医学講座
担当医によって違う全治○週間
交通事故と診断書という、
2011年12月16日の院長日記があります。
警察が人身事故として事故処理をするためには、
医師の診断書が必要になります。
診断書の全治○週間の、
○が1か3かで、
免停30日か90日か、
違反点数がぎりぎりの人は、
免許取消になることもあります。
お医者さんの診断書は重要です。
■ ■
保険会社は、
医師の診断書が提出されて…
人身事故として警察が事故処理をしていないと…
保険金を支払わない場合があります。
ところが、物損事故扱いでも、
保険金が支払われることもあります。
私の交通事故がそうでした。
■ ■
医師にとって困るのが…
全治○週間という…
治療期間の決め方です。
保険会社に治療費を請求する関係で、
全治一週間と書いたのに…
治るまでに…
一年もかかると…
どうして…?
一週間の診断書なのに…
一年もかかるの…?
…ということになります。
■ ■
女性の顔に傷ができると…
少しでも目立たなく治療したいと思います。
裁判官の娘さんでも…
警察官の娘さんでも…
弁護士さんの娘さんでも同じです。
ちょっとでも赤味が残っていたり…
色素沈着が残っていたりすると…
治療したいと思います。
■ ■
形成外科で診断書を作成すると、
ちょっとした顔のけがでも、
向後約一年間の通院治療を要する見込みである…
…と書く場合があります。
顔の傷が残りそうな時は…
私は約一年間と書くようにしています
実際に何年もかかることがあります。
■ ■
困るのが…
刑事処分や行政処分の重さが…
治療期間によって決められることです。
治療期間が3ヶ月以上になると…
重傷事故と判断されることがあります。
そもそも…
医学用語に軽傷とか
重傷はありません。
定義もはっきりしません。
■ ■
用語自体も、
医学では軽症・重症…
…とやまいだれの症を使います。
形成外科で、
一年間の治療と書くと…
よく検察庁から問い合わせが来ていました。
検察官も、
顔面挫裂創(裂けて切れた傷)で、
一年間もかかるのは?と考えるようです。
■ ■
顔の傷が【全治】という定義が、
日本形成外科学会にも、
日本美容外科学会にもありません。
体質によっては、
肥厚性瘢痕となって、
傷が目立つこともあります。
交通事故の加害者にとっては、
免停30日か90日かではえらい違いです。
行政処分や罰金が、
単純に全治○週間という診断書で決まる、
今のシステムに問題があります。
■ ■
もし不幸にして事故を起こしてしまい、
加害者になった時は、
まず相手に誠意を見せることです。
ほんとうに申し訳ありませんでした
心から謝ることです
処分を受けることになったら、
信頼できる弁護士さんに依頼することをおすすめします。
加害者になってしまった時も、
私は弁護士法人高橋智法律事務所をおすすめします。
信頼できる弁護士さんです。
TVで宣伝している弁護士事務所は、
私はおすすめしません。
医学講座
全治○週間の治療を要す
東京から来ていた私の叔父が、
札幌市内で交通事故に遭いました。
下腿の骨が折れて、
腫れています。
かわいそうです。
私の両親と温泉に行く予定が、
すべてだめになりました。
■ ■
手術をするほどではないので、
副木(シーネ)をあてて、
東京に帰ることになりました。
車椅子なら移動できますが、
歩くことはできません。
新千歳空港までの移動も大変です。
■ ■
事故を起こした加害者の方は、
奥さんといっしょに謝りに来てくれました。
被害者の叔父以上に、
憔悴しているようです。
交通事故は、
被害者も、
加害者も大変です。
■ ■
困っているのが診断書です。
警察署からは、
札幌で診断書をもらってください。
事故の調書を作成しなくてはなりません。
…と言われています。
高齢の叔父夫婦は、
整形外科、
脳神経外科と受診し、
ぐったり疲れています。
■ ■
整形外科の病院からは、
東京でCT検査もして、
よく検査してから、
診断書を発行してもらってくださいと言われました。
脳神経外科の先生からは、
数ヵ月後に、
必ず再検査を受けてください。
紹介状を東京の病院に書きます。
…と言われました。
■ ■
このような症状では、
どんな名医でも、
全治○週間の治療を要す
…という診断書は書けません。
事故処理に診断書が必要なのはわかります。
診断書で行政処分の程度も変わります。
はっきり言って、免停か免許取消かが変わります。
医師の診断書は、
安易に全治○週間とは書けません。
昔の記憶
おばあさんの新聞
平成26年10月15日、朝日新聞朝刊、天声人語です。
