍛治信太郎記者に感謝しています。

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医学講座

ある日突然_薬でショック④

 平成28年5月12日(木)昨日の朝日新聞朝刊の記事です。
 (患者を生きる:3049)ある日突然_薬でショック④_直接ふれる作業は回避
 兵庫県の准看護師の女性(49)は昨年10月、勤務先の総合病院で過って麻酔薬の瓶を床に落として割ってしまい、薬を吸い込んでアレルギーのショック症状を引き起こした。
 3時間ほどで意識がはっきりしたが、救急科の部長(63)は「24時間、経過観察をする」と帰宅を認めなかった。ショックで腎臓などの臓器に障害が起きている可能性や、症状が数時間後にぶり返すことを心配したためだ。女性は大事をとって、集中治療室(ICU)に1日入院した。
 退院した後も、だるさが残り、食欲がなかった。1週間ほど仕事を休んだ。
 出勤すると、上司の師長に呼ばれた。
 「この部署は危険だから、麻酔薬をあまり使わない内科に研修に行ってみてはどうでしょうか」
 当面の所属は内視鏡検査部門のままにして、内科で働くことと理解した。検査部門の同僚たちも女性の薬剤アレルギーのことは知っていた。それでも、ショック症状で倒れる事態が起きてしまい、責任を感じているようだった。
 「周りの人たちに気を使わせて、申し訳ない」と、女性は応じることにした。
 内科での仕事は点滴や採血などが主だった。約1カ月後、内科へ正式に異動となった。
 ショックで倒れるまでは、「自分が病気やけがをしたときに、アレルギーを起こす薬を使わなければいいだけ」と軽く考えていた。女性は麻酔薬のほかに、一部の抗生剤などでもアレルギーを起こす可能性がある。かつてはそうした薬剤も、医師に手渡すなどしてきた。しかし、再び落とす危険がある。いまは薬剤に直接ふれる作業でなくても、ほかの看護師に代わってもらい、容器にもさわらないようにしている。
 病院は、看護師が足りない部署があると、ほかの部署から応援を出すが、女性については麻酔薬を扱う機会が多い部署に行くことがないように配慮している。
 職業柄、予想外の事態で薬にさらされることがあると思い知らされた。薬の扱いに一層注意しながら、子どもの頃からのあこがれだった看護の仕事を続けていきたいと考えている。
 アピタル:患者を生きる・ある日突然>
(鍛治信太郎)
20160513

看護職の労働安全に関する指針。薬剤の付着などによる健康被害を防ぐ方法が書かれており、女性も活用している
(以上、朝日新聞より引用)

      ■         ■
 私はこの看護師さんはラッキーだったと思います。
 病院の内視鏡室は、
 看護師さんが一人で準備をすることもあります。
 たまたま近くに先生がいらして、
 たまたま発見が早かったので助かりました。
 ICUもあって、
 救急科もある大きな病院だと思います。
      ■         ■
 もし一人で勤務していて、
 発見されるのが遅かったら、
 助からなかった可能性もあります。
 農業や林業で、
 山で蜂に刺されてアナフィラキシーショックになったら、
 助けて~と叫んでも、
 誰も近くにいないことが考えられます。
      ■         ■
 この患者さんは看護師さんでした。
 看護師さんでも、
 今日は死ぬな
 もうだめだ

 …と昨日の院長日記、
 ある日突然_薬でショック③に書いてあります。
 いつ何が起こるかわかりません。
 アレルギーがある方は、
 エピペンという注射を、
 先生に処方していただいて持っていると安心です。