早くに父が亡くなり、家には新聞を購読する余裕がなくなった。好きなのでなんとか読み続けたい。少年は新聞配達を志願した。配った先の家を後で訪問し、読ませてもらおうと考えたのだ。
▼元島根県出雲市長で衆院議員を務めた岩國哲人(いわくにてつんど)さん(78)の思い出だ。日本新聞協会の新聞配達エッセーコンテストの大学生・社会人部門で今年、最優秀賞になった。題して「おばあさんの新聞」。
▼小学5年の時から毎朝40軒に配った。読み終わった新聞を見せてくれるおじいさんがいた。その死後も、残されたおばあさんが読ませてくれた。中3の時、彼女も亡くなり、葬儀に出て実は彼女は字が読めなかったと知る。「てっちゃん」が毎日来るのがうれしくてとり続けていたのだ、と。涙が止まらなくなった……。
▼岩國さんはこれまで新聞配達の経験を語ってこなかった。高校の同級生で長年連れ添った夫人にも。しかし、今回、おばあさんへの感謝の気持ちを表す好機と思い、応募した。「やっとお礼が言えて喜んでいます」。きのう電話口で岩國さんはそう話した。
▼70年以上、朝日新聞を読んできたという。市長時代には本紙オピニオン面の「私の紙面批評」欄を担当し、当時の政治に関する社説を厳しく批判したこともある。きのうも「思い込みや独善が一つの欠点」と、本紙への苦言を頂戴(ちょうだい)した。
▼新聞週間がはじまった。失った信頼を取り戻すため、身を切るような出直しに取り組む覚悟を新たにする。岩國さんの叱咤(しった)を肝に銘じつつ。
(以上、朝日新聞より引用)
■ ■
久しぶりに天声人語の引用です。
2014年は朝日新聞試練の年です。
私は自分が大変だった時に、
朝日新聞に助けてもらいました。
購読をやめるつもりはありません。
今まで通り朝日新聞愛読者です。
今日の天声人語はいい話しです。
■ ■
岩國哲人(いわくにてつんど)さんが、
そんな苦労人だとは知りませんでした。
小学5年の時から毎朝40軒はすごいです。
出雲市だったら、
かなり広範囲だと思います。
マンションで40軒配るのとは違います。
■ ■
中3の時、
彼女も亡くなり、
葬儀に出て実は彼女は字が読めなかったと知る。
「てっちゃん」が毎日来るのがうれしくて
(新聞を)とり続けていたのだ、と。
涙が止まらなくなった……。
■ ■
私がこうして院長日記を毎日書けるのは、
国語が好きになったからです。
NHK中学生の勉強室の小田島哲哉先生、
高校の時に、
『本間、新聞を読め』
…と言ってくれた同級生のおかげです。
若い人にも、
もっと新聞を読んでほしいです。
毎朝、新聞配達をしてくださる方に感謝しています。
院長の休日
寒いけどがまん
今日は2014年10月14日です。
10月も半分近く過ぎました。
台風19号が日本列島を縦断して、
連休のお天気はさんざんだったようです。
北海道は、
昨日までは晴れていました。
今日は雨です。
■ ■
台風19号が通過した山形では、
果物の収穫時期です。
さくらんぼさんの果樹園を心配しています。
せっかく一年間丹精こめて作ったのに、
台風にやられては、、、
農業の大変さを感じます。
■ ■
北海道は寒くなりました。
札幌美容形成外科では、
暖房を入れています。
今年は電気料金が上がるので、
大変な年の瀬になりそうです。
クリニックや病院の電気料金は、
事業用なので、
一般家庭より値上率が大きいです。
■ ■
患者さんが寒かったら大変なので、
電気料金が上がっても、
病院やクリニックの暖房は止められません。
でも、
自宅ではじっとがまんです。
まだ暖房を入れてません。
そら君をひざにのせると、
犬の体温であたたかなので、
寒い朝は犬をひざにのせています。
二重・眼瞼下垂
診断が難しい眼瞼痙攣
日本神経眼科学会から、
2011年7月に出されたガイドラインです。
本態性眼瞼けいれん(以下、眼瞼けいれん)とは、
眼瞼周囲の筋、主として眼輪筋(がんりんきん)の
間欠性あるいは持続性の
過度の収縮により
不随意的な閉瞼が生ずる疾患で、
他の神経学的、
眼科学的異常が
原因となっていないものと定義される。
■ ■
この文章を読んだだけで、
あぁ難しいとため息が出ます。
簡単に言うと、
目がぴくぴくして、
目を開けにくくなる病気です。
理由はわかりませんが、
なぜか?
まぶしいという患者さんが多いです。
サングラスを離せない方もいます。
■ ■
ガイドラインにあるような、
典型的な症状がある患者さんは、
診断が難しいことはありません。
困るのが、
他の病院で手術を受けた患者さんです。
眼瞼下垂症手術がうまくいっていないのか?
眼瞼痙攣なのか判断できないことがあります。
■ ■
ボトックス治療で痙攣が治るようになりました。
残念なことに、
注射の効果は一時的で、
半年もすると薬が切れてしまいます。
眼輪筋を切除する手術は、
侵襲が大きく、
手術をする側も、
手術を受ける側も大変です。
■ ■
信州大学形成外科の研究で、
眼瞼痙攣の病態がかなり見えてきました。
比較的容易にできる診断法も教えていただきました。
松尾先生の会長講演にはありませんでしたが、
伴 緑也(ばんりょくや)先生のランチョンセミナーで、
レーザーを使った眼輪筋治療が、
眼瞼痙攣の患者さんに有効であると教えていただきました。
これから有望な治療法だと思います。
眼瞼痙攣や眼瞼下垂症の手術が進歩し、
少しずつ病態が解明されてきています。
医学講座
眼瞼痙攣の治療2014
第23回日本形成外科学会基礎学術集会。
私が3日もかけて、
札幌から松本まで行って、
一番勉強になったのが眼瞼痙攣(がんけんけいれん)の治療法です。
松尾先生の『開瞼の生理学』、
なぜうまくいかないのか?
私が一番困ったのが、
眼瞼痙攣(がんけんけいれん)でした。
■ ■
開業して眼瞼下垂症手術を多くするまで、
約25年間、
恥ずかしながら、
眼瞼痙攣(がんけんけいれん)をよく知りませんでした。
神経内科の病気だと思っていました。
外科的に治せる病気だと考えていませんでした。
学会で松尾先生の手術を見せていただいても、
自分で施術するとは考えませんでした。
■ ■
松尾法と呼ばれる眼瞼下垂症手術は、
挙筋腱膜を瞼板に固定する手術法です。
術者によってやり方は多少ちがいますが、
松尾先生が、
腱膜すべり症という、
まぶたの病気について、
ためしてがってんで、
広く世の中に広めてくださいました。
■ ■
眼瞼下垂症を訴えて来院される患者さん。
大部分の方は、
皮膚を切開して、
挙筋腱膜を固定すると、
よく開いて、
よく見える目になります。
先生ありがとうございました
…と感謝されます。
■ ■
ところが、
手術をしても、
開かなくて、
先生、これじゃぁ(不満足)
…ということがあります。
他院で手術を受けて、
うまく開かない患者さんもいます。
■ ■
眼瞼痙攣(がんけんけいれん)の患者さんは、
ふつうの眼瞼下垂症手術をしても、
目が開きません。
Meige症候群(めーじゅしょうこうぐん)という病気があります。
難しい病気です。
下垂の手術をしても開くようになりません。
眼瞼痙攣にボトックス注射が効きます。
(申し訳ありませんが札幌美容形成外科では実施していません)
■ ■
信州大学形成外科では、
眼瞼痙攣の治療を積極的にしていらっしゃいます。
従来は眼輪筋切除の手術でしたが、
今年の松尾先生のご発表では、
ミューラー筋の処理で、
眼瞼痙攣が治っていました。
眼瞼痙攣で困っていらっしゃる患者さんには、
信州大学形成外科をおすすめします。
医学講座
第23回基礎学術集会(松本)③
昨夜、札幌に帰って来ました。
札幌は寒いです。
『開瞼の生理学』を勉強するために、
松本まで行った甲斐がありました。
とても勉強になりました。
松尾清会長の講演は昨日ありました。
■ ■
松尾清先生は、
形成外科医に眼瞼下垂症手術を広めてくださった、
日本形成外科学会の功労者です。
私たちが、
毎日、眼瞼下垂症手術で、
ご飯を食べられるのは、
松尾先生のおかげです。
■ ■
眼瞼下垂症手術は、
やればやるだけ奥が深い手術です
ただまぶたを切って、
腱膜を固定するだけではうまくできません。
もう少し詳しく言うと、
固定するだけでよくなる患者さんが大部分です。
でもどうやっても…
うまくいかない患者さんがいらっしゃいます。
■ ■
松尾先生が、
『開瞼の生理学』を研究するきっかけは、
なぜうまくいかないのか?
なぜうまくいったのか?