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医学講座

ある日突然_薬でショック③

 朝日新聞朝刊の連載記事、
 ある日突然_薬でショックの続きです。
 大浦武彦先生のお誕生日の院長日記で
 1日遅れになりました。
 毎日興味深く読んでいます。
 今日の院長日記は昨日の朝刊です。
      ■         ■
 平成28年5月11日(水)朝日新聞朝刊の記事です。
 (患者を生きる:3049)ある日突然_薬でショック③_瓶割れ吸引「もうだめだ」
 2015年10月、兵庫県の准看護師の女性(49)は勤め先の総合病院の内視鏡部門で、検査の準備に取りかかろうとしていた。受診者に内視鏡を入れる前に、「キシロカイン」という麻酔薬をスプレーでのどに吹き付ける処置で、女性はこの薬にアレルギーがある。
 スプレーをするとき、女性はマスクと手袋をし、肌が出ない感染防護用のエプロンを身につけていた。噴射した薬が自分にかからないよう、なるべく腕を伸ばして体から遠ざけてもいた。
 いつも通り、薬の瓶にスプレー用のノズルを付けようとしたが、うまくはまらなかった。力を入れてノズルを押し込んだところ、瓶を落としてしまった。瓶が割れ、薬がこぼれて床に広がった。
 「早く拭かないと」
 アレルギーのことが頭にあり、慌てた。近くの紙おむつをつかみ、しゃがんで薬を吸わせ、ごみ箱に捨てた。マスクをしていても蒸発した薬を吸い込んだようで、次第に気分が悪くなった。
 スプレーを終え、受診者の頭が動かないよう押さえているときに、耐えられなくなった。
 「キシロカイン吸った」
 そうつぶやくと、しゃがみ込むように床に倒れた。顔も手足も蒼白(そうはく)になった。呼吸が乱れ、酸素が足りなくて唇が赤紫色になるチアノーゼを起こした。吐き気がしてえずいた。
 約30年前に虫歯治療の麻酔薬で初めてアレルギーが起きたときよりも、ずっとつらく、症状も重い気がした。血圧の低下と意識の障害が伴うアナフィラキシーショックという状態だった。
 「今日は死ぬな。もうだめだ」
 意識が徐々に薄れていった。
 近くにいた消化器内科の医師にその場で酸素吸入や、血圧を上げるアドレナリン注射などをしてもらった。救急外来へ運ばれた後、ステロイド剤や2度目のアドレナリン注射などを受けた。
 瓶が割れてから約1時間後、ICU(集中治療室)に移され、意識が少しずつ戻ってきた。気付くと、顔見知りの職員たちに取り囲まれていた。
 「恥ずかしい」「これ以上迷惑をかけたくない」。そんな思いから「もう、うちに帰りたい」と口にした。(鍛治信太郎)
20160512

女性が落としたのと同型の麻酔薬
(以上、朝日新聞より引用)

      ■         ■
 キシロカインという薬は、
 歯科麻酔にも使います。
 けがの治療にも使います。
 内視鏡にも使います。
 耳鼻科で鼻を診る時にも使います。
 座薬を入れる時に使うこともあります。
 二重埋没法にも使います。
 ヒアルロン酸に入っている製剤もあります。
      ■         ■
 これほど世界中で使われている麻酔薬はありません。
 不整脈の治療に使う、
 静注用キシロカイン
 じょうちゅうようキシロカイン
という注射薬もあります。
 医療関係者で、
 この薬にアレルギーがある人は、
 私は今までに聞いたことはありませんでした。
      ■         ■
 薬剤の瓶を落として、
 割れて、
 その液体を吸入しただけで、
 このようなショックは恐ろしいです。
 マスクをしていたと書いてあるので、
 吸った量は微量だと思います。
 今日は死ぬな
 もうだめだ

 …と思ったのも当然です。
      ■         ■
 私が強調したいのは、
 キシロカインスプレーを、
 落として吸入しただけでショックです。
 外傷の処置などで、
 局所麻酔として注射していたら、
 もっと重篤な症状になった可能性があります。
 きわめてまれなことでも、
 起こってしまうと大変です。
 なんちゃっての先生でも
 アナフィラキシーショックに適切に対応できることが大切です

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昔の記憶

大浦武彦先生85歳のお誕生日

 今日5月11日は、
 恩師、
 大浦武彦先生のお誕生日です
 先生は、
 昭和6年5月11日(1931年5月11日)に台湾でお生まれになりました。
 お父様が高等師範学校の教員をなさっていらしたと、
 お聞きしたことがあります。
      ■         ■
 先生のHPによると
 1962年3月 北海道大学大学院 医学研究科修了(医学博士)
 1978年6月 北海道大学医学部 形成外科学講座 教授
 1993年4月 北海道大学医学部附属病院長就任
 1995年3月 北海道大学 定年退官(北海道大学名誉教授))
 1995年4月 医療法人渓仁会 会長、褥瘡・創傷治癒研究所 所長(兼任)
 2002年8月 医療法人社団 廣仁会 褥瘡・創傷治癒研究所 所長 現在に至る

 85歳の今も現役で働いていらっしゃいます。
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 最愛の奥様、
 大浦憲子様がお亡くなりになったのが
 平成25年11月19日です。
 大浦先生は、
 奥様が準備された、
 札幌駅近くのマンションで、
 お元気で生活されています。
 ご飯も作れるようになったと、
 先生が楽しそうに話してくださいました。
      ■         ■
 下の写真は北大形成外科50周年記念誌です。
 准教授の小山明彦先生が作ってくださいました。
 笑顔の大浦武彦先生です。
 私を含め、たくさんの弟子を育てていただき、
 ありがとうございました。
 これからもお元気でご活躍ください。
20160511

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