…をとことん追求なさったからだと、
講演の最初に説明してくださいました。
■ ■
1時間の講演を聴くために、
3日間休診して行った甲斐がありました。
松尾会長の講演のほかにも、
たくさんのためになる発表がありました。
さっそく今日からの診療に役立てます。
信州大学形成外科のみなさん、
ありがとうございました。
医学講座
第23回基礎学術集会(松本)②
今回の基礎学術集会には、
松尾清会長の強い思いが込められています。
その一つがリンパです。
あまり知られていませんが、
リンパ浮腫という病気があります。
下肢が片方だけ、
ぱんぱんに膨れる病気があります。
放射線治療の後になることもあります。
■ ■
リンパというと、
リンパ節を思い浮かべます。
リンパ管という細い管があります。
肉眼で見てもわかりません。
私も今日まで知らなかったのですが、
リンパ管には、
平滑筋という筋肉があり、
心臓のように収縮するのだそうです。
■ ■
東京大学形成外科の光嶋教授は、
このリンパ管手術の権威です。
スーパーマイクロという、
細かい特殊な技術で、
リンパ管の手術をなさいます。
今までは、
リンパ管吻合の手術をしても、
なかなか良い結果が得られませんでした。
■ ■
大島先生の研究と、
光嶋先生の手術で、
リンパ浮腫の患者さんが、
劇的によくなっていました。
形成外科とリンパは、
関係が薄いように思われますが、
リンパ管移植の技術は、
形成外科のマイクロサージャリーです。
学会が終了して、羽田経由で札幌に帰ります。
モノレールから更新します。
医学講座
第23回基礎学術集会(松本)①
今日の松本は良い天気でした。
松本へ来るまでは、
御嶽山の噴火で、
松本空港が閉鎖になるのでは?
降灰があるのでは?
…とか心配していました。
来てみると松本もアルプスも無事でした。
■ ■
昨日、松本空港に着いた時に、
自衛隊の大型ヘリが御嶽山方向へ飛んで行きました。
自衛隊の松本駐屯地からは、
たくさんの方が救助に参加されています。
地元の信濃毎日新聞には、
頭から灰をかぶった自衛隊員が載っていました。
ほんとうにご苦労様です。
自衛隊員のみなさんに感謝です。
■ ■
松本は学問の街です。
信州大学の優秀な研究者だけではなく、
音楽のスズキ・メソードという教育法が、
松本と関係があると23年前に知りました。
ヴァイオリンの鈴木鎮一先生が、
松本音楽院ではじめられたようです。
街に塾や予備校が目立ちます。
■ ■
今日の学会では、
信州大学医学部の大橋俊夫先生が、
特別講演で『新しいリンパ管学の創生』について教えてくださいました。
その後のシンポジウムでは、
リンパ管学の研究がありました。
詳しい内容は難しすぎて、
私にもよくわかりません。
■ ■
印象に残ったのが、
大橋俊夫先生の電動車椅子でした。
先生は信州大学医学部長を歴任された、
高名な研究者です。
腰を悪くなさって、
車椅子を使っていらっしゃいました。
■ ■
大橋先生が講演の中で、
研究者は自らの手で実験をしなくてはダメ。
車椅子になっても、
ウサギを使った動物実験を、
ご自身の手でなさっていらっしゃる。
研究者の鏡のような先生です。
医学部教授に対する考えと指導も、
札幌医大で私をクビにした医学部長とは、
まったく違っていました。
素晴らしい研究が生まれるためには、
素晴らしい指導者が必要なことがわかりました。
松本まで来た甲斐がありました。
院長の休日
松本へ来ました
今日は、
第23回日本形成外科学会基礎学術集会に参加するため、
松本へ来ました。
23年前、
1991年5月に、
第34回日本形成外科学会で来て以来です。
■ ■
FDA(フジドリームエアラインズ)の飛行機で、
新千歳空港から来ました。
はじめて搭乗しました。
小さな飛行機でした。
一日一便しかないので、
帰りは東京経由で札幌に戻ります。
■ ■
今年の第23回基礎学術集会、
会長の松尾清教授は、
眼瞼下垂症の権威です。
今回は、
会長講演、
『開瞼の生理学』を聴くために、
札幌から信州までやってきました。
■ ■
私の眼瞼下垂症を、
一番先に診断してくださったのが、
松尾先生でした。
先生は覚えていらっしゃらないでしょうが、
平成14年6月に開催された、
大阪の日本熱傷学会の時でした。
立ち話で『先生にも(眼瞼下垂)がありますょ』
…と診断してくださいました。
人生で一番困っていた時期でした。
松尾教授の診断のおかげで、
手術を受けて快適になりました。
『開瞼の生理学』を勉強して帰ります。
■ ■
補足です。
FDAの飛行機は快適でした。
小さな飛行機は揺れて、
狭いというイメージがありました。
FDAのブラジル製の機体は、
天井が高く、
足元が広い快適なシートでした。
もう一つ、
静岡の航空会社なので、
機内の静岡茶(あたたかいお茶)が、
とても美味しかったです。
FDAをおすすめします